〈ロフトワーク〉創業者で、現在は、地方と都市の新たな関係性をつくることを目的とする
〈Q0〉を率いる林千晶さんが推薦するのは、秋田県秋田市の映像制作会社
〈アウトクロップ〉の代表取締役CEO兼プロデューサー栗原エミルさんです。
推薦人
林千晶
Q0代表取締役社長
Q. その方を知ったきっかけは?
雪降る夜、ふと気づくとエミルくんの秋田オフィスの前を歩いていた。エミルくんは秋田を変えていこうと仲間と飲み会を開いていたというのだから驚き。あのときのワクワク感は今でも消えていない。
Q. 推薦の理由は?
「見えない物語を魅せる」、そんなモットーを掲げる〈アウトクロップ〉代表取締役のエミルくん。ハーフで秋田への移住組でもある。彼らが映像を通じて描こうとする世界が、シンプルに格好いい。伝統、食文化、祭、その豊かさの片鱗を映像化できたら、世界に発信することができる。そんな想いがプンプン伝わってくるのだ。2024年には〈アトレデルタ〉という宿泊もできる複合拠点もオープンさせた。そんなこと、あり? と一瞬耳を疑ってしまうようなサービスを、これからもつくっていってほしい。
映像制作と場づくりの両輪で
横殴りの雪が吹きつける秋田駅で下車し、車で10分。
コーヒーハウス〈マチノミナト〉の明かりがぼんやりと見えてくる。
その建物の4階で、栗原エミルさんが待っていた。
林千晶さんは推薦文のなかで、雪の日にオフィスで栗原さんと会ったというが、
奇しくも同じような状況で彼に話を聞くこととなった。
栗原さんの活動は多岐にわたる。
まずは、ドキュメンタリーからフィクション、TVCM、プロモーション映像、映像教材、
2D・3Dアニメーションなど、
幅広く映像制作を行う〈アウトクロップ〉の代表取締役CEO兼プロデューサー。
宿泊施設〈DELTA HOSTEL〉、
ランチ営業から夜のバー営業まで行う飲食店〈マチノミナト〉、
ワークスペース・スタジオ〈CREATORS’ GARAGE〉を有する
複合施設〈Atle DELTA(以下、デルタ〉の企画と運営。
そして、秋田市内の古民家をリノベーションした
月1上映のミニシアター〈アウトクロップ・シネマ〉の運営。
栗原さんは、映像制作と場づくりというふたつの武器を持って、
秋田の若者や企業を巻き込んで切磋琢磨している。

秋田市中心街にあるアウトクロップシネマ。
ドイツで生まれ、京都で育った栗原さんは、公立の国際教養大学への進学を機に、
2015年に秋田へ移住した。国際教養大学を選んだのは、
中嶋嶺雄先生(初代学長)の本を読んだことがきっかけだったという。
「こんな大学が地方にあるんだ、すごいなと思ったのが第一印象です。
どちらかというと“何が学べるか”よりも、
“どんな人と一緒に4年間過ごせるか”が自分にとっては大事だったのですが、
秋田という利便性がいいとはいえない地に国内外から人が集まってくるって、
どんな魅力的な場所なんだろうと惹かれました」
受験前までは秋田がどこにあるかもよくわからなかったというが、
進学後は栗原さんが決め手にしていた「人」に恵まれる。
在学中の2019年に大学の後輩である松本トラヴィスさんと共に、
秋田の伝統野菜で“いぶりがっこ”の原料となる沼山大根を主題とした
短編映画『沼山からの贈りもの』を制作し、
「全国地域映像団体協議会グランプリ2020」において学生部門の最優秀賞である
文部科学大臣賞を受賞。翌年に松本さんとともにアウトクロップを創業した。


『沼山からの贈りもの』より。
卒業後も秋田を拠点とした理由は、こうした映像制作を通して見えてきた地域課題にある。
「東京での可能性よりも、秋田でのチャレンジのほうが
自分にとってわくわくする選択でした。
それに地域社会へのインパクトも秋田のほうが大きいと考えたのです。
秋田の見えない価値を掘り起こして伝えたいという想いと、
映像という手段が合致して起業しました」
立ち上げ当初は映像制作を軸に栗原さんは動き出した。
推薦人の林千晶さんとの出会いは、国際教養大学の先輩が、
林さんが創業した東京のクリエイティブカンパニー〈ロフトワーク〉で
働いていた縁だったという。
その後、秋田の20代の若者が集まって、
酒を飲みながら自分たちがやっていることやこれからチャレンジしたいことを発表し合う、
栗原さん主催の「夢を語る会」の会中に、
オフィス前ですれ違うかたちでたまたま林さんと再会。
栗原さんから会の主旨を聞いた林さんは飛び入り参加をし、
黙って後方で見守っていたそうだ。
そこで栗原さん含む秋田の若者の熱量にほだされ、
次の開催時には、コミュニティデザインのパイオニア〈スタジオL〉の山崎亮さんを伴って
参加したのだという。

「夢を語る会」の集合写真。左から2番目が栗原さん。3番目が林さん。5番目が山崎さん。
「私もデルタの構想や、今後やろうとしていることの話をしましたが、
まさに山崎さんの専門分野であるコミュニティデザインのことなので、
さまざまなお話をうかがいました。
その際、収益性の話よりも、『秋田という場所において
その場がどういう役割を果たすのか?』と山崎さんから尋ねられました。
映像をつくる過程で、いろんな人に取材をするなかで、
秋田にこういう場所があったらいいなとか、
秋田に熱い人がたくさんいるけども点と点でなかなか交わる機会がないといった、
自分たち目線での課題感や、もう少しこうなったらわくわくするよなという考えはあって。
その思いは、山崎さんや林さんと話したときから今も変わっていないです」
これを契機に栗原さんは林さんと連絡を取り合うようになり、
現在も事業にまつわるアドバイスをもらっている。





































































































