重要文化財〈旧奈良監獄〉がミュージアムとホテルに。奈良県奈良市に新たな文化拠点が誕生

奈良県奈良市にある国の重要文化財〈旧奈良監獄〉が、2026年に〈奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート〉(4月27日開館)と〈星のや奈良監獄〉(6月25日開業)という2つの施設として生まれ変わった。重要文化財の監獄建築を保存・活用し、ミュージアムと宿泊施設を展開する、国内でも他に例をみない文化財活用プロジェクトだ。

100年以上、人々を見つめてきた旧奈良監獄

旧奈良監獄は、明治41年(1908年)、近代国家を目指した明治政府による司法制度改革の一環として建設された「明治五大監獄」のひとつ。その中でも、当時の姿をほぼ完全な形で残す唯一の施設として知られる。放射状に舎房が延びる「ハヴィランド・システム」を採用した煉瓦造の建築は、日本の近代監獄建築を代表する存在として評価され、2017年には国の重要文化財に指定された。

1946年以降は奈良少年刑務所として運用され、2017年に刑務所としての役目を終えるまで、100年以上にわたって実際に人が収容され、更生の場として機能してきた。高い壁の向こう側にありながら、地域の人々にとっては長く奈良の風景の一部でもあった場所だ。

「自由」を問うミュージアム

2026年4月27日に開館した〈奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート〉は、旧奈良監獄の歴史や建築を保存・継承するだけでなく、「美しき監獄からの問いかけ」をコンセプトに掲げる新しいミュージアムだ。

見どころは、建築そのものが展示物であること。明治時代に築かれた赤煉瓦の建物や、重要文化財の空間を実際に歩きながら、その美しさと歴史に触れることができる。敷地内は、活用に伴う改修を行わず、当時の状態を残した保存エリアと展示エリアに分かれている。展示エリアは「歴史と建築」「規律とくらし」「監獄とアート」の3つのテーマで構成。行刑制度や受刑者の暮らしをたどるとともに、デザインやアートを通して感性を揺さぶり、日常を捉える視点をアップデートする体験へと誘う。

アートディレクターには、〈21_21 DESIGN SIGHT館長を務める佐藤卓氏(TSDO)と、世界各地の美術館展示を手がけるアドリアン・ガルデール氏が参加。歴史を学ぶだけでなく、「自由とは何か」という普遍的なテーマについて、自分自身へ問いを投げかける体験という構成だ。見学後は、明治時代の洋食文化をイメージしたカレーパンやチーズケーキを味わえるカフェや、約100点のオリジナルグッズと、全国の刑務所から集めた刑務所作業製品を扱うショップにも立ち寄りたい。

歴史に泊まる、唯一無二のホテル体験

ラグジュアリーホテル〈星のや奈良監獄〉も開業した。国の重要文化財である旧監獄を保存・再生した、日本初の宿泊施設である。

かつての舎房を生かした客室に滞在し、昼間はミュージアムで歴史や空間の成り立ちを学び、夜は静まり返った赤煉瓦の建物で過ごす。日常では味わえない時間の流れを体験できるのが、このホテルならではの魅力だ。

宿泊を通してじっくりこの場所と向き合うことも、ミュージアムを訪れて歴史や社会について思いを巡らせ、自分自身と向き合うこともできる旧奈良監獄。明治から受け継がれてきた文化財が、新たな体験の場として未来へつながる、その歩みを現地で体感してみたい。

Information

奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート

重要文化財を舞台に、デザインやアートを織り交ぜながら監獄を語り、日常を揺さぶる新たな視点を提供するミュージアム。「美しき監獄からの問いかけ」をコンセプトに、重要文化財を活用した展示やカフェ、ショップを併設する。
住所:奈良県奈良市般若寺町18|地図
営:9:00〜17:00(最終入館16:00)事前予約推奨
HP:https://hoshinoresorts.com/nara-prison-museum/ja/

Information

星のや奈良監獄

国の重要文化財「旧奈良監獄」を保存・再生した、日本初のラグジュアリーホテル。かつての舎房を生かした客室やダイニングなどを備え、歴史的建築での滞在を楽しめる。
住所:奈良県奈良市般若寺町18|地図
HP:https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/hoshinoyanarakangoku/

【見逃し配信あり】〈Dooox〉に学ぶ、地域密着型の地方創生・新規事業のつくり方

コロカルアカデミーは、コロカル編集部が主催するウェビナーシリーズ。地域づくりやブランディング、観光、ものづくりなどをテーマに、各地で活躍する実践者をゲストに迎え、現場の知見や取り組みを学ぶ場として開催しています。

第15回は、「とにかく行動しないとわからない」を信条に、地域に“素手”で入り込み、地元の人を主役にした事業創出を伴走支援する〈株式会社Dooox〉代表・久保寺亮介氏をゲストにお迎えしました。

人口減少、空き家問題、地域資源の活用不足など、地域にはさまざまな課題が存在します。しかし〈Dooox〉は、それらを単なる課題として捉えるのではなく、地域の人たちとともに意思決定を重ね、事業として自走する形へと育ててきました。

本セミナーでは、奈良県田原本町でのマンゴー栽培プロジェクトなどを事例に、地域課題を「事業」に変えるための実践のプロセスをひもときました。

本講座で語られたこと

・〈Dooox〉の歩みとスタンス
・小さく実践しながら育てる、自走モデルのつくり方
・地域課題を「事業」に変える方法

見逃した方、もう一度じっくり学びたい方のために、アーカイブ動画を公開しています。

講座で語られた、〈Do〉を無限に生み出すということ

講座全体を通して、久保寺さんから感じたのは、とにかく〈Do〉を大切にする行動哲学です。

いいアイデアや熱量だけでは、何も変わらない。まずはチャレンジしてみないとわからない。言われてみれば、その通りだと思うことでも、いざ仕事の課題や現場を目の前にすると、なかなか一歩を踏み出せない方も多いのではないでしょうか。

だからこそ、久保寺さんのお話を伺って改めて感じたのが、スピード感を持ってスモールステップを踏みながら、トライアンドエラーを重ねていくことの大切さです。特に、地域にコミットしながら事業を生み出し育てていくには、大きなビジョンを描くことだけでなく、目の前の現場に柔軟かつスピーディーに向き合い、一つひとつ行動に移していくことが重要なのではないかと感じました。

そもそも〈Dooox〉という社名には、「Doを無限に生み出す会社」という意味が込められているそうです。きっと、この記事を読んでいる方の中にも、たくさんの素敵なアイデアや熱量があると思います。久保寺さんのお話には、そうしたアイデアや熱量を、実際の行動=〈Do〉へと落とし込んでいくためのヒントが詰まっていました。

Doooxの久保寺亮介氏によるウェビナーの様子

参加者の声

「地元の人を主役にしていくというアプローチが大変参考になりました。また機会があれば、地域の人たちの主体性を醸成する工夫や苦労について、より詳しく聞いてみたくなりました」(経営者・60代)

「思いつきから広がっていくこともあるのだと目から鱗でした。行動することも大切に、日々の仕事に活かしていければと思います」(農業・林業・漁業・40代)

「今までボンヤリとイメージしていたことを、すでに実践なさっている講師の方々のリアルで力強い言葉に、視界が開けていく思いです」(小売・60代)

担当編集のひとこと

久保寺さんのお話を聞いていて強く感じたのは、「現実を見据えた理想主義」という姿勢の重要性です。

「こんな未来があったらいいな」というビジョンは明確に持ちつつ、それを実現するための方策やアプローチに徹底してこだわる。そのための方法として、「Do」がある。完璧な計画を立てようとせず、素手で地域に入り、小さく試す。行動して初めて、道が見えてくる。

これらを徹底することが、久保寺さんの哲学であり、現在の〈Dooox〉を形づくる一貫した行動指針なのだと感じました。

プロジェクトを新しく立ち上げたい。前に進めたいと思っているけれど、なかなか動かせずにもどかしい思いをしている。そんな方々に、ぜひおすすめしたい講座です。

登壇者プロフィール

久保寺 亮介

くぼでら・りょうすけ/〈Dooox〉代表取締役。岐阜県出身。東京大学工学部卒業後、株式会社電通に入社。セールスプロモーション施策の企画・運営に携わる。その後、外資系生命保険会社にて事業承継を中心としたオーナー経営者向けの業務に従事し、新人として史上最高業績を記録。中堅・中小企業への伴走支援の必要性を感じ、2021年に〈Dooox〉を設立。社外社長室サービス「特命社長室®」や地域活性化事業「街盛PJ」を軸に事業を展開中。熊本市スタートアップメンター、IU大学客員教授、静岡県小山町・南伊豆町政策アドバイザーも務める。公式サイト:https://dooox.co.jp/

杉江 宣洋

すぎえ・のぶひろ/コロカル編集長。マガジンハウス入社後、『anan』『BRUTUS』などの副編集長を経て、2022年『Hanako』編集長就任。2025年より現職。

【視聴無料】「キングダム」と佐賀県。〈サガプライズ!〉に学ぶ、人を動かすIPコラボの成功法則

地域の暮らしや文化に根ざした学びの場「コロカルアカデミー」。日本各地のローカルの魅力を伝えるWebマガジン〈コロカル〉が主催するウェビナーシリーズです。

第17回のテーマは、「地域資源×IPで熱狂を生むプロモーション」。ゲストは、佐賀県の情報発信プロジェクト「サガプライズ!」のプロジェクトリーダーを務める、佐賀県広報広聴課の藤吉洋輔(ふじよし・ようすけ)さんです。

地方自治体とコンテンツIPのコラボレーションは、いまや珍しいものではありません。そんななか〈サガプライズ!〉が注目を集めるのは、企画から実施までを佐賀県庁が主体となって推進し、話題を生み出してきた点にあります。

代表例が、佐賀県の形がゴジラと似ていることに着目して生まれた「ゴジラ対(つい)サガ」。ユニークな発想で話題を呼び、さまざまな広告賞を受賞しました。さらに、佐賀県出身の漫画家・原泰久(はら・やすひさ)さんの『キングダム』連載20周年とコラボレーションした「キングダム×(駆ける)佐賀県」では、SNSを中心に反響を呼び、佐賀を訪れるきっかけを生み出しています。

本セミナーでは、2つの大型コラボレーションを例に、企画の着眼点から県内を巻き込む展開、SNSで熱狂を生む仕掛けまで、その舞台裏を藤吉さんに伺います。地域資源とIPをどう掛け合わせれば、共感や熱狂を生み、実際の「人の動き」へとつなげられるのか。広報・PR・地域プロモーションに携わる方にとって、実践的なヒントが詰まったセミナーです。

【セミナー構成(60分)】

【導入】サガプライズ!とは何か?

佐賀県の情報発信プロジェクト〈サガプライズ!〉の歩みと、企業・ブランド・IPとのコラボレーションを生み出す基本的な考え方を紹介します。

【第1部】事例解説:「ゴジラ対(つい)サガ」「キングダム×(駆ける)佐賀県」

全国的な話題を生んだ2つのコラボレーションを例に、企画の着眼点、県内を巻き込む展開、SNSで熱狂を生むコミュニケーション設計をひも解きます。

【第2部】地域資源×IPで「人の動き」をつくるには

話題化や認知拡大を、誘客や周遊、地域住民のシビックプライドの醸成へどうつなげるか。IPとのコラボレーションを一過性の話題で終わらせず、地域の価値につなげるためのポイントを掘り下げます。

最後にはQ&Aの時間もございます。

【こんな方におすすめ】

  • 自治体や地域の広報・PR、観光プロモーションに携わっている方
  • 地域の魅力発信や関係人口創出に取り組んでいる方
  • アニメ・映画などのコンテンツIPを活用した地域活性化に関心のある方
  • SNSで話題化し、実際の誘客に繋がる企画の作り方を学びたい方
  • 〈サガプライズ!〉のユニークな発想と実行力の裏側を知りたい方

【開催詳細】

  • 開催日時:2026年9月18日(金)15:00〜16:00
  • 開催方法:Zoomウェビナーでのオンライン配信(お申し込み後にURLを送付)
  • 参加料:無料
  • 申し込み期限:2026年9月17日(木)18:00まで

登壇者プロフィール

藤吉洋輔(佐賀県広報広聴課 サガプライズ!プロジェクトリーダー)

佐賀県出身。出版社勤務を経て、広告代理店にて自治体、金融機関、飲料メーカー、商業施設などのプロモーション業務に従事。2021年に佐賀県庁へ入庁し、映画・ドラマ・テレビ番組の誘致を担当。2024年より情報発信プロジェクト〈サガプライズ!〉を担当している。

杉江宣洋(コロカル編集長)


マガジンハウス入社後、『anan』『BRUTUS』などの副編集長を経て、2022年『Hanako』編集長就任。2025年より現職。

【注意事項】

本イベントはオンライン開催です。音声や映像の乱れが生じる場合があります。安定した通信環境でご視聴ください。録画・録音・再配信はご遠慮ください。

当日は藤吉さんへ直接質問できるQ&Aの時間もご用意していますので、ぜひリアルタイムでのご参加をおすすめします。ご都合がつかない場合に備え、後日見逃し配信もご案内予定です。まずはお気軽にお申し込みください。

サイクリングで能登ガイド。里山に魅せられた環境コンサルの移住物語

思い描いた自給自足が、能登にあった

大阪府出身で大学院で環境学を修めた小山さんは、仕事で東京や小笠原に住み、生態学や環境学のスペシャリストとして働いた。自然と人の距離が近く、自給自足に近い暮らしを営みたいと移住を模索していた時に出会ったのが、能登島だ。

「たまたま能登島で開催されていた『うれし!たのし!島流し!』という能登島の暮らしを体験するツアーの存在を知り、家族で参加しました。主催者の人と仲良くなったり、島の美しい景色やおいしいご飯にすっかり魅了されてしまいました」

それまで雪深い地域で暮らしたことがなかった小山さんは、冬の能登を再訪してから移住を決断。しかし、具体的な仕事については考えていなかったのだそう。

「僕の場合は、とにかく移住することを一番に考えていたんです。仕事はどうにでもなるんじゃないかと思っていました」

自然豊かな里山里海の能登を選んだのは、専門である環境に関する仕事を念頭に置いていたのだろうか?

「それも全く。むしろ全然違う仕事でいいと思っていました。小笠原に住んでいた時に、ある程度仕事に達成感もあったので。それより、自給自足的な暮らしに興味がありました。能登では、日々の食卓に並ぶものの多くが、この地域で採れたもの。魚や野菜をもらったりすることも多く、思い描いた暮らしを実現しています」

地域おこし協力隊から事業へ。能登島サイクリングツアーが生まれるまで

仕事は後から、と考えた小山さん。最初は、能登島の地域おこし協力隊で観光にまつわる仕事を始め、3年間の任期中に自分の事業を確立することを目指した。

「自分が移住するきっかけになった島流しツアーの運営に回ったり、能登の日本酒をプロデュースしたり。そして能登島の景色がすごくおすすめなのでそれを体験できるものはないかと考えて、島を巡るサイクリングツアーを企画しました。海外の方にすごく楽しんでいただき、事業化につながりました。世界中からお客さんが参加してくれたのですが、特にフランスの方が多かったんです」

能登DMC合同会社マネージャーの小山基さん・五十嵐一晴氏撮影

石川県はフランスとの観光交流が盛んで、現地に石川県の広報担当者が常駐していることから、フランスの旅行代理店とのつながりが生まれた。

「『生態学者が案内するサイクリングツアー』としてパンフレットに掲載されて、参加者も順調に増えていきました。ちょっと大げさなんですけど(笑)」

コロナ禍にインバウンド客が減ったが、仲間と会社を作り外国人客を受け入れる体制を整えた。コロナ禍が落ち着くと客足も徐々に回復していったという。しかしそこで、能登半島地震が起きた。

地震を経てもなお心が動かされる、美しい里山の景色

「地震後にショックを受けたことは、移住のきっかけにもなった里山の風景が変わってしまったこと。山や田んぼの緑に、海と空の青、そして連なった黒瓦のコントラストが本当に美しいと思っていたんです。けれど、黒瓦はその重さのために地震の時に家をつぶしてしまったこともあり、新しく建てられる家には用いられないケースが多いんです。

田んぼがひび割れてしまって水を張れなくなったり、畑も荒地になり、農業を再開する人も少なかったり。美しい景色を見てもらいたくてツアーを組んでいたので、その魅力も伝えづらくなってしまった部分もあります」

それでもなお、能登の自然に魅了されていると小山さん。

「毎朝ランニングをしているのですが、湖のように平らで鏡のような海の向こうに朝日がふわっと昇ってきます。周りを真っ赤に染める朝焼けの美しさは、移住してからずっと変わることがありません」

能登の風景

これからの展望についても聞いた。

「能登は食の自給率がとても高いのですが、仕事と娯楽の自給率は低いと感じています。観光業による事業拡大はもちろんなのですが、地元の大人が遊べる空間やイベントも増やしたい。

これまでもDJイベントを主催したり、『だらぼち音楽祭』を共同代表の一人として立ち上げたり、トレイルランをしてきたので、遊び場の充実にも貢献したいですね。あたたかい人、おいしいご飯、里山里海といった能登の魅力に、さらにカルチャーが加わったら、能登はもっと面白くなっていくと思います」

能登DMC合同会社マネージャーの小山基さん・五十嵐一晴氏撮影

Profile

小山基

こやま・はじめ/大阪府出身。能登DMC合同会社CMO。2015年に移住。能登島サイクリングツアーをはじめ、能登半島の魅力を伝える観光プランを企画運営するほか、震災を経て里海保全の取り組みも行う。

【視聴無料】地域資源を事業に変える。アミューズ「豊島プロジェクト」のつくり方

地域の暮らしや文化に根ざした新しい学びの場「コロカルアカデミー」。主催は日本各地のローカルの魅力を発信し続けるWebマガジン〈コロカル〉です。

今回のテーマは、「エンタメ企業が仕掛ける地域の再生」。ゲストに、総合エンターテインメント企業である〈株式会社アミューズ〉の瀬戸内プロジェクト部長・佐藤大地(さとう・だいち)氏をお迎えします。

瀬戸内海に浮かぶ「アートの島」として知られる香川県・豊島(てしま)。豊かな自然と地下水に恵まれる一方で、かつては産業廃棄物の不法投棄という深刻な問題を抱え、環境再生への長い道のりを歩んできた歴史があります。そんな豊島に、アミューズは2019年に社員・アーティストの研修所を設立。そこから、農業や食、宿泊施設などを通じて島の日常の豊かさを発信する「豊島プロジェクト」へと発展してきました。

本セミナーでは、行政から民間へと立場を変え、自らも豊島に移り住んでプロジェクトを牽引する佐藤さんに、エンタメ企業ならではの視点で地域資源をどう活かし、コミュニティとともに事業を育てているのか、その実践のプロセスをひもときます。

瀬戸内プロジェクト

【セミナー構成(60分)】

【導入】アミューズとはどういう会社か。エンタメ企業が地域に根ざす理由
総合エンターテインメント企業であるアミューズの現在地。
なぜ豊島で農業や宿泊施設といった事業を展開しているのか。同社が掲げる世界と地域をつなぐ「カルチャーツーリズム」のビジョンと、豊島という場所が持つ独自の価値についてお話しいただきます。

【第1部】行政から民間へ、豊島に移り住んだ理由
長年、宇都宮市役所で地域活性化プロジェクトを担当してきた佐藤さんが、なぜアミューズに転職し、豊島へ移住することになったのか。行政と民間、それぞれの視点を持つ佐藤さんだからこそ見えてきた、地域との関わり方やプロジェクト推進のスタンスに迫ります。

【第2部】豊島プロジェクトの実践。ファーム・ビール・ホテル
島の素材が主役のファクトリー〈Teshima Factory〉や、暮らすように泊まるホテル〈ホテル聚〉など、現在進行中のプロジェクトを深掘りします。廃材や海洋ごみを活かした空間づくり、自給率を高める食の提供など、島の日常に溶け込みながら新たな価値を生み出す具体的な取り組みを紹介します。

最後にはQ&Aの時間も予定しています。

【こんな方におすすめ】

・自治体の地域振興や商工観光の担当者
・地域資源を活かした新規事業や共創に関心のある方
・自治体や地域企業とのプロジェクトに携わる方
・エンターテインメントやカルチャーを通じた場づくりに興味のある方
・地域で自走する事業のつくり方を学びたい方

【開催詳細】

開催日時:2026年8月19日(水)15:00〜16:00
開催方法:Zoomウェビナーにて配信(お申し込み後にURLを送付)
参加費:無料
申し込み期限:2026年8月18日(火)18:00
※申し込みは終了いたしました。

【登壇者プロフィール】

株式会社アミューズ 瀬戸内プロジェクト部長
佐藤 大地(さとう・だいち)

2004年宇都宮大学卒業(自閉症の研究等)。同年宇都宮市役所入庁。主税課に配属後、宇都宮駅前の開発や産業政策などの部署を経験。大谷振興室にて地域の活性化に向けたプロジェクトを10年強担当。2022年アミューズ入社。現在、瀬戸内プロジェクト部長として豊島での事業を牽引する。

コロカル編集長
杉江 宣洋(すぎえ・のぶひろ)

杉江編集長

マガジンハウス入社後、『anan』『BRUTUS』などの副編集長を経て、2022年『Hanako』編集長就任。2025年より現職。

【これまでのコロカルアカデミー参加者の声】

「地域をしっかり調べて、時間をかけて考えることが独自性と持続性につながる、という言葉が刺さりました。自分の活動や仕事にも活かせる学びでした」(建築・設計・塗装業)

「地域や場所の価値を活かしていく視点を実感しました。それぞれの立場で、価値を高めたり姿勢を示したりできるのだと気づきました」(公的機関)

「テーマを自分の状況に置き換えて考えることで、今の問題解決につながるアイデアをたくさんもらえました」(小売業)

【注意事項】

本イベントはオンライン開催です。音声や映像の乱れが生じる場合があります。安定した通信環境でご視聴ください。録画・録音・再配信はご遠慮ください。
当日は佐藤さんへ直接質問できるQ&Aの時間もご用意していますので、ぜひリアルタイムでのご参加をおすすめします。やむを得ずご都合がつかない場合に備え、後日見逃し配信もご案内予定です。まずはお気軽にお申し込みください。

【無料アーカイブ視聴あり】建物を「開く」ことで地域はどう変わる?建築史家・倉方俊輔に学ぶ、建築ツーリズム入門

倉方さんは、日本最大級の建築イベント「東京建築祭」の実行委員長をはじめ、「イケフェス大阪」「京都モダン建築祭」の実行委員としても活動。講座では、建築史という分野の面白さから、建築を「開く」ことで生まれる価値、「建築ツーリズム」と地方創生の関係まで、幅広くお話しいただきました。

本講座で語られたこと

・建築史家という仕事と、建築の面白さ
・建築を開くことで生まれる価値
・「建築ツーリズム」と地方創生

見逃した方、もう一度じっくり学びたい方のために、アーカイブ動画を公開しています。

建築史家・倉方俊輔氏の著書リスト

なぜ「建築を開く」と、まちが動き出すのか

講座の中盤、倉方さんが語ったのは「建築を開くこと」の重要性です。

海外では「オープンハウス」とも呼ばれるこの取り組みは、普段は入れない建物を一般公開するもの。日本でも広がりを見せており、倉方さんも数多く携わっています。

建物は外から眺めることはできても、中に入る機会は必ずしも多くありません。だからこそ年に数日でも建物を開くことで、人との対話や評価が生まれ、所有者・地域住民・来訪者をつなぐ場になります。

また倉方さんは、真のブランディングにおいて建築は重要な役割を担うと語ります。大学や企業は、建築という「場所」を開くことで、その理念や価値を体験として伝えることができます。さらに、無料で建物を公開するという姿勢そのものが、所有する企業や団体へのポジティブな印象にもつながります。

もちろん、関係者以外に建物を開放することにはリスクもあります。それでも、開くことで確実に人とのつながりや新たな価値が生まれるのだと語られました。

本講座ではこのほかにも、建築史という分野から見えてくる魅力や、倉方さんの著書、建築ツーリズムと地方創生の関係、最新刊『建築を旅する』についても詳しく紹介しています。

京都モダン建築祭について話す

参加者の声

「建築というものが施主をはじめとして一部の専門家や施工者だけのものではなく、みんなのものになりつつある時代の変化の真っただ中というように感じました。そのうえで建築士がどういった役割が求められるか、何ができるかを考えていきたいです」(建築設計・40代)

「建築史家が歴史的な建築物のみを対象とするのではなく、現代の建築にも密接に関わっていることは驚きでした」(学生・20代)

「地域を語る上で歴史は重要だと思っていましたが、建物の歴史という視点に思い至っていなかったことが、今回のお話で払拭されました」(一般企業・50代)

担当編集のひとこと

建築の仕事というと設計や施工を思い浮かべがちですが、建築を文化として捉え、その歴史や背景をひもとく「建築史」という営み自体がとても新鮮で興味深く感じられました。

また、倉方さんの建築への深い愛情が随所に感じられる、建築の魅力が詰まった講座でもありました。

建築や建築史に興味がある方はもちろん、地方創生のヒントを探している方にもおすすめの講座です。

登壇者プロフィール

倉方 俊輔
くらかた・しゅんすけ/1971年東京都生まれ。建築史家/大阪公立大学教授。日本近現代の建築史の研究と並行して、日本最大級の建築イベント「東京建築祭」の実行委員長、「イケフェス大阪」「京都モダン建築祭」「北九州建築祭」の実行委員を務めるなど、建築の価値を社会に広く伝える活動を行う。著書に『建築を旅する』『悪のル・コルビュジエ』『建築を楽しむ教科書』ほか多数。受賞歴にグッドデザイン賞グッドデザイン・ベスト100、日本建築学会賞(業績)などがある。

杉江 宣洋
すぎえ・のぶひろ/コロカル編集長。マガジンハウス入社後、『anan』『BRUTUS』などの副編集長を経て、2022年『Hanako』編集長就任。2025年より現職。

忘れるために、撮る。石川県珠洲市を記録し続ける〈スズレコードセンター〉

映像制作者が珠洲へやってきた理由

西海一紗さんが珠洲へやってきたきっかけは、2023年に開催された奥能登国際芸術祭に関わるためだった。当時東京の映像制作会社でCM制作などを行なっていたが、どこか違う土地で暮らしてみたいという思いが募っていた頃、たまたま芸術祭のスタッフ募集を見つけたことから応募。具体的にリサーチを進めると、それまでの人生で見たことのない景色や空気感が広がり、開拓しごたえがありそうだと珠洲に興味を持ったそう。

「初めて珠洲に来たのは、芸術祭スタッフ採用面接の時。それまで一度も来たことがなかったのですが、車でちょうど橋に差し掛かった時、黒瓦の屋根と青い海が広がっている風景に感動して、ここに住みたいとごくごく自然に思いました」

珠洲の第一印象をそう振り返った西海さん。面接も上手くいき、住むところもトントン拍子に決まった。

スズレコードセンターでプロジェクトリーダーを務める西海一紗さん

「私としては、移住というより引っ越しちゃおうという感じ。すごく軽い気持ちでやってきました。芸術祭スタッフの仕事は、作品の管理やメンテナンスをはじめ、地域とアーティストを繋いだり進行管理などをしていました。東京の制作会社ではプロダクションマネージャー部に在籍していたので、それの芸術祭版という感じで前職の経験も活かせました」

怒涛の準備におわれた芸術祭、その後はこの地での暮らしにどのようなプランを描いていたのだろうか。

「芸術祭が終わったら、まずは自分が撮りたいものを撮ろうと考えていました。それとゲストハウスも面白いと思ったり、いろんな可能性を考えてましたね。ようやく芸術祭の後片付けが終わったところでお正月を迎えて、今年は自分のやってみたいことをしようと考えていた矢先に地震が起きました」

離れるつもりだった。でも珠洲で記録係に

「地震後10日間は珠洲にいたんですが、その後は一時実家のある北海道に避難していました。その時にテレビで能登の映像が流れて、何もかもが壊れている状況にあらためて驚かされました。私が好きだった風景も、撮りたいと思った光景もなくなっていて、もう戻れないと思ったんです。

でも、片付けのために戻ったら、珠洲も春を迎えてものすごく花が咲いてたんです。こんなに地震でグチャグチャになってるのに、花は咲くんだって。桜もあるし、道端にもたくさん咲いてて。すごく前向きな空気が流れていることを感じました。

海も変わらずすごく綺麗で。最初は片付けが終わったら帰ろうと思っていたけど、もうちょっといたいなって。でもその後豪雨がやってきて、もうダメかもとかなり落ち込んだのですが、芸術祭の後に立ち上がったプロジェクトもあったり、片付けたりしているうちに、2024年が過ぎていきました」

スズレコードセンターでプロジェクトリーダーを務める西海一紗さんが撮影した写真
スズレコードセンターで開催されたレコードフェアのポスター
震災後も、あの頃と変わらず麦わら帽子で自転車を漕ぐおじいちゃんがいた。その姿に、西海さんは勇気づけられた。

珠洲にとどまった西海さんは、芸術祭の流れで奥能登珠洲ヤッサープロジェクトに携わる。これはスズレコードセンター立ち上げのきっかけに。

「芸術祭の時に、私が担当していた仕事の一つに記録係があり、作品の制作過程などを撮影してインスタにアップしたり、発信担当でもあったんです。ヤッサープロジェクトでも発信を続けていきたいから、珠洲の記録係として動いてほしいと打診されました。すごいスピードで風景とか人の気持ちも変化して行っていたので、これは記録しなきゃと個人的にも思っていたので、参加することに。様々な個人の視点で記録活動を試みるスズレコードセンターがスタートしました」

道の駅のそば、フラットな記録の場所「スズレコ」

スズレコードセンターは、車通りの多い道沿いに拠点を構えた。当初はもう少し奥まった旧図書館が候補地だったが、西海さんたっての希望で、珠洲の中でも賑わう〈道の駅すずなり〉へ向かう途中に位置する現在の場所に決まったそう。

「交通の便が良くて人目に触れる場所を意識しました。私も移住者だからわかるのですが、最初に入っていく時に近寄り難いコミュニティになってしまっていたら、スズレコードセンターの役目は果たせないと思ったんです。できるだけフラットで開けている場所がいいと思っていました。

県外から来る方にもわかりやすいし、地域の人も散歩の途中に立ち寄ってくれます。家から古い写真が出てきたけれどどうしたらいいかとか、昔の写真が見たいとか、いつも生えないところから菜の花が出て咲いてるから写真を撮りにきてほしいとか、写真や記録に関係することならば、地震のことだけではなく、どんなことも受けて入れています」

スズレコードセンターの外観
スズレコードセンターの内観
スズレコードセンターの内観

西海さんが奥能登国際芸術祭の運営に注力していた頃、終わったら好きなものを撮ろうと考えていたはず。スズレコードセンターで記録係としての活動は、当初思い描いたものと少し異なるのではないだろうか。

「そうですね、地震があって豪雨があって、私も心が折れそうになって。だからスズレコードセンターが立ち上がり、私が撮りたいものを撮り終えたら、珠洲を離れようと思っていました。それが、実際に始めてみると、自分もまだここに居たいなと思った。それは、スズレコの活動が面白くなってきちゃったことと、関わっていく中で生まれた関係性があって、仲間が増えていってると感じたからだと思います。

活動が始まった時は、一人で記録を任されているようでひとりぼっちだと思ったし「これだけが珠洲じゃないんだけどな」という罪悪感をずっと抱えていたんです。ですが、レコードフェアという12組それぞれが自分の周りの能登を記録した展示を開催したら、皆それぞれの視点で撮っていて、個人の視点が集まることで幅ができたり、町の記憶が生まれていくんだなと実感して。私は私に見えてるものを撮り続けて行けばいいんだと自信が芽生えてきました。その気持ちの変化が大きかったと思います。徐々に珠洲の町への愛着が復活して、もう少しここでの景色を見続けたいと思うようになったんです」

カメラが心のキャパシティを空ける

現在、西海さんは四季に沿って自主映画の撮影を続けている。地震や豪雨など大きな災害による町の変化の中で暮らし、西海さんが珠洲を見つめる視点とはどのようなものなのだろうか。

「記録係として色々な風景を撮っているときは、忘れたくなくてシャッターを切っていました。でもだんだんと、忘れないときついと思うようにもなっていました。転機になったのは、地震後に半年ほど暮らした友人の家を出る時。すごく好きな家だったんです。そこを出なくてはいけない時に、部屋や床を撮影しまくったんです。そうしたら、いつか思い出したい時にはこれを見ればいいし、こんなに撮ったからもう忘れちゃおうって思えたんです。撮影が自分の心のキャパシティを空けていく行為だと実感しました。」

その気づきが、今制作中の映像につながっている。珠洲の四季を追いかけたドキュメンタリー的なフィクション。珠洲でたまたま出会った俳優の齋藤紫乃さんに協力してもらい、彼女が珠洲で暮らしているという設定で撮影している。

「私が暮らしていた場所や関わっているコミュニティ、よく立ち寄るお店に実際に紫乃さんに入って生活してもらい、セルフドキュメンタリーではなくて、分身というか自分とも関わっている紫乃さんを撮影するというレイヤーを加え、フィクションでありドキュメンタリー要素もある作品になりました。

完全なドキュメンタリーで撮ってしまうと、”被災地の珠洲”が前面に出て、私が見ている珠洲とは少しズレがある。もっと日常的で地震の前から続いている暮らしの風景がここにはあって、それを見せるためにはフィクションの要素を入れる方が表現できると考えました。四季を全て撮り終えて1本にまとめ劇場公開したいと思っています」

スズレコードセンターでプロジェクトリーダーを務める西海一紗さんの自主制作映画のワンシーン

スズレコードセンターとして記録すること、そして西海さんの視点で珠洲を見つめた作品を完成させることと並行し、次の奥能登国際芸術祭の準備もスタートするのだろうか。

「まだ開催時期が決定しているわけではないのですが、これまで3年おきだったので数年内に開催されるだろうと思っています。2026年に入ってから、芸術祭の仕事をしたいと移住してきた方がいますし、スズレコに来た方が珠洲に住んでみたいということもあります。いろんな珠洲を知ってもらいたいし、新しく来てくれた方々と一緒に、時にはフォローして、次の芸術祭までバトンを渡せたらいいなと思っています」

スズレコードセンターでプロジェクトリーダーを務める西海一紗さん

Information

スズレコードセンターの外観
スズレコードセンター

珠洲や奥能登のこれからを考えレコード(記録)していく機関。町の写真や映像を資料をデジタルデータで保管し、珠洲の現在も撮影していく参加型アーカイブプロジェクト。
住所:石川県珠洲市飯田町11-79-1|地図
営:11:00~18:00
休:火・水
HP:https://okunoto-archive.jp/

Profile

スズレコードセンターでプロジェクトリーダーを務める西海一紗さん
西海 一紗

さいかい・かずさ/北海道出身。2022年に珠洲市に移住し、奥能登国際芸術祭の運営に関わる。現在は、スズレコードセンターでプロジェクトリーダーを担当するほか、能登の風景をおさめる自主映画の制作を続けている。

【無料アーカイブ視聴あり】企業と地域はどう共創できるのか。〈ゴールドウイン〉の「Play Earth Park」構想から考える

コロカルアカデミーは、コロカル編集部が主催するウェビナーシリーズ。地域づくりやブランディング、観光、ものづくりなどをテーマに、各地で活躍する実践者をゲストに迎え、現場の知見や取り組みを学ぶ場として開催しています。

第13回は、「企業と地域の共創による、未来の場づくり」をテーマに開催。ゲストに株式会社PLAY EARTH PARK 事業本部長 兼 管理部部長の斎藤洋史氏をお迎えし、〈ゴールドウイン〉が創業の地・富山県南砺市で進める次世代型ネイチャーパーク「Play Earth Park Naturing Forest」プロジェクトについて伺いました。

〈ゴールドウイン〉といえば、「THE NORTH FACE」や「HELLY HANSEN」などのブランドで知られるスポーツアパレルメーカー。その同社が、なぜ創業の地で“公園”づくりに挑むのか。講座では、プロジェクト発足の背景から2050年を見据えた企業ビジョン、自治体や地域住民との共創の実践まで、たっぷりとお話しいただきました。

本講座で語られたこと
・なぜゴールドウインが公園をつくるのか
・2050年を見据えた企業ビジョン
・自治体・地域住民との共創の実態

見逃した方、もう一度じっくり学びたい方のために、アーカイブ動画を公開しています。

講座で語られた、地域共創の4つの視点

ゴールドウイン

斎藤さんが講座を通じて繰り返し語ったのは、「地域共創を持続可能な事業として成立させること」の重要性でした。

〈ゴールドウイン〉が南砺市で進める「Play Earth Park Naturing Forest」は、単なる社会貢献活動ではなく、10年、30年先を見据えた事業として取り組まれています。その根幹を支えるのが地域連携です。地域産材の活用や文化の継承・再編集、教育や環境への貢献など、多様な取り組みを地域や行政とともに進めることで、プロジェクトは前進しているといいます。

また、共創において重要なのは、自治体・企業・地域住民がそれぞれの立場で価値を生み出しながら対等に関わること。対話を重ね、同じ未来を目指すプロセスそのものが原動力になっていると語りました。

さらに斎藤さんは、「このプロジェクトの本当の成功は50年後にわかる」と話します。森が育ち、子どもたちが原体験を糧に新たな挑戦を始める——。そんな循環が生まれたとき、この場所は完成するのではなく、訪れた人々とともに育ち続ける存在になるのだと語りました。

本講座では、ここで紹介した内容に加え、プロジェクト立ち上げの背景や自治体との共創プロセス、参加者から寄せられた質問への回答なども詳しくお話しいただいています。

コロカルアカデミーゴールドウィン


時間内に答えきれなかった質問への追加回答

当日は多くの質問が寄せられました。講座後、参加者から特に関心の高かった質問について追加でご回答いただきました。その一部をご紹介します。

Q. この事業で提供する体験の核にしたいものは何ですか?

斎藤氏は、「原体験をデザインすること」だと回答。衣・食・住・遊び・学び・美といった暮らしをかたちづくる体験を通じて、自然とのつながりを感じてもらうことを目指しているといいます。訪れた人の日常に、小さな変化をもたらす場所でありたいと語りました。

Q. 食育や地域と食の関係はどのように考えていますか?

地域食材を活かした料理の提供に加え、事業地内にはファームエリアも整備予定。田植えや作物の栽培などを通じて、「食の大切さや地域とのつながり」を体感できる場づくりを構想しているそうです。

Q. 地域とグローバルのプレイヤーを掛け合わせるとは?

2024年に開催した「Nanto Naturing Days」では、地域に伝わる巨大紙風船の文化と海外クリエイターを掛け合わせた事例を紹介。地域文化に新たな視点を加えることで、地元の人にとっても魅力を再発見する機会になったといいます。

参加者の声

「行政との連携の進め方が参考になった。自治体側でも推進室を立ち上げている点が印象的だった」
「専門家任せにせず、自ら学びながら実践している姿勢に学びがあった」
「地域文化への深い理解と、地域を愛する覚悟が伝わってきた」

担当編集のひとこと

地域共創は、想いだけでは続きません。今回の講座で印象的だったのは、〈ゴールドウイン〉が地域との共創を“事業”として捉え、長期的な視点で取り組んでいることでした。

地域や自治体との協働、新規プロジェクトの立ち上げ、組織を越えた合意形成に関心のある方にとって、多くのヒントが詰まった内容です。

登壇者プロフィール

斎藤 洋史(さいとう ひろし)
株式会社PLAY EARTH PARK 事業本部長 兼 管理部部長
2006年ゴールドウイン入社。財務領域で基盤を築いた後、スイムウエアブランド「Speedo」にてブランド再構築を推進。2022年よりPLAY EARTH PARK事業に参画。地域・自治体との連携交渉を主導し、建築計画や多様なステークホルダーとの合意形成を横断的に統括。

杉江 宣洋
コロカル編集長。マガジンハウス入社後、『anan』『BRUTUS』などの副編集長を経て、2022年『Hanako』編集長就任。2025年より現職。

【視聴無料】地域に入り、事業をつくる。〈Dooox〉の実践から学ぶ地域活性化事業

地域の暮らしや文化に根ざした新しい学びの場「コロカルアカデミー」は、今回で第15回を迎えます。主催は日本各地のローカルの魅力を発信し続けるWebマガジン〈コロカル〉です。

「地域に入り、事業をつくる」とは、どういうことなのか。今回は、「とにかく行動しないとわからない」を信条に、地域に“素手”で入り込み、地元の人を主役にした事業創出を伴走支援する〈Dooox〉代表・久保寺亮介氏をゲストにお迎えします。

人口減少、空き家問題、地域資源の活用不足など、地域にはさまざまな課題が存在します。しかし〈Dooox〉は、それらを単なる課題として捉えるのではなく、地域の人たちとともに意思決定を重ね、事業として自走する形へと育ててきました。

本セミナーでは、奈良県田原本町でのマンゴー栽培プロジェクトなどを事例に、地域課題を「事業」に変えるための実践のプロセスをひもときます。

【セミナー構成(60分)】

【導入】〈Dooox〉の歩みとスタンス(10分) 

「とにかく行動しないとわからない」を信条に、地域に“素手”で入り込み、地元の人を主役にした事業づくりをしてきた〈Dooox〉。地域に深く入り込む理由や、伴走者としてどのように関係性を築いていくのか、そのスタンスについてお話しいただきます。

【第1部】小さく実践しながら育てる、自走モデルのつくり方(20分) 

奈良県田原本町でのマンゴー栽培プロジェクトを中心に、地元の人々とともに、どのように事業を形にしていったのかを深掘りします。官民連携や法人設立に至るまでの意思決定や調整のプロセスなど、実践のリアルにも迫ります。

【第2部】対談:地域課題を「事業」に変える方法(15分) 

地域における「発信力不足」をどう補い、事業へつなげていくのか。東京から日本各地の魅力や可能性を発信してきた〈コロカル〉の編集長・杉江の視点と、地域に深く入り込み、実行力をもって共創を形にしてきた〈Dooox〉の実践知を掛け合わせながら、地域発の取り組みを“続いていく事業”へ育てる方法を探ります。最後にはQ&Aの時間も予定しています。

【こんな方におすすめ】

・自治体の地域振興や商工観光の担当者
・地域資源を活かした新規事業や共創に関心のある方
・自治体や地域企業とのプロジェクトに携わる方
・“発信”だけでなく、地域に入り込んだ実践に興味のある方
・地域で自走する事業のつくり方を学びたい方

【開催詳細】

開催日時:2026年7月17日(金)15:00〜16:00
開催方法:Zoomウェビナーにて配信(お申し込み後にURLを送付)
参加費:無料
申し込み期限:2026年7月16日(木)18:00まで

【登壇者プロフィール】

〈Dooox〉代表取締役 久保寺 亮介(くぼでら・りょうすけ)

岐阜県出身。東京大学工学部卒業。大学時代は運動会ラグビー部に所属し、社会基盤学科にて景観を研究。卒業後、株式会社電通に入社し、セールスプロモーション施策の企画・運営に携わる。その後、外資系生命保険会社にて事業承継を中心としたオーナー経営者向けの業務に従事し、新人として史上最高業績を記録。多くの経営者と関わるなかで、中堅・中小企業にこそ「緊急ではないけれど重要なこと」を受け止め、伴走支援する役割が必要だと感じ、2021年に〈Dooox〉を設立。現在、社外社長室サービス「特命社長室®」や地域活性化事業「街盛PJ」を軸に、世界中に「Do」をする人を増やすべく事業を展開中。熊本市スタートアップメンター、IU大学客員教授、静岡県小山町行政アドバイザー、静岡県南伊豆町政策アドバイザーも務める。 公式サイト:https://dooox.co.jp/

コロカル編集長 杉江 宣洋(すぎえ・のぶひろ)

マガジンハウス入社後、『anan』『BRUTUS』などの副編集長を経て、2022年『Hanako』編集長就任。2025年より現職。

【前回参加者の声】

「無料とは思えないほど内容が濃く、とても有意義なウェビナーでした。また同様のウェビナーがあれば、ぜひ受講したいです」(デザイン・宿泊業)

「ブランディングとは伝えるべき情報を整理して正しく伝えること。今の自分にできることを照らし合わせて活かそうと思いました」(自営業)

「テーマを別のものに置き換えて、今の自分の問題解決の糸口になるアイデアをたくさんもらえました」(小売業)

【注意事項】

本イベントはオンライン開催です。音声や映像の乱れが生じる場合があります。安定した通信環境でご視聴ください。録画・録音・再配信はご遠慮ください。お申し込みいただいた方には、後日見逃し配信のご案内をお送りします。当日ご参加が難しい場合も、ぜひお気軽にお申し込みください。

温泉地・別府に眠る空き家を、“暮らす宿”へ再生。中長期滞在プロジェクト〈TOJIHAUS〉

温泉と仕事、暮らしが自然につながる滞在

大分県別府市で、空き家を活用した中長期滞在拠点〈TOJIHAUS PROJECT〉が始動した。手がけるのは、全国各地で空き家再生や宿泊事業を展開する株式会社エンジョイワークス。別府市内に点在する空き家をリノベーションし、複数泊を想定した“暮らすように滞在する宿”として再生していく。

日本有数の温泉地として知られる別府市。一方で、市内には1万2000戸を超える空き家が存在し、空き家率は全国平均を上回る約18%にのぼるという(2018年:住宅土地統計調査)。今回のプロジェクトでは、そうした空き家を面的に活用しながら、温泉とともにある日常を体験できる新たな滞在の形を提案する。

〈TOJIHAUS〉の特徴は、単なる宿泊施設ではなく、“暮らしの延長”として滞在できる点にある。対象となる物件は、温泉を引き込んだ住宅、あるいは徒歩圏に共同浴場や温泉施設がある場所を選定。朝に湯へ浸かり、仕事をし、街へ出て、また温泉へ向かう。そんな別府らしい生活リズムを滞在の中に組み込んでいる。

空間設計では、既存建築の素材感を活かしながら、ワークスペースや生活機能を整備。仕事と暮らしをシームレスにつなぐ、“ちょうどいい滞在空間”を目指している。

今後は、地域住民や滞在者が交わる交流拠点「センターハウス(仮)」の整備も予定。別府市が掲げる「新湯治・ウェルネス」の考え方とも連携しながら、空き家活用にとどまらない、新しい滞在文化の創出を目指している。

Information

TOJIHAUS PROJECT

住所:大分県別府市|地図
HP:https://tojihaus.jp/
Instagram:@tojihaus_official

【無料オンラインセミナー】中川政七商店と読み解く、産地発ビジネスの“売れ続ける仕組み”とは?

「日本の工芸を元気にする!」をビジョンに掲げ、300年の歴史を持ちながら常に革新を続ける〈中川政七商店〉。同社が主催する「地産地匠アワード」でグランプリを受賞したデザイナー・菅野大門さんをゲストに迎えた「コロカルアカデミーVol.12」が、4月7日に開催されました。

今回は初の「90分拡大版」。単なる成功事例の紹介にとどまらず、ビジネスとして「売れ続ける仕組み」をどう実装するのか、その核心に迫る熱いトークが展開されました。

見逃した方、もう一度じっくり学びたい方のために、アーカイブ動画を配信中です!

中川政七商店が実践する「ブランド戦略」の核心

中川政七商店のオンラインセミナーの様子

第1部では、〈中川政七商店〉で地産地匠アワードを担当する野村隆文さんが登壇。同社が実践するSPA(製造小売業)事業と産地支援事業の両輪モデルについて語りました。

「自分たちの商売だけがうまくいったとしても、産地やメーカーさんが続けられなくなっていくと、自分たちの売るものがなくなる。ブランド自体も立ち行かなくなってしまいます」

野村さんは、「日本の工芸を元気にする!」というビジョンが、CSV的な目的ではなく、自社のブランドの独自性や差別化に直結していると説明。さらに、ブランドづくりは「総力戦」であると強調しました。

「ロゴを変えたりパッケージを作ったりといったことだけではなく、本当に一挙一投足で、全体が総力戦である。商品が表現していることと接客で言ってることが乖離してしまわないように、できるだけ整合性と一貫性が取れるように考えています」

工場から実況中継!「大門箸」誕生の裏側

第2部では、「地産地匠アワード2025」グランプリ受賞デザイナーの菅野大門さんが、なんと奈良県の箸工場から実況中継で登場!

中川政七商店のオンラインセミナーの様子

菅野さんが手がけた「大門箸」は、吉野ヒノキの端材を活用し、持ちやすさと美しさを両立させた極細の箸。しかし、その開発のきっかけは、単なるデザインの追求ではありませんでした。

「来月にも倒産しかねない、瀬戸際にある地方の家族経営の工場に入りました。まずは何より利益を生み、会社を存続させなければなりません。しかし、そのためにはまず『まともに働ける環境』が必要です。そこで、トイレの改装やWi-Fiの整備、伝票のDX化といった現場の基盤づくりから手をつけました。そうした業務効率化や環境改善という一連の立て直し作業(ワークフロー)の中から、結果として生まれたプロダクトの一つが『大門箸』なのです」

さらに、パッケージデザインについても、単に「洗練されたたデザイン」を目指すのではなく、店頭での機能性を重視したと語ります。

「デザイナーがつくったシュッとしたデザインが僕はあまり好きじゃなくて。やっぱり社会や、店頭できちんと機能するもの。黙ってても売れていくものっていうのが一番理想だなって思ってデザインしました」

「売れ続ける」ではなく「売り続ける」仕組み

中川政七商店のオンラインセミナーの様子

セッションの終盤、野村さんは「売れ続ける仕組み」について、次のように語りました。

「売れ続けるというより、やっぱ『売り続ける』ことがすごい大事で。いかに健やかに長く売り続けられるように設計をするか。他方で、たくさん売れたことに対して対応できる、作る方の「持続可能性」もすごく大事です」

「ブランドの作り方」から「具体的な販路開拓の実践」まで、90分間ノンストップで語られた熱いセッション。記事では紹介しきれなかった「売り続ける仕組み」の全貌や、実際の箸工場の製造風景は、ぜひアーカイブ動画でご覧ください!

アーカイブ動画の視聴はこちらから!

参加者の声

  • 「売れ続ける」ではなく「売り続ける」という視点がとても印象的で、なるほどと感じました。また、地方においてデザイン業としてどのように立ち回るかについても、多くの学びがありました。
  • ビジョンコンセプトバリューのつながりが勉強になりました。企業の社会的意義を整理するためにビジョンは必要だが、それだけを押し出した場合、商品を購入する生活者との乖離が生まれてしまうと実感しました。商品と生活者を結びつけるためには、コンセプトそしてバリューに落とし込むことが重要だと学びました。
  • 地方で手工芸を営む会社におりますが、経営は厳しく、来年にはどうなるかわからないという状況です。地産地匠アワードのパートで、実際に現地で働くデザイナーの方のお話を伺うことができ、少し希望が持てました。

登壇者プロフィール

野村 隆文(のむら・たかふみ)さん

野村 隆文


〈中川政七商店〉社長室・コーポレートブランディング担当。1993年兵庫県生まれ、福島県在住。大学卒業後、コピーライターとして広告制作に従事。2021年より〈中川政七商店〉に所属し、MD計画や商品開発・コーポレートブランディングを担当しながら、コンサルタントとして全国のものづくり企業の経営とデザインを支援。2023年からは「地産地匠アワード」を立ち上げ、事務局として受賞者の伴走支援を行っている。

菅野 大門(かんの・だいもん)

菅野 大門

雑貨メーカー〈A4/エーヨン〉主宰。1983年福島県生まれ。農家と古物商の祖父を持ち、米作り・物作り・古物売買に親しみながら育つ。発明と実用を両立させ、これまでにない雑貨の開発・デザイン・販売、そして“売れ続ける仕組みづくり”に取り組む。主な代表作に、シヤチハタ「faces stamp」、「活字ブックマーカー」、「tumi-isi」、「大門箸」など。受賞歴にグッドデザイン賞、グッド・トイ賞などがある。

HP:https://www.designofficea4.com/

杉江 宣洋(すぎえ・のぶひろ )

杉江編集長

〈コロカル〉編集長。マガジンハウス入社後、『anan』『BRUTUS』などの副編集長を経て、2022年『Hanako』編集長就任。2025年より現職。

【視聴無料】地方の建築は、地域創生の入り口だった。建築史家・倉方俊輔に学ぶ、建物から始まるまちの再発見

地域の暮らしや文化に根ざした新しい学びの場「コロカルアカデミー」は、今回で第14回を迎えます。主催は、日本各地のローカルの魅力を発信し続けるWebマガジン「コロカル」です。

今回のテーマは「建築を開き、地域をつなぐ」。 日本最大級の建築公開イベント「東京建築祭」や「イケフェス大阪」の実行委員を務め、建築の価値を社会に広く伝える活動を行う建築史家・倉方俊輔氏をゲストにお迎えします。

地方には、時代や設計者、地域の歴史を物語る「建築」が数多く存在します。しかし、それらが単なる「古い建物」として見過ごされたり、維持管理の課題に直面したりしているケースも少なくありません。

建物の見方を変え、地域の資源としてどう活かし、未来へ受け継いでいくのか。本セミナーでは、倉方氏の最新刊『建築を旅する』の視点や、これまでの実践的な活動をもとに、普段入れない建築の扉を開くことで地域にどのような変化や人の交わりが生まれるのかを紐解きます。
※募集は終了いたしました。イベント終了後、コロカルYouTubeで1週間アーカイブ公開します。

【セミナー構成(60分 )】

【導入】建築史家という仕事と、建築の面白さ
建築史家とは何か? 建物を通して「時代・設計者・地域」のつながりを読み解く視点についてお話しいただきます。

【第1部】建築を開くことで生まれる価値
イケフェス大阪や東京建築祭の実践から。普段入れない建築を開くことで、地域にどんな変化や人の交わりが生まれるのか、具体的な事例を交えて解説します。

【第2部】「建築ツーリズム」と地方創生
最新刊『建築を旅する』を軸に。地方の名建築を観光資源や地域の誇りとしてどう活かし、未来へ受け継ぐか。コンバージョン(用途転換)やリノベーションが地域固有の歴史的文脈を自然に学ばせることに繋がる点など、地方創生へのアプローチを深掘りします。
最後にはQ&Aの時間もございます。


【こんな方におすすめ】

  • 自治体の地域振興・商工観光の担当者様
  • まちづくりや地域資源の活用に携わる方
  • 「建築ツーリズム」や歴史的建造物の保存・再生に関心のある方
  • 地域の魅力を再発見し、新たな価値を生み出したい方

【開催詳細】

  • 開催日時:2026年6月10日(水)15:00〜16:00
  • 開催方法:Zoomウェビナーでのオンライン配信(お申し込み後にURLを送付)
  • 参加料:無料
  • 申し込み期限:2026年6月9日(火)18:00まで
    ※募集は終了いたしました。イベント終了後、コロカルYouTubeで1週間アーカイブ公開します。

【登壇者プロフィール】
コロカルアカデミー倉方俊輔

建築史家/大阪公立大学教授 倉方 俊輔(くらかた・しゅんすけ )

1971年東京都生まれ。大阪公立大学教授。 日本近現代の建築史の研究と並行して、日本最大級の建築イベント「東京建築祭」の実行委員長、「イケフェス大阪」「京都モダン建築祭」の実行委員を務めるなど、建築の価値を社会に広く伝える活動を行う。著書に『建築を旅する』『悪のル・コルビュジエ』『建築を楽しむ教科書』ほか多数。受賞歴にグッドデザイン賞グッドデザイン・ベスト100、日本建築学会賞(業績)などがある。

杉江編集長
杉江 宣洋(コロカル編集長)
マガジンハウス入社後、『anan』『BRUTUS』などの副編集長を経て、2022年『Hanako』編集長就任。2025年より現職。

 

【前回参加者の声】

  • 「無料とは思えないほど内容が濃く、とても有意義なウェビナーでした。また同様のウェビナーがあれば、ぜひ受講したいです」
  • 「ブランディングとは伝えるべき情報を整理して正しく伝えること。今の自分にできることを照らし合わせて活かそうと思いました」
  • 「テーマを別のものに置き換えて、今の自分の問題解決の糸口になるアイデアをたくさんもらえました」

【注意事項】

※募集は終了いたしました。イベント終了後、コロカルYouTubeで1週間アーカイブ公開します。

 

“世界でいちばんやさしい場所”へ。大分県日出町ハーモニーランドの新リゾート構想が始動

35周年を迎えるテーマパーク、その次の未来へ

大分県日出町にある〈サンリオキャラクターパーク ハーモニーランド〉が、新たなリゾート構想を発表した。1991年の開業以来、多くの人に親しまれてきた屋外型テーマパークが、開業35周年を前に“エンタメリゾート化”へと歩みを進める。掲げるコンセプトは、「世界でいちばんやさしい場所」。大分の自然や温泉、食文化、地域のおもてなしと、サンリオならではのエンターテインメントを掛け合わせ、新しい滞在体験を目指していくという。

サンリオキャラクターパーク ハーモニーランド
右/日出町長 安部徹也氏、中/株式会社サンリオエンターテイメント 代表取締役社長 小巻亜矢氏、左 大分県知事:佐藤樹一郎氏。構想発表に合わせて、大分県庁にて立地表明式を開催した。© 2025 SANRIO CO., LTD. TOKYO, JAPAN  著作 株式会社サンリオ

今回公開された基本構想では、ハーモニーランドの高低差ある地形を活かした「天空のパーク」を初公開。空へとひらけたロケーションを活かしながら、大屋根の整備やロープウェー、電動モビリティなど、快適に過ごせる環境づくりが検討されている。さらに、新規施設や既存アトラクションのリニューアル、隣接エリアでのホテル建設構想も進行中。パークだけでなく、滞在そのものを楽しむ場所へと進化しようとしている。

“みんなとつくる”やさしい場所へ

この計画の特徴のひとつが、構想段階からファンや地域住民とともにつくり上げていく“共創型”の姿勢だ。施設や装飾、グッズ、メニュー、移動手段まで、さまざまなアイデアを広く募りながら、未来のハーモニーランドを育てていく。年齢や国籍、身体的特徴の違いにかかわらず、誰もが楽しめる場所を目指すという理念も、この計画の核にある。テーマパークの枠を超え、人と地域、旅と滞在をつなぐ新しい拠点として、そのこれからに注目したい。

Information

サンリオキャラクターパークハーモニーランド

住所:大分県速見郡日出町大字藤原5933(国道10号線沿)|地図TEL:0977-73-1111
HP:https://www.harmonyland.jp/

ユネスコ無形文化遺産登録後、初の開催へ。城下町・新潟で受け継がれる「村上大祭」とは

城下町を巡る、絢爛な屋台行事

新潟県村上市で毎年7月の2日間で行われる「村上大祭」。西奈彌羽黒(せなみはぐろ)神社の例大祭として、1633年の遷宮祭を起源に持つ歴史ある祭りだ。

神輿の巡行にあわせ、19台の屋台「おしゃぎり」と呼ばれる山車や荒馬、稚児行列が城下町を練り歩く。彫刻や漆塗りが施された屋台の中には200年以上前に制作されたものもあり、その華やかさは訪れる人々を圧倒する。

灯りに照らされる屋台。昼とは異なる表情を見せる。

この祭りを支えているのは、地域に根ざした継承の仕組みだ。各町内では本番に向けてお囃子の稽古が重ねられ、大人から子どもへと技術が受け継がれていく。子どもたちは屋台の乗り手や行列の役割を担いながら、自然と地域の一員としての意識を育んでいくことができる。また、学校教育の中でも祭りを学ぶ取り組みが行われ、体験を通して文化の担い手を育てる試みが続いている。

市街地を巡行する「おしゃぎり」。

新潟県村上市の「村上祭の屋台行事」は、ユネスコ無形文化遺産「山・鉾・屋台行事」の構成遺産の一つとして、2025年12月に登録された。「山・鉾・屋台行事」は、地域の人々が一体となって災厄除けや安寧を願う、日本各地の祭礼から成る無形文化遺産。村上市内ではほかにも、瀬波大祭や岩船大祭など個性豊かなまつり行事が受け継がれており、地域に根付いた文化の厚みを今に伝えている。なかでも、村上祭の屋台行事は、華やかな屋台の巡行とともに町全体が一体となるのが特徴。

2026年は、ユネスコ無形文化遺産登録後初の開催。その記念として例年は2日間の開催のところ、今年は7月5日(日)からの3日間にわたり実施される。例年以上のにぎわいが見込まれており、多くの来訪者で盛り上がりそうだ。

Information

村上大祭(むらかみたいさい)

開催日:毎年7月6日(宵祭)・7月7日(本祭)
住所:新潟県村上市中心部 羽黒神社周辺〜旧城下町一帯|地図HP:https://www.sake3.com

震災からの復興を見据えて。能登に新たな文化を生む音楽祭「だらぼち」が5月16日に開催

震災の先にある、新たな風景として

2026年5月16日(土)、石川県能登町で「だらぼち音楽祭」が初開催される。会場は、日本海を望むブルワリー「Heart & Beer 日本海倶楽部」。能登半島地震によって大きな被害を受けたこの地域で、復旧や支援のその先にあるこれからを見据え、新たな人の流れを生み出す試みとして企画された。

出演は THA BLUE HERB や切腹ピストルズ、タテタカコなど、能登と関わりのあるアーティストを中心に多彩な顔ぶれが揃う。さらに約400年の歴史を持つ伝統芸能である彌榮太鼓(いやさかだいこ)の演奏も予定されている。会場では音楽だけでなく、能登の発酵文化や食を楽しめる飲食エリアやマーケットも展開。土地の営みと表現が交差する場として、一日を通して体験がひらかれていく。

音楽祭のタイトルにもなっている「だらぼち」とは、能登の言葉で「要領は悪くても、真っ正直に生きようとする人」を意味する。この音楽祭は、能登で暮らす人々が主体となり、「自分たちの手で祭をつくる」という思いから立ち上がった。準備や運営も含め、地域の人々が関わりながらかたちにしていくこの場では、関わる人すべてが当事者となる。人が集まり、時間をともにすることで生まれる関係性が、能登のこれからを少しずつかたちづくっていく。

石川県能登町で開催される音楽祭「だらぼち音楽祭」 

Information

だらぼち音楽祭

日程:2026年5月16日(土)
時間:10:00〜21:00
場所:Heart & Beer 日本海倶楽部住所:石川県鳳珠郡能登町立壁92|地図
料金:5,000円/18歳以下無料
HP:https://darabochi.com/

新潟県・糸魚川市、通年人口2人の集落に泊まる。「一村貸し」という滞在をかなえる宿〈堂道〉

限界集落から生まれた、余白を活かす宿泊のかたち

新潟県糸魚川市の山間にある集落・市野々(いちのの)。かつては多くの人が暮らしていたこの地も、いまでは通年人口わずか2人となった。この地で始まったのが、集落全体を宿として捉える「一村貸し」という新しい滞在のかたちだ。築200年を超える古民家を拠点に、集落そのものに滞在するような体験ができる。

集落・市野々
通年人口2人の集落・市野々。山間に田畑が広がる風景。

風景の中にある暮らしを体感する

滞在中は、地域の案内人とともに集落を歩き、米づくりや雪仕事、味噌づくりやそば打ちなど、この土地の暮らしに触れていく。湧き水を汲み、森を歩き、田畑に広がる風景を眺めることができる。

古民家宿〈堂道〉を拠点に

滞在の拠点となるのは、築200年を超える古民家宿〈堂道〉。かつての屋号を引き継いだこの建物は、囲炉裏のある広間や土間のキッチンなど、雪深い地域の暮らしを感じさせる造りが残されている。過度に手を加えることなく、時間の蓄積をそのまま受け継いだ空間だ。

「地域風景」を未来へつなぐ

取り組みの背景にあるのは、「地域風景」を次世代へつなぐという考え方。暮らしと風景が結びついた景色には、それぞれ理由がある。例えば、道端に咲く菊の花も、田んぼの法面に巣を作るネズミを防ぐための工夫から生まれた風景。その積み重ねが集落を形づくってきた。一村貸しは、その文脈ごと滞在者に手渡す試みでもある。

集落をまるごと宿とすることで見えてくるのは、土地に根ざした時間のあり方。観光とは異なる距離感で、その場所の営みに触れる滞在がここにある。

菊の花
道端に咲く菊の花も、田んぼの法面に巣を作るネズミを防ぐための工夫から生まれた風景。

Information

宿屋〈堂道〉

住所:新潟県糸魚川市市野々792|地図HP:https://den-tou.jpInstagram:@dentou.jp

【視聴無料】〈ゴールドウイン〉が地方で「公園」づくり!? 地域と共創し、成し遂げるコツ、未来を描く創造力とは

〜富山県南砺市「Play Earth Park Naturing Forest」の事例から学ぶ、企業と地域の新しい関係〜

地域の暮らしや文化に根ざした新しい学びの場「コロカルアカデミー」は、今回で第13回を迎えます。主催は、日本各地のローカルの魅力を発信し続けるWebマガジン〈コロカル〉です。

今回のテーマは「企業と地域の共創による、未来の場づくり」。スポーツアパレルメーカーとして知られる〈ゴールドウイン〉、創業の地である富山県で進めている次世代型ネイチャーパーク「Play Earth Park Naturing Forest(プレイアースパーク ネイチャーリング フォレスト)」プロジェクトに焦点を当てます。ゲストには、株式会社PLAY EARTH PARK 事業本部長 兼 管理部部長の斎藤洋史氏をお迎えします。

<ゴールドウイン>が地方で「公園」づくり!? 地域と共創する苦労、成し遂げるコツ、未来を描く創造力とは。


約40ヘクタールという広大な土地で、多くの地権者や自治体とどのように合意形成を図り、プロジェクトを前進させてきたのか。単なる豪華な施設の紹介にとどまらず、地域と信頼関係を築いていく道のりや、自治体を巻き込むコツ、そしてゴールドウインが実践する「2050年の未来を描く創造力」の核心に迫ります。

【セミナー構成(60分)】

【第1部】プロジェクトの背景と「Play Earth Park」構想
ゴールドウインがなぜ富山県で「公園」をつくるのか。プロジェクト発足の裏側や、2050年を見据えた企業のビジョンを公開します。

【第2部】地域共創のリアルと実践
約40ヘクタールの広大な土地、多数の地権者。南砺市と連携し、どのように交渉し合意形成を図ってきたのか。地域が求めることと、企業としての洗練されたデザインやコンセプトをどう両立させているのか、実務責任者ならではのリアルなエピソードを紐解きます。

最後にはQ&Aの時間もございます。

【こんな方におすすめ】

•自治体の地域振興・まちづくり・商工観光の担当者様
•地方での新規事業やプロジェクト開発に携わる方
•企業と地域の連携、ステークホルダーとの合意形成に課題を感じている方
•「社会性とビジネス成果を両立」するアイデアを学びたい方

【開催詳細】

•開催日時: 2026年5月13日(水) 15:00〜16:00
•開催方法: Zoomウェビナーでのオンライン配信(お申し込み後にURLを送付)
•参加料: 無料
•申し込み期限: 2026年5月12日(火) 11:59まで
※申し込みは終了しました。

【登壇者プロフィール】

株式会社PLAY EARTH PARK 事業本部長 兼 管理部部長
斎藤 洋史(さいとう ひろし)

株式会社PLAY EARTH PARK 事業本部長 兼 管理部部長 斎藤 洋史

2006年ゴールドウイン入社。財務領域で基盤を築いた後、スイムウエアブランド「Speedo」にてディストリビューターとメーカー双方の視点からブランド再構築を推進。2022年よりPLAY EARTH PARK事業に参画。地域・自治体との連携交渉を主導し、建築計画や多様なステークホルダーとの合意形成を横断的に統括。プロジェクトを前進させる実務の責任者を務める。

杉江 宣洋(コロカル編集長)

杉江編集長

マガジンハウス入社後、『anan』『BRUTUS』などの副編集長を経て、2022年『Hanako』編集長就任。2025年より現職。

【前回参加者の声】

•「内容がとても面白く、あっという間の1時間でした。仕事のモチベーションも上がりました」
•「具体的な数字や、イベントの“裏側”の話が非常に参考になった」
•「ビジネスとしてどう成り立っているかが初めて理解でき、納得感がありました」

【注意事項】

•本イベントはオンライン開催です。
•音声や映像の乱れが生じる場合があります。安定した通信環境でご視聴ください。
•録画・録音・再配信はご遠慮ください。
•お申し込みいただいた方には、後日見逃し配信のご案内をお送りします。当日ご参加が難しい場合も、ぜひお気軽にお申し込みください。

※申し込みは終了しました。

【講座動画あり】計画で終わらせない地方創生。さとゆめの「実現」する力

日本のローカルの魅力を発信する〈コロカル〉のウェビナー講義シリーズ〈コロカルアカデミー〉第11回を開催しました。

ゲストには、地域創生を「理念」ではなく「事業」として成立させ続けてきた実践者、株式会社〈さとゆめ〉代表取締役CEO・嶋田俊平さんをお迎えしました。

「すべての人がふるさとに誇りを持ち、ふるさとの力になれる社会をつくる」というビジョンを単なる言葉にとどめず、計画から実装、そして継続可能な事業として地域に根付かせてきた〈さとゆめ〉。これまで手がけてきた数々のプロジェクトを手がかりに、地域創生コンサルティングの本質に迫る、濃密な時間となりました。

見逃し配信を視聴したい方はこちらからお申し込みください。

計画で終わらせない地方創生。「実現」まで伴走する、さとゆめの思想と実践|コロカルアカデミー Vol.11

嶋田俊平(しまだ・しゅんぺい)株式会社さとゆめ 代表取締役 CEO
京都大学大学院農学研究科森林科学専攻修了。環境系シンクタンク勤務を経て、2013年に株式会社さとゆめを設立。地方創生の戦略策定から商品開発、販路開拓、店舗立ち上げ、観光事業運営まで、地域に一気通貫で伴走する事業プロデュースを行う。山梨県小菅村「NIPPONIA 小菅 源流の村」、JR東日本との「沿線まるごと」事業、HISとの「Destination Create Project」など、全国各地で多数のプロジェクトを手がける。

「沿線まるごとホテル」という着想と実装

計画で終わらせない地方創生。
「実現」まで伴走する、
さとゆめの思想と実践

嶋田さんから最初に紹介されたのは、「沿線まるごとホテル」という事業です。

JR東日本と〈さとゆめ〉が共同で進めているこのプロジェクトは、鉄道沿線の複数の地域に点在する地域資源を編集し、一つの「ホテル」として見立てた世界観を構築し、新たな滞在型観光やマイクロツーリズムの創出を図る地域活性化プロジェクトです。

鉄道会社にとっては沿線の魅力を高めることで乗客を増やせる。地域にとっては新しい宿泊施設や雇用が生まれる。旅行者にとってはその地域でしかできない体験ができる、三方よしのモデルを目指しています。実際、ベンチマークとなっている山梨県小菅村で手がけた古民家ホテルの事業では、地域経済の活性化に大きな貢献をし、地域系の主要アワードでは三冠を達成するなど、大きな注目を集めています。

地域を活かす、ロジカルかつ独創的な事例に胸が躍ります。

〈さとゆめ〉が生まれた経緯

計画で終わらせない地方創生。 「実現」まで伴走する、 さとゆめの思想と実践

そんな独創的な地域事業を支え続けてきた〈さとゆめ〉の創業は、2013年のこと。「ふるさとの夢をかたちに」をミッションに掲げ、地域に徹底的に伴走するスタイルで、全国50以上の地域で、古民家ホテルや地域商社、沿線活性化など、さまざまな事業の立ち上げや運営支援を行ってきました。

伴走から生まれた事業は多岐にわたりますが、その背景にあるのは、〈さとゆめ〉が持つ事業化プロセスのフェーズ区分です。詳しくは本編に譲りますが、NPOフェーズ、コンサルフェーズ、事業フェーズに分けたマトリクスは、多くのプロジェクト立案や遂行に関わる人にとって、役に立つ視点となるでしょう。

ついに辿り着いた「さとゆめモデル」

計画で終わらせない地方創生。
「実現」まで伴走する、
さとゆめの思想と実践


地域創生事業に伴走し続けた〈さとゆめ〉が見出した、究極のモデルとも言えるのが「さとゆめモデル」です。特徴は下記の4つ。

1つ目は、調査・計画から事業の立ち上げ、運営までを一気通貫で伴走すること。
2つ目は、計画・人材・資金をトータルでコーディネートすること。
3つ目は、エリアマネジメントとファシリティマネジメントを両立させること。
4つ目は、所有と運営を分離する仕組みをつくること。

一つの部分だけでも達成が難しい中、これら4つを同時に実装しているのが〈さとゆめ〉の強みです。ここまでは、プロジェクトのスキームに特化した話でしたが、後半では嶋田さんご自身の哲学や思想にフォーカスが当たります。

情緒が形成された場所、としての「ふるさと」

計画で終わらせない地方創生。 「実現」まで伴走する、 さとゆめの思想と実践

嶋田さんは、「ふるさと」を単に生まれ育った場所ではなく、自分の情緒が形成された場所。その風景や人との関わりの中で、自分が何者であるかを感じられる場所、として捉えています。

そこで大切なのは、「誇りを持てるかどうか」。〈さとゆめ〉のビジョンである「すべての人がふるさとに誇りを持ち、ふるさとの力になれる社会をつくる」こと。この言葉こそが、すべての活動の根底にあると嶋田さんは語ります。

最後は民俗学の宮本常一さんにまで話は及び、日本の地方という場所や文化が持つポテンシャルと哲学を肌で感じるひとときでした。

ふるさとにこだわる、ということ

嶋田さんの知的で説得的かつ情緒的なアプローチは、地域創生に本気で関わってきた人にしか出せない、論理とロマン溢れるものでした。その知性と情緒にまたがるように宿り、本質となっているのは、まさに民俗学的視座ともいうべき、ふるさとに対する眼差しです。

人口減少社会となり、ミニマムかつコンパクトな社会が望まれる一方で、日々刻々と失われゆく自然やふるさとの景色があります。そんな地域のポテンシャルをなんとかして引き出し、善意ではなく事業として成立させ、人々の役に立つように創り上げていく。そのこだわりの迫力は、これからの地域創生にとっての希望であり、まさに夢を背負った取り組みだと感じました。

講座本編終了後のQ&Aでは、地元の皆さんとのより深い関わり合いや、離島における地方創生など、より具体的な話題も盛りだくさんでした。

地域創生に取り組もうとしている人、地域のポテンシャルを引き出したいと考えている人、地域課題にロジカルかつ情緒を大切に事業として向き合いたい方など、多くの方におすすめの内容です。

本講座の全編は、以下のリンクから見逃し配信でご視聴いただけます。

 

長崎・東彼杵町の「みせ・ひと・こと・もの」をつなぐローカルメディア「くじらの髭」

東彼杵町の今を伝えるローカルメディア

長崎県東彼杵町の情報を発信するウェブメディア「くじらの髭」。地元の有志で結成された一般社団法人〈東彼杵ひとこともの公社〉が運営し、町の「みせ」「ひと」「こと」「もの」をテーマに、人や店、文化、風景などを取材記事として紹介している。

大村湾に面した東彼杵町は、かつて長崎街道の宿場町として栄えた場所。くじらの髭では、こうした町の背景を踏まえながら、地元で新しく始まった店や取り組み、地域の人々の活動を丁寧に発信している。

〈東彼杵ひとこともの公社〉代表理事の森一峻さん
〈東彼杵ひとこともの公社〉代表理事の森一峻さん。東彼杵町を拠点に地域の文化づくりに取り組む。

海辺や旧米倉庫を活用した地域の拠点

記事の発信だけでなく、地域の空間を活かした拠点づくりにも取り組んでいる。「くじらの髭」は、千綿地区の旧米倉庫を活用した交流施設〈sorrisoriso 千綿第三瀬戸米倉庫〉や、大村湾を望む場所にある地域交流の場〈uminoわ〉などが活動拠点だ。これらの空間ではイベントや食にまつわる企画などが行われ、町の人と訪れる人が自然に交わる機会が生まれている。

商品づくりを通して地域の魅力を発信

メディア運営と並行して、東彼杵町の魅力を伝える商品づくりにも取り組んでいる。町の特産であるそのぎ茶を使った商品や、地域の菓子店と共同開発したお菓子などを販売。地元の素材や文化を活かしたプロダクトを通して、地域の魅力を届けている。オンラインストアではお茶や雑貨などのセレクト商品も展開し、地域の作り手と外の世界をつなぐ役割も担う。

「CHANOKO」の手がけるくじら最中
東彼杵町土産 「CHANOKO」の手がけるくじら最中。

地域の人や文化に光を当てながら、町の価値を再発見していくこと。小さな町の日常や活動を積み重ねて伝えていくことが、地域の新しい魅力の発見にもつながっている。

Information

〈sorrisoriso 千綿第三瀬戸米倉庫〉
一般社団法人東彼杵ひとこともの公社

住所:長崎県東彼杵郡東彼杵町瀬戸郷1303-1|地図TEL:0957-20-1883HP:https://kujiranohige.com/オンラインストア:https://kujiranohige.stores.jp/

長崎の波佐見焼メーカー〈マルヒロ〉がつくる。人とカルチャーが集まる場所「HIROPPA」

波佐見焼の伝統を背景に、日常の器をつくり続ける〈マルヒロ〉

長崎県波佐見町に本社を構える陶磁器メーカー〈マルヒロ〉。1957年創業の同社は、波佐見焼の伝統を背景にしながら、陶磁器ブランド〈HASAMI〉や〈BARBAR〉などを展開し、日常の道具としての器づくりを続けている。近年はものづくりにとどまらず、町に開かれた空間づくりにも取り組んでいる。

芝生広場とショップが共存する私設公園

その代表的な場所が、私設公園「HIROPPA(ヒロッパ)」。芝生広場や遊具、ショップ、コーヒースタンドなどが一体となった空間で、子どもから大人まで自由に過ごせる場所として親しまれている。園内にはアート作品やユニークな遊具も点在し、自然の中で遊びながら波佐見焼のブランド〈HASAMI〉をはじめとしたプロダクトやカルチャーにも触れることができる。

「HIROPPA(ヒロッパ)」から徒歩1~2分の場所には、〈マルヒロ〉のヘッドオフィスである「KOUBA(コウバ)」も。「マルヒロストア」以外の全てのスタッフがここを拠点に働いており、商品の企画や出荷などの業務が行われている。倉庫建築を活かした空間は、正面ホールをイベントスペースとして活用するなど、会社と地域が交わる場所としても使われている。

また、「HIROPPA」からほど近い場所になる「OUCHI(オウチ)」は、イベントや展示、食にまつわる企画などが行われる多目的スペース。期間限定のフード企画やワークショップも開かれ、地域の人や訪れる人が自然に集まる場所となっている。公園とゆるやかにつながりながら、日常の延長にある文化や交流が生まれている。

焼き物の町として知られる波佐見に生まれたカルチャーの拠点。器づくりとともに育まれてきた町の風景を感じながら、ゆっくり訪れてみたくなる場所だ。「HIROPPA」や「KOUBA」とともに、ものづくりと町の風景をつなぐ存在となっている。

Information

「HIROPPA」

住所:長崎県東彼杵郡波佐見町湯無田郷682|地図TEL:0956-37-8666Mail:shop@hasamiyaki.jp

Information

「KOUBA」

住所:長崎県東彼杵郡波佐見町湯無田郷704-1|地図※KOUBAはイベント時のみ開放

Information

OUCHI

住所:長崎県東彼杵郡波佐見町湯無田郷714|地図Mail:maruhiro-rentalspace@hasamiyaki.jp※7月~9月はかき氷営業のためレンタル要相談※OUCHIはイベント時のみ開放

【講座動画あり】ユニクロが瀬戸内で続けてきたこと。24年の社会貢献と現場のリアル

日本のローカルの魅力を発信する〈コロカル〉によるウェビナー講義、第10回を開催しました。ゲストは、〈ユニクロ〉のサステナビリティを24年間現場で支えてきた、サステナビリティマーケティング部長のシェルバ英子さん。

四半世紀にわたり支援を続ける〈瀬戸内オリーブ基金〉の事例を中心に、グローバル企業が地域とどう向き合うべきか、その本質を語っていただきました。


【登壇者プロフィール】

シェルバ 英子(しぇるば・えいこ)
株式会社ユニクロ サステナビリティマーケティング 部長
大学卒業後、外資系アパレル企業などを経て、2001年ファーストリテイリングに入社。同年に発足した、現在のサステナビリティ部の前身「社会貢献室」に配属され、以降24年にわたりサステナビリティ領域を一貫して担当。「全商品リサイクル活動(現:RE.UNIQLO)」や「ユニクロ東北復興応援プロジェクト」、「Clothes for Smiles」など、数々の社会貢献・環境プロジェクトの立ち上げに参画。2020年より、サステナビリティの情報発信を担当。

〈ユニクロ〉とサステナビリティの長い歴史


世界中で愛される〈ユニクロ〉ですが、そのサステナビリティ活動には長い歴史があります。

2001年の「社会貢献室」立ち上げ当時、〈ユニクロ〉は山口から東京に本部機能を設置した直後でした。フリースの大ヒットで急成長する中、柳井正社長(当時)が掲げたのは「利益を上げたなら、社会に還元しなければならない」という強い意志。

「地域との共存共栄がなければ、企業は生き残れない」という同社の哲学は、SDGsという言葉が広まるずっと前から、組織の基礎として徹底されてきました。

アパレル産業の課題に「現場」で向き合う

一方で、アパレル産業は「世界で2番目に環境負荷が高い」と言われる深刻な課題を抱えています。人権、廃棄、動物愛護……。〈ユニクロ〉はこれらの問題から目を背けず、むしろ独自のアプローチで向き合ってきました。

掲げているのは「Think globally, Act locally」。 グローバルな視点を持ちつつ、各地域の現場で課題を解決する。2004年にCSR部が設立され、組織として社会課題と事業活動を統合させる体制を整えてきました。

グローバルとローカルのダイナミックな行き来

〈ユニクロ〉の戦略はシンプルです。「掛け声はグローバル共通、実行はローカル」。 ミッションや価値観は世界で共有しつつ、具体的な実行方法は各地域に委ねる。この積み重ねが、独自の循環を生み出しています。

  • 障がい者雇用:各国の事情に合わせた多様な働き方の推進
  • RE.UNIQLO:服の修理やリメイクを通じた循環型モデル
  • 衣料支援:世界各地のニーズに応じたダイレクトな支援

世界で生まれた成功事例をグローバルへ広げていく、そのダイナミックな動きに〈ユニクロ〉の強さがあります。

瀬戸内オリーブ基金:支援の原点と「継続」の価値


今回のメインテーマである〈瀬戸内オリーブ基金〉は、戦後最大級の不法投棄事件「豊島事件」をきっかけに設立されました。

特筆すべきは、その圧倒的な継続力です。

  • 店頭募金:累計4億円を突破(2025年12月時点)
  • ボランティア:延べ1500人の社員が参加
  • 現場主義:資金援助に留まらず、社員が自ら現場へ入る

「一度関わったからには、最後まで見届ける責任がある」。このシェルバさんの言葉は、サステナビリティの本質を突いています。続けることでしかノウハウは蓄積されず、信頼の輪も広がらないからです。

循環は「続けること」から始まる

サステナビリティで語られる「循環」は、続けることが大前提です。途絶えてしまえば、めぐることは不可能です。

〈ユニクロ〉という巨大企業の取り組みは、私たち個人や小さな事業においても、「日々の積み重ねを投げ出さない」という普遍的な教訓を与えてくれます。

アーカイブ動画では、サステナビリティ分野でのキャリア形成や、〈ユニクロ〉で服を買うことの意味など、Q&Aセクションも必見の内容です。アパレルや衣服が好きな方はもちろん、サステナビリティの実践に関心があるすべての方に。

見逃し配信を視聴したい方はぜひ、こちらからお申し込みください。

 

「瀬戸内オリーブ基金」 設立25周年記念式典 「学びの島・豊島から考える 環境教育の未来」

香川県の〈豊島〉に大量の産業廃棄物が不法投棄された「豊島事件」を契機として2000年に設立された「瀬戸内オリーブ基金」。設立25周年を迎え、2025年11月8日に「瀬戸内オリーブ基金設立25周年記念式典」が開催された。連載第四回目となる今回は、これまでの活動を振り返るとともに、事件の学びを未来へつなぐ「環境教育の大切さ」を共有し合った式典の様子を詳しくお伝えする。
(「豊島事件」についてはVol.2、「瀬戸内オリーブ基金」についてはVol.3へ)

設立25周年の節目に、過去と未来を考える式典

設立25周年の節目に、過去と未来を考える式典

会場に集まったのは、今も〈豊島〉で事件を語り継ぐ島民、解決に尽力した弁護団、長年取材を続けてきたメディア、そして「瀬戸内オリーブ基金」の活動を支えてきた企業や団体、個人のサポーターたち。
それぞれ異なる立場で「豊島事件」と向き合ってきた人々が、一堂に会した。

式典のテーマは「学びの島・豊島から考える環境教育の未来」。
事件から得られた教訓を改めて整理し、そこで得た教訓を、環境教育という形にして次の世代へ伝えていくことが示された。会場には、これまでの歩みを分かち合ってきた人々の静かな共感と、新たな仲間を迎えた前向きな空気が漂い、参加者それぞれが〈豊島〉と自分自身の立ち位置を重ね合わせる一日となった。

「100万本の植樹を目指す」発起人・安藤忠雄さんや柳井正さんからのメッセージ

「瀬戸内オリーブ基金」が設立されたのは2000年。発起人となったのが、世界的な建築家・安藤忠雄さんと、「豊島事件」の弁護団長だった弁護士・中坊公平さん。そして2001年4月、安藤さんが「瀬戸内オリーブ基金」への支援を求め手紙をしたためたのが、株式会社ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正さんだった。

2001年、豊島を視察する柳井さんと安藤さん

2001年、豊島を視察する柳井さんと安藤さん

安藤さんからの申し出を受けて、柳井さんはすぐに〈豊島〉を訪れ、その年の7月にはユニクロ梅田店に、「瀬戸内オリーブ基金」への支援を募る募金箱を設置した。この募金箱を通じた支援は、累計4億円を超え(2024年12月末時点)、初期の活動の中心であった植樹(オリーブの木を含む)は17万本に達している。
式典では、「瀬戸内オリーブ基金」の設立時から活動に関わってきた株式会社ユニクロのシェルバ英子さんと安藤忠雄建築研究所の十河完也さんが、「瀬戸内オリーブ基金」が設立された経緯や25年の歩みを年表で振り返る場面があった。十河さんは、「安藤は100歳まで現役でがんばる。100万本の植樹を目指すと話している」と、今でも変わらぬ安藤さんの熱い想いを語った。

2001年7月、ユニクロ梅田店に最初の募金箱が設置された時の安藤さん(左)と故・中坊弁護士(右)

2001年7月、ユニクロ梅田店に最初の募金箱が設置された時の安藤さん(左)と故・中坊弁護士(右)

式典では安藤さん、柳井さんからの祝辞をおさめたビデオメッセージが映し出された。「瀬戸内オリーブ基金」の礎を築いた両者からのメッセージは、参加者に設立当初の想いを思い出させ、これからの活動に向けて気持ちを新たにさせる、力強い励ましとなった。

25周年に寄せた安藤忠雄さんのビデオメッセージ

25周年に寄せた安藤忠雄さんのビデオメッセージ

安藤忠雄さんからのメッセージ
「中坊さんと柳井さんの想いがつながって基金ができた。瀬戸内に100万本のオリーブの木を植えたいと宣言をしていますが、今後この思いが子供たちに引き継がれていけば達成できるのではないか。美しい瀬戸内海と人間がともに生きてきたことを残していきたい」

株式会社ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長、柳井正さんからのビデオレター

株式会社ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長、柳井正さんからのビデオレター

柳井正さんからのメッセージ
「うちがやるなら他の企業に負けないように、我々の活動としてやろうと思った。だから全店舗に募金箱を設置することにした。今後もオリーブ基金に意義ある活動をしていってもらいたい」

「瀬戸内オリーブ基金」にとっての大きな一歩。現・元香川県知事からのメッセージ

「瀬戸内オリーブ基金」理事長の岩城裕さんが、香川県知事の池田豊人さんと、元・香川県知事の真鍋武紀さんから届いた祝辞を代読した。

「豊島事件」において、香川県は長い間「行政に非はない」という立場を崩さず、住民・弁護団とは厳しく対立した。香川県が謝罪をするまでに要した歳月は四半世紀。その歴史を思えば、現職と元職、二人の知事から祝辞が届いたことは、過去を乗り越えて新たな時代へと基金が進む象徴的な出来事と言える。岩城さんが発した「両名から祝辞をいただけたことは、基金にとって大きな一歩であります」という一言には、これまでの長い道のりへの思いが込められていた。

香川県知事 池田豊人さん

香川県知事 池田豊人さん
「瀬戸内海の環境を未来へつなぐ皆様方のたゆみない活動に対し、感謝申し上げます。瀬戸内海そしてそこに浮かぶ島々は香川の財産であり世界の財産です。瀬戸内オリーブ基金がこれからも、人と自然の共生を育てる灯りとして希望の種をまき続けてくださることを願っています。香川県も瀬戸内の美しい自然を守り、持続可能な地域づくりを進めてまいります。」

真鍋元香川県知事の祝辞を読み上げる岩城理事長

真鍋元香川県知事の祝辞を読み上げる岩城理事長

元・香川県知事 真鍋武紀さん
「この基金は、歴史と伝統文化を有し風光明媚な瀬戸内海を子孫に継承していくためその環境保全と再生に取り組む活動に助成するとともに、環境教育活動を熱心に実践してきた結果、多くの人々の環境意識の向上と瀬戸内海の緑化と再生に多くの成果を上げてきました。関係者の皆様の熱意とたゆまぬ努力に敬意を表します。」

豊島事件を語り継ぐ。解決に尽力した専門家とメディアが果たした役割

ゲストによる特別講演では、「豊島事件」を教訓とした未来への課題が提示された。

これまで国内外で行ってきた公害や化学物質による環境汚染調査について紹介する熊本学園大学教授・中地重晴さん

これまで国内外で行ってきた公害や化学物質による環境汚染調査について紹介する熊本学園大学教授・中地重晴さん

一人目の登壇者は熊本学園大学教授の中地重晴さん。日本における公害や化学物質による環境汚染の歴史と現状を分析してきたスペシャリストであり、住民側に立つ研究者として「豊島事件」の最終解決にも尽力した。1994年から事件に関わり、2017年廃棄物の撤去が完了した後も、まだ残る地下水汚染の浄化を見守り続けてきた。2025年には地域医療・福祉分野で優れた功績を挙げた人物を表彰する「若月賞」を受賞している。
「この先重要なのは、『豊島事件』の教訓を生かした環境教育と、住民が問題を理解して積極的に活動していくこと。オリーブ基金の活動を通して、島外からも力を合わせて努力を続ける必要がある」と、未来への展望を語った。

当時を振り返りながら、熱のこもった講演をする元「豊島事件」弁護団副団長の大川真郎さん

当時を振り返りながら、熱のこもった講演をする元「豊島事件」弁護団副団長の大川真郎さん

続いて「豊島事件」弁護団の元副団長の大川真郎さんが登壇。2025年6月に上梓した書籍『よみがえる美しい島 産廃不法投棄とたたかった豊島の五〇年』の出版記念講演でもある。
1993年に公害調停に立ち上がってから、最初はどのメディアにも取り上げられず悲惨な状況だったこと。誰もが香川県には勝てないと思っていた時に、弁護団長・中坊さんが「本当に最後まで闘うのか」と住民に覚悟を問い、それに応えた一人ひとりの決意が固い結束を生んだこと。そしてその揺るぎない団結が世論を動かし、勝利を勝ち取った軌跡を熱弁した。

〈豊島〉産業廃棄物不法投棄跡地にある「豊島のこころ資料館」。廃棄物対策豊島住民会議の事務局長・安岐正三さんは、訪れた人々に事件を語り継いでいる

〈豊島〉産業廃棄物不法投棄跡地にある「豊島のこころ資料館」。廃棄物対策豊島住民会議の事務局長・安岐正三さんは、訪れた人々に事件を語り継いでいる

「国が動き、法律も変わった。大量消費、大量廃棄を変えようと、国民の考え方も変わった。これは〈豊島〉住民が主体的に取り組んだことの結晶なんです。今後、豊島を環境学習の“学びの島”にしていくため一番大事なことは、できるだけ多くの人に〈豊島〉に来てもらい、事件のことを知ってもらうこと。これを続けるために、『瀬戸内オリーブ基金』の活動が絶対に必要です」と、力のこもった大川さんの言葉に、目頭が熱くなる参加者の姿も見られた。

また、大川さんの講演の中でも強調されたのが、メディアの力だ。新聞を始めとするメディアが「豊島事件」を取り上げ始めたことで、世の中が事件の存在に気づき、〈豊島〉の外からも行く末を見守る人々が出てきた。そのことがやがて世論を変え、事件を解決に導いた。会場で配布されたパンフレットの巻末には、16名の記者たちが寄稿した「メディアが見た豊島事件」という文集が綴じられている。

山陽新聞の編集委員・影山美幸さん。高松支局の記者として「豊島事件」を追い続けた

山陽新聞社総務局局次長・影山美幸さん。高松支局の記者として「豊島事件」を追い続けた

そのメディアの一人が、山陽新聞社総務局局次長・影山美幸さん。1998年〜2000年まで、高松支局の記者として「豊島事件」を追い続けた人物で、2000年6月の調停成立の時にもコラムを書いた。式典で配られた「25周年記念冊子」に寄稿したコラムの中で、影山さんは「豊島が教えてくれたこと」と題し、こんなことを綴っている。

“人間は弱く、国も自治体も間違える。法律も完全ではない。間違ったら改め、過ちから学ばなければならない。自分が出したごみの行方に思いをはせることができる人は、未来を考えることができる。(中略)私利私欲でなく、次世代のためにと立ち上がり、行動した豊島の人たちのことを伝え続けたいと思う。”
(「25周年記念冊子」巻末付録「メディアが見た豊島事件」より)

広がる環境教育の輪。4つのサポーター企業が実践中の取り組みを語る

「瀬戸内オリーブ基金」はこれまで多くの法人サポーターに支えられてきた。

「地域と社会が育む、環境教育のこれから〜企業・教育機関とともに描く協働のかたち〜」と題した、トークセッションでは、「瀬戸内オリーブ基金」を支援する法人サポーター企業の代表や、助成を受けて環境教育を実践する団体が集まり、それぞれの立場で感じている“環境教育の重要性”を語り合った。

トークセッションの様子。左から、ファシリテーターとして登壇したシェルバ英子さん(株式会社ユニクロ)、池内正晴さん(学校法人聖パウロ学園)、本宮炎さん(NPO法人三段峡-太田川流域研究会)、村石百香さん(株式会社大創産業)、岡田恵治さん(株式会社ファーストリテイリング)

トークセッションの様子。左から、ファシリテーターとして登壇したシェルバ英子さん(株式会社ユニクロ)、池内正晴さん(学校法人聖パウロ学園)、本宮炎さん(NPO法人三段峡-太田川流域研究会)、村石百香さん(株式会社大創産業)、岡田恵治さん(株式会社ファーストリテイリング)

登壇したのは、村石百香さん(株式会社大創産業)、池内正晴さん(学校法人聖パウロ学園)、岡田恵治さん(株式会社ファーストリテイリング)の法人サポーター3名と、「瀬戸内オリーブ基金」の助成先団体から本宮炎さん(NPO法人三段峡-太田川流域研究会)、ファシリテーターとして、「瀬戸内オリーブ基金」運営委員のシェルバ英子さん(株式会社ユニクロ)。

学校法人聖パウロ学園は、2018年から「瀬戸内オリーブ基金」の法人サポーターとして支援していたが、近年は、生徒たちに向けた環境教育に力を注いでいる。中学1年生が実際に〈豊島〉を訪れ、産廃跡地の見学や海岸清掃に参加したり、2025年からは同じく法人サポーターである東レ株式会社と共に、同社の滋賀工場でグループワークを行うなど、新たな取組みも始まった。池内さんは〈豊島〉での実習について、「教科書やインターネットではなく、現場を見ることで生徒たちが受けるインパクトは大きい。ショックが大きいぶん『自分たちになにができるかな?』と、生徒たちが自分事として考えることができるようになっているのを感じます」

実際に現場を訪れることの重要性は、株式会社ファーストリテイリングの岡田さんも感じていた。
ユニクロとGUでは全国の店舗に「瀬戸内オリーブ基金」の募金箱を設置している。募金のゆくえを正しく理解する場として、従業員による〈豊島〉でのボランティア活動を毎年実施している。「自分の言葉でお客様に取り組みを伝えられることが重要で、そのために現場体験は大切だと考えています」と岡田さんは話す。

2024年から「瀬戸内オリーブ基金」の法人サポーターとなった株式会社大創産業でも、社員とその家族が一緒に〈豊島〉を訪問し、オリーブ収穫などのボランティアを行うなどの活動を実施。企業として環境学習に取り組む意義について、村石さんは、このように話した。「私が期待しているのは、環境学習を通して得た気づきが、社員一人一人の具体的なアクションに繋がっていくことです。ひとりの従業員が意識し始めれば、それが他の社員やお客様にも伝播していくのではないかと思います。社会貢献をしている素敵なNPO法人を支援していることを伝えていくことで、社員が自社のことを誇りに持ってくれることへも繋がると思っています」

「瀬戸内オリーブ基金」の助成を受けるNPO法人三段峡は、フィールドでの環境学習プログラムを運営しながら、植林された森を自伐林業を通じて持続可能な天然林に変えていく「渓畔林再生プロジェクト」に取り組む。本宮さんは、環境学習のバトンを未来へ繋いでいく“次世代”の人材を育成している人物だ。「次の世代が環境に関する学びを人々へ伝えられる、伝道師的な人材を育てていきたい。そのためオリーブ基金さんの支援は現場の力になる」と話し、環境教育を続けるには、社会全体の力が必要不可欠であることを訴えた。

それぞれの活動実例を語る登壇者たち

それぞれの活動実例を語る登壇者たち

環境教育を継続していくにあたり、「瀬戸内オリーブ基金」が掲げたのは次の3つのキーワード。
1. 「豊島事件」の教訓を伝え続ける
2. 地球の未来を考えられる人を育てる
3. with fun

自然を壊すのは簡単だが、再生させるのは難しい。だからこそ、地球の未来に想像力を持って行動できる、次世代の指針となるような人を育てていきたい。そして、その学びを停滞させず続けていくためには「楽しさ(fun)」の要素も必要だ。

ファシリテーターを務めていたシェルバさんは「『豊島事件』は環境教育だけではなく、平和教育にも繋がる。世界に目を向けるきっかけをオリーブ基金が提供したい。助成先の活動のことももっと知ってもらえるようにする」と、今後の展望を語り、セッションを締めくくった。

「豊島事件」と向き合ってきた人たちの想いや歩みを、これからの未来へ受け継いでいくこと。そして、目の前の自然の尊さを知り、自分が出したごみの行方にまで思いを巡らせること。環境を守る大切さを自分の問題として伝えられる人を育てること。
環境教育は、豊かな地球を守るために、世代から世代へと手渡されていく、終わりのないバトンリレーのようなものだ。

このリレーを支えているのが、活動を資金面で支える法人サポーター、教育の現場で学びを広げる学校法人、そして、その支援を受けて実際に環境保全に取り組む助成団体。
「瀬戸内オリーブ基金」を中心に、次の世代へとバトンをつなぐ、前向きな循環が生まれている。

「瀬戸内オリーブ基金」の未来。次の25年に掲げる3つの目標と新しい取り組み

〈豊島〉には継続的にボランティアスタッフを派遣。10月には個人/法人サポーターが参加できるオリーブ収穫祭も行われた

〈豊島〉には継続的にボランティアスタッフを派遣。10月には個人/法人サポーターが参加できるオリーブ収穫祭も行われた

式典の最後には「瀬戸内オリーブ基金」の未来について語られた。次の25年に向けて、すでに新しい企画も動き出しているという。

「豊島事件」の歩みを記録する書籍の出版
「豊島事件」の弁護団および住民運動の30年の歩みを記録した書籍の制作。2024年の春から取り組んでおり、完成に近づいている。2026年度の出版に向け、現在まとめ作業を進めている。

法人サポーターとの新たな協働

写真提供:株式会社大創産業

写真提供:株式会社大創産業

法人サポーターである、株式会社大創産業が運営するStandard Products では、〈豊島〉で収穫されたオリーブを使ったスキンケアシリーズを2025年11月にリリースした。身近なプロダクトを通して、「瀬戸内オリーブ基金」や〈豊島〉の存在を周知していく狙いだ。

新しいロゴマークの誕生

新しいロゴマーク

式典のフィナーレでは、新しいロゴマークがお披露目された。「平和と知恵」という花言葉のあるオリーブと、瀬戸内海の自然の豊かさを示すスナメリがデザインされており、株式会社ファーストリテイリングより無償提供された。

また今後は、①日本で一番応援したくなる環境NPOになる、②日本で一番ユーザーフレンドリーな助成団体になる、③日本で一番働きやすい環境NPOになる、という3つの目標を掲げ、これまで以上に活動の透明性と、発信活動に注力していくと岩城さんは話す。PayPayで募金活動が可能になり、より多くの人々が活動を支援することもできるようになった。

瀬戸内オリーブ基金を支援する:https://congrant.com/project/olivefoundation/20593

瀬戸内の自然がこれからも引き継がれていくように、そして同じような悲劇が二度と起こらないように。〈豊島〉での植樹活動やストーリーテリングはもちろん、教訓を生かした環境教育にもさらなる力を注いでいかなくてはいけない。「瀬戸内オリーブ基金」はすでに新たな一歩を踏み出している。

2026年の現在、世界的なSDGsへの意識の高まり、気候変動への危機感など、日本における環境リテラシーは高まりつつある。
しかし、そうした流れの背後には、豊島事件の経験が静かに息づいている。島民が声を上げ、弁護団の支えを受けながら闘い、日本の法律や社会の仕組みを変え、大量消費・大量廃棄のあり方を見直すきっかけをつくった。
「瀬戸内オリーブ基金」が取り組む環境教育は、「豊島事件」の教訓を一人一人の心に届けるとともに、決して途絶えさせてはいけないものなのだ。

「瀬戸内オリーブ基金」が守る瀬戸内海の自然という鏡に、自分自身の日常を映してみる。
目の前の景色は美しいだろうか。自分の行動が、この景色を壊していないだろうか。

個人の意識の一つ一つはやがてあの瀬戸内海に、そして地球全体の環境へと広がり、時を超えて未来へ繋がるはずだ。「瀬戸内オリーブ基金」の25年の歩みを知り、自分も新たな一歩を踏み出せたようだった。

※記事内の写真の一部は、取材先より提供していただきました。

information

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瀬戸内オリーブ基金

所在地:香川県小豆郡土庄町豊島家浦3837-4

Web:https://www.olive-foundation.org/

Instagram:https://www.instagram.com/olive_foundation/

瀬戸内オリーブ基金を支援する:https://congrant.com/project/olivefoundation/20593

計画で終わらせない地方創生。「実現」まで伴走する、さとゆめの思想と実践|コロカルアカデミー Vol.11

地域の暮らしや文化に根ざした新しい学びの場「コロカルアカデミー」。
その第11回となる今回は、地域創生を“理念”ではなく“事業”として成立させ続けてきた実践者、株式会社さとゆめ 代表取締役社長 嶋田 俊平さんをゲストに迎えます。

「すべての人がふるさとに誇りを持ち、ふるさとの力になれる社会をつくる。」

このビジョンを“言葉”にとどめず、計画から実装、そして継続可能な事業として地域に根づかせる。本セミナーでは、さとゆめがこれまで手がけてきた数々のプロジェクトを手がかりに、地域創生コンサルティングの本質を掘り下げます。なぜさとゆめは、実現までやり切れるのか。

嶋田さんが一貫して大切にしてきたのは、
●「計画」ではなく「実現」まで責任を持つこと
●ミッション・ビジョンを“旗”として掲げ続けること

山梨県小菅村

山梨県小菅村で展開する、「700人の村がひとつのホテルに」という発想から生まれた分散型ホテル〈NIPPONIA 小菅 源流の村〉、そして JR東日本 との共同事業「沿線まるごとホテル」プロジェクト。いずれも、地域の資源・人・関係性を丁寧に編み直し、“心が動く体験”を起点に事業を成立させてきた実例です。

「沿線まるごとホテル」プロジェクト

本セミナーでは、
●さとゆめ立ち上げの背景と、これまでの歩み
●さとゆめとは何か。地方創生コンサルティングの思想
●理想と現実のギャップに、どう向き合ってきたか
●「ふるさと=情緒が形成された場所」という独自の定義
●小さな組織だからこそ、ムーブメントを目指す理由

といったテーマを軸に、“地域で事業をつくる”ための思考と覚悟を共有します。

さらに、
●仲間の集め方・採用の考え方
●人を惹きつける力の源泉
●「沿線まるごとホテル」プロジェクトにおける視点と裏側

など、これから地域に関わる仕事をしたい人にとって、実践的なヒントが詰まった時間となるはずです。

◼️概要
コロカルアカデミー Vol.11
「計画で終わらせない地方創生。「実現」まで伴走する、さとゆめの思想と実践」
日時:2026年3月4日(水)15:00〜16:00(14:50開場)
応募締切:2026年3月3日(火)11:59
形式:Zoomウェビナー
参加費:無料(要事前申込)

◼️コロカルアカデミーとは
ローカルを舞台に活躍する人々のリアルな情報を通して、日本の魅力を再定義するウェビナーシリーズです。地域を活性化させるために働きたい方、ローカルでビジネスを始めたい方、自治体や企業で地域創生に携わる方に向けて、新たなヒントを提供します。

いままでのコロカルアカデミーはこちら

登壇者は、地域の文化資産や資源を掘り起こし、その価値を世界に伝える新しいリーダーたち。ローカルビジネスにおける強みと課題、問題解決のプロセス、未来を変える次の一手についてもリスナーの皆さんと一緒に考えていきます。

◼️こんな方におすすめ
●地方創生・観光・まちづくりに携わる自治体・企業関係者
●地域を舞台に、事業やプロジェクトを立ち上げたい方
●コンサルティングやプロデュースの仕事に関心がある方
●ミッション・ビジョンを軸にした組織づくりを学びたい方
●「想い」を「事業」に変えるプロセスを知りたい学生・若手社会人

【登壇者プロフィール】

嶋田 俊平

嶋田 俊平(しまだ・しゅんぺい)
株式会社さとゆめ 代表取締役CEO
京都大学大学院農学研究科森林科学専攻修了。環境系シンクタンク勤務を経て、2013年に株式会社さとゆめを設立。地方創生の戦略策定から商品開発、販路開拓、店舗立ち上げ、観光事業運営まで、地域に一気通貫で伴走する事業プロデュースを行う。
山梨県小菅村「NIPPONIA 小菅 源流の村」、JR東日本との「沿線まるごと」事業、HISとの「Destination Create Project」など、全国各地で多数のプロジェクトを手がける。

杉江宣洋

杉江宣洋(すぎえ・のぶひろ)
コロカル編集長/MAGAZINEHOUSE CREATIVE STUDIO ブランディングプロデューサー
1997年マガジンハウスに入社。『anan』編集部を経て、2008年『BRUTUS』配属、10年同誌副編集長に。『BRUTUS』では「居住空間学」(インテリア特集)「音楽と酒」シリーズなどをヒット企画に育てた実績を持つ。また、「桑田佳祐」「山下達郎」「松本隆」「スタジオジブリ」などの特集も担当。2022年Hanako編集長就任。2025年より現職。

【注意事項】
・本イベントはオンライン開催です。
・音声や映像の乱れが生じる場合があります。
・録画・録音・再配信はご遠慮ください。

「豊島事件」を教訓に 次世代へ美しいふるさとを託す

香川県の〈豊島〉に大量の産業廃棄物が不法投棄された「豊島事件」。この事件を教訓とすべく、「瀬戸内オリーブ基金」は今新たな試みを開始した。連載第3回となる今回は、「瀬戸内オリーブ基金」の25年にわたる歩みを振り返り、現在取り組んでいる活動とこれからの展望について話を伺った。
(「豊島事件」についてはVol.2の記事へ)

島民の想いと希望をオリーブに込めて

【瀬戸内海が持つ環境的・文化的・歴史的価値を見直し、植樹活動によって破壊された自然を回復し、「美しいふるさと」瀬戸内海を次の世代に引き継ぐ】

この目的を実現させるために「瀬戸内オリーブ基金」が、設立されたのは2000年11月のこと。

「安藤さん、豊島のゴミを処理するだけではダメだ。かつての緑豊かな島に戻さなければならない」

「豊島事件」公害調停を闘った弁護士・中坊公平さんが以前から付き合いのあった建築家・安藤忠雄さんにこう声がけをした。安藤さんは、阪神・淡路大震災の復興への取り組み『ひょうごグリーンネットワーク』という被災地の緑化活動を続けており、植樹についてのノウハウを持っている、うってつけの人物でもあった。中坊さんは、〈豊島〉の問題を〈豊島〉のみととらえず、日本の「環境破壊を見ないふりして成立してきた社会」の負の象徴であると位置づけ、瀬戸内の自然を取り戻すことこそが、日本の、そして世界の人々の環境に対する意識を変えるきっかけになると考えた。

第1回の記念植樹式の様子(提供:廃棄物対策豊島住民会議)

第1回の記念植樹式の様子(提供:廃棄物対策豊島住民会議)

2000年11月15日、〈豊島〉で開催された第1回の記念植樹式では、中坊さんと安藤さんが豊島の小中学生とともに、オリーブの苗木1000本を植樹。「瀬戸内オリーブ基金」は、瀬戸内の里山・里海を守る活動を支援し、100万本の木を植える目標を掲げる。現在は、ユニクロをはじめ、様々な企業や個人が支援をしている。

「排出事業者が廃棄物を委託する際の責任の明確化と、不法投棄の未然防止を目的に実施される『マニフェスト制度』の導入により、不法投棄が社会的に非難される行為として認識されるようになったのは、『豊島事件』が社会に与えた大きな影響です」と語るのは、弁護団の一人として豊島事件の公害調停に関わり、現在は、同基金の理事長をつとめる岩城裕さん。その一方で、豊島住民たちの粘り強い闘いが一部で「住民エゴ」と批判されることもあったそう。しかし、想像してみてほしい。もし豊島住民たちの小さな、そして長い闘いがなかったならば、現代も、効率と利益を最優先する経済原理に基づいた、ゴミが大量に廃棄される社会のままだったかもしれないことを。

「我々『瀬戸内オリーブ基金』のビジョンは、人と自然が共存する持続可能な社会を目指すことです」

現在、「瀬戸内オリーブ基金」は、4つのプログラムを軸に活動をしている。

オリーブの樹と豊かな自然の象徴、スナメリをモチーフにした「瀬戸内オリーブ基金」のスタッフユニフォーム

オリーブの樹と豊かな自然の象徴、スナメリをモチーフにした「瀬戸内オリーブ基金」のスタッフユニフォーム

1. 【助成プログラム】
「瀬戸内オリーブ基金」の理念に賛同する、法人・個人サポーターからの寄付金を元に、瀬戸内海エリアの環境保全と再生に取り組む団体に、原資となる資金を助成。瀬戸内海エリアの環境保全と再生を目指す。
現在までに3億円以上の資金助成を行ってきた。豊かな環境を日本のふるさととして次世代に引き継ぐことを目的に、瀬戸内の山・森・川・海や、そこに生きる生きものを守る活動に加え、未来を担う世代が環境について学び、考える機会をつくる取り組みを支援している。

2. 【ゆたかなふるさと100年プロジェクト】
廃棄物の不法投棄によって荒廃した〈豊島〉の処分地の植生を、本来の豊かさを取り戻すことを目指し、自然の営みに寄り添いながら、その回復の過程を手助けする取り組み。「瀬戸内オリーブ基金」の運営委員でもある岡山大学院環境生命自然科学研究科・嶋一徹教授のサポートのもと活動している。
今もなお、処分地には地下水問題が残るため、香川県が管理をし、モニタリングを続けている。将来的に豊島住民の手に戻った後、どのような手助けが有効かを検証しながら、処分地周辺の同じような環境で植生を回復させるための実証実験兼事業を行っている。
ちなみに豊島の中で、植生が破壊された面積は285,000平方メートル、現在までの植生回復活動の実績は3,980平方メートルである。

3. 【ゆたかな海プロジェクト】
「瀬戸内オリーブ基金」では2009年度から、海洋プラごみ問題の解決に取り組んできた。近年では、楽しみながら環境問題に向き合えるように、チーム対抗のゴミ拾い競技「スポGOMI」を開催するなど、企業ボランティアとともに豊島でも海洋清掃に取り組んでいる。2024年からは、瀬戸内海の食物連鎖の頂点にいるスナメリをテーマとした環境学習会も行っている。

4. 【豊島事件語り継ぎプロジェクト】
近年特に力を入れているプロジェクト。事件の経緯や背景を伝える〈豊島のこころ資料館〉の整備をはじめ、「豊島事件」の教訓をアーカイブ化し、残す取り組みを進めてきた。2019年からは「豊島事件」の語り継ぎを取り入れた環境教育も開始。小学生から大人まで幅広い世代を対象に「豊島事件」の学びを伝えている。長い闘争の歴史を語れる人たちが高齢化している課題もあり、世代を問わず多くの方に事件を知ってもらうためにYouTube動画作成などを通じて資料保存と活用にも力を注いでいる。ちなみにこれらの動画は岩城理事長が脚本を書いたそうだ。

豊かな島の自然景観の原状回復、その現場へ

今回、コロカルチームは〈豊島〉を訪れ、実際に「瀬戸内オリーブ基金」の活動を見せていただいた。
「ゆたかなふるさと100年プロジェクト」では、住民や学生、法人など多くのボランティアらとともに、処分地背後の尾根(南側)で植生回復事業を行う。この場所を〈ゆたかなふるさと再生の森〉と命名し、元の植生を再現した見本園の整備や、地元の小中学生との植樹活動などを通じ、攪乱された処分地の再生を一歩ずつ進めている。

1970年代にガラス原料の珪砂を採取するため表土が全面的に除去されたが、産業廃棄物は投入されなかった場所。自然植生を回復させる活動を行う嶋教授は右から4人目

1970年代にガラス原料の珪砂を採取するため表土が全面的に除去されたが、産業廃棄物は投入されなかった場所。自然植生を回復させる活動を行う嶋教授は右から4人目

「自然を取り戻す方法はいくつかあると思います。例えば東京の夢の島。あそこはかつて、ゴミ捨て場でしたが今は立派な公園ですよね。それも緑が戻っていると言えると思います。しかし豊島の住民が考えているのは、新しく緑を造成するのではなく、元通りの自然に戻してほしいということ」と、嶋教授。

40年近く放置されてきた土地は一見すると緑が生い茂って豊かな自然に回復されたように見えるが、住民は「元通りの自然ではない」と言う。それは一体、何が違うのか。
「調査してみたら、植物の多様性が非常に乏しいのです。表土が残された、もしくは堆積した場所では樹木が生育しているけれど、処分地やその周辺のように表土がほとんど残っていない場所は、いつまでも雑草が繁茂して遷移が全く進んでいません。このまま100年、200年放置したら、元通りに戻るかもしれないけれど、私たちが『少しだけ手を加える』介入をすることで、遷移の流れに沿って植生の回復が少し早く進むようにしているのです」

実施中の取り組みの中で最も労力のかかる作業の一つは、やっと土地に侵入できた小さい実生を残しつつ、林床に日差しが届くように、繁茂した雑草を人手で除去する作業。これを3年程度続けると、雑草の生育が少しおさまってくるそうだ。それと同時に、元来の植生が良好に回復している場所の表土を移植し、その表土に含まれる種が発芽出来るように環境を整える。こうした作業の繰り返しによって、多種多様な植生が早く定着できるようにしていく。

「全部芽が出なくてもいいです。たまたま芽が出た植物のうち、その立地環境に合ったものが残ってくれたらいいんです。ゆくゆくは風や鳥などの動物によって運ばれた種子が自然に発芽し、定着できる環境整備を行っています」

あくまで人が自然を造成するのではなく、「手助け」することで自然の回復力を活かして植生を元に戻すのだ。地道な作業の繰り返しだが、それを支えてくれる企業のボランティアにも支えられ、その規模は毎年少しずつ拡大している。

壊すのは一瞬、取り戻すには100年以上。「豊島事件」は、一度破壊された自然を回復させるには途方もない時間と多くの労力がかかることを教えてくれている。

再生を目指す土地の実生の生残率・樹高成長・種の多様性などをモニタリングし分析する

再生を目指す土地の実生の生残率・樹高成長・種の多様性などをモニタリングし分析する

「瀬戸内オリーブ基金」を支えるサポーターが楽しめる体験も

「瀬戸内オリーブ基金」は、理念に賛同し、「私たちに何かできることはないか」と声をかけてくれた多くの個人や企業・団体の存在に支えられている。彼らが「サポーター」となり、年会費などによる寄付やボランティアで活動を支える。法人サポーターの企業の中には、環境教育の一環として豊島でのボランティアへ参加し、現地で体験してきたことを社員間で発表するなど、学びの共有が行われている。その結果、社会貢献活動への意識が向上しているという。

2025年10月24日には、サポーター向けの『オリーブ収穫祭』が開催された。

オリーブ収穫祭でオリーブの実を摘む参加者。環境教育の一環として参加者を募るサポート企業も多い

オリーブ収穫祭でオリーブの実を摘む参加者。環境教育の一環として参加者を募るサポート企業も多い

〈豊島〉で栽培しているのは、2000年以降、全国から集まった寄付金によって植えられたオリーブ。成長にあわせた間伐などを経て、現在は約600本が大切に管理されている。このオリーブ収穫体験とともに、〈豊島のこころ資料館〉、かつての不法投棄の現場、そして〈ゆたかなふるさと再生の森〉を見学した。

収穫されたオリーブは24時間以内に島内の小さな搾油場で搾られ、エキストラバージンオリーブオイルや、そのオイルを使った石鹸や美容オイルとして商品化し、主に島内のお土産店や美術館で販売。売り上げは瀬戸内エリアの自然を守る活動に使われている。

収穫されたオリーブは24時間以内に島内の小さな搾油場で搾られ、エキストラバージンオリーブオイルや、そのオイルを使った石鹸や美容オイルとして商品化し、主に島内のお土産店や美術館で販売。売り上げは瀬戸内エリアの自然を守る活動に使われている。

参加したサポーターは、「オリーブの実を丁寧に摘み取る作業はとても楽しかったです。『豊島事件』への学びを深め、自然と人の共生や環境保護の大切さ、そして『瀬戸内オリーブ基金』の活動の一端を間近に感じることができました。一部の社員だけでなく、家族や友人にも〈豊島〉に行ってほしい」と、語った。

活動を支える次世代の力

「瀬戸内オリーブ基金」の事務局メンバー。左から松澤千穂さん、清水萌さん、塩川ゆうりさん

「瀬戸内オリーブ基金」の事務局メンバー。左から松澤千穂さん、清水萌さん、塩川ゆうりさん

「瀬戸内オリーブ基金」設立から25年、これまで様々な人材がこの活動に関わってきた。そして、現在、事務局の中心となるのは「3人娘」と、地元の人からも愛されている3名の女性。それぞれがそれぞれの想いやきっかけを持ち、そしてライフステージに合わせた持続可能なスタイルで、「瀬戸内オリーブ基金」の活動を支えている。

塩川ゆうりさんは、自然の中で働きたいと仕事を探している時に「瀬戸内オリーブ基金」と出会った。3年間〈豊島〉に住んだのち、現在は結婚して埼玉に移り、リモートで事務局の仕事をしつつ、定期的に〈豊島〉に通っている。
清水萌さんは父親が弁護団の一員(清水善朗弁護士)だったこともあり、幼い頃から〈豊島〉を訪れていたが、当時は事件について深く知ることはなかったという。改めて「豊島事件」について学び、子どもの頃に可愛がってくれていた島の人たちが、ふるさとを取り戻すために闘っていた事実を知ったことが、活動に関わるきっかけとなった。今は結婚し、子育てをしながら週に1、2回、岡山から船で〈豊島〉まで通っている。
そして、3名の中で一番新しいメンバー、石川県出身の松澤千穂さん。昔から夢だった自然や環境保全に関わる仕事がしたい、島で暮らしてみたいと思い立ち、2025年1月に〈豊島〉へ移住。現在、3名の事務局の中では唯一の島暮らしとなる。

様々な経歴ののち「瀬戸内オリーブ基金」に関わることになった皆さんを惹きつける、この仕事のやりがいは何なのか。
「『豊島事件』を遠くで起きた事として終わらせてほしくなくて、自分にも起こりうることだと知ってもらいたいんです。島外の子どもたちが〈豊島〉に学習に来て、その思いが伝わった時に、やっていて良かったなと思います」と塩川さん。

オリーブ収穫祭で参加者へオリーブオイルができるまでの工程を説明する塩川さん。オリーブの維持管理には地元の方との密なコミュニケーションが欠かせない

オリーブ収穫祭で参加者へオリーブオイルができるまでの工程を説明する塩川さん。オリーブの維持管理には地元の方との密なコミュニケーションが欠かせない

また、島の人たちとの関わりも活動の原動力だと3人は話す。
小さい島だからこそ、都会とは違った親密な人間関係を築くことができ、困り事は親身になってくれるし、農作物をいただくなど、交流もよくある。しかし、彼女らが生活を共にしている島民は、「豊島事件」で傷ついた人、戦った人たちだということを忘れてはならない。世間を騒がせた事件であることから様々な批判も受け、それでも一生懸命島を守った人たちなのだ。ふとした会話の中で、その葛藤の歴史を口にした島の方が涙を流す場面もあるという。だからこそ、常に誠実なコミュニケーションを心がけ、「私たちに何ができるか、何が求められているか」を模索している。

「応援してくださる島のみなさんのために、『豊島事件』を風化させたくない。今後、この学びを活かせるよう、次世代へ教訓として伝えていきたい」
と、3名は声を揃える。しかし現実には、豊島事件に当事者として関わってきた方々の高齢化も進み、どうこの教訓を伝えていくか試行錯誤を重ねている。島の中で様々な意見もある。「教訓を伝える」と言っても、当事者の語りを遺したり、当時の資料の収集・劣化対策の作業に加え、環境教育としての学びを体系化する取り組みも同時進行し、これまで以上に多くの協力者の支えが必要だと感じているという。

「活動への理解が深まり、応援してくださる方が一人でも増えるよう、支え合う仲間たちとこれからも頑張っていきたい」
島民の心に寄り添う若い力が大きな推進力となり、瀬戸内海の豊かな自然を未来へつなぐ活動は今日も、そしてこれからも続いていく。

支援の形は、個人でも法人でも、オンラインから自分に合ったタイミングで選ぶことが可能だ。 瀬戸内海の自然を次世代へつなぐために。あなたに合った方法で、この活動を支えてみてはいかがだろうか。
「瀬戸内オリーブ基金」の支援はこちらから
https://congrant.com/project/olivefoundation/20593

香川県の豊島

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瀬戸内オリーブ基金

所在地:香川県小豆郡土庄町豊島家浦3837-4

Web:https://www.olive-foundation.org/

Instagram:https://www.instagram.com/olive_foundation/

瀬戸内オリーブ基金を支援する:https://congrant.com/project/olivefoundation/20593