ローカルでの暮らしを考えるうえで、一番の懸念事項とも言えるのが「住まい選び」だ。
賃貸にするのか、思い切って戸建てを購入するのか、選択肢はさまざまだが
空き家を活用するなど、セルフリノベーションをして
自分の思い描く理想の家と暮らしを手に入れようと考えている人も多いだろう。
では、自らの力だけで、リノベがうまくいくのだろうか。
リノベのやり方を教えてくれるところなんて聞いたことがないし、
大工や建築家の知り合いもいない。
そんなときに、住まい手のサポートをしてくれるのが、
〈HandiHouse project(ハンディハウスプロジェクト)〉だ。
専門家たちとともに、住まい手が中心となった「家づくり」を
広めようとしている21人の若手建築集団で、
日本全国を舞台にさまざまなプロジェクトを推進している。
そんな彼らが掲げているビジョンが「家づくりを楽しむ文化」を醸成することだ。

〈HandiHouse project〉の事務所。〈Handi Labo〉もプロジェクトのひとつで、参加者で家づくりを実践したり、工作を行うコミュニティをつくっている。
神奈川県・鶴見市。東急東横線の綱島駅から車で10分ほどの
「駒岡」という地区にある大きな倉庫が〈HandiHouse project〉の事務所だ。といっても、
21人のメンバーの多くは個人事業主でもあり、
プロジェクトごとにチームを組んで活動しているので、
ここは〈HandiHouse project〉という活動母体のコアと
言ったほうが正しいのかもしれない。

事務所の倉庫部。さまざまなプロジェクトを実践した形跡が残されている。
彼らは、それぞれ別々の下積み時代を送っていたのだが、
建築家としてのキャリアを積む過程で生まれた日本の住宅事情に対する疑問が、
〈HandiHouse project〉として団結し、同じ方向に向かって歩むこととなった。
「家づくりって、営業、設計、施工、大工さんと、登場人物が多すぎる。
だから住まい手は、誰に思いを託したらいいのかわからなくなっちゃうんですよね。
まずはそこを取っ払って、設計の段階から施主さんを徹底的に巻き込む。
ここがほかとはまったく違うところだと思います」

発起人である中田裕一さん(左)と加藤渓一さん(右)。
と語るのは、発起人のひとりである加藤渓一さん。
人は、お金を出して買った瞬間、それを「モノ」として扱ってしまう。
特に家においては、誰がどうつくっているか、何でできているのかというところは
一切わからないまま、完成した家に何の疑問も持たずに住むことになる。
それでいて、住み始めてから初めて気がつくちょっとした傷や汚れには敏感だ。
家を「モノ」にしないために、〈HandiHouse project〉では、
家づくりを通して施主の意識を変えていくということをひとつのゴールにしている。
「家って完成したらそこで終わりで、
なんとなくもう触っちゃいけないというイメージがありませんか?
僕たちとしては完成がゴールではなくて、住み始めがスタート。
施工の過程で 『家をつくる』ということに対して理解が深まっていくと、
住み始めてからも能動的に手を加え続けるようになるんです。
自分たちでつけてしまった傷や汚れも、思い出として受容するようになる。
そうすると、家の価値って下がらずに、どんどんと魅力が増していく。
僕たちはそこを目指しています」(加藤さん)

結成当時の様子。家づくりを楽しんでいるこの写真はHPに掲載されている印象的なカット。
彼らの出会いは2009年。
初期メンバー4人のうちの中田裕一さんと坂田裕貴さんが、ちょうど独立を考えていた時期。
渋谷のハロウィンパーティーで偶然知り合い、意気投合。
「設計・施工という過程のなかに施主を
完全に組み込んでしまうって、おもしろくない!?」と、
その場でチームの基盤ができた。
それから、それぞれの友人を誘ったのが〈HandiHouse project〉のはじまりだ。
「お互い仮装していたんで、素顔は全然見えない状況でした(笑)。
でも、考えは同じでした。家づくりに施主が参加するということが、
日本人の住宅に対するリテラシーを向上させていくと、
あのときから本気で考えていましたね」(中田さん)
「多くの人は、家がどんな手順で、どんな材からできているかを知らないんです。
もちろん学校でも教えてもらえないですし、社会に出ても知るきっかけがない。
家を買うタイミングで初めて調べ始める。それじゃ遅いんです。
あれよあれよという間に完成してしまう。
僕らの仕事は、家づくりに対して興味を持ってもらうきっかけをつくってあげること。
その本質は、『住まいに対するリテラシーの醸成』なんです」(加藤さん)

DIYできる賃貸〈アパートキタノ〉。住まい手が自由にカスタムできる工夫が詰まっている。