青森県田舎館村の 〈スノーアーティスト集団It’sOK.〉 逆境から生まれた田んぼの二毛作アート
あらためて日本初のスノーアート制作を
下見の翌年、2016年2月に再びサイモン氏が来日し、
日本で初めて本格的なスノーアートの制作を行った。
制作を始めたらいっさい休憩なし。
用意しておいたコーラとバナナとチョコチップクッキーで栄養をとるのみだった。
9時間後、予定していたエリアをはるかに超える巨大な作品が完成した。

2016年に制作されたスノーアート。この時も設計図面はなかった。
夜は展望台から世界初となるスノーアートのライトアップも実施。
ライトアップされると凹凸の陰影が美しく浮き上がり、
取材関係者もふくめ、その場にいた人みんなが感嘆の声を上げた。

初めてライトアップされたスノーアートの美しさには、制作したサイモン氏自身も満足していたという。
サイモンの弟子たち

スノーアート制作の講義をするサイモン氏。
前年に講習を受けた田澤さんをはじめとする地元の有志メンバーは、
サイモン氏が制作するスノーアートの一部を踏み固めるなどで参加していた。
有志メンバーは田舎館村役場職員、県庁職員、弘前大学からのボランティアや、
地域おこしに関わる住民もいて、役所と民間を超えたつながりになっていた。
これが後の〈スノーアーティスト集団It’sOK.〉の源になる。
とくにそのうちのひとり、田舎館村役場の女性職員が
サイモン氏に一番弟子として認められていた。
日本初のスノーアートの公開イベントは、2月6日から14日までの9日間。
サイモン氏が帰国したあとは、この教えを受けたメンバーで、
雪が降ったら埋もれた足跡を踏み直すなど、
メンテナンスをしながらアートを維持する予定だった。
しかし…。
逆境からの挑戦
サイモン氏が去った数日後、2日間にわたって大雪が降り、
スノーアートは完全に消えてしまった。
当初予定していたメンテナンスの範囲を超えた事態で、
再現することは誰にもできない。
一時はイベント中止かと、ニュースにもなった。
「冬の田んぼアート、雪で埋没 積雪で修復を断念」
ニュースサイトの見出しに、
「やっぱり」
「想定してなかったの?」
と嘲笑するようなコメントが並んだ。
一番の人出が予想される3連休を前に、まっさらに戻ってしまった雪のキャンバス。
そのとき、一番弟子が立ち上がった。
「ダメでもともと、やってみる!」
と、オリジナルのスノーアート制作を決断。
有志メンバーもそれに続いた。
ぶっつけ本番、初めてのスノーアート制作は、翌日に完成。

地元メンバーで制作したオリジナルのスノーアート。
サイモン氏のように曲線を入れることはできなかったが、
訪れる人々を驚かせるには十分なものだった。
結果、初の「冬の田んぼアート」は
「世界唯一のスノーアーティスト・サイモン・ベック氏が日本初のスノーアート制作」
「大雪でスノーアート消失、イベント中止か」
「サイモン・ベック氏の弟子がオリジナルのスノーアートを制作し、イベント継続」
と、3度もニュースに取り上げられた。