【視聴無料】地方の建築は、地域創生の入り口だった。建築史家・倉方俊輔に学ぶ、建物から始まるまちの再発見

地域の暮らしや文化に根ざした新しい学びの場「コロカルアカデミー」は、今回で第14回を迎えます。主催は、日本各地のローカルの魅力を発信し続けるWebマガジン「コロカル」です。

今回のテーマは「建築を開き、地域をつなぐ」。 日本最大級の建築公開イベント「東京建築祭」や「イケフェス大阪」の実行委員を務め、建築の価値を社会に広く伝える活動を行う建築史家・倉方俊輔氏をゲストにお迎えします。

地方には、時代や設計者、地域の歴史を物語る「建築」が数多く存在します。しかし、それらが単なる「古い建物」として見過ごされたり、維持管理の課題に直面したりしているケースも少なくありません。

建物の見方を変え、地域の資源としてどう活かし、未来へ受け継いでいくのか。本セミナーでは、倉方氏の最新刊『建築を旅する』の視点や、これまでの実践的な活動をもとに、普段入れない建築の扉を開くことで地域にどのような変化や人の交わりが生まれるのかを紐解きます。

【セミナー構成(60分 )】

【導入】建築史家という仕事と、建築の面白さ
建築史家とは何か? 建物を通して「時代・設計者・地域」のつながりを読み解く視点についてお話しいただきます。

【第1部】建築を開くことで生まれる価値
イケフェス大阪や東京建築祭の実践から。普段入れない建築を開くことで、地域にどんな変化や人の交わりが生まれるのか、具体的な事例を交えて解説します。

【第2部】「建築ツーリズム」と地方創生
最新刊『建築を旅する』を軸に。地方の名建築を観光資源や地域の誇りとしてどう活かし、未来へ受け継ぐか。コンバージョン(用途転換)やリノベーションが地域固有の歴史的文脈を自然に学ばせることに繋がる点など、地方創生へのアプローチを深掘りします。
最後にはQ&Aの時間もございます。

【こんな方におすすめ】

  • 自治体の地域振興・商工観光の担当者様
  • まちづくりや地域資源の活用に携わる方
  • 「建築ツーリズム」や歴史的建造物の保存・再生に関心のある方
  • 地域の魅力を再発見し、新たな価値を生み出したい方

【開催詳細】

  • 開催日時:2026年6月10日(水)15:00〜16:00
  • 開催方法:Zoomウェビナーでのオンライン配信(お申し込み後にURLを送付)
  • 参加料:無料
  • 申し込み期限:2026年6月9日(火)18:00まで

【登壇者プロフィール】
コロカルアカデミー倉方俊輔

建築史家/大阪公立大学教授 倉方 俊輔(くらかた・しゅんすけ )

1971年東京都生まれ。大阪公立大学教授。 日本近現代の建築史の研究と並行して、日本最大級の建築イベント「東京建築祭」の実行委員長、「イケフェス大阪」「京都モダン建築祭」の実行委員を務めるなど、建築の価値を社会に広く伝える活動を行う。著書に『建築を旅する』『悪のル・コルビュジエ』『建築を楽しむ教科書』ほか多数。受賞歴にグッドデザイン賞グッドデザイン・ベスト100、日本建築学会賞(業績)などがある。

杉江編集長
杉江 宣洋(コロカル編集長)
マガジンハウス入社後、『anan』『BRUTUS』などの副編集長を経て、2022年『Hanako』編集長就任。2025年より現職。

 

【前回参加者の声】

  • 「無料とは思えないほど内容が濃く、とても有意義なウェビナーでした。また同様のウェビナーがあれば、ぜひ受講したいです」
  • 「ブランディングとは伝えるべき情報を整理して正しく伝えること。今の自分にできることを照らし合わせて活かそうと思いました」
  • 「テーマを別のものに置き換えて、今の自分の問題解決の糸口になるアイデアをたくさんもらえました」

【注意事項】

  • 本イベントはオンライン開催です。
  • 音声や映像の乱れが生じる場合があります。安定した通信環境でご視聴ください。
  • 録画・録音・再配信はご遠慮ください。
  • お申し込みいただいた方には、後日見逃し配信のご案内をお送りします。当日ご参加が難しい場合も、ぜひお気軽にお申し込みください。

 

“世界でいちばんやさしい場所”へ。大分・ハーモニーランドの新リゾート構想が始動

35周年を迎えるテーマパーク、その次の未来へ

大分県日出町にある〈サンリオキャラクターパーク ハーモニーランド〉が、新たなリゾート構想を発表した。1991年の開業以来、多くの人に親しまれてきた屋外型テーマパークが、開業35周年を前に“エンタメリゾート化”へと歩みを進める。掲げるコンセプトは、「世界でいちばんやさしい場所」。大分の自然や温泉、食文化、地域のおもてなしと、サンリオならではのエンターテインメントを掛け合わせ、新しい滞在体験を目指していくという。

サンリオキャラクターパーク ハーモニーランド
右/日出町長 安部徹也氏、中/株式会社サンリオエンターテイメント 代表取締役社長 小巻亜矢氏、左 大分県知事:佐藤樹一郎氏。構想発表に合わせて、大分県庁にて立地表明式を開催した。© 2025 SANRIO CO., LTD. TOKYO, JAPAN  著作 株式会社サンリオ

今回公開された基本構想では、ハーモニーランドの高低差ある地形を活かした「天空のパーク」を初公開。空へとひらけたロケーションを活かしながら、大屋根の整備やロープウェー、電動モビリティなど、快適に過ごせる環境づくりが検討されている。さらに、新規施設や既存アトラクションのリニューアル、隣接エリアでのホテル建設構想も進行中。パークだけでなく、滞在そのものを楽しむ場所へと進化しようとしている。

“みんなとつくる”やさしい場所へ

この計画の特徴のひとつが、構想段階からファンや地域住民とともにつくり上げていく“共創型”の姿勢だ。施設や装飾、グッズ、メニュー、移動手段まで、さまざまなアイデアを広く募りながら、未来のハーモニーランドを育てていく。年齢や国籍、身体的特徴の違いにかかわらず、誰もが楽しめる場所を目指すという理念も、この計画の核にある。テーマパークの枠を超え、人と地域、旅と滞在をつなぐ新しい拠点として、そのこれからに注目したい。

Information

サンリオキャラクターパークハーモニーランド

住所:大分県速見郡日出町大字藤原5933(国道10号線沿)|地図TEL:0977-73-1111
HP:https://www.harmonyland.jp/

ユネスコ無形文化遺産登録後、初の開催へ。城下町・新潟で受け継がれる「村上大祭」とは

城下町を巡る、絢爛な屋台行事

新潟県村上市で毎年7月の2日間で行われる「村上大祭」。西奈彌羽黒(せなみはぐろ)神社の例大祭として、1633年の遷宮祭を起源に持つ歴史ある祭りだ。

神輿の巡行にあわせ、19台の屋台「おしゃぎり」と呼ばれる山車や荒馬、稚児行列が城下町を練り歩く。彫刻や漆塗りが施された屋台の中には200年以上前に制作されたものもあり、その華やかさは訪れる人々を圧倒する。

灯りに照らされる屋台。昼とは異なる表情を見せる。

この祭りを支えているのは、地域に根ざした継承の仕組みだ。各町内では本番に向けてお囃子の稽古が重ねられ、大人から子どもへと技術が受け継がれていく。子どもたちは屋台の乗り手や行列の役割を担いながら、自然と地域の一員としての意識を育んでいくことができる。また、学校教育の中でも祭りを学ぶ取り組みが行われ、体験を通して文化の担い手を育てる試みが続いている。

市街地を巡行する「おしゃぎり」。

新潟県村上市の「村上祭の屋台行事」は、ユネスコ無形文化遺産「山・鉾・屋台行事」の構成遺産の一つとして、2025年12月に登録された。「山・鉾・屋台行事」は、地域の人々が一体となって災厄除けや安寧を願う、日本各地の祭礼から成る無形文化遺産。村上市内ではほかにも、瀬波大祭や岩船大祭など個性豊かなまつり行事が受け継がれており、地域に根付いた文化の厚みを今に伝えている。なかでも、村上祭の屋台行事は、華やかな屋台の巡行とともに町全体が一体となるのが特徴。

2026年は、ユネスコ無形文化遺産登録後初の開催。その記念として例年は2日間の開催のところ、今年は7月5日(日)からの3日間にわたり実施される。例年以上のにぎわいが見込まれており、多くの来訪者で盛り上がりそうだ。

Information

村上大祭(むらかみたいさい)

開催日:毎年7月6日(宵祭)・7月7日(本祭)
住所:新潟県村上市中心部 羽黒神社周辺〜旧城下町一帯|地図HP:https://www.sake3.com

震災からの復興を見据えて。能登に新たな文化を生む音楽祭「だらぼち」が5月16日に開催

震災の先にある、新たな風景として

2026年5月16日(土)、石川県能登町で「だらぼち音楽祭」が初開催される。会場は、日本海を望むブルワリー「Heart & Beer 日本海倶楽部」。能登半島地震によって大きな被害を受けたこの地域で、復旧や支援のその先にあるこれからを見据え、新たな人の流れを生み出す試みとして企画された。

出演は THA BLUE HERB や切腹ピストルズ、タテタカコなど、能登と関わりのあるアーティストを中心に多彩な顔ぶれが揃う。さらに約400年の歴史を持つ伝統芸能である彌榮太鼓(いやさかだいこ)の演奏も予定されている。会場では音楽だけでなく、能登の発酵文化や食を楽しめる飲食エリアやマーケットも展開。土地の営みと表現が交差する場として、一日を通して体験がひらかれていく。

音楽祭のタイトルにもなっている「だらぼち」とは、能登の言葉で「要領は悪くても、真っ正直に生きようとする人」を意味する。この音楽祭は、能登で暮らす人々が主体となり、「自分たちの手で祭をつくる」という思いから立ち上がった。準備や運営も含め、地域の人々が関わりながらかたちにしていくこの場では、関わる人すべてが当事者となる。人が集まり、時間をともにすることで生まれる関係性が、能登のこれからを少しずつかたちづくっていく。

石川県能登町で開催される音楽祭「だらぼち音楽祭」 

Information

だらぼち音楽祭

日程:2026年5月16日(土)
時間:10:00〜21:00
場所:Heart & Beer 日本海倶楽部住所:石川県鳳珠郡能登町立壁92|地図
料金:5,000円/18歳以下無料
HP:https://darabochi.com/

新潟・糸魚川、通年人口2人の集落に泊まる。「一村貸し」という滞在をかなえる宿〈堂道〉

限界集落から生まれた、余白を活かす宿泊のかたち

新潟県糸魚川市の山間にある集落・市野々(いちのの)。かつては多くの人が暮らしていたこの地も、いまでは通年人口わずか2人となった。この地で始まったのが、集落全体を宿として捉える「一村貸し」という新しい滞在のかたちだ。築200年を超える古民家を拠点に、集落そのものに滞在するような体験ができる。

集落・市野々
通年人口2人の集落・市野々。山間に田畑が広がる風景。

風景の中にある暮らしを体感する

滞在中は、地域の案内人とともに集落を歩き、米づくりや雪仕事、味噌づくりやそば打ちなど、この土地の暮らしに触れていく。湧き水を汲み、森を歩き、田畑に広がる風景を眺めることができる。

古民家宿〈堂道〉を拠点に

滞在の拠点となるのは、築200年を超える古民家宿〈堂道〉。かつての屋号を引き継いだこの建物は、囲炉裏のある広間や土間のキッチンなど、雪深い地域の暮らしを感じさせる造りが残されている。過度に手を加えることなく、時間の蓄積をそのまま受け継いだ空間だ。

「地域風景」を未来へつなぐ

取り組みの背景にあるのは、「地域風景」を次世代へつなぐという考え方。暮らしと風景が結びついた景色には、それぞれ理由がある。例えば、道端に咲く菊の花も、田んぼの法面に巣を作るネズミを防ぐための工夫から生まれた風景。その積み重ねが集落を形づくってきた。一村貸しは、その文脈ごと滞在者に手渡す試みでもある。

集落をまるごと宿とすることで見えてくるのは、土地に根ざした時間のあり方。観光とは異なる距離感で、その場所の営みに触れる滞在がここにある。

菊の花
道端に咲く菊の花も、田んぼの法面に巣を作るネズミを防ぐための工夫から生まれた風景。

Information

宿屋〈堂道〉

住所:新潟県糸魚川市市野々792|地図HP:https://den-tou.jpInstagram:@dentou.jp

【視聴無料】〈ゴールドウイン〉が地方で「公園」づくり!? 地域と共創し、成し遂げるコツ、未来を描く創造力とは

〜富山県南砺市「Play Earth Park Naturing Forest」の事例から学ぶ、企業と地域の新しい関係〜

地域の暮らしや文化に根ざした新しい学びの場「コロカルアカデミー」は、今回で第13回を迎えます。主催は、日本各地のローカルの魅力を発信し続けるWebマガジン〈コロカル〉です。

今回のテーマは「企業と地域の共創による、未来の場づくり」。スポーツアパレルメーカーとして知られる〈ゴールドウイン〉、創業の地である富山県で進めている次世代型ネイチャーパーク「Play Earth Park Naturing Forest(プレイアースパーク ネイチャーリング フォレスト)」プロジェクトに焦点を当てます。ゲストには、株式会社PLAY EARTH PARK 事業本部長 兼 管理部部長の斎藤洋史氏をお迎えします。

<ゴールドウイン>が地方で「公園」づくり!? 地域と共創する苦労、成し遂げるコツ、未来を描く創造力とは。


約40ヘクタールという広大な土地で、多くの地権者や自治体とどのように合意形成を図り、プロジェクトを前進させてきたのか。単なる豪華な施設の紹介にとどまらず、地域と信頼関係を築いていく道のりや、自治体を巻き込むコツ、そしてゴールドウインが実践する「2050年の未来を描く創造力」の核心に迫ります。

【セミナー構成(60分)】

【第1部】プロジェクトの背景と「Play Earth Park」構想
ゴールドウインがなぜ富山県で「公園」をつくるのか。プロジェクト発足の裏側や、2050年を見据えた企業のビジョンを公開します。

【第2部】地域共創のリアルと実践
約40ヘクタールの広大な土地、多数の地権者。南砺市と連携し、どのように交渉し合意形成を図ってきたのか。地域が求めることと、企業としての洗練されたデザインやコンセプトをどう両立させているのか、実務責任者ならではのリアルなエピソードを紐解きます。

最後にはQ&Aの時間もございます。

【こんな方におすすめ】

•自治体の地域振興・まちづくり・商工観光の担当者様
•地方での新規事業やプロジェクト開発に携わる方
•企業と地域の連携、ステークホルダーとの合意形成に課題を感じている方
•「社会性とビジネス成果を両立」するアイデアを学びたい方

【開催詳細】

•開催日時: 2026年5月13日(水) 15:00〜16:00
•開催方法: Zoomウェビナーでのオンライン配信(お申し込み後にURLを送付)
•参加料: 無料
•申し込み期限: 2026年5月12日(火) 11:59まで

【登壇者プロフィール】

株式会社PLAY EARTH PARK 事業本部長 兼 管理部部長
斎藤 洋史(さいとう ひろし)

株式会社PLAY EARTH PARK 事業本部長 兼 管理部部長 斎藤 洋史

2006年ゴールドウイン入社。財務領域で基盤を築いた後、スイムウエアブランド「Speedo」にてディストリビューターとメーカー双方の視点からブランド再構築を推進。2022年よりPLAY EARTH PARK事業に参画。地域・自治体との連携交渉を主導し、建築計画や多様なステークホルダーとの合意形成を横断的に統括。プロジェクトを前進させる実務の責任者を務める。

杉江 宣洋(コロカル編集長)

杉江編集長

マガジンハウス入社後、『anan』『BRUTUS』などの副編集長を経て、2022年『Hanako』編集長就任。2025年より現職。

【前回参加者の声】

•「内容がとても面白く、あっという間の1時間でした。仕事のモチベーションも上がりました」
•「具体的な数字や、イベントの“裏側”の話が非常に参考になった」
•「ビジネスとしてどう成り立っているかが初めて理解でき、納得感がありました」

【注意事項】

•本イベントはオンライン開催です。
•音声や映像の乱れが生じる場合があります。安定した通信環境でご視聴ください。
•録画・録音・再配信はご遠慮ください。
•お申し込みいただいた方には、後日見逃し配信のご案内をお送りします。当日ご参加が難しい場合も、ぜひお気軽にお申し込みください。

【講座動画あり】計画で終わらせない地方創生。さとゆめの「実現」する力

日本のローカルの魅力を発信する〈コロカル〉のウェビナー講義シリーズ〈コロカルアカデミー〉第11回を開催しました。

ゲストには、地域創生を「理念」ではなく「事業」として成立させ続けてきた実践者、株式会社〈さとゆめ〉代表取締役CEO・嶋田俊平さんをお迎えしました。

「すべての人がふるさとに誇りを持ち、ふるさとの力になれる社会をつくる」というビジョンを単なる言葉にとどめず、計画から実装、そして継続可能な事業として地域に根付かせてきた〈さとゆめ〉。これまで手がけてきた数々のプロジェクトを手がかりに、地域創生コンサルティングの本質に迫る、濃密な時間となりました。

見逃し配信を視聴したい方はこちらからお申し込みください。

計画で終わらせない地方創生。「実現」まで伴走する、さとゆめの思想と実践|コロカルアカデミー Vol.11

嶋田俊平(しまだ・しゅんぺい)株式会社さとゆめ 代表取締役 CEO
京都大学大学院農学研究科森林科学専攻修了。環境系シンクタンク勤務を経て、2013年に株式会社さとゆめを設立。地方創生の戦略策定から商品開発、販路開拓、店舗立ち上げ、観光事業運営まで、地域に一気通貫で伴走する事業プロデュースを行う。山梨県小菅村「NIPPONIA 小菅 源流の村」、JR東日本との「沿線まるごと」事業、HISとの「Destination Create Project」など、全国各地で多数のプロジェクトを手がける。

「沿線まるごとホテル」という着想と実装

計画で終わらせない地方創生。
「実現」まで伴走する、
さとゆめの思想と実践

嶋田さんから最初に紹介されたのは、「沿線まるごとホテル」という事業です。

JR東日本と〈さとゆめ〉が共同で進めているこのプロジェクトは、鉄道沿線の複数の地域に点在する地域資源を編集し、一つの「ホテル」として見立てた世界観を構築し、新たな滞在型観光やマイクロツーリズムの創出を図る地域活性化プロジェクトです。

鉄道会社にとっては沿線の魅力を高めることで乗客を増やせる。地域にとっては新しい宿泊施設や雇用が生まれる。旅行者にとってはその地域でしかできない体験ができる、三方よしのモデルを目指しています。実際、ベンチマークとなっている山梨県小菅村で手がけた古民家ホテルの事業では、地域経済の活性化に大きな貢献をし、地域系の主要アワードでは三冠を達成するなど、大きな注目を集めています。

地域を活かす、ロジカルかつ独創的な事例に胸が躍ります。

〈さとゆめ〉が生まれた経緯

計画で終わらせない地方創生。 「実現」まで伴走する、 さとゆめの思想と実践

そんな独創的な地域事業を支え続けてきた〈さとゆめ〉の創業は、2013年のこと。「ふるさとの夢をかたちに」をミッションに掲げ、地域に徹底的に伴走するスタイルで、全国50以上の地域で、古民家ホテルや地域商社、沿線活性化など、さまざまな事業の立ち上げや運営支援を行ってきました。

伴走から生まれた事業は多岐にわたりますが、その背景にあるのは、〈さとゆめ〉が持つ事業化プロセスのフェーズ区分です。詳しくは本編に譲りますが、NPOフェーズ、コンサルフェーズ、事業フェーズに分けたマトリクスは、多くのプロジェクト立案や遂行に関わる人にとって、役に立つ視点となるでしょう。

ついに辿り着いた「さとゆめモデル」

計画で終わらせない地方創生。
「実現」まで伴走する、
さとゆめの思想と実践


地域創生事業に伴走し続けた〈さとゆめ〉が見出した、究極のモデルとも言えるのが「さとゆめモデル」です。特徴は下記の4つ。

1つ目は、調査・計画から事業の立ち上げ、運営までを一気通貫で伴走すること。
2つ目は、計画・人材・資金をトータルでコーディネートすること。
3つ目は、エリアマネジメントとファシリティマネジメントを両立させること。
4つ目は、所有と運営を分離する仕組みをつくること。

一つの部分だけでも達成が難しい中、これら4つを同時に実装しているのが〈さとゆめ〉の強みです。ここまでは、プロジェクトのスキームに特化した話でしたが、後半では嶋田さんご自身の哲学や思想にフォーカスが当たります。

情緒が形成された場所、としての「ふるさと」

計画で終わらせない地方創生。 「実現」まで伴走する、 さとゆめの思想と実践

嶋田さんは、「ふるさと」を単に生まれ育った場所ではなく、自分の情緒が形成された場所。その風景や人との関わりの中で、自分が何者であるかを感じられる場所、として捉えています。

そこで大切なのは、「誇りを持てるかどうか」。〈さとゆめ〉のビジョンである「すべての人がふるさとに誇りを持ち、ふるさとの力になれる社会をつくる」こと。この言葉こそが、すべての活動の根底にあると嶋田さんは語ります。

最後は民俗学の宮本常一さんにまで話は及び、日本の地方という場所や文化が持つポテンシャルと哲学を肌で感じるひとときでした。

ふるさとにこだわる、ということ

嶋田さんの知的で説得的かつ情緒的なアプローチは、地域創生に本気で関わってきた人にしか出せない、論理とロマン溢れるものでした。その知性と情緒にまたがるように宿り、本質となっているのは、まさに民俗学的視座ともいうべき、ふるさとに対する眼差しです。

人口減少社会となり、ミニマムかつコンパクトな社会が望まれる一方で、日々刻々と失われゆく自然やふるさとの景色があります。そんな地域のポテンシャルをなんとかして引き出し、善意ではなく事業として成立させ、人々の役に立つように創り上げていく。そのこだわりの迫力は、これからの地域創生にとっての希望であり、まさに夢を背負った取り組みだと感じました。

講座本編終了後のQ&Aでは、地元の皆さんとのより深い関わり合いや、離島における地方創生など、より具体的な話題も盛りだくさんでした。

地域創生に取り組もうとしている人、地域のポテンシャルを引き出したいと考えている人、地域課題にロジカルかつ情緒を大切に事業として向き合いたい方など、多くの方におすすめの内容です。

本講座の全編は、以下のリンクから見逃し配信でご視聴いただけます。

 

長崎・東彼杵町の「みせ・ひと・こと・もの」をつなぐローカルメディア「くじらの髭」

東彼杵町の今を伝えるローカルメディア

長崎県東彼杵町の情報を発信するウェブメディア「くじらの髭」。地元の有志で結成された一般社団法人〈東彼杵ひとこともの公社〉が運営し、町の「みせ」「ひと」「こと」「もの」をテーマに、人や店、文化、風景などを取材記事として紹介している。

大村湾に面した東彼杵町は、かつて長崎街道の宿場町として栄えた場所。くじらの髭では、こうした町の背景を踏まえながら、地元で新しく始まった店や取り組み、地域の人々の活動を丁寧に発信している。

〈東彼杵ひとこともの公社〉代表理事の森一峻さん
〈東彼杵ひとこともの公社〉代表理事の森一峻さん。東彼杵町を拠点に地域の文化づくりに取り組む。

海辺や旧米倉庫を活用した地域の拠点

記事の発信だけでなく、地域の空間を活かした拠点づくりにも取り組んでいる。「くじらの髭」は、千綿地区の旧米倉庫を活用した交流施設〈sorrisoriso 千綿第三瀬戸米倉庫〉や、大村湾を望む場所にある地域交流の場〈uminoわ〉などが活動拠点だ。これらの空間ではイベントや食にまつわる企画などが行われ、町の人と訪れる人が自然に交わる機会が生まれている。

商品づくりを通して地域の魅力を発信

メディア運営と並行して、東彼杵町の魅力を伝える商品づくりにも取り組んでいる。町の特産であるそのぎ茶を使った商品や、地域の菓子店と共同開発したお菓子などを販売。地元の素材や文化を活かしたプロダクトを通して、地域の魅力を届けている。オンラインストアではお茶や雑貨などのセレクト商品も展開し、地域の作り手と外の世界をつなぐ役割も担う。

「CHANOKO」の手がけるくじら最中
東彼杵町土産 「CHANOKO」の手がけるくじら最中。

地域の人や文化に光を当てながら、町の価値を再発見していくこと。小さな町の日常や活動を積み重ねて伝えていくことが、地域の新しい魅力の発見にもつながっている。

Information

〈sorrisoriso 千綿第三瀬戸米倉庫〉
一般社団法人東彼杵ひとこともの公社

住所:長崎県東彼杵郡東彼杵町瀬戸郷1303-1|地図TEL:0957-20-1883HP:https://kujiranohige.com/オンラインストア:https://kujiranohige.stores.jp/

長崎の波佐見焼メーカー〈マルヒロ〉がつくる。人とカルチャーが集まる場所「HIROPPA」

波佐見焼の伝統を背景に、日常の器をつくり続ける〈マルヒロ〉

長崎県波佐見町に本社を構える陶磁器メーカー〈マルヒロ〉。1957年創業の同社は、波佐見焼の伝統を背景にしながら、陶磁器ブランド〈HASAMI〉や〈BARBAR〉などを展開し、日常の道具としての器づくりを続けている。近年はものづくりにとどまらず、町に開かれた空間づくりにも取り組んでいる。

芝生広場とショップが共存する私設公園

その代表的な場所が、私設公園「HIROPPA(ヒロッパ)」。芝生広場や遊具、ショップ、コーヒースタンドなどが一体となった空間で、子どもから大人まで自由に過ごせる場所として親しまれている。園内にはアート作品やユニークな遊具も点在し、自然の中で遊びながら波佐見焼のブランド〈HASAMI〉をはじめとしたプロダクトやカルチャーにも触れることができる。

「HIROPPA(ヒロッパ)」から徒歩1~2分の場所には、〈マルヒロ〉のヘッドオフィスである「KOUBA(コウバ)」も。「マルヒロストア」以外の全てのスタッフがここを拠点に働いており、商品の企画や出荷などの業務が行われている。倉庫建築を活かした空間は、正面ホールをイベントスペースとして活用するなど、会社と地域が交わる場所としても使われている。

また、「HIROPPA」からほど近い場所になる「OUCHI(オウチ)」は、イベントや展示、食にまつわる企画などが行われる多目的スペース。期間限定のフード企画やワークショップも開かれ、地域の人や訪れる人が自然に集まる場所となっている。公園とゆるやかにつながりながら、日常の延長にある文化や交流が生まれている。

焼き物の町として知られる波佐見に生まれたカルチャーの拠点。器づくりとともに育まれてきた町の風景を感じながら、ゆっくり訪れてみたくなる場所だ。「HIROPPA」や「KOUBA」とともに、ものづくりと町の風景をつなぐ存在となっている。

Information

「HIROPPA」

住所:長崎県東彼杵郡波佐見町湯無田郷682|地図TEL:0956-37-8666Mail:shop@hasamiyaki.jp

Information

「KOUBA」

住所:長崎県東彼杵郡波佐見町湯無田郷704-1|地図※KOUBAはイベント時のみ開放

Information

OUCHI

住所:長崎県東彼杵郡波佐見町湯無田郷714|地図Mail:maruhiro-rentalspace@hasamiyaki.jp※7月~9月はかき氷営業のためレンタル要相談※OUCHIはイベント時のみ開放

【講座動画あり】ユニクロが瀬戸内で続けてきたこと。24年の社会貢献と現場のリアル

日本のローカルの魅力を発信する〈コロカル〉によるウェビナー講義、第10回を開催しました。ゲストは、〈ユニクロ〉のサステナビリティを24年間現場で支えてきた、サステナビリティマーケティング部長のシェルバ英子さん。

四半世紀にわたり支援を続ける〈瀬戸内オリーブ基金〉の事例を中心に、グローバル企業が地域とどう向き合うべきか、その本質を語っていただきました。


【登壇者プロフィール】

シェルバ 英子(しぇるば・えいこ)
株式会社ユニクロ サステナビリティマーケティング 部長
大学卒業後、外資系アパレル企業などを経て、2001年ファーストリテイリングに入社。同年に発足した、現在のサステナビリティ部の前身「社会貢献室」に配属され、以降24年にわたりサステナビリティ領域を一貫して担当。「全商品リサイクル活動(現:RE.UNIQLO)」や「ユニクロ東北復興応援プロジェクト」、「Clothes for Smiles」など、数々の社会貢献・環境プロジェクトの立ち上げに参画。2020年より、サステナビリティの情報発信を担当。

〈ユニクロ〉とサステナビリティの長い歴史


世界中で愛される〈ユニクロ〉ですが、そのサステナビリティ活動には長い歴史があります。

2001年の「社会貢献室」立ち上げ当時、〈ユニクロ〉は山口から東京に本部機能を設置した直後でした。フリースの大ヒットで急成長する中、柳井正社長(当時)が掲げたのは「利益を上げたなら、社会に還元しなければならない」という強い意志。

「地域との共存共栄がなければ、企業は生き残れない」という同社の哲学は、SDGsという言葉が広まるずっと前から、組織の基礎として徹底されてきました。

アパレル産業の課題に「現場」で向き合う

一方で、アパレル産業は「世界で2番目に環境負荷が高い」と言われる深刻な課題を抱えています。人権、廃棄、動物愛護……。〈ユニクロ〉はこれらの問題から目を背けず、むしろ独自のアプローチで向き合ってきました。

掲げているのは「Think globally, Act locally」。 グローバルな視点を持ちつつ、各地域の現場で課題を解決する。2004年にCSR部が設立され、組織として社会課題と事業活動を統合させる体制を整えてきました。

グローバルとローカルのダイナミックな行き来

〈ユニクロ〉の戦略はシンプルです。「掛け声はグローバル共通、実行はローカル」。 ミッションや価値観は世界で共有しつつ、具体的な実行方法は各地域に委ねる。この積み重ねが、独自の循環を生み出しています。

  • 障がい者雇用:各国の事情に合わせた多様な働き方の推進
  • RE.UNIQLO:服の修理やリメイクを通じた循環型モデル
  • 衣料支援:世界各地のニーズに応じたダイレクトな支援

世界で生まれた成功事例をグローバルへ広げていく、そのダイナミックな動きに〈ユニクロ〉の強さがあります。

瀬戸内オリーブ基金:支援の原点と「継続」の価値


今回のメインテーマである〈瀬戸内オリーブ基金〉は、戦後最大級の不法投棄事件「豊島事件」をきっかけに設立されました。

特筆すべきは、その圧倒的な継続力です。

  • 店頭募金:累計4億円を突破(2025年12月時点)
  • ボランティア:延べ1500人の社員が参加
  • 現場主義:資金援助に留まらず、社員が自ら現場へ入る

「一度関わったからには、最後まで見届ける責任がある」。このシェルバさんの言葉は、サステナビリティの本質を突いています。続けることでしかノウハウは蓄積されず、信頼の輪も広がらないからです。

循環は「続けること」から始まる

サステナビリティで語られる「循環」は、続けることが大前提です。途絶えてしまえば、めぐることは不可能です。

〈ユニクロ〉という巨大企業の取り組みは、私たち個人や小さな事業においても、「日々の積み重ねを投げ出さない」という普遍的な教訓を与えてくれます。

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「瀬戸内オリーブ基金」 設立25周年記念式典 「学びの島・豊島から考える 環境教育の未来」

香川県の〈豊島〉に大量の産業廃棄物が不法投棄された「豊島事件」を契機として2000年に設立された「瀬戸内オリーブ基金」。設立25周年を迎え、2025年11月8日に「瀬戸内オリーブ基金設立25周年記念式典」が開催された。連載第四回目となる今回は、これまでの活動を振り返るとともに、事件の学びを未来へつなぐ「環境教育の大切さ」を共有し合った式典の様子を詳しくお伝えする。
(「豊島事件」についてはVol.2、「瀬戸内オリーブ基金」についてはVol.3へ)

設立25周年の節目に、過去と未来を考える式典

設立25周年の節目に、過去と未来を考える式典

会場に集まったのは、今も〈豊島〉で事件を語り継ぐ島民、解決に尽力した弁護団、長年取材を続けてきたメディア、そして「瀬戸内オリーブ基金」の活動を支えてきた企業や団体、個人のサポーターたち。
それぞれ異なる立場で「豊島事件」と向き合ってきた人々が、一堂に会した。

式典のテーマは「学びの島・豊島から考える環境教育の未来」。
事件から得られた教訓を改めて整理し、そこで得た教訓を、環境教育という形にして次の世代へ伝えていくことが示された。会場には、これまでの歩みを分かち合ってきた人々の静かな共感と、新たな仲間を迎えた前向きな空気が漂い、参加者それぞれが〈豊島〉と自分自身の立ち位置を重ね合わせる一日となった。

「100万本の植樹を目指す」発起人・安藤忠雄さんや柳井正さんからのメッセージ

「瀬戸内オリーブ基金」が設立されたのは2000年。発起人となったのが、世界的な建築家・安藤忠雄さんと、「豊島事件」の弁護団長だった弁護士・中坊公平さん。そして2001年4月、安藤さんが「瀬戸内オリーブ基金」への支援を求め手紙をしたためたのが、株式会社ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正さんだった。

2001年、豊島を視察する柳井さんと安藤さん

2001年、豊島を視察する柳井さんと安藤さん

安藤さんからの申し出を受けて、柳井さんはすぐに〈豊島〉を訪れ、その年の7月にはユニクロ梅田店に、「瀬戸内オリーブ基金」への支援を募る募金箱を設置した。この募金箱を通じた支援は、累計4億円を超え(2024年12月末時点)、初期の活動の中心であった植樹(オリーブの木を含む)は17万本に達している。
式典では、「瀬戸内オリーブ基金」の設立時から活動に関わってきた株式会社ユニクロのシェルバ英子さんと安藤忠雄建築研究所の十河完也さんが、「瀬戸内オリーブ基金」が設立された経緯や25年の歩みを年表で振り返る場面があった。十河さんは、「安藤は100歳まで現役でがんばる。100万本の植樹を目指すと話している」と、今でも変わらぬ安藤さんの熱い想いを語った。

2001年7月、ユニクロ梅田店に最初の募金箱が設置された時の安藤さん(左)と故・中坊弁護士(右)

2001年7月、ユニクロ梅田店に最初の募金箱が設置された時の安藤さん(左)と故・中坊弁護士(右)

式典では安藤さん、柳井さんからの祝辞をおさめたビデオメッセージが映し出された。「瀬戸内オリーブ基金」の礎を築いた両者からのメッセージは、参加者に設立当初の想いを思い出させ、これからの活動に向けて気持ちを新たにさせる、力強い励ましとなった。

25周年に寄せた安藤忠雄さんのビデオメッセージ

25周年に寄せた安藤忠雄さんのビデオメッセージ

安藤忠雄さんからのメッセージ
「中坊さんと柳井さんの想いがつながって基金ができた。瀬戸内に100万本のオリーブの木を植えたいと宣言をしていますが、今後この思いが子供たちに引き継がれていけば達成できるのではないか。美しい瀬戸内海と人間がともに生きてきたことを残していきたい」

株式会社ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長、柳井正さんからのビデオレター

株式会社ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長、柳井正さんからのビデオレター

柳井正さんからのメッセージ
「うちがやるなら他の企業に負けないように、我々の活動としてやろうと思った。だから全店舗に募金箱を設置することにした。今後もオリーブ基金に意義ある活動をしていってもらいたい」

「瀬戸内オリーブ基金」にとっての大きな一歩。現・元香川県知事からのメッセージ

「瀬戸内オリーブ基金」理事長の岩城裕さんが、香川県知事の池田豊人さんと、元・香川県知事の真鍋武紀さんから届いた祝辞を代読した。

「豊島事件」において、香川県は長い間「行政に非はない」という立場を崩さず、住民・弁護団とは厳しく対立した。香川県が謝罪をするまでに要した歳月は四半世紀。その歴史を思えば、現職と元職、二人の知事から祝辞が届いたことは、過去を乗り越えて新たな時代へと基金が進む象徴的な出来事と言える。岩城さんが発した「両名から祝辞をいただけたことは、基金にとって大きな一歩であります」という一言には、これまでの長い道のりへの思いが込められていた。

香川県知事 池田豊人さん

香川県知事 池田豊人さん
「瀬戸内海の環境を未来へつなぐ皆様方のたゆみない活動に対し、感謝申し上げます。瀬戸内海そしてそこに浮かぶ島々は香川の財産であり世界の財産です。瀬戸内オリーブ基金がこれからも、人と自然の共生を育てる灯りとして希望の種をまき続けてくださることを願っています。香川県も瀬戸内の美しい自然を守り、持続可能な地域づくりを進めてまいります。」

真鍋元香川県知事の祝辞を読み上げる岩城理事長

真鍋元香川県知事の祝辞を読み上げる岩城理事長

元・香川県知事 真鍋武紀さん
「この基金は、歴史と伝統文化を有し風光明媚な瀬戸内海を子孫に継承していくためその環境保全と再生に取り組む活動に助成するとともに、環境教育活動を熱心に実践してきた結果、多くの人々の環境意識の向上と瀬戸内海の緑化と再生に多くの成果を上げてきました。関係者の皆様の熱意とたゆまぬ努力に敬意を表します。」

豊島事件を語り継ぐ。解決に尽力した専門家とメディアが果たした役割

ゲストによる特別講演では、「豊島事件」を教訓とした未来への課題が提示された。

これまで国内外で行ってきた公害や化学物質による環境汚染調査について紹介する熊本学園大学教授・中地重晴さん

これまで国内外で行ってきた公害や化学物質による環境汚染調査について紹介する熊本学園大学教授・中地重晴さん

一人目の登壇者は熊本学園大学教授の中地重晴さん。日本における公害や化学物質による環境汚染の歴史と現状を分析してきたスペシャリストであり、住民側に立つ研究者として「豊島事件」の最終解決にも尽力した。1994年から事件に関わり、2017年廃棄物の撤去が完了した後も、まだ残る地下水汚染の浄化を見守り続けてきた。2025年には地域医療・福祉分野で優れた功績を挙げた人物を表彰する「若月賞」を受賞している。
「この先重要なのは、『豊島事件』の教訓を生かした環境教育と、住民が問題を理解して積極的に活動していくこと。オリーブ基金の活動を通して、島外からも力を合わせて努力を続ける必要がある」と、未来への展望を語った。

当時を振り返りながら、熱のこもった講演をする元「豊島事件」弁護団副団長の大川真郎さん

当時を振り返りながら、熱のこもった講演をする元「豊島事件」弁護団副団長の大川真郎さん

続いて「豊島事件」弁護団の元副団長の大川真郎さんが登壇。2025年6月に上梓した書籍『よみがえる美しい島 産廃不法投棄とたたかった豊島の五〇年』の出版記念講演でもある。
1993年に公害調停に立ち上がってから、最初はどのメディアにも取り上げられず悲惨な状況だったこと。誰もが香川県には勝てないと思っていた時に、弁護団長・中坊さんが「本当に最後まで闘うのか」と住民に覚悟を問い、それに応えた一人ひとりの決意が固い結束を生んだこと。そしてその揺るぎない団結が世論を動かし、勝利を勝ち取った軌跡を熱弁した。

〈豊島〉産業廃棄物不法投棄跡地にある「豊島のこころ資料館」。廃棄物対策豊島住民会議の事務局長・安岐正三さんは、訪れた人々に事件を語り継いでいる

〈豊島〉産業廃棄物不法投棄跡地にある「豊島のこころ資料館」。廃棄物対策豊島住民会議の事務局長・安岐正三さんは、訪れた人々に事件を語り継いでいる

「国が動き、法律も変わった。大量消費、大量廃棄を変えようと、国民の考え方も変わった。これは〈豊島〉住民が主体的に取り組んだことの結晶なんです。今後、豊島を環境学習の“学びの島”にしていくため一番大事なことは、できるだけ多くの人に〈豊島〉に来てもらい、事件のことを知ってもらうこと。これを続けるために、『瀬戸内オリーブ基金』の活動が絶対に必要です」と、力のこもった大川さんの言葉に、目頭が熱くなる参加者の姿も見られた。

また、大川さんの講演の中でも強調されたのが、メディアの力だ。新聞を始めとするメディアが「豊島事件」を取り上げ始めたことで、世の中が事件の存在に気づき、〈豊島〉の外からも行く末を見守る人々が出てきた。そのことがやがて世論を変え、事件を解決に導いた。会場で配布されたパンフレットの巻末には、16名の記者たちが寄稿した「メディアが見た豊島事件」という文集が綴じられている。

山陽新聞の編集委員・影山美幸さん。高松支局の記者として「豊島事件」を追い続けた

山陽新聞社総務局局次長・影山美幸さん。高松支局の記者として「豊島事件」を追い続けた

そのメディアの一人が、山陽新聞社総務局局次長・影山美幸さん。1998年〜2000年まで、高松支局の記者として「豊島事件」を追い続けた人物で、2000年6月の調停成立の時にもコラムを書いた。式典で配られた「25周年記念冊子」に寄稿したコラムの中で、影山さんは「豊島が教えてくれたこと」と題し、こんなことを綴っている。

“人間は弱く、国も自治体も間違える。法律も完全ではない。間違ったら改め、過ちから学ばなければならない。自分が出したごみの行方に思いをはせることができる人は、未来を考えることができる。(中略)私利私欲でなく、次世代のためにと立ち上がり、行動した豊島の人たちのことを伝え続けたいと思う。”
(「25周年記念冊子」巻末付録「メディアが見た豊島事件」より)

広がる環境教育の輪。4つのサポーター企業が実践中の取り組みを語る

「瀬戸内オリーブ基金」はこれまで多くの法人サポーターに支えられてきた。

「地域と社会が育む、環境教育のこれから〜企業・教育機関とともに描く協働のかたち〜」と題した、トークセッションでは、「瀬戸内オリーブ基金」を支援する法人サポーター企業の代表や、助成を受けて環境教育を実践する団体が集まり、それぞれの立場で感じている“環境教育の重要性”を語り合った。

トークセッションの様子。左から、ファシリテーターとして登壇したシェルバ英子さん(株式会社ユニクロ)、池内正晴さん(学校法人聖パウロ学園)、本宮炎さん(NPO法人三段峡-太田川流域研究会)、村石百香さん(株式会社大創産業)、岡田恵治さん(株式会社ファーストリテイリング)

トークセッションの様子。左から、ファシリテーターとして登壇したシェルバ英子さん(株式会社ユニクロ)、池内正晴さん(学校法人聖パウロ学園)、本宮炎さん(NPO法人三段峡-太田川流域研究会)、村石百香さん(株式会社大創産業)、岡田恵治さん(株式会社ファーストリテイリング)

登壇したのは、村石百香さん(株式会社大創産業)、池内正晴さん(学校法人聖パウロ学園)、岡田恵治さん(株式会社ファーストリテイリング)の法人サポーター3名と、「瀬戸内オリーブ基金」の助成先団体から本宮炎さん(NPO法人三段峡-太田川流域研究会)、ファシリテーターとして、「瀬戸内オリーブ基金」運営委員のシェルバ英子さん(株式会社ユニクロ)。

学校法人聖パウロ学園は、2018年から「瀬戸内オリーブ基金」の法人サポーターとして支援していたが、近年は、生徒たちに向けた環境教育に力を注いでいる。中学1年生が実際に〈豊島〉を訪れ、産廃跡地の見学や海岸清掃に参加したり、2025年からは同じく法人サポーターである東レ株式会社と共に、同社の滋賀工場でグループワークを行うなど、新たな取組みも始まった。池内さんは〈豊島〉での実習について、「教科書やインターネットではなく、現場を見ることで生徒たちが受けるインパクトは大きい。ショックが大きいぶん『自分たちになにができるかな?』と、生徒たちが自分事として考えることができるようになっているのを感じます」

実際に現場を訪れることの重要性は、株式会社ファーストリテイリングの岡田さんも感じていた。
ユニクロとGUでは全国の店舗に「瀬戸内オリーブ基金」の募金箱を設置している。募金のゆくえを正しく理解する場として、従業員による〈豊島〉でのボランティア活動を毎年実施している。「自分の言葉でお客様に取り組みを伝えられることが重要で、そのために現場体験は大切だと考えています」と岡田さんは話す。

2024年から「瀬戸内オリーブ基金」の法人サポーターとなった株式会社大創産業でも、社員とその家族が一緒に〈豊島〉を訪問し、オリーブ収穫などのボランティアを行うなどの活動を実施。企業として環境学習に取り組む意義について、村石さんは、このように話した。「私が期待しているのは、環境学習を通して得た気づきが、社員一人一人の具体的なアクションに繋がっていくことです。ひとりの従業員が意識し始めれば、それが他の社員やお客様にも伝播していくのではないかと思います。社会貢献をしている素敵なNPO法人を支援していることを伝えていくことで、社員が自社のことを誇りに持ってくれることへも繋がると思っています」

「瀬戸内オリーブ基金」の助成を受けるNPO法人三段峡は、フィールドでの環境学習プログラムを運営しながら、植林された森を自伐林業を通じて持続可能な天然林に変えていく「渓畔林再生プロジェクト」に取り組む。本宮さんは、環境学習のバトンを未来へ繋いでいく“次世代”の人材を育成している人物だ。「次の世代が環境に関する学びを人々へ伝えられる、伝道師的な人材を育てていきたい。そのためオリーブ基金さんの支援は現場の力になる」と話し、環境教育を続けるには、社会全体の力が必要不可欠であることを訴えた。

それぞれの活動実例を語る登壇者たち

それぞれの活動実例を語る登壇者たち

環境教育を継続していくにあたり、「瀬戸内オリーブ基金」が掲げたのは次の3つのキーワード。
1. 「豊島事件」の教訓を伝え続ける
2. 地球の未来を考えられる人を育てる
3. with fun

自然を壊すのは簡単だが、再生させるのは難しい。だからこそ、地球の未来に想像力を持って行動できる、次世代の指針となるような人を育てていきたい。そして、その学びを停滞させず続けていくためには「楽しさ(fun)」の要素も必要だ。

ファシリテーターを務めていたシェルバさんは「『豊島事件』は環境教育だけではなく、平和教育にも繋がる。世界に目を向けるきっかけをオリーブ基金が提供したい。助成先の活動のことももっと知ってもらえるようにする」と、今後の展望を語り、セッションを締めくくった。

「豊島事件」と向き合ってきた人たちの想いや歩みを、これからの未来へ受け継いでいくこと。そして、目の前の自然の尊さを知り、自分が出したごみの行方にまで思いを巡らせること。環境を守る大切さを自分の問題として伝えられる人を育てること。
環境教育は、豊かな地球を守るために、世代から世代へと手渡されていく、終わりのないバトンリレーのようなものだ。

このリレーを支えているのが、活動を資金面で支える法人サポーター、教育の現場で学びを広げる学校法人、そして、その支援を受けて実際に環境保全に取り組む助成団体。
「瀬戸内オリーブ基金」を中心に、次の世代へとバトンをつなぐ、前向きな循環が生まれている。

「瀬戸内オリーブ基金」の未来。次の25年に掲げる3つの目標と新しい取り組み

〈豊島〉には継続的にボランティアスタッフを派遣。10月には個人/法人サポーターが参加できるオリーブ収穫祭も行われた

〈豊島〉には継続的にボランティアスタッフを派遣。10月には個人/法人サポーターが参加できるオリーブ収穫祭も行われた

式典の最後には「瀬戸内オリーブ基金」の未来について語られた。次の25年に向けて、すでに新しい企画も動き出しているという。

「豊島事件」の歩みを記録する書籍の出版
「豊島事件」の弁護団および住民運動の30年の歩みを記録した書籍の制作。2024年の春から取り組んでおり、完成に近づいている。2026年度の出版に向け、現在まとめ作業を進めている。

法人サポーターとの新たな協働

写真提供:株式会社大創産業

写真提供:株式会社大創産業

法人サポーターである、株式会社大創産業が運営するStandard Products では、〈豊島〉で収穫されたオリーブを使ったスキンケアシリーズを2025年11月にリリースした。身近なプロダクトを通して、「瀬戸内オリーブ基金」や〈豊島〉の存在を周知していく狙いだ。

新しいロゴマークの誕生

新しいロゴマーク

式典のフィナーレでは、新しいロゴマークがお披露目された。「平和と知恵」という花言葉のあるオリーブと、瀬戸内海の自然の豊かさを示すスナメリがデザインされており、株式会社ファーストリテイリングより無償提供された。

また今後は、①日本で一番応援したくなる環境NPOになる、②日本で一番ユーザーフレンドリーな助成団体になる、③日本で一番働きやすい環境NPOになる、という3つの目標を掲げ、これまで以上に活動の透明性と、発信活動に注力していくと岩城さんは話す。PayPayで募金活動が可能になり、より多くの人々が活動を支援することもできるようになった。

瀬戸内オリーブ基金を支援する:https://congrant.com/project/olivefoundation/20593

瀬戸内の自然がこれからも引き継がれていくように、そして同じような悲劇が二度と起こらないように。〈豊島〉での植樹活動やストーリーテリングはもちろん、教訓を生かした環境教育にもさらなる力を注いでいかなくてはいけない。「瀬戸内オリーブ基金」はすでに新たな一歩を踏み出している。

2026年の現在、世界的なSDGsへの意識の高まり、気候変動への危機感など、日本における環境リテラシーは高まりつつある。
しかし、そうした流れの背後には、豊島事件の経験が静かに息づいている。島民が声を上げ、弁護団の支えを受けながら闘い、日本の法律や社会の仕組みを変え、大量消費・大量廃棄のあり方を見直すきっかけをつくった。
「瀬戸内オリーブ基金」が取り組む環境教育は、「豊島事件」の教訓を一人一人の心に届けるとともに、決して途絶えさせてはいけないものなのだ。

「瀬戸内オリーブ基金」が守る瀬戸内海の自然という鏡に、自分自身の日常を映してみる。
目の前の景色は美しいだろうか。自分の行動が、この景色を壊していないだろうか。

個人の意識の一つ一つはやがてあの瀬戸内海に、そして地球全体の環境へと広がり、時を超えて未来へ繋がるはずだ。「瀬戸内オリーブ基金」の25年の歩みを知り、自分も新たな一歩を踏み出せたようだった。

※記事内の写真の一部は、取材先より提供していただきました。

information

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瀬戸内オリーブ基金

所在地:香川県小豆郡土庄町豊島家浦3837-4

Web:https://www.olive-foundation.org/

Instagram:https://www.instagram.com/olive_foundation/

瀬戸内オリーブ基金を支援する:https://congrant.com/project/olivefoundation/20593

計画で終わらせない地方創生。「実現」まで伴走する、さとゆめの思想と実践|コロカルアカデミー Vol.11

地域の暮らしや文化に根ざした新しい学びの場「コロカルアカデミー」。
その第11回となる今回は、地域創生を“理念”ではなく“事業”として成立させ続けてきた実践者、株式会社さとゆめ 代表取締役社長 嶋田 俊平さんをゲストに迎えます。

「すべての人がふるさとに誇りを持ち、ふるさとの力になれる社会をつくる。」

このビジョンを“言葉”にとどめず、計画から実装、そして継続可能な事業として地域に根づかせる。本セミナーでは、さとゆめがこれまで手がけてきた数々のプロジェクトを手がかりに、地域創生コンサルティングの本質を掘り下げます。なぜさとゆめは、実現までやり切れるのか。

嶋田さんが一貫して大切にしてきたのは、
●「計画」ではなく「実現」まで責任を持つこと
●ミッション・ビジョンを“旗”として掲げ続けること

山梨県小菅村

山梨県小菅村で展開する、「700人の村がひとつのホテルに」という発想から生まれた分散型ホテル〈NIPPONIA 小菅 源流の村〉、そして JR東日本 との共同事業「沿線まるごとホテル」プロジェクト。いずれも、地域の資源・人・関係性を丁寧に編み直し、“心が動く体験”を起点に事業を成立させてきた実例です。

「沿線まるごとホテル」プロジェクト

本セミナーでは、
●さとゆめ立ち上げの背景と、これまでの歩み
●さとゆめとは何か。地方創生コンサルティングの思想
●理想と現実のギャップに、どう向き合ってきたか
●「ふるさと=情緒が形成された場所」という独自の定義
●小さな組織だからこそ、ムーブメントを目指す理由

といったテーマを軸に、“地域で事業をつくる”ための思考と覚悟を共有します。

さらに、
●仲間の集め方・採用の考え方
●人を惹きつける力の源泉
●「沿線まるごとホテル」プロジェクトにおける視点と裏側

など、これから地域に関わる仕事をしたい人にとって、実践的なヒントが詰まった時間となるはずです。

◼️概要
コロカルアカデミー Vol.11
「計画で終わらせない地方創生。「実現」まで伴走する、さとゆめの思想と実践」
日時:2026年3月4日(水)15:00〜16:00(14:50開場)
応募締切:2026年3月3日(火)11:59
形式:Zoomウェビナー
参加費:無料(要事前申込)

◼️コロカルアカデミーとは
ローカルを舞台に活躍する人々のリアルな情報を通して、日本の魅力を再定義するウェビナーシリーズです。地域を活性化させるために働きたい方、ローカルでビジネスを始めたい方、自治体や企業で地域創生に携わる方に向けて、新たなヒントを提供します。

いままでのコロカルアカデミーはこちら

登壇者は、地域の文化資産や資源を掘り起こし、その価値を世界に伝える新しいリーダーたち。ローカルビジネスにおける強みと課題、問題解決のプロセス、未来を変える次の一手についてもリスナーの皆さんと一緒に考えていきます。

◼️こんな方におすすめ
●地方創生・観光・まちづくりに携わる自治体・企業関係者
●地域を舞台に、事業やプロジェクトを立ち上げたい方
●コンサルティングやプロデュースの仕事に関心がある方
●ミッション・ビジョンを軸にした組織づくりを学びたい方
●「想い」を「事業」に変えるプロセスを知りたい学生・若手社会人

【登壇者プロフィール】

嶋田 俊平

嶋田 俊平(しまだ・しゅんぺい)
株式会社さとゆめ 代表取締役CEO
京都大学大学院農学研究科森林科学専攻修了。環境系シンクタンク勤務を経て、2013年に株式会社さとゆめを設立。地方創生の戦略策定から商品開発、販路開拓、店舗立ち上げ、観光事業運営まで、地域に一気通貫で伴走する事業プロデュースを行う。
山梨県小菅村「NIPPONIA 小菅 源流の村」、JR東日本との「沿線まるごと」事業、HISとの「Destination Create Project」など、全国各地で多数のプロジェクトを手がける。

杉江宣洋

杉江宣洋(すぎえ・のぶひろ)
コロカル編集長/MAGAZINEHOUSE CREATIVE STUDIO ブランディングプロデューサー
1997年マガジンハウスに入社。『anan』編集部を経て、2008年『BRUTUS』配属、10年同誌副編集長に。『BRUTUS』では「居住空間学」(インテリア特集)「音楽と酒」シリーズなどをヒット企画に育てた実績を持つ。また、「桑田佳祐」「山下達郎」「松本隆」「スタジオジブリ」などの特集も担当。2022年Hanako編集長就任。2025年より現職。

【注意事項】
・本イベントはオンライン開催です。
・音声や映像の乱れが生じる場合があります。
・録画・録音・再配信はご遠慮ください。

「豊島事件」を教訓に 次世代へ美しいふるさとを託す

香川県の〈豊島〉に大量の産業廃棄物が不法投棄された「豊島事件」。この事件を教訓とすべく、「瀬戸内オリーブ基金」は今新たな試みを開始した。連載第3回となる今回は、「瀬戸内オリーブ基金」の25年にわたる歩みを振り返り、現在取り組んでいる活動とこれからの展望について話を伺った。
(「豊島事件」についてはVol.2の記事へ)

島民の想いと希望をオリーブに込めて

【瀬戸内海が持つ環境的・文化的・歴史的価値を見直し、植樹活動によって破壊された自然を回復し、「美しいふるさと」瀬戸内海を次の世代に引き継ぐ】

この目的を実現させるために「瀬戸内オリーブ基金」が、設立されたのは2000年11月のこと。

「安藤さん、豊島のゴミを処理するだけではダメだ。かつての緑豊かな島に戻さなければならない」

「豊島事件」公害調停を闘った弁護士・中坊公平さんが以前から付き合いのあった建築家・安藤忠雄さんにこう声がけをした。安藤さんは、阪神・淡路大震災の復興への取り組み『ひょうごグリーンネットワーク』という被災地の緑化活動を続けており、植樹についてのノウハウを持っている、うってつけの人物でもあった。中坊さんは、〈豊島〉の問題を〈豊島〉のみととらえず、日本の「環境破壊を見ないふりして成立してきた社会」の負の象徴であると位置づけ、瀬戸内の自然を取り戻すことこそが、日本の、そして世界の人々の環境に対する意識を変えるきっかけになると考えた。

第1回の記念植樹式の様子(提供:廃棄物対策豊島住民会議)

第1回の記念植樹式の様子(提供:廃棄物対策豊島住民会議)

2000年11月15日、〈豊島〉で開催された第1回の記念植樹式では、中坊さんと安藤さんが豊島の小中学生とともに、オリーブの苗木1000本を植樹。「瀬戸内オリーブ基金」は、瀬戸内の里山・里海を守る活動を支援し、100万本の木を植える目標を掲げる。現在は、ユニクロをはじめ、様々な企業や個人が支援をしている。

「排出事業者が廃棄物を委託する際の責任の明確化と、不法投棄の未然防止を目的に実施される『マニフェスト制度』の導入により、不法投棄が社会的に非難される行為として認識されるようになったのは、『豊島事件』が社会に与えた大きな影響です」と語るのは、弁護団の一人として豊島事件の公害調停に関わり、現在は、同基金の理事長をつとめる岩城裕さん。その一方で、豊島住民たちの粘り強い闘いが一部で「住民エゴ」と批判されることもあったそう。しかし、想像してみてほしい。もし豊島住民たちの小さな、そして長い闘いがなかったならば、現代も、効率と利益を最優先する経済原理に基づいた、ゴミが大量に廃棄される社会のままだったかもしれないことを。

「我々『瀬戸内オリーブ基金』のビジョンは、人と自然が共存する持続可能な社会を目指すことです」

現在、「瀬戸内オリーブ基金」は、4つのプログラムを軸に活動をしている。

オリーブの樹と豊かな自然の象徴、スナメリをモチーフにした「瀬戸内オリーブ基金」のスタッフユニフォーム

オリーブの樹と豊かな自然の象徴、スナメリをモチーフにした「瀬戸内オリーブ基金」のスタッフユニフォーム

1. 【助成プログラム】
「瀬戸内オリーブ基金」の理念に賛同する、法人・個人サポーターからの寄付金を元に、瀬戸内海エリアの環境保全と再生に取り組む団体に、原資となる資金を助成。瀬戸内海エリアの環境保全と再生を目指す。
現在までに3億円以上の資金助成を行ってきた。豊かな環境を日本のふるさととして次世代に引き継ぐことを目的に、瀬戸内の山・森・川・海や、そこに生きる生きものを守る活動に加え、未来を担う世代が環境について学び、考える機会をつくる取り組みを支援している。

2. 【ゆたかなふるさと100年プロジェクト】
廃棄物の不法投棄によって荒廃した〈豊島〉の処分地の植生を、本来の豊かさを取り戻すことを目指し、自然の営みに寄り添いながら、その回復の過程を手助けする取り組み。「瀬戸内オリーブ基金」の運営委員でもある岡山大学院環境生命自然科学研究科・嶋一徹教授のサポートのもと活動している。
今もなお、処分地には地下水問題が残るため、香川県が管理をし、モニタリングを続けている。将来的に豊島住民の手に戻った後、どのような手助けが有効かを検証しながら、処分地周辺の同じような環境で植生を回復させるための実証実験兼事業を行っている。
ちなみに豊島の中で、植生が破壊された面積は285,000平方メートル、現在までの植生回復活動の実績は3,980平方メートルである。

3. 【ゆたかな海プロジェクト】
「瀬戸内オリーブ基金」では2009年度から、海洋プラごみ問題の解決に取り組んできた。近年では、楽しみながら環境問題に向き合えるように、チーム対抗のゴミ拾い競技「スポGOMI」を開催するなど、企業ボランティアとともに豊島でも海洋清掃に取り組んでいる。2024年からは、瀬戸内海の食物連鎖の頂点にいるスナメリをテーマとした環境学習会も行っている。

4. 【豊島事件語り継ぎプロジェクト】
近年特に力を入れているプロジェクト。事件の経緯や背景を伝える〈豊島のこころ資料館〉の整備をはじめ、「豊島事件」の教訓をアーカイブ化し、残す取り組みを進めてきた。2019年からは「豊島事件」の語り継ぎを取り入れた環境教育も開始。小学生から大人まで幅広い世代を対象に「豊島事件」の学びを伝えている。長い闘争の歴史を語れる人たちが高齢化している課題もあり、世代を問わず多くの方に事件を知ってもらうためにYouTube動画作成などを通じて資料保存と活用にも力を注いでいる。ちなみにこれらの動画は岩城理事長が脚本を書いたそうだ。

豊かな島の自然景観の原状回復、その現場へ

今回、コロカルチームは〈豊島〉を訪れ、実際に「瀬戸内オリーブ基金」の活動を見せていただいた。
「ゆたかなふるさと100年プロジェクト」では、住民や学生、法人など多くのボランティアらとともに、処分地背後の尾根(南側)で植生回復事業を行う。この場所を〈ゆたかなふるさと再生の森〉と命名し、元の植生を再現した見本園の整備や、地元の小中学生との植樹活動などを通じ、攪乱された処分地の再生を一歩ずつ進めている。

1970年代にガラス原料の珪砂を採取するため表土が全面的に除去されたが、産業廃棄物は投入されなかった場所。自然植生を回復させる活動を行う嶋教授は右から4人目

1970年代にガラス原料の珪砂を採取するため表土が全面的に除去されたが、産業廃棄物は投入されなかった場所。自然植生を回復させる活動を行う嶋教授は右から4人目

「自然を取り戻す方法はいくつかあると思います。例えば東京の夢の島。あそこはかつて、ゴミ捨て場でしたが今は立派な公園ですよね。それも緑が戻っていると言えると思います。しかし豊島の住民が考えているのは、新しく緑を造成するのではなく、元通りの自然に戻してほしいということ」と、嶋教授。

40年近く放置されてきた土地は一見すると緑が生い茂って豊かな自然に回復されたように見えるが、住民は「元通りの自然ではない」と言う。それは一体、何が違うのか。
「調査してみたら、植物の多様性が非常に乏しいのです。表土が残された、もしくは堆積した場所では樹木が生育しているけれど、処分地やその周辺のように表土がほとんど残っていない場所は、いつまでも雑草が繁茂して遷移が全く進んでいません。このまま100年、200年放置したら、元通りに戻るかもしれないけれど、私たちが『少しだけ手を加える』介入をすることで、遷移の流れに沿って植生の回復が少し早く進むようにしているのです」

実施中の取り組みの中で最も労力のかかる作業の一つは、やっと土地に侵入できた小さい実生を残しつつ、林床に日差しが届くように、繁茂した雑草を人手で除去する作業。これを3年程度続けると、雑草の生育が少しおさまってくるそうだ。それと同時に、元来の植生が良好に回復している場所の表土を移植し、その表土に含まれる種が発芽出来るように環境を整える。こうした作業の繰り返しによって、多種多様な植生が早く定着できるようにしていく。

「全部芽が出なくてもいいです。たまたま芽が出た植物のうち、その立地環境に合ったものが残ってくれたらいいんです。ゆくゆくは風や鳥などの動物によって運ばれた種子が自然に発芽し、定着できる環境整備を行っています」

あくまで人が自然を造成するのではなく、「手助け」することで自然の回復力を活かして植生を元に戻すのだ。地道な作業の繰り返しだが、それを支えてくれる企業のボランティアにも支えられ、その規模は毎年少しずつ拡大している。

壊すのは一瞬、取り戻すには100年以上。「豊島事件」は、一度破壊された自然を回復させるには途方もない時間と多くの労力がかかることを教えてくれている。

再生を目指す土地の実生の生残率・樹高成長・種の多様性などをモニタリングし分析する

再生を目指す土地の実生の生残率・樹高成長・種の多様性などをモニタリングし分析する

「瀬戸内オリーブ基金」を支えるサポーターが楽しめる体験も

「瀬戸内オリーブ基金」は、理念に賛同し、「私たちに何かできることはないか」と声をかけてくれた多くの個人や企業・団体の存在に支えられている。彼らが「サポーター」となり、年会費などによる寄付やボランティアで活動を支える。法人サポーターの企業の中には、環境教育の一環として豊島でのボランティアへ参加し、現地で体験してきたことを社員間で発表するなど、学びの共有が行われている。その結果、社会貢献活動への意識が向上しているという。

2025年10月24日には、サポーター向けの『オリーブ収穫祭』が開催された。

オリーブ収穫祭でオリーブの実を摘む参加者。環境教育の一環として参加者を募るサポート企業も多い

オリーブ収穫祭でオリーブの実を摘む参加者。環境教育の一環として参加者を募るサポート企業も多い

〈豊島〉で栽培しているのは、2000年以降、全国から集まった寄付金によって植えられたオリーブ。成長にあわせた間伐などを経て、現在は約600本が大切に管理されている。このオリーブ収穫体験とともに、〈豊島のこころ資料館〉、かつての不法投棄の現場、そして〈ゆたかなふるさと再生の森〉を見学した。

収穫されたオリーブは24時間以内に島内の小さな搾油場で搾られ、エキストラバージンオリーブオイルや、そのオイルを使った石鹸や美容オイルとして商品化し、主に島内のお土産店や美術館で販売。売り上げは瀬戸内エリアの自然を守る活動に使われている。

収穫されたオリーブは24時間以内に島内の小さな搾油場で搾られ、エキストラバージンオリーブオイルや、そのオイルを使った石鹸や美容オイルとして商品化し、主に島内のお土産店や美術館で販売。売り上げは瀬戸内エリアの自然を守る活動に使われている。

参加したサポーターは、「オリーブの実を丁寧に摘み取る作業はとても楽しかったです。『豊島事件』への学びを深め、自然と人の共生や環境保護の大切さ、そして『瀬戸内オリーブ基金』の活動の一端を間近に感じることができました。一部の社員だけでなく、家族や友人にも〈豊島〉に行ってほしい」と、語った。

活動を支える次世代の力

「瀬戸内オリーブ基金」の事務局メンバー。左から松澤千穂さん、清水萌さん、塩川ゆうりさん

「瀬戸内オリーブ基金」の事務局メンバー。左から松澤千穂さん、清水萌さん、塩川ゆうりさん

「瀬戸内オリーブ基金」設立から25年、これまで様々な人材がこの活動に関わってきた。そして、現在、事務局の中心となるのは「3人娘」と、地元の人からも愛されている3名の女性。それぞれがそれぞれの想いやきっかけを持ち、そしてライフステージに合わせた持続可能なスタイルで、「瀬戸内オリーブ基金」の活動を支えている。

塩川ゆうりさんは、自然の中で働きたいと仕事を探している時に「瀬戸内オリーブ基金」と出会った。3年間〈豊島〉に住んだのち、現在は結婚して埼玉に移り、リモートで事務局の仕事をしつつ、定期的に〈豊島〉に通っている。
清水萌さんは父親が弁護団の一員(清水善朗弁護士)だったこともあり、幼い頃から〈豊島〉を訪れていたが、当時は事件について深く知ることはなかったという。改めて「豊島事件」について学び、子どもの頃に可愛がってくれていた島の人たちが、ふるさとを取り戻すために闘っていた事実を知ったことが、活動に関わるきっかけとなった。今は結婚し、子育てをしながら週に1、2回、岡山から船で〈豊島〉まで通っている。
そして、3名の中で一番新しいメンバー、石川県出身の松澤千穂さん。昔から夢だった自然や環境保全に関わる仕事がしたい、島で暮らしてみたいと思い立ち、2025年1月に〈豊島〉へ移住。現在、3名の事務局の中では唯一の島暮らしとなる。

様々な経歴ののち「瀬戸内オリーブ基金」に関わることになった皆さんを惹きつける、この仕事のやりがいは何なのか。
「『豊島事件』を遠くで起きた事として終わらせてほしくなくて、自分にも起こりうることだと知ってもらいたいんです。島外の子どもたちが〈豊島〉に学習に来て、その思いが伝わった時に、やっていて良かったなと思います」と塩川さん。

オリーブ収穫祭で参加者へオリーブオイルができるまでの工程を説明する塩川さん。オリーブの維持管理には地元の方との密なコミュニケーションが欠かせない

オリーブ収穫祭で参加者へオリーブオイルができるまでの工程を説明する塩川さん。オリーブの維持管理には地元の方との密なコミュニケーションが欠かせない

また、島の人たちとの関わりも活動の原動力だと3人は話す。
小さい島だからこそ、都会とは違った親密な人間関係を築くことができ、困り事は親身になってくれるし、農作物をいただくなど、交流もよくある。しかし、彼女らが生活を共にしている島民は、「豊島事件」で傷ついた人、戦った人たちだということを忘れてはならない。世間を騒がせた事件であることから様々な批判も受け、それでも一生懸命島を守った人たちなのだ。ふとした会話の中で、その葛藤の歴史を口にした島の方が涙を流す場面もあるという。だからこそ、常に誠実なコミュニケーションを心がけ、「私たちに何ができるか、何が求められているか」を模索している。

「応援してくださる島のみなさんのために、『豊島事件』を風化させたくない。今後、この学びを活かせるよう、次世代へ教訓として伝えていきたい」
と、3名は声を揃える。しかし現実には、豊島事件に当事者として関わってきた方々の高齢化も進み、どうこの教訓を伝えていくか試行錯誤を重ねている。島の中で様々な意見もある。「教訓を伝える」と言っても、当事者の語りを遺したり、当時の資料の収集・劣化対策の作業に加え、環境教育としての学びを体系化する取り組みも同時進行し、これまで以上に多くの協力者の支えが必要だと感じているという。

「活動への理解が深まり、応援してくださる方が一人でも増えるよう、支え合う仲間たちとこれからも頑張っていきたい」
島民の心に寄り添う若い力が大きな推進力となり、瀬戸内海の豊かな自然を未来へつなぐ活動は今日も、そしてこれからも続いていく。

支援の形は、個人でも法人でも、オンラインから自分に合ったタイミングで選ぶことが可能だ。 瀬戸内海の自然を次世代へつなぐために。あなたに合った方法で、この活動を支えてみてはいかがだろうか。
「瀬戸内オリーブ基金」の支援はこちらから
https://congrant.com/project/olivefoundation/20593

香川県の豊島

information

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瀬戸内オリーブ基金

所在地:香川県小豆郡土庄町豊島家浦3837-4

Web:https://www.olive-foundation.org/

Instagram:https://www.instagram.com/olive_foundation/

瀬戸内オリーブ基金を支援する:https://congrant.com/project/olivefoundation/20593

【見逃し配信あり】 建築からまちを変える。藤原徹平さんが描く、地域の風景と暮らしの未来 | コロカルアカデミー Vol.8

日本のローカルの魅力を発信する「コロカル」は、新たなウェビナー講義シリーズ「コロカルアカデミー」の第8回を開催しました。今回のテーマは「建築とまちづくり」。

ゲストには、元・隈研吾建築都市設計事務所の設計室長として数々の国内外プロジェクトを牽引し、現在は〈フジワラテッペイアーキテクツラボ〉を主宰。さらに、横浜国立大学大学院Y-GSA准教授として後進の育成にも尽力されている建築家・藤原徹平さんをお迎えしました。

藤原さんが手がけるのは、単なる建物ではありません。その周囲に広がるランドスケープや、人々の営みまでを含めた「地域の風景」そのものをデザインする仕事です。今回は、そんな藤原さんが大切にしている〈場所の哲学〉について、じっくりと語っていただきました。

見逃し配信を視聴したい方は、以下よりお申し込みください。

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藤原 徹平(ふじわら・てっぺい)

藤原 徹平(ふじわら・てっぺい)

建築家/株式会社フジワラテッペイアーキテクツラボ主宰/横浜国立大学大学院Y-GSA准教授/一般社団法人ドリフターズインターナショナル理事

横浜生まれ。横浜国立大学にて建築学、都市計画、映画批評を学ぶ。大学院修了後、隈研吾建築都市設計事務所にて国内外100以上のプロジェクトに設計室長として携わる。2012年より横浜国立大学に着任。並行してフジワラテッペイアーキテクツラボを主宰し、建築、都市開発、ランドスケープデザイン、アートプロジェクトなど、領域横断的に活動している。主なプロジェクトに、小浜ヴィレッジ、クルックフィールズなど。

場所の未来をひらく営み

場所の未来をひらく

講座は、普段から大学で教鞭を執る藤原さんによる、軽やかな自己紹介から始まりました。

自らを「場所の専門家」と語る藤原さん。活動の軸にあるのは、常に「根っこ」に目を向ける姿勢だといいます。

その眼差しは、自分自身にも、プロジェクトにも、そして土地や場所そのものにも向けられています。

藤原さんが語る「根っこ」と対極にあるのが、「ハコ」や「ハコモノ」という言葉。つくられた建物が土地と結びついていない状態を揶揄する表現だといいます。

そうではなく、土地と建築を結びつけ、その土地が本来持つポテンシャルを生かすこと。建築とランドスケープを弁証的(対立する概念を取り入れ、より高次の理解や解決へ導くこと)に絡み合わせながら、その場所ならではの風景を立ち上げていく。

温和な語り口の奥に、内側からにじむ強い哲学が感じられ、講座への期待が高まっていきます。

「ゆっくりつくる」ことを選んで

場所の未来をひらく

隈研吾建築都市設計事務所で13年間の経験を積んだ後、藤原さんは独立の道を選びました。

その背景にあったのは、「止まれない状況の中で、創造性を発揮するのは難しい」という実感だったそうです。

そうした思いから、「止まること」を一つのテーマに掲げて歩み始めたのが、フジワラテッペイアーキテクツラボ(FUJIWALABO)でした。

同ラボが手がけるのは、単なる建築設計にとどまりません。ランドスケープのデザインまで含め、場所全体を捉え直すアプローチを特徴としています。

建築を小さくすれば庭が大きくなり、建築を大きくすれば庭が小さくなる。

敷地という動かせない条件の中に、建築と庭の関係性を持ち込み、場所をより動的に捉え直していく。その視座は、聞く者に新鮮な刺激を与えます。

設計とは、単に建物の構成を考えることではありません。

場所特有の風や光、佇まいといった要素を丁寧に読み取り、詳細なリサーチを踏まえた上で基本構想を練り上げていく。その姿勢は、極めて物質的でありながら、同時に形而上学的でもある、不思議な営みに映ります。

さらに印象的だったのは、こうした「構想を練ること」自体を設計とは切り分け、契約として成立させている点です。このアプローチそのものが、非常に新鮮に感じられました。

土地の可能性を考えるためのアプローチ「ファイブサイト」

プロジェクトは5つの土地(サイト)に建つ

企画や規模が先に決まってしまうと、そこに本当に建つべきものが見えなくなってしまう。

そう語る藤原さんは、設計に入る前段階である「基本構想フェーズ」を何よりも大切にしているといいます。

一つのプロジェクトがどのような場所に立ち上がるのか。その考え方を説明するために紹介されたのが、「5つのサイト(ファイブサイト)」という視点でした。

具体的な内容については講座本編に譲りますが、図からも分かるように、プロジェクトは単なる予算や企画だけで決まるものではありません。

さまざまな想いや状況、環境に拘束されながらも、複数のサイトが重なり合うことで、その場所ならではの何かが立ち現れてくる。そんな示唆に富んだ話が展開されました。

私たちが日々進めている大小さまざまなプロジェクトもまた、単一のロジックだけで押し切れるほど単純ではありません。多様な利害や想い、状況を踏まえながら進められているという事実を、改めて認識させられます。

具体事例から見えてくる、場所づくりの実践

ここからは、藤原さんが実際に手がけた具体的な事例をもとに、話はより実践的な内容へと進んでいきます。

まず紹介されたのは、千葉県木更津市にあるクルックフィールズ。

「農」「食」「アート」「エネルギー」が一体となったこの場所では、水の流れを変えるために土や石の形を組み替え、新たな土地のあり方をつくり直してきました。

環境を見つめ直し、整え、再生していく。そのプロセスは、設計というよりも、一から土地を編み直す営みに近いものとして語られます。

すり鉢、土塁、ホックニー。

風景を気持ちよくするために稜線をデザインし、「ナチュラルに気持ちいいこと」を大切にする。その一つひとつの言葉やフレーズから、藤原さん独自の哲学が立ち上がってきます。

続いて紹介されたのが、鹿児島県の小さな港町・小浜につくられた「小浜ヴィレッジ」。

会社やパン屋などが入るキャンパスを地域に開くにあたり、プロジェクトデザインをあえてゆっくりと進めていったといいます。

土地の宝探しをしながら、銀行や社員も含め、関係者全員が納得できる形を模索していく。

使われていない土地を、どのようなビジョンで育てていくのか。完成後も街の中心となる広場として活動を仕掛けていく。その課題意識と視点は、地域創生を考えるうえでも多くの示唆を与えてくれました。

まとめ|場所の思想を見いだすということ

「歩きながら考える」。

これはQ&Aの中で、藤原さんがふと口にした言葉です。ローカルな場所について考える際の、大きなヒントになる一言だと感じました。

新しい建物や事業を立ち上げるとき、当初抱いていた想いや思想は、現実の予算や納期の中で押し込められてしまうことも少なくありません。

しかし、土地や場所の「根っこ」にこだわり、何度も立ち返り続けることでしか実現できないプロジェクトづくりがある。藤原さんの話を通じて、そんな可能性を強く感じさせられました。

講座本編終了後のQ&Aでは、街を歩くときに意識していることや、契約の方法にまで踏み込んだ具体的な話題も展開されました。

まちづくりに関心のある方、建物とその周辺との関係性について考えたい方、プロジェクトに哲学的・思想的な視点を取り入れたい方に、ぜひおすすめしたい内容です。

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グローバル企業は、地域とどう向き合えるのか。ユニクロが続けてきた 「事業と社会」の接続 |コロカルアカデミー Vol.10

地域の暮らしや文化に根ざした新しい学びの場「コロカルアカデミー」は、今回で第10回を迎えます。主催は、日本各地のローカルの魅力を発信し続けるWebマガジン「コロカル」です。

今回のテーマは、「Global to Local, Local to Global」。世界を舞台に事業を展開する一方で、各地の現場に深く入り込み、グローバルとローカルを行き来しながら、事業と社会課題の両立を実践してきたユニクロ。その歩みをひもときます。

ゲストにお迎えするのは、シェルバ英子さん(ユニクロ サステナビリティマーケティング 部長)。2001年の入社以来、24年にわたりサステナビリティ領域を一貫して担当し、ユニクロの社会貢献活動を、現場の実装レベルで見つめ、支えてきた方です。

Global × Local が一体となる現場

ユニクロではこれまで、「Global is local, Local is global」という考え方を掲げ、各国・各地域のチームとグローバルヘッドクオーターが一体となって、ものづくりや業務の改革を進めてきました。

店舗やECに寄せられる世界中のお客様の声を起点に、ローカルで確かなニーズがあり、同時に世界にも通じる商品をつくっていく。その循環を、ニューヨーク、ロンドン、パリ、上海、東京などに広がるR&D拠点や、長年信頼関係を築いてきた生産パートナー、グローバルな店舗網と会員基盤が支えています。

SNSをきっかけに世界的な人気を集めた「ラウンドミニショルダーバッグ」は、そうした循環を象徴する存在のひとつ。ローカルな使い方や声が瞬く間に世界へと広がり、結果として1,400万点以上が販売されるヒットにつながりました。

その思想が「地域」に向かったとき ― 瀬戸内という現場

この Global to Local / Local to Global の考え方は、商品開発にとどまらず、サステナビリティの実践にも通じています。その象徴的な取り組みが、2001年から四半世紀にわたり支援を続けてきた瀬戸内オリーブ基金です。

日本最大規模の産業廃棄物不法投棄事件「豊島事件」をきっかけに生まれたこの基金は、瀬戸内というひとつの地域で、自然環境の再生と未来への継承に向き合い続けてきました。

ユニクロは、店頭募金という仕組みを通じて、単に支援する立場にとどまるのではなく、地域の現場と長く関係を結び、活動に伴走する道を選んできました。

瀬戸内オリーブ基金の原点となったオリーブの植樹に込められた「これまでの25年」。そして、瀬戸内海の未来を象徴するスナメリに託された「これからの25年」。

グローバルな企業の思想が、地域という具体的な場所で、どのように根づき、続いてきたのか。そのプロセスを、シェルバさんの言葉を通してたどります。

このセミナーで考えたいこと

本セミナーでは、
・グローバルとローカルを切り離さず、どうつないできたのか
・ユニクロと瀬戸内オリーブ基金
・サステナビリティを理念に終わらせず、実装し続けるために何が必要なのか(企業が地域と「続ける」ために必要なこと)
といった問いを、ユニクロの実践を手がかりに考えていきます。

世界と地域を往復しながら働くこと。その先に、どんな未来が描けるのか。地域創生やサステナビリティ、グローバルビジネスに関心のある方にとって、静かに視野が広がる60分になるはずです。

【概要】
コロカルアカデミー Vol.10
グローバル企業は、地域とどう向き合えるのか。ユニクロが続けてきた「事業と社会」の接続
日時:2026年2月4日(水)15:00〜16:00(14:50開場)
形式:Zoomウェビナー
費用:無料(要事前申込)
募集期間:2026年1月30日(金)12:00
※後日見逃し配信あり

【コロカルアカデミーとは】
ローカルを舞台に活躍する人々のリアルな情報を通して、日本の魅力を再定義するウェビナーシリーズです。地域を活性化させるために働きたい方、ローカルでビジネスを始めたい方、自治体や企業で地域創生に携わる方に向けて、新たなヒントを提供します。

いままでのコロカルアカデミーはこちら

登壇者は、地域の文化資産や資源を掘り起こし、その価値を世界に伝える新しいリーダーたち。ローカルビジネスにおける強みと課題、問題解決のプロセス、未来を変える次の一手についてもリスナーの皆さんと一緒に考えていきます。

【本セミナーで学べること】
●企業が地域と長期的な関係を築くための考え方
●瀬戸内オリーブ基金に見る、環境再生の実践プロセス
●募金・参加型施策を「地域の力」に変える設計
●CSRで終わらせない、共創型サステナビリティの条件

【こんな方におすすめ】
●地域創生・環境・観光に携わる自治体・企業関係者
●サステナビリティ/CSR/ESGを担当する方
●ローカルと企業の関係性に関心のある方
●NPO・NGO・地域活動に関わる方
●学生・若手プロフェッショナル

【登壇者プロフィール】

森本聡子

シェルバ 英子(しぇるば・えいこ)
株式会社ユニクロ サステナビリティマーケティング 部長
大学卒業後、外資系アパレル企業などを経て、2001年ファーストリテイリングに入社。同年に発足した、現在のサステナビリティ部の前身「社会貢献室」に配属され、以降24年にわたりサステナビリティ領域を一貫して担当。「全商品リサイクル活動(現:RE.UNIQLO)」や「ユニクロ東北復興応援プロジェクト」、「Clothes for Smiles」など、数々の社会貢献・環境プロジェクトの立ち上げに参画。2020年より、サステナビリティの情報発信を担当。

杉江宣洋

杉江宣洋(すぎえ・のぶひろ)
コロカル編集長/MAGAZINEHOUSE CREATIVE STUDIO ブランディングプロデューサー
1997年マガジンハウスに入社。『anan』編集部を経て、2008年『BRUTUS』配属、10年同誌副編集長に。『BRUTUS』では「居住空間学」(インテリア特集)「音楽と酒」シリーズなどをヒット企画に育てた実績を持つ。また、「桑田佳祐」「山下達郎」「松本隆」「スタジオジブリ」などの特集も担当。2022年Hanako編集長就任。2025年より現職。

【注意事項】
・本イベントはオンライン開催です。
・音声や映像の乱れが生じる場合があります。
・録画・録音・再配信はご遠慮ください。

※お申し込みいただいた方には、後日見逃し配信のご案内をお送りします。
当日ご参加が難しい場合も、ぜひお気軽にお申し込みください。

ゼロから未来をつくっていく。富岡町で動き出した若きプレイヤーたち

福島県の海沿い約100kmに及ぶ地域は「浜通り」と呼ばれていて、そのちょうど真ん中あたりにあるのが双葉郡富岡町。太平洋に面しているので気候は穏やかで、夏には気持ちのいい浜風が吹き、冬は晴れる日も多い。全町避難を経験した東日本大震災からまもなく15年。一度は静まり返ったこの町で、新しい未来を作ろうと奮闘する若い世代が増えている。
どんな人たちがいて、どんなプロジェクトが動き出しているのか。今回は富岡町出身で、現在は南相馬市を拠点に観光業を立ち上げた日下あすかさんにコンタクト。彼女のガイドで、富岡町のかっこいいプレイヤーたちに会いに行った。

浜通りをロードトリップの聖地に。自由気ままなキャンピングカーの旅をつくる
/一般社団法人コトづくり代表理事 日下あすかさん

コルドバンクスというキャンピングカーに乗って、日下さんは富岡駅前にやってきた。7人乗りの車内には広いテーブルやキッチン、5名まで寝られる設備も完備されていて、予想以上に広くて快適だ。

一般社団法人コトづくり代表理事 日下あすかさん

日下さんは富岡町の夜ノ森(よのもり)地区出身。東京の隈研吾建築都市設計事務所で約3年間勤務した後、「浜通りに人を呼びたい」と福島県へUターン。2025年2月から南相馬市で、キャンピングカーを軸にした観光事業をスタートした。

キャンピングカーの中でお話を聞かせてくれた日下あすかさん。東京の建築事務所勤務を経て福島県へUターン。2025年2月に一般社団法人コトづくりを立ち上げた。

キャンピングカーの中でお話を聞かせてくれた日下あすかさん。東京の建築事務所勤務を経て福島県へUターン。2025年2月に一般社団法人コトづくりを立ち上げた。

「設計事務所で働いているときに、富岡町と同じく震災後の原発事故で全町避難になってしまった浪江町の駅前開発を担当したんです。気合いを入れて取り組みましたが、建築の力だけでは町に人を呼び戻すことは難しいと痛感した。こっちに戻ってきて、自分が現地で“人を呼べる人”になろうと思ったんです」

現在取り組んでいるのは、キャンピングカーで巡る浜通りのツアー事業。北は宮城県との県境である新地町から、南は〈スパリゾートハワイアンズ〉で有名ないわき市まで、約100kmもある浜通り。キャンピングカーで車中泊しながら巡れば、各地の見どころが繋がる。日下さんは各町の観光スポットにRVパークを作り、よりその観光コンテンツが楽しめるようにした。実際に周るモデルコースを作ってモニターツアーを開催し、来年度からはいよいよキャンピングカーのレンタル業もスタートする。

「浜通りはロードトリップに最適なんです。大きな道が3本通っているのですが、天気の良い日は海沿いの浜街道を走ったり、秋は山側の山麓線で紅葉を楽しんだり。各町の魅力的なスポットはもちろんですが、まだ知られていないスポットも発見できるかもしれません」

日下さんが富岡町のお気に入りスポットに連れて行ってくれるという。その時に通ったのが、JR富岡駅の横に新しくできた「汐橋(うしおばし)」。国道6号線から浜街道に向かう道路は海に向かってアーチ形に延びていて、車で走ると目の前が海と空でいっぱいになる。富岡町に来たらぜひ走ってみてほしいと日下さん。

到着したのはこぢんまりとした漁港だった。窓を開けると目線の先には海だけが広がる。日下さんが豆を挽き、コーヒーを淹れてご馳走してくれた。こんな特等席で静かな漁港の景色を楽しみながら、温かいコーヒーがいただけるのもキャンピングカーの魅力の一つ。

「キャンピングカーなら、こうして好きな場所で車を停めて、食事やお茶を楽しむことができる。観光で訪れる方にも、このような楽しみ方をしていただきたいんです。キャンピングカーで来る人が増えたらスポット名がついて、ここでお店を開こうかなという人が出てくるかもしれない。そうなったらもう狙っていた通り。短いスパンでもとにかく人を呼んできて、町を体験してもらえる機会を作りたいです」

一般社団法人コトづくり代表理事 日下あすかさん

福島県にUターンして気づいたのは、富岡町には美しい景色と豊かな時間があるということ。
「夜ノ森地区には有名な桜のトンネルもありますし、富岡駅近くにはこの海の景色もある。特に海は震災があったからこそ、特別な景色に変わったんじゃないかなと思います。このエリアは、震災だけを切り取って見ると、悲しい場所のように映ってしまうかもしれません。しかし実際には、震災をきっかけに新しい観光コンテンツが生まれ、少しずつ広がってきました。震災前から受け継がれてきた風景や文化、そして今この土地に芽吹いている新しい観光のかたち。その両方を体感しに、ぜひこの地を訪れてほしいと思います。この美しい町を未来へつないでいくために、これからも自分にできることを考えながら、一歩ずつ取り組んでいきたいです」

取材者情報

日下あすか

一般社団法人コトづくり:https://www.kotozukuri.com/

Instagram:@asuka.kusaka

将来的には世界のトップブランドに。桜の名所・夜ノ森で誕生したデニムブランド
/YONOMORI DENIM 小林 奨さん

次に訪れたのは日下さんが生まれた夜ノ森地区で、2022年に誕生したリメイクデニムのブランド〈YONOMORI DENIM〉のショップ。創業者の小林奨さんは日下さんの同級生だ。

「小学校の担任の先生誰だっけ?」と、昔話に花が咲く日下さんと小林さん。「同い年で地元で起業して頑張っている奨くんみたいな存在は、とっても心強いですし、一緒になにかできたらと思います」と日下さん。お互いに地元を盛り上げようと奮闘する強力な同志だ。

「小学校の担任の先生誰だっけ?」と、昔話に花が咲く日下さんと小林さん。「同い年で地元で起業して頑張っている奨くんみたいな存在は、とっても心強いですし、一緒になにかできたらと思います」と日下さん。お互いに地元を盛り上げようと奮闘する強力な同志だ。

震災後、全町避難で関東に引っ越した小林さん。東京で社会人になりアパレル会社で販売員として働くなかで、業界が抱える大量生産・大量廃棄の問題を知る。環境に配慮したブランドや取り組みをしたいという思いと、地元の雇用を創出したいという思いが重なり、夜ノ森で〈YONOMORI DENIM〉を立ち上げた。

もともとはサッカーをやっていたが、怪我で引退。次に好きだったのがファッションだったという小林さん。起業もいつかはしたいと思っていたそうだ。

もともとはサッカーをやっていたが、怪我で引退。次に好きだったのがファッションだったという小林さん。起業もいつかはしたいと思っていたそうだ。

「地元がすごく好きなんです。県外に出てその思いが一段と強くなりました。僕は不便な生活に魅力を感じるみたいで、関東だと何でも苦労せず手に入っちゃうのが面白くなかったんですよね(笑)」

〈YONOMORI DENIM〉で扱うのは、リーバイスの名デニム、501のみ。東京の協力会社(株式会社ヤマサワプレス)が廃棄寸前のデニムを回収、それをYONOMORI DENIMで洗浄・解体などをし、パーツごとに加工。また〈One-o-Five〉というブランド名で、古着デニムをリメイクしたパンツやジャケット、小物なども販売。
「将来的には職人ブランドとして、世界中で『デニムと言えば〈YONOMORI DENIM〉だよね』と言われる存在になりたいです。小さなアトリエから始まった……というストーリーで」

デニムを選んだのは老若男女、世代問わずで履けるほど丈夫な素材だから。たとえパンツとして履けなくなっても、たくさんの端切れを合わせれば新しい服や小物に生まれ変わる。それはたくさんの人の力が集まれば、富岡町が復活するという思いにも繋がっている。

「一度は誰もいなくなってしまったけれど、新しい人がやってくればまた新しい富岡町ができる。ここはゼロから挑戦できる町です。僕は新しいアイデアを持ってこの町に来てくれる人の活動や思想を、手助けできる環境を作れたらいいと思っています」

YONOMORI DENIM

取材先情報

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YONOMORI DENIM

住所:福島県双葉郡富岡町本岡清水前122−17

営業時間:平日10:00~14:00、土日12:00〜16:00

Instagram:@yonomori_denim

富岡の美味を知ってほしい。富岡産ワインと地元食材を楽しむワイナリーレストラン。
/とみおかワイナリー 根本綾乃さん

富岡町にはワイナリーがある。海が見える場所に広がる畑には、震災前の町民の数と同じ1万6000本のブドウの苗木が植えられており、畑を見守るように〈とみおかワイナリー〉の醸造所が建っている。

とみおかワイナリー

代表の遠藤秀文さんは富岡町出身。震災後、ふるさとを元気づけようと、長年の夢だったワイナリーを作ることにした。2016年4月からプロジェクトをスタートし、想いに賛同した仲間たちと200本の苗木を植える。資金を出し合って毎年数百本ずつ増やしていき、3年目に初めて数十キロのブドウを収穫。山梨県のワイナリーの協力のもと、最初のワインが完成した。

「ブドウ畑の作業はボランティアも募集していて、県外からもたくさん来られるんだそうです。自分が関わったワインには愛着が湧くし、町にとっては一つのコミュニティになっていると思います」と、案内してくれた日下さんは話す。

「ブドウ畑の作業はボランティアも募集していて、県外からもたくさん来られるんだそうです。自分が関わったワインには愛着が湧くし、町にとっては一つのコミュニティになっていると思います」と、案内してくれた日下さんは話す。

現在は富岡町の気候に合う品種も分かり、白ブドウはシャルドネやソーヴィニヨン・ブラン、アルバリーニョ、赤ぶどうはメルローを栽培。今年からは自社の醸造所が稼働し始め、100%富岡産のワインを醸造中だ。ブドウ栽培と醸造を担当する細川順一郎マネージャーは「いまはフレッシュな早飲みタイプがメインですが、今年からは深い味わいのワインにも挑戦しています。ブドウの樹齢が上がれば品質も変わってくるので、楽しみにしていただきたいです」と話す。

醸造所の2階にはレストラン〈ラレス〉がある。〈とみおかワイナリー〉のワインが飲めるのはもちろん、常磐ものの魚介類を使った料理が美味しいと評判だ。360度ガラス張りの店内からは、海の前に広がるブドウ畑や常磐線の線路などが一望できる。

とみおかワイナリー

「コース料理や単品でピザやパスタ、アクアパッツァなどもご用意しています。海風の影響かうちのワインはほんのり塩味を感じる味わいが特徴なんです。常磐もののヒラメなど、白身のお魚ととっても相性が良いんですよ」と、教えてくれたのは、キッチンで働く根本さん。

「富岡町は食材が豊富で、お魚も野菜もお米もとっても美味しいです。地元食材が扱えて、ワインのことも勉強できるなんて、私にぴったりの職場だ!と思いました」と目を輝かせる根本さん。

「富岡町は食材が豊富で、お魚も野菜もお米もとっても美味しいです。地元食材が扱えて、ワインのことも勉強できるなんて、私にぴったりの職場だ!と思いました」と目を輝かせる根本さん。

今年3月に入社したという根本さんは21歳の新米料理人。このレストランを職場に選んだのは、地元を盛り上げたいという思いからだった。
「都会に出てお料理をするよりも、復興を頑張っている地元で自分もなにかできたらと言う夢がずっとあって。そのために地産地消を大事にしたかったので、このレストランはぴったりだと思いました」

富岡町は食材豊かな土地。野菜は朝早くからシェフが市場に買い出しに行って、福島県産のものを仕入れている。魚介類は主にいわき市の久之浜漁港を中心に、シェフが仕入れる自慢の常磐ものだ。
「富岡町は自然豊かですし、海が近くにあるってすごく素敵なことだと思います。海を眺めながら仕事ができるのは幸せです。富岡町の農家さんは皆さんとても暖かく、『野菜持っていき〜』って分けてくださったりします。今は実家の田村市から通っているのですが、いずれは引っ越したいですね」

いつか自分のレシピで、常磐ものの魚料理を作るのが根本さんの夢。ワインと一緒に味わえるのが楽しみだ。

とみおかワイナリー 根本綾乃さん

取材先情報

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とみおかワイナリー

住所:福島県双葉郡富岡町小浜反町36-1

営業時間:

レストラン ラレス

平日ランチ 11:00〜15:00(L.O.14:00)

土日祝ランチ 10:30〜15:30(L.O.14:30)

ディナー(予約必須) 17:00〜21:00(L.O.20:00)

定休日:水曜

ワイン&ギフト テルース

10:00〜17:00

定休日:火・水曜

Web:https://tomioka-winery.jp/

Instagram:@tomioka.wine.2016

アートは町の見え方を変えてくれる。宮島達男さん新美術館プロジェクトも進行中
/NPO法人インビジブル 日向志帆さん

最後に訪れたのは、アートの力で富岡町を動かす〈NPO法人インビジブル〉の日向志帆さん。大学でコミュニティデザインを専攻していた日向さんは、自らを「ぶらんなー(造語)」と呼び、ぶらぶらと外から町にやってきた人間が、その町でどんな変化を起こせるのかを研究。なかでも「地域と教育」に関心があり、富岡町でも主に子供たちと関わってきたそう。

今年3月に大学を卒業し、4月から本格的に富岡町で暮らし始めた日向志帆さん。プロジェクトで関わる子供たちからも愛称の「おひな」と呼ばれているそう。

今年3月に大学を卒業し、4月から本格的に富岡町で暮らし始めた日向志帆さん。プロジェクトで関わる子供たちからも愛称の「おひな」と呼ばれているそう。

インビジブルが行っているのは、町内に唯一ある富岡町立小中学校にアーティストや職人などが“転校生”としてやってきて、校内で子供たちと交流する「PinSプロジェクト」や、夜ノ森地区で秋口と春先に開催される「夜の森ピクニック」、富岡駅近くの月の下と名がつく交差点脇のスペースを拠点とした「月の下アートセンター」という文化活動など。どれもアートをきっかけにした、住民巻き込み型プロジェクトだ。

なかでも町民の期待を集めているのが、現代美術家の宮島達男さんの「時の海 – 東北」プロジェクト。宮島さんが3000人の人たちと対話しながら創り上げる《Sea of Time – TOHOKU》という作品を展示する美術館が富岡町にできるというものだ。日向さんは地元住民が立ち上げた「《時の海 – 東北》美術館を応援する会」の運営事務局として、定期的に住民のみんなと集まり、美術館建設予定地で草刈りや芋煮をしたり、美術館ができたらやりたいことのアイデア出しなどを行いながら、完成までの時間を住民みんなで温めている。

「アートには地域の見方を変えてくれる力があると思います。例えば以前、影絵師の川村亘平斎さんと影を写しながら夜ノ森を練り歩くイベントをやったんです。除染によって更地になった夜ノ森の町には余計なものがないから、影がくっきり浮かび上がって。本当に生きているみたいに見えて、そこから歌ができたり、昔話を語る人が出てきたりということがあった時に、何もないことをネガティブではなくて、“余白”として捉えることができた。正しさみたいな指標では測らないということが、この富岡町にとってすごい大事なことなんじゃないかと思っています」

この町に来て、自分のロールモデルになるような先輩プレイヤーにたくさん会うことができたという日向さん。自分のような“ぶらんなー(造語)”が新たに町に来たらうれしいと話す。
「自分のプロジェクトを頑張っている先輩や、アイデアを形にするために一緒に悩んでくれる大人が身近にいること、それが富岡町の自慢ですね。自分が何者でなくても、富岡町で出会った人々は、まちの一員として受け入れてくれました。この町への関わり方として、やりたいこととか目的すらも町に来てから探すくらいの余白があってもいいんじゃないかと思います」

NPO法人インビジブル 日向志帆さん

富岡町が大好きで、町の未来を作ろうとそれぞれのステージで奮闘する若きプレイヤーたち。まずはキャンピングカーを借りて周ってみるのもいいかもしれない。

取材先情報

NPO法人インビジブル

information

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富岡町移住定住相談窓口『とみおかくらし情報館』(運営:一般社団法人とみおかプラス)

住所:福島県双葉郡富岡町大字小浜字中央338

営業時間:10:00〜17:00(土日も開館)

休館日:年末年始、GW、お盆、メンテナンス日等

(休館日はHPをご確認ください)

WEB:https://www.tomioka-iju.jp/

Instagram:@tomioka_iju

奈良・吉野檜の香りに包まれる。 地産地消サウナ「kupu sauna」 誕生

木と人を再びつなぐ、家具メーカーの挑戦

1928年創業、100 年経っても世界の定番として愛される木工家具づくりを目指す〈マルニ木工〉が、新たなプロジェクトとして「kupu sauna(クプ サウナ)」を発表した。

フィンランド語で「ドーム」を意味する“kupu”の名の通り、やわらかに人を包み込むハーフドーム型のサウナは、地元・奈良県吉野産の檜を贅沢に使い、家具メーカーならではの木工技術と審美眼を活かして生まれたものだ。

このプロジェクトの背景にあるのは、木材調達のグローバル化が進む中で、改めて日本の森に目を向けた同社の姿勢。家具の枠を超え、林業と地域の未来を見据えた新たなものづくりのかたちとして、檜の香りと木の温もりを暮らしに取り戻す試みである。

吉野檜×北欧の知恵が生む“包まれる空間”

「kupu sauna」は、伝統的なバレルサウナの構造をハーフドーム型へと進化させ、熱と蒸気を効率的に循環させる設計を採用。樹齢を重ねた吉野檜の板を一枚ずつはめ込む独自の工法により、高い気密性と耐久性を実現した。檜の香りが時間とともに広がり、空間全体が柔らかく包み込むような体験を演出。下段ベンチの取り外しや連結モジュールによる拡張性など、家具の発想を取り入れた自由度の高い構造も特徴だ。

ハーフドーム型構造が空間の一体感と心地よさを生む

ハーフドーム型構造が空間の一体感と心地よさを生む

地域の森をめぐる、サウナを起点とした循環

使用される吉野檜は、古くから日本の風呂文化を支えてきた木材。北欧で人気のアスペン材に近い特性を持ち、香りや肌触り、湿熱との相性に優れている。地域の森の恵みを活かすことで、林業者・製材業者・デザイナーが協働する“地産地消の循環”がここに生まれる。プロダクトデザインは、フィンランドでの留学経験を持つデザイナー・熊野亘が担当。檜の質感、光の反射、音の静けさまでを設計に落とし込み、自然と人が交わる“人生の質を高める空間”としてのサウナを描き出した。

デザイナーの熊野亘。北欧のサウナ文化を背景に、日本の木工技術と融合した空間デザインを生み出した。

デザイナーの熊野亘。北欧のサウナ文化を背景に、日本の木工技術と融合した空間デザインを生み出した。

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お披露目イベント

会期:2025年10月16日〜11月9日

会場:maruni tokyo(東京都中央区東日本橋3-6-13)

問い合わせ:03-3667-4021

パリの大学院生・ルイスが、 インフルエンサー・ジェセと巡る、 長崎・壱岐島の1泊2日旅【Day1】

夏休みに日本へやってきたパリの大学院生ルイスさん。今回は、InstagramやTikTokで活躍するジェセさんを旅の相棒に、1泊2日で長崎の離島、壱岐島へ!

Day1
10:00 博多港
11:30 壱岐芦辺港着
12:00 小島神社
14:00 鬼凧工房平尾(鬼凧色付け体験)
15:00 龍蛇神社
16:00 平山旅館

9月の残暑のなか、羽田空港で待ち合わせをしていたのは、パリの大学院に通いながらSNSで現地の暮らしを発信するルイスさんと、TikTokやInstagramで活躍するジェセさん。博多空港に向かうとのことですが、単なる福岡旅行ではないようで……。

11:30 博多港から壱岐芦辺港へ

福岡・博多空港に到着したルイスさんとジェセさん。空港から地下鉄で約10分の場所にある博多港へ向かいます。

今回の旅先は、長崎県の離島・壱岐島。九州本土と対馬の中間に位置し、古くから神話が伝わる島として知られています。島内には神社や遺跡・古墳をはじめ、元寇にまつわる史跡、城跡や砲台跡など、多くの歴史的スポットが点在。時代ごとに重要な拠点として発展してきた島です。

博多港から高速船でわずか1時間。辿り着いたのは、壱岐島の玄関口「芦辺港」。港を抜けると、漁船が行き交うのどかな港町が2人を歓迎してくれました。

左から、ジェセさん、ルイスさん。雨予報を覆して、晴天の中「壱岐芦辺港」に到着。

左から、ジェセさん、ルイスさん。雨予報を覆して、晴天の中「壱岐芦辺港」に到着。

12:00 神秘的な“海に浮かぶ神社”

古来より多くの神社が残る壱岐島。その数は小さな祠も合わせて約1000ともいわれています。

そんな島の中で最初に訪れたのは、壱岐の神秘を象徴する「小島神社」。満潮時にはまるで海に浮かぶように見え、干潮になると参道が姿を現す不思議な神社です。その姿から「壱岐のモン・サン・ミシェル」とも呼ばれています。

潮の満ち引きが鍵を握るため、訪れる前には干潮時間のチェックをお忘れなく。

タイミングに恵まれて、海の上に現れる一本道を歩いて参拝。

タイミングに恵まれて、海の上に現れる一本道を歩いて参拝。

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小島神社

住所:長崎県壱岐市芦辺町諸吉二亦触1969

TEL:0920-45-1263

14:00 〈鬼凧工房 平尾〉 で島の伝統工芸を体験

壱岐の伝統工芸品「鬼凧(おんだこ)」の絵付け体験ができると聞きつけ、「鬼凧工房 平尾」へ。

「鬼凧」は、子どもの健やかな成長や無病息災を願う“魔よけの縁起物”として、島の家庭の玄関や屋外に掲げられる、壱岐を象徴する凧です。

工房では、長年技を受け継いできた職人の指導のもと、鬼凧の絵付けを体験。配色に決まりはなく、思い思いの色で自由に仕上げることができます。

ルイスさんは大胆な緑を使って力強い表情を、ジェセさんはお手本に忠実に。2人は黙々と筆を動かしていました。

完成した鬼凧は、世界にひとつだけの特別な作品。「パリに帰ったら家に飾ります」とルイスさん。壱岐の伝統と人の温もりが息づく、旅の忘れられないおみやげになりました。

赤・黄・緑・橙の食紅を使って鬼の顔を描く。

赤・黄・緑・橙の食紅を使って鬼の顔を描く。

色を塗る前の「鬼凧」。

色を塗る前の「鬼凧」。

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鬼凧工房 平尾

住所:長崎県壱岐市芦辺町箱崎本村触536

TEL:0920-45-0718

HP:https://ondako.jp/

Instagram:@ondako_kobo

15:00 「龍蛇神社」で“龍の伝説”をたどる

次に向かったのは、龍神が祀られる「龍蛇神社」。海を見下ろす絶景に立つ神社で、出雲神社より「龍蛇神」を迎えて祀られたと伝わる、壱岐のパワースポットです。

神社の眼下に広がる龍蛇浜には、まるで龍の鱗のような薄い石が幾重にも重なり、神秘的。近くの壱岐神社では、龍蛇神社の御朱印もいただくことができ、旅の記念に訪れる人も多いのだとか。

壱岐の海を一望しながら参拝ができる。

壱岐の海を一望しながら参拝ができる。

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龍蛇神社

住所:長崎県壱岐市芦辺町瀬戸浦

16:00 平山旅館。島の味と温泉で癒されて

今回のお宿は、湯本エリアの老舗「平山旅館」。到着すると、女将の平山真希子さんが「ぜひ見せたい場所があります」と案内してくれたのは、畑と平飼い養鶏場。ここでは、ウニの殻、腐葉土、温泉の鉄分、海藻などを堆肥にして完全無農薬で野菜を育てています。

平山旅館の畑で野菜を育てる大久保律子さん、通称「りっちゃん」に大きなオクラをもらう2人。

平山旅館の畑で野菜を育てる大久保律子さん、通称「りっちゃん」に大きなオクラをもらう2人。

「平山旅館の特徴は、なんといっても壱岐の食材をふんだんに楽しめる『島産島消』スタイルの会席料理です。畑や養鶏場で収穫した野菜や卵、壱岐の旬の魚や地元産食材をお出ししています」と真希子さん。

お品書きを見ると、それはそれは長いこと。次々と運ばれてくる料理を見てあまりの量の多さに「食べきれるかな…?」と心配する2人。でも安心を。平山旅館では、食べ残しはすべて養鶏場の鶏に食べさせることで、残り物ゼロを実現。食べる人も鶏も、島の自然の恵みを無駄なく味わえる、サステナブルな会席なのです。

平山旅館で楽しめるのは、島の食材を生かした料理だけではありません。実は、1700年以上の歴史を誇る、湯本温泉の発祥地に建つ温泉宿でもあるんです。「日本書紀」に登場する神功皇后が三韓出兵の折にこの湯を発見し、我が子・応神天皇に産湯として使わせたという伝説も。歴史と神話が息づく特別な温泉です。

また選りすぐりの温泉宿だけが会員になれる「日本秘湯を守る会」にも登録されており、その質の高さは折り紙つき。大浴場には露天風呂があり、温泉の蒸気を使った蒸し風呂や水風呂も完備。さらに宿泊者は、2つの貸切露天風呂を無料で利用することができ、贅沢なひとときを満喫できます。

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奥壱岐の千年湯 平山旅館

住所:長崎県壱岐市勝本町立石西触77番地

TEL:0920-43-0016

2日目を読む

パリの大学院生・ルイスが、 インフルエンサー・ジェセと巡る、 長崎・壱岐島の1泊2日旅【Day2】

夏休みに日本へやってきたパリの大学院生ルイスさん。今回は、InstagramやTikTokで活躍するジェセさんを旅の相棒に、1泊2日で長崎の離島、壱岐島へ!

Day2
09:00 平山旅館
10:00 辰ノ島
13:00 双六古墳
14:00 壱岐市立一支国博物館
15:00 原の辻遺跡

9:00 平山旅館で迎える、心が満たされる朝

朝は、和の朝食でスタート。まず目を引くのは、色鮮やかに盛り付けられたサラダ。自家農園で朝摘みされた旬の野菜は、甘みが強く、朝からたっぷりいただけます。ボリューム満点の朝食には、壱州豆腐や壱岐納豆、干物、など島の恵みがふんだんに使われています。昨夜の会食同様、量が多めなのは「お腹いっぱい食べてほしい」という女将・真希子さんの優しさから。

実は前日のディナー中に、「残ったお刺身は、朝食で漬け丼にできますよ」とそっと教えてもらっていた2人。朝からこんな贅沢なひとときを楽しめるなんて、と楽しんでいました。

朝からこのボリューム!平山旅館の心づくしのサービスに元気が湧きます。朝採り卵と特製の燻製醤油で、卵かけご飯に。

朝からこのボリューム!平山旅館の心づくしのサービスに元気が湧きます。朝採り卵と特製の燻製醤油で、卵かけご飯に。

壱岐名物「壱州豆腐」。大豆の使用量が多く、濃厚で自然な甘みが特徴。平山旅館自家製の甘い「壱岐ゆべし」と一緒にどうぞ。

壱岐名物「壱州豆腐」。大豆の使用量が多く、濃厚で自然な甘みが特徴。平山旅館自家製の甘い「壱岐ゆべし」と一緒にどうぞ。

前夜の刺身が漬け丼に変身。女将の心遣いがうれしい、島ならではの朝のごちそう。

前夜の刺身が漬け丼に変身。女将の心遣いがうれしい、島ならではの朝のごちそう。

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奥壱岐の千年湯 平山旅館

住所:長崎県壱岐市勝本町立石西触77番地

TEL:0920-43-0016

10:00 エメラルドグリーンの海に出合える「辰ノ島」

朝食を終えた2人が向かったのは、勝本港から船で約10分の無人島「辰ノ島」。国定公園にも指定される自然豊かな島で、上陸すると目の前に広がるのは、宝石のように透き通ったエメラルドグリーンの海。
北へ進むと、高さ約60mの断崖絶壁「蛇ケ谷」や、神秘的な洞窟「羽奈毛崎」「鬼の足跡」など、探検気分を味わえるスポットも。


13:00 双六古墳 ― 古代ロマンを感じる時間

実は、長崎県全体の約6割にあたる280基以上の古墳が点在している壱岐島。中でも前方後円墳として島内最大級の「双六古墳」へ。

標高100mほどの丘陵に築かれた巨大古墳は、全長91m、後円部の直径43m、高さ10m。石室からは当時の副葬品も発見されており、古代から大陸との交流があったことを物語っています。

国の重要文化財・考古資料に指定されている「双六古墳」。

国の重要文化財・考古資料に指定されている「双六古墳」。

14:00 〈一支国博物館 〉で島の歴史をひもとく

続いて2人が訪れたのは、壱岐の歴史を深く知ることができる「壱岐市立一支国(いきこく)博物館」です。壱岐は弥生時代、「一支国」と呼ばれ、中国の歴史書『魏志倭人伝』にも登場する重要な地。長崎県内で確認された遺跡のうち、約13%が壱岐から発見されているといいます。

館内では、古代の交易や生活、神話や祭りなど、島の文化を多角的に紹介。「なりきりコーナー」では、弥生時代の衣装を体験でき、ルイスさんとジェセさんも実際に着用。2人ともすっかりなりきって楽しんでいました。

古代の衣装を身にまとい、すっかり弥生人になりきる2人。

古代の衣装を身にまとい、すっかり弥生人になりきる2人。

15:00 弥生の息吹を感じる「原の辻遺跡」

旅の最後に訪れたのは、「原の辻遺跡(はるのつじいせき)」。ここは弥生時代の国「一支国」の王都とされ、国の特別史跡にも指定される重要な遺跡です。

広大な敷地に高床式の建物が復元され、まるで2,000年前の時代へタイムスリップしたような気分に。

「原の辻遺跡」は、古代の人々の生活や文化を肌で感じられる貴重なスポット。ルイスさんとジェセさんにとっても、壱岐の歴史を体感する旅の締めくくりにふさわしい場所となりました。

弥生時代〜古墳時代の初めにかけて形成された多重環濠集落。約1km四方に広がっている。

弥生時代〜古墳時代の初めにかけて形成された多重環濠集落。約1km四方に広がっている。

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原の辻遺跡

住所:長崎県壱岐市芦辺町深江鶴亀触1092−1

TEL:0920-45-2065

建築からまちを変える。藤原徹平さんが描く、地域の風景と暮らしの未来| コロカルアカデミー Vol.8開催決定

地域の暮らしや文化に根ざした新しい学びの場「コロカルアカデミー」の第8回を開催します。主催は、日本各地のローカルの魅力を発信し続けるWebマガジン「コロカル」です。

今回のテーマは「建築とまちづくり」。ゲストにお迎えするのは、建築家・藤原徹平さん。
元・隈研吾建築都市設計事務所の設計室長として数々の国内外プロジェクトを牽引し、現在は〈フジワラテッペイアーキテクツラボ〉を主宰、横浜国立大学大学院 Y-GSA准教授として後進の育成にも尽力されています。

藤原さんが手がけるのは、単なる建物ではなく、その周囲のランドスケープや人の営みまでを含めた「地域の風景」をデザインする仕事。小浜ヴィレッジやクルックフィールズといった代表作は、地域の自然・文化・暮らしをつなぐ新しい拠点として注目を集めています。横浜市からも「これからの都市デザイン」について公式に相談を受けるなど、行政・市民・クリエイターを結びつける存在として活躍しています。

本セミナーでは、藤原さんの実践を通して、
・建築から地域をどう変えられるのか
・「風景」と「暮らし」をつなぐランドスケープデザインの思想
・行政や市民と向き合うまちづくりのリアル
・クルックフィールズや小浜ヴィレッジの舞台裏

といったテーマを深掘りしていきます。

「建築」にとどまらず、地域創生や都市再生をボトムアップで考えるヒントが詰まった60分。カルチャーやアート、まちづくりに関心がある方にとって、視点を大きく広げる機会になるはずです。ぜひご参加ください。

【概要】
コロカルアカデミー Vol.8
「建築からまちを変える。藤原徹平さんが描く、地域の風景と暮らしの未来」
日時:2025年12月3日(水)15:00〜16:00(14:50開場)
形式:Zoomウェビナー
費用:無料(要事前申込)

【コロカルアカデミーとは】
ローカルを舞台に活躍する人々のリアルな情報を通して、日本の魅力を再定義するウェビナーシリーズです。地域を活性化させるために働きたい方、ローカルでビジネスを始めたい方、自治体や企業で地域創生に携わる方に向けて、新たなヒントを提供します。

いままでのコロカルアカデミーはこちら

登壇者は、地域の文化資産や資源を掘り起こし、その価値を世界に伝える新しいリーダーたち。ローカルビジネスにおける強みと課題、問題解決のプロセス、未来を変える次の一手についてもリスナーの皆さんと一緒に考えていきます。

【本セミナーで学べること】
●建築を起点にした地域活性・都市再生の発想
●「風景」をデザインするランドスケープの哲学
●行政・市民・企業を巻き込むまちづくりの手法
●クルックフィールズや小浜ヴィレッジの事例から学ぶこと

【こんな方におすすめ】
●地域創生・観光・まちづくりに携わる自治体や企業関係者
●経営層や広報・マーケティング担当者
●建築・都市計画・ランドスケープに関心のある方
●地域を舞台に活動したい学生や若手プロフェッショナル

【登壇者プロフィール】

藤原 徹平

藤原 徹平(ふじわら・てっぺい)
建築家/株式会社フジワラテッペイアーキテクツラボ主宰/横浜国立大学大学院 Y-GSA 准教授/一般社団法人ドリフターズインターナショナル理事
横浜生まれ。横浜国立大学にて建築学、都市計画、映画批評を学ぶ。大学院卒業後、隈研吾建築都市設計事務所にて国内外100以上のプロジェクトを設計室長として経験。2012年より横浜国立大学に着任。並行してフジワラテッペイアーキテクツラボを主宰し、建築・都市開発・ランドスケープデザイン・アートプロジェクトなど領域横断的に活動。小浜ヴィレッジ、クルックフィールズなどのプロジェクトを手掛ける。

杉江宣洋

杉江宣洋(すぎえ・のぶひろ)
コロカル編集長/MAGAZINEHOUSE CREATIVE STUDIO ブランディングプロデューサー
1997年マガジンハウスに入社。『anan』編集部を経て、2008年『BRUTUS』配属、10年同誌副編集長に。『BRUTUS』では「居住空間学」(インテリア特集)「音楽と酒」シリーズなどをヒット企画に育てた実績を持つ。また、「桑田佳祐」「山下達郎」「松本隆」「スタジオジブリ」などの特集も担当。2022年Hanako編集長就任。2025年より現職。

【注意事項】
・本イベントはオンライン開催です。
・音声や映像の乱れが生じる場合があります。
・録画・録音・再配信はご遠慮ください。

※お申し込みいただいた方には、後日見逃し配信のご案内をお送りします。
当日ご参加が難しい場合も、ぜひお気軽にお申し込みください。

【見逃し配信あり】 『「発想の転換」で成功した、パ・リーグの挑戦に学ぶスポーツビジネスとファンづくりのリアル』 コロカルアカデミーVol.6

日本のローカルの魅力を発信する「コロカル」は、新たなウェビナー講義シリーズ「コロカルアカデミー」の第6回を開催しました。ゲストには、現パ・リーグ6球団の共同出資会社・パシフィックリーグマーケティング(PLM)で、執行役員として各球団の魅力を伝える戦略の中心を担う園部健二さんをお迎えしました。園部さんには、日本プロ野球の歴史から、現在のパ・リーグ6球団のマーケティング事例、さらにパーソル パ・リーグTVを運営するPLMのマーケティングの裏側をひも解いていただきつつ、組織や業界を越えた“半歩先”のビジネスとファンづくりについて、たっぷり語っていただきました。
見逃し配信を視聴したい方はこちらからお申し込みください。

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園部 健二

園部 健二(そのべ・けんじ)
執行役員/コーポレートビジネス統括本部 本部長 兼 新規事業開発室 室長(パシフィックリーグマーケティング株式会社)
野球少年だったが、中学で野球を引退。その後、音楽業界、ゲーム業界(SEGA)を経て、PLMに入社。「好きを仕事に」生き方を再定義し、現在は球場とファン、地域と球団をつなぐ多様な施策に携わり、スポーツを通して“地域と人をつなぐ”挑戦を続けている。

とっても不思議な「日本プロ野球」

まず園部さんからお話があったのは、現在の日本プロ野球の歴史とその特徴について。
そもそも日本プロ野球の各球団にはほとんど「社名」が入っており、ニュースなどでも略称として社名が使われています。これはメジャーリーグ等と比べると、際立った特徴があり、日本プロ野球が日本の経済成長、経済状況と共に変容してきたことがわかります。
お話の中では、プロ野球球団の運用費用がその球団の保有する親会社の広告宣伝費として計上できる特殊な会計処理ができるという、SNSやスポーツニュース等に触れているだけでは絶対に知ることのできない裏側のお話まで。
普段何気なく目にしている「プロ野球」というものが、実は極めて特殊かつ不思議な営みであることが園部さんの視点で明らかになっていきます。

パ・リーグとマーケティング

パ・リーグ球団のマーケティング事例

次にお話があったのは、具体的なマーケティング事例としてのパ・リーグ球団について。
長らくセ・リーグと比べて、人気がない、地味だと言われていたパ・リーグ。しかし、そんな状況を逆手に取り、各球団の魅力を伝える戦略を担うPLMが中心となり、様々な発想の転換を実施。さらに挑戦を重ねることで、現在のパ・リーグにつながっていったとのことです。

PLMのマーケティング事例(球場)

講義内ではより具体的に、パ・リーグの全体の映像や球団に関するインフラ整備のお話や各球団の特色を打ち出すマーケティング施策によって、パ・リーグ特有の『濃いファン』を生み出していく方法やアプローチについて、語っていただきました。
またパ・リーグ6球団が共同出資して設立したPLMが、リーグのハブとして各球団を横断するマーケティングや事業を担うことで、リーグ全体を一つのブランドとして発信できるという視点も唯一無二の学びになりました。

リアルとオンライン/マーケティング事例について

PLMのマーケティング事例(オンライン)

ここからはさらに踏み込んで、PLMとして実施したパ・リーグのマーケティングについて、語ってもらいました。
球団単体で行えるローカルマーケティングを踏まえたうえで、各地方都市をつなぎ合わせながら、個別球団では取り組めないマーケティング施策を行うというPLM。マーケティングという言葉自体には馴染みがありましたが、そもそも、自社のマーケティングの対象がどこにあるのかというのをクリアにする視点は、他のビジネスにおいても大いに役立ちそうです。
マーケティング事例として、球場とオンラインそれぞれについて、PLMとして行った施策を具体的な企業名や数字をたくさん交えながら、教えていただくことができました。

逆転と実践のマーケティング術

PLMのマーケティング事例(オンライン) まとめ

園部さんのお話を聞いていると、マーケティングという概念が持つポテンシャルと面白さを感じ、ビジネスというものが持つ特有のやりがいやワクワクまで伝わってきました。
それは園部さんのお人柄や語り口もあると思いますが、なにより、かつては陽が当たっていたとは言えないパ・リーグという場所において、発想の転換を行い、それらを施策に落とし込み、やりきっていくというPLM、そして園部さんのお仕事のスタンスや考え方に基づくものだったのだと思います。
元々はお客さんが入らない商圏、ジャイアンツの人気に頼れないリーグだったこと、親会社の経営難など、営業努力をしないといけない状況があったからこそ、発想の転換と大胆な取り組みが生み出されたというのは、多くのビジネスモデルに示唆的なマーケティングの視座を得られるのではないでしょうか。
トークセッションでは、地域や企業に応用できるファン戦略についてのお話があり、講座本編終了後のQ&Aでは、リアルな現場での体験価値が注目されている流れについての園部さんの視点についてのお話など、ファンやリアルといった今後のマーケティング戦略にとって注目度が増す話題について、より深堀りしています。
プロ野球が好きな人、仕事の舞台裏に興味がある人、ビジネスの面白さに触れたい人、ファンビジネスやリアルな体験とオンラインの両軸を大切にしたビジネスモデルを検討している人などに、多くの方におすすめです。
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ブランド力を故郷へ還流する、 “逆輸入型”地方創生。 〈h.u.g-flower〉が岐阜で 再オープンを目指す

2008年、岐阜で花屋として創業した〈h.u.g-flower〉。その後2019年からは、グルテンフリーのチーズテリーヌブランドとして、岐阜・横浜・東京の3拠点で展開を続けてきた。

しかし2023年、外部トラブルの影響により岐阜店を閉店。望まぬ形での撤退を余儀なくされた。その一方で、横浜・東京での需要は急速に拡大し、現行の製造拠点では生産能力や保管スペース、人員体制の面で限界を迎えることに。

「もう一度、岐阜にお店をつくりたい」という想いと、「持続可能な製造体制を整えなければならない」という課題。この二つが重なり、故郷・岐阜での店舗再開を目指して、目標金額300万円を掲げたクラウドファンディングを実施している(〜2025年11月12日)。

従来の「地方から都市へ」という流れではなく、「都市で育てたブランドを地方へ還流させる」という新しい形の地方創生だ。

今回再開を目指す岐阜店。

今回再開を目指す岐阜店。

岐阜の素材とともに再び“原点”へ

〈h.u.g-flower〉は、これまで岐阜の枝豆や飛騨モモ、飛騨リンゴといった地元素材を活かし、チーズテリーヌを都市部で人気商品へと育ててきた。ブランドの原点である岐阜の地に、今回ふたたび製造・販売の拠点を築く。単なる店舗の再開だけではなく、地域の恵みを自らの手で届ける仕組みを取り戻す挑戦だ。

多彩な返礼品でつながる、地域と都市

クラウドファンディングの返礼品には、定番のチーズテリーヌから季節限定フレーバーまで、多彩なラインナップが揃う。都市で培ったブランド力と産地の素材力が融合した味わいは、まさにこのプロジェクトの象徴。地域と消費者をつなぐ新しいかたちとして、岐阜からの再出発に注目したい。

information

h.u.g-flower 岐阜店再開プロジェクト

実施期間:2025年9月28日〜11月12日(45日間)

目標金額:300万円

返礼品例:通常チーズテリーヌ、岐阜素材を使った限定テリーヌ(焼き芋・ショコラ・ラムマロンほか)

公式通販サイト:89cheeseterrine.com

植物に触れて学べる森の素材研究室 「TENOHA TATESHINA Lab.」が 八ヶ岳の麓・蓼科に誕生

八ヶ岳の麓である長野県茅野(たてしな)市を拠点に、地域の林業事業体と提携しながら森林資源の利活用に取り組む株式会社ヤソがプロデュースした「TENOHA TATESHINA Lab.(テノハ蓼科ラボ)」が2025年7月26日、八ヶ岳の麓・蓼科にオープンした。(運営:東急リゾートタウン蓼科)

ここは、東急リゾートタウン蓼科内の敷地を舞台に、植物に触れ、森の素材を五感で学ぶ体験施設。森林資源の循環と地域資源活用を目指す取り組みを背景に、間伐材の活用、精油蒸留、草木染め、標本制作などを通じて、森と共存する観光の新しいかたちを提案している。

森の素材を研究・体験する拠点

施設は、研究所・ギャラリー・アトリエという三機能を備えている。来場者は草木染め、蒸留、植物標本づくりなどの体験ワークショップに参加でき、森の素材を「見る」「香る」「知る」といった切り口で学ぶことができる。標高1,300mの立地ゆえに、季節や標高差がもたらす植物の表情の違いも体験の一端となる。

さらに、施設内には草木染めを用いた衣服制作を行うブランド「MARU TO」のアトリエも併設。素材の研究と実践を融合させ、森が育んだ「色」「香り」「形」の可能性を探求する場にもなっている。

新しい観光としての意義

〈TENOHA TATESHINA Lab.〉は、ただの自然体験施設ではない。地域資源の循環を前提に、展示・研究と体験をつなげ、観光を通じて「学び」と「気づき」を生む場を目指している。間伐材を建材や什器に使うなど、施設自体が森との関係性を体現する構成になっており、将来的には雨水利用やコンポスト導入など、オフグリッド運営にも取り組む予定だという。

森林と観光、地域資源と体験を結び、訪れる人と土地を再びつなぐ拠点として、蓼科に新たな光を灯す挑戦は、始まったばかりだ。

information

map

TENOHA TATESHINA Lab.(テノハ蓼科ラボ)

所在地:長野県茅野市北山 鹿山4026-2(東急リゾートタウン蓼科内)

営:10:00~16:00 ※体験プログラムは週末のみ開催。平日は観覧のみ

併設施設:草木染め衣服ブランド「MARU TO」アトリエ

公式サイト:https://www.tateshina-tokyu.com/tenoha/

Instagram:@tenoha.tateshina.official

【見逃し配信あり】 『俳優・小林涼子が挑む、地域×農業×福祉の現場。肩書を越えて働く時代へ』 コロカルアカデミーVol.5

日本のローカルの魅力を発信する「コロカル」は、ウェビナー講義シリーズ「コロカルアカデミー」の第5回を9月3日に開催しました。ゲストは、俳優でありながら株式会社AGRIKO代表取締役として活動する小林涼子さん。

小林さんは、芸能の世界で順調にキャリアを重ねる一方で、20代の頃には将来への葛藤を抱え、「自分は何をしたいのか」を模索し続け、新潟での米づくりに出会います。家族の体調不良を機に「このままでは、地域の農業は立ち行かなくなる」、そうした危機感から、2021年、農業と福祉を軸にした株式会社AGRIKOを創業。アクアポニックス農法を導入した都市型の屋上ファームや、新潟での稲作、障がい者とともに働く農福連携など、「地域課題」を解決しながら「都市と地方をつなぐ」挑戦を続けています。
今回はそんな、俳優という肩書きにとどまらず、現場に根を張り、土地の可能性を育てる姿勢を大切にする小林さんに、地域の現場から見えるリアルな課題と可能性について、存分に語って頂きました。

見逃し配信を視聴したい方はこちらからお申し込みください。
▶︎https://form.run/@colocal05

小林涼子(こばやし・りょうこ)

小林涼子(こばやし・りょうこ)

俳優/株式会社AGRIKO代表取締役
農林水産省 食料・農業・農村政策審議会 食糧部会臨時委員
子役として芸能活動を開始し、連続テレビ小説『虎に翼』(NHK)など数々のドラマや映画に出演。2014年から農業に携わり、2021年に株式会社AGRIKOを設立。現在は稲作やアクアポニックス農法による都市型農園を展開し、地域の福祉とも連携した持続可能な農のあり方を模索している。ラジオナビゲーターや講演活動など、ジャンルを超えてパラレルキャリアを体現する存在。

俳優から農業へ向かった「お米」との出会い

俳優 美味しいを守る

まず小林さんからお話があったのは、ご自身の俳優としてのキャリアから、どのようにして農業と出会い、そして会社の設立に至ったのか、という経緯について。
俳優業で駆け抜けた10代、20代を過ごし、少し疲れを感じてしまったころ、家族のすすめでふと出会った新潟の棚田。そこでの農業のお手伝いで味わった汗をかくことやお米を食べること、その美味しさや楽しさが小林さんの農業の原体験でした。
そんな中、小林さんは、農家さんの人手不足の現状を知り、コロナ禍を経て、「このままでは、美味しいものを食べ続けられる未来が失われてしまう」という現実に向き合うようになったそうです。
自分一人が“お手伝い”という立場で、すべてを担える力はなかった。だからこそ、一人ではなく、「組織」としてできることがあるのではないか。そうしてたどり着いたのが、株式会社AGRIKOの立ち上げです。

「農福(ノウフク)」という事業/生き方

Mission

そんな株式会社AGRIKOは、農業と福祉の連携を軸に掲げ、活動を進めています。
10代や20代のころは、俳優業に没頭し、全力投球していた小林さん。それでも自分が思うようにキャリアが進まず、売れていく同世代の俳優の背中を見ながら、空回りしている感覚があったそうです。
「障がい」とは人それぞれで、一言では語れませんが、障がいと健常は、私たちが思うほど明確に線を引けるものではない。野心もあり、心身ともに元気だった自分がある日にふと立ち止まってしまったように、人生につまずき、心が疲れてしまう人は決して少なくない。誰もが生きづらさを感じる時代に、誰もが安心して暮らせる社会をつくること。それは、かつての自分自身のためでもあり、私たちみんなにとって必要なことではないか。
小林さんにとって、「農福」とは事業であると同時に、生き方そのものなのだろうと、その優しい語りの中に感じる確かな覚悟が伝わってきました。

食をめぐる日本の現状と限界集落について

日本の現状

改めて、日本の食は今、どのような状況なのかについてのお話もありました。日本が人口減少社会を迎えながら、農業従事者は、更に高齢化が進んでおり、2023年時点における基幹的農業事業者は116万人ほど。さらに食料自給率※は、カロリーベースで38%。先進国の中では、最も低い水準だそうです。
こうした中、農村にはおのずと限界集落が生まれていきます。食物を生み出すには、当然、人の手が必要です。にもかかわらず、人の手が足りない、届かない地域がある。
ショッキングな数字や事実が並びましたが、そんな中、小林さんはどのようにして、この課題に向き合っているのか。話は更に本格的になっていきます。

※食料自給率にはカロリーベースと生産額ベースがあり、それぞれ数値が異なります。* データは、それぞれ調査年が異なるため、厳密な一致はありません。

「都市農業」の可能性と多面性

Aquaponics System

東京における農業は、土地の面積に課題があるなかで、お話に出たのは、アクアポニックス(水産養殖×水耕栽培)というあり方。魚とバクテリアと植物によるシステムの輪は、確かな新しい農業の可能性を感じます。

都市農業の多様な機能(6つの機能)

先日の東京都主催の「TOKYO農業フォーラム2025 ~エコな農業が創るエシカルな東京~」の基調講演でも語られていた「都市農業の可能性」について、今回も小林さんならではの視点で、都市農業が持つ大きなポテンシャルについてお話がありました。

さらに会社として進めている、さまざまな実例(食材販売、サポーターズ(子育て世代の女性たちの雇用)の仕組み、障がい者雇用のアドバイスや雇用継続支援、食育イベントなど)を交えながら、農業や、農業に関する事業が持つポテンシャルについて語っていただき、最終的には、都市と地方をつなぐ、食の可能性についてのお話まで広がりました。
どのプロダクトや商品も可愛くて、洗練されていて、ワクワクする農業の姿が、そこにはありました。

生きること・食べること・楽しむこと

さまざまな実例

小林さんのお話を伺っていて、一番感じたことは、「食べることと生きることとの繋がり」、そしてそれらを「楽しむことの大切さ」です。
私たちは日々、食べることで生きています。食物は私たちの生活に必須で、だからこそその問題に対して、課題が生まれた時、大きな混乱が起きてしまいがちです。取り組むべき課題が深刻であることに疑いはありません。
ですが同時に、そうした課題を「誰かが解決してくれる」と静観するのではなく、自分で動き、しかもそれを仲間と共に広げ、大きなムーブメントを明るく生み出すのが小林さんにしかできないあり方だったのだろうと感じます。
都市と地方、消費者と生産者、健常者と障がい者。私たちは二項対立で物事を捉えがちですが、そこにある課題・テーマは、同じ「共に生きること」であり、それは単なる二項対立から離れ、みんながそれぞれの場所で、連帯しながら、ゆっくり取り組んでいくことなのかもしれないと、小林さんのお話を伺っていて、感じました。そのためには、単に眉をしかめ、難しい顔をして取り組むのではなく、小林さんのように、あるいは、今日のお写真で出てきたイベントに参加する子どもたちのように、笑顔で、前向きに取り組んでいくことこそが、課題解決の「隠し味」なのかもしれません。

トークセッションでは、『社会的な課題を“自分ごと”として捉えるとは?』をテーマに、小林さんのこれまでの背景や体験を、より具体的に掘り下げつつ、Q&Aでは、農福連携のあり方などについて、より具体的な話題も盛りだくさんでした。

食に関心がある方、障がいのあり方と社会のあり方に関心がある方、前向きに社会課題に取り組みたい方、パラレルなキャリア形成に関心がある方、多くの方にお勧めです。
見逃し配信を視聴したい方はぜひ、こちらからお申し込みください。
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株式会社AGRIKOのサイトもぜひチェックしてみてください!
https://farm.agriko.net/company