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古墳だけではありません。
料理人・野村友里が
宮崎県西都市の魅力を体感!

ローカルの暮らしと移住
vol.036

posted:2021.10.7   from:宮崎県西都市  genre:暮らしと移住 / 食・グルメ

sponsored by 西都市

〈 この連載・企画は… 〉  ローカルで暮らすことや移住することを選択し、独自のライフスタイルを切り開いている人がいます。
地域で暮らすことで見えてくる、日本のローカルのおもしろさと上質な生活について。

writer profile

Kei Sasaki

佐々木ケイ

ささき・けい●埼玉県出身。食、酒、旅を軸に、全国各地を取材し記事を執筆。雑誌連載は『BRUTUS』『dancyu』『Hanako』ほか。JSA認定ワインエキスパート。

photographer profile

Satoko Imazu

今津聡子

いまづ・さとこ●大阪府生まれ。大阪芸術大学写真学科卒。都内スタジオ勤務を経て、写真家・若木信吾氏に師事。独立後フリーランスとして、主に雑誌、カタログ、広告などの旅やポートレイト撮影で活動中。

イベント参加のため、西都市へ

「食」を通じ、都市とローカルをつなぐ活動を続ける
料理人・野村友里さんが、宮崎県西都市(さいとし)を訪問。
同市では、今年8月から、
〈西都はじめるPROJECT〉という試みが始動していて、
その移住オンラインイベントに
スペシャルゲストとして参加するためだ。

野村さんにとって、初めての西都市。
いったいどんな土地で、プロジェクトはどんなものなのか。
期待を胸に、駆け足の旅がスタートした。

台風が過ぎた後の宮崎県の青空

台風一過の晴天とツバメが、野村さんを出迎えてくれた。

9月某日の宮崎は、台風一過の晴天で、暑さも真夏へと逆戻り。
ヤシ科の植物が連なる景色に、一気に南国ムードへと誘われるなか、
一路、西都市を目指す。

宮崎空港から車で約50分、宮崎市の市街地からも約40分と、
交通の利便性が高い一方で、手つかずの自然、
いにしえの文化の跡が残る土地。
大小300基以上の古墳が点在する西都原(さいとばる)古墳群は、
国の特別史跡に指定されている。

西都市には大小多くの古墳が点在

東西2.6キロ、南北4.2キロの広範囲に、300基以上の古墳が。市内を車で移動すると、おのずとあちこちで目にすることに。

〈西都はじめるPROJECT〉は、
市が進める移住・定住支援プロジェクト。
豊かな自然を生かしたユニークなワーク&ライフスタイルを発信し、
新しい暮らしや仕事などを”はじめる人”たちを支援。
移住はもちろん、起業や就農、子育てやコミュニティづくりのための、
多くのサポートプログラムが用意されている。
地方への移住者や2拠点生活者の友人を多く持つ野村さんも、
この取り組みに興味津々だ。

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豊かな土地が育む西都の食

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水や飼料からこだわって牛を育てる

野村さんの場合、土地を知ることは、その土地の味を知ることから始まる。
まずは宮崎県が誇るブランド牛・有田牛の生産者を訪ねた。

「空気のおいしい西都へようこそ」と、出迎えてくれたのは
〈有田牧畜産業〉社長の有田米増(よねぞう)さん。
自ら、牛舎を案内してくれた。

仔牛を愛おしそうに眺める野村さん

〈有田牧畜産業〉の牛舎にて。柵を超えそうな勢いで牛に迫る野村さん。

「牛たちが飲む水は、地元・尾鈴山(おすずやま)の地下水。
常に汲みたてを、好きなときに飲めるようになっています」

牛が鼻でペダルを押すと、水が出る給水器を見て、
野村さんは、驚きに目を丸く見開いた。

「きれいな水は、健やかさの源。
都会では、簡単に手に入らないもののひとつです」

約7500頭の牛が暮らす有田牧畜産業

牛舎の建物、区画は月齢別に。黒毛和種を中心に約7500頭を育てている。

専用の給水器で常に新鮮な水を牛に与える

独自に開発した牛舎専用の給水器。汲み上げたばかりの地下水が牛の飲み水に。

広大な敷地に点在する牛舎は、
大きく広々としていて、独特の臭いも少ない。
「今でいうところのソーシャルディスタンスです」と、笑う有田さん。
言葉の通り、ひと区画あたりの頭数は少なく、
牛たちは時に牛舎の中を歩き回りながらのんびりくつろいでいる。

おいしそうに餌を食べる牛たち

夢中で餌を食べる月齢12か月の黒毛和牛。若いうちは、牧草だけを与えて育てる。

飼育頭数をリスト化して共有

飼育頭数の現状を一覧表で管理し、全スタッフで共有している。

有田さんは、創業60年を迎えた〈有田牧畜産業〉の2代目。
家業に加わった40年前、戦後の高度成長期からバブル期まで、
増産一辺倒だった経営を刷新。
当時はまだ珍しかった飼料製造管理者の資格を取得し、
抗生物質などを使用しない自社配合飼料での肥育にいち早く踏み切る。
水と飼料にこだわり、密飼いを避け、健康な牛を育てることを第一に。
自社ブランド〈EMO牛〉の名に
「Earth Medicine 0(大地には薬ゼロを)」という想いを込めた。

自家配合飼料の香りを嗅ぐ野村さん

有田さんの説明を聞きながら、トウモロコシや大豆かす、きなこ、海藻などをブレンドした自家配合飼料の香りを嗅ぐ野村さん。

牧草も農薬を使わずに自社で育てる

牧草も農薬を使わず自社で栽培する。「人間が食べられる飼料」で育てるのがモットー。

自社の牛肉を毎日食べるという有田さん。
「まったく飽きないし、やっぱりおいしい」と、うれしそうに話す。

「食材の店を持って以来、
土や水を大切にする生産者への敬意がより強くなりました。
長年、先頭に立って時代を切り開いてこられ、
未来に向け新しいことを考えていらっしゃる。
たくさんのパワーをいただきました」と、野村さん。
有田さんとの再会を約束し、次なる目的地へ向かった。

有田さんが焼いてくれたミスジとロース

有田さん自らが焼いてくれた〈EMO牛〉。手前がミスジで奥がロース。赤身と脂のバランスが秀逸。

チャーミングな店主がつくるタルトに舌鼓

2軒目の訪問先は〈タルト屋エイム〉。
大阪から西都市に移り住んだ石谷有子さんが
2014年に開いた手づくりタルトの店だ。
3人も入ればいっぱい、という小さな店に、
地元の常連客らが、ひっきりなしに訪れる。

市街地からは少し離れた場所にある〈タルト屋エイム〉

〈タルト屋エイム〉。周囲にこれといって何もない、まちなかから離れた場所にひっきりなしに客が訪れる。

野村さんは店内をじっくりと見回し
「どれも食べたい!」と、うれしそう。
シンプルな焼き菓子は、大の好物なのだ。
石谷さんに声をかけられると
「本当にすてきなお店ですね。なぜ西都市に?」と、
移住の理由を尋ねた。

「最初は単純に、田舎暮らしに憧れて。
でも、すべて当初の計画通りとはいかず、
大阪に帰ることも頭に浮かびましたが、
やっぱりこの地を離れがたくて。
西都市は野菜も果物もおいしくて、
時間の流れがゆったりしていて。
私に合っているんです」

そう話す石谷さんの表情は、まぶしいほど溌剌としている。

楽しく談笑する石谷さんと野村さん

移住について、西都市での菓子づくりや素材について。石谷さんと野村さんの話は尽きない。

「今は栗と梨がメイン。
手に入る果物は、近隣の生産者のもので。
卵農家さんが果物の生産者を紹介してくださったり、
ご縁がつながっていったんです」

結局、野村さんは、その日のおやつと、
翌日の朝食分もまかなえるくらい大量のタルトと焼き菓子を購入。

ナッツとコーヒーのタルトとシュークリーム。

手前は石谷さんイチオシ、ナッツとコーヒーのタルト。奥は、一番人気のシュークリーム。

「こんなふうに自分のお菓子のことを、
そして素材やそのつくり手のことを
うれしそうに話す石谷さんがつくるものなら、
食べてみたいって思うもの」

人の考えや、生き方が味に表れる。
普段から抱く思いを、また確かめた。

information

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有田さんちのお肉やさん(有田牧畜産業 直売所)

住所:宮崎県西都市岡富829-1

TEL:0983-32-0129

営業時間:10:00~18:00

定休日:年始

Web:有田牧畜産業

information

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タルト屋エイム

住所:宮崎県西都市右松576-1

TEL:0983-42-3202

営業時間:11:00~18:00

定休日:不定

Web:タルト屋エイム

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古代と現在がつながる場所

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人々の暮らしとともにある古墳群

2日目、ホテルを出た野村さんは、
西都原古墳群を代表する「鬼の窟(おにのいわや)古墳」を目指した。
300基あまりの古墳が点在する西都市では、
初日の移動中にも多くを見ることができたが、
全国の古墳のなかでも唯一無二の特徴を持つのが「鬼の窟古墳」。
直径37メートル、周囲に土堤を巡らせてあり、
復元された横穴式の石室は、見学ができるようになっている。

野村さんが歩いているのは「鬼の窟古墳」の土堤

「鬼の窟古墳」の土堤を歩く野村さん。

「古墳の歴史的価値もさることながら、
古墳群が史跡に指定されていることで、
周囲の環境ごと守られていることがすばらしい。
建物や電柱のない、地面と空でできた景色が、
どれほど尊くありがたく、
体に気を満たしてくれるものかと実感します」と、野村さん。

古代から変わらぬ西都原古墳の光景

近代的な建造物や電柱に邪魔されない、地面と空がつくる景色を野村さんも満喫した。

考古学者の言葉に耳を傾ける

「鬼の窟古墳」の近くにある
〈宮崎県立西都原考古博物館〉にも立ち寄る。
順路はなく、多くの展示が撮影可能で、縄文土器など、
展示品のいくつかは手で触れることもできる。

考古博物館の展示に見入る野村さん。

展示品や、そこに添えられた言葉を、じっくり確かめるように見て回る野村さん。

ユニークな博物館の中で野村さんの心をとらえたのは、
展示品に添えられた示唆に富む言葉の数々だ。
例えば「人を想うこと」についての一節。
「歩く速度は、人を想うことができる。
馬を駆(か)ける速度は(中略)、しかし、車の速度では……」
文明とは、命とは、生きるとは。

「都会の日常で口にしたら、鼻で笑われてしまうようなこと。
でも、諦めず、考え続けていきたい。本当にすばらしい博物館」

ここに来るためだけにでも、また西都市を訪れなければ。
想いを胸に、次の目的地に向かった。

西都原考古博物館の展示スタイルはユニークだ"

2004年4月に開館した〈宮崎県立西都原考古博物館〉。貴重な史料が揃い、展示スタイルもユニーク。

次代を担う若手生産者との出会い

歴史や民俗文化に加え、
西都市を語るうえで欠かせないのが、豊富な農産物だ。
全国的に有名なブランドフルーツ、宮崎県産マンゴーも、
沖縄県外で初めて、宮崎県内でもいち早く栽培に取り組んだのが西都市。
土壌は肥沃、気候は温暖で、あらゆる農作物がよく育つ。
とりわけ、市を挙げて栽培に力を入れているものに、ピーマンがある。
1964年に栽培を開始し、73年には市町村別の販売額日本一に輝いた。

ピーマン農家、甲斐さんのハウスを訪ねた野村さん

ピーマン農家、甲斐さんの圃場。南国・宮崎の農業は、台風との闘いだ。

野村さんは、ピーマン農家の甲斐将記さんを訪ねる。
春蒔きのピーマンは、収穫の真っただなかで、
高く伸びた枝に緑と赤の実がにぎやかに実っていた。

甲斐さんは「もぎたてアツアツ、やけどに気をつけてください」と
冗談を言いながら、野村さんにピーマンを手渡す。
手のひらの中で、緑と赤がつやつやと輝いた。

赤と緑の対比が美しいピーマン

もぎたてアツアツのピーマン!

「この見た目と、青い香りだけで、もうおいしいもの!」と、野村さん。
甲斐さんは34歳だが、栽培歴13年のベテラン。
全国の農村で後継者不足が嘆かれるなか、
西都市のピーマン生産者は、彼ら世代が元気で、
定期的に勉強会を開くなどして、品質向上に努めている。

小さな苗が並ぶ秋植えのハウス

ピーマン栽培は、年2回。秋植えのハウスには、小さな苗が並ぶ。

「ピーマンを、もっともっとおいしくしたい!」と、甲斐さん。
甲斐さんの言葉や表情に、
なぜ西都のピーマンが日本屈指のブランドなのか、
その答えを見た気がした。

information

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宮崎県立西都原考古博物館

住所:宮崎県西都市大字三宅字西都原西5670

TEL:0983-41-0041

開館時間:9:30~17:30(最終入館17:00)

休館日:月曜、祝日の翌日(土・日曜・祝日を除く)

Web:宮崎県立西都原考古博物館 

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都市では得られない豊かさとは?

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移住者3人と西都の魅力を語り合う

旅の締めくくりに、野村さんは〈西都はじめるPROJECT〉の
移住オンライントークイベント「西都はじめるLIVE」に出演。
いちご農家、飲食店経営者、地域創生に関わる3人の移住者と、
西都市の魅力や、ローカルでの暮らしの可能性について話し合った。

移住オンラインイベント「西都はじめるLIVE」のトークの様子。内容の詳細はこちら

移住オンラインイベント「西都はじめるLIVE」のトークの様子。内容の詳細はこちら

あらためて西都市の魅力を聞かれると
「私にとっての最先端」と、野村さん。

「きれいな空気や水を得ること、空を見ることにさえも、
コストがかかるのが都市の暮らし。
ここはその対極。すべてがある。
お会いした方々全員が、大らかかつ穏やかなのも印象に残りました。
何かを始めるには、いい土地なのかもしれません」

春には2000本の桜が咲き誇る西都原古墳群

西都原古墳群には、2000本の桜があり、春には30万本の菜の花とともに咲き誇る。

〈西都はじめるPROJECT〉関連の
オンラインイベントは、今後も予定されている。
10月31日開催予定の移住オンライン相談イベント
「西都はじめるMEETING 小商い編」もそのひとつ。
カフェやパン屋をはじめ、西都市で小商いを始めたい人々が、
先輩移住者や市の担当者と直接話ができるイベントだ。

旅がきっかけの短い滞在でも、
心から惚れ込んだ土地ならば、必ず“帰る場所”になる。
そんなふうにして、ローカルとの関係を築き続けてきた野村さんだが、
西都市への再訪をすでに待ち望んでいる。
実現すれば、そこからまた新しい何かが“はじまる”はずだ。

profile

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Yuri Nomura 
野村友里

のむら・ゆり●eatrip主宰/料理人。おもてなし教室を開いていた母の影響で料理の道へ。ケータリングフードの演出や料理教室、雑誌連載、ラジオ出連など、活動の場は多岐にわたる。2012年から東京・明治神宮前の古民家で〈restaurant eatrip〉を営む。19年11月には〈表参道GYRE〉にグロッサリーショップ〈eatrip soil〉を開業し、日本各地の食材や雑貨の紹介、それらの背景を知る体験型ワークショップなどのイベントも開催。『春夏秋冬 おいしい手帖』『会いたくて、食べたくて 私が信頼する101の美味しさとその生産者たち』(ともにマガジンハウス)など著書も多数。

Web:eatripjournal

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