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連載

映画『じっちゃ!』
主演中村静香さんに聞く
自然と実りにあふれた土地
青森での撮影秘話とは?

わたしの心のふるさと、PRします!
vol.001

posted:2025.10.31   from:青森県つがる市  genre:エンタメ・お楽しみ

〈 この連載・企画は… 〉  出身地だけでなく、仕事がきっかけで好きになったゆかりのある地域など、
誰しも心のふるさとがあるのではないでしょうか。
この連載では、愛する地域の魅力を発信している著名人にインタビュー。
地域との関わりや愛、エピソードなど語っていただき、心のふるさとをPRしていただきます。

writer profile

Nico Araki

荒木にこ

あらき・にこ●エディター&ライター。東京都出身。武蔵野美術大学卒業。ファッション誌『GINZA』の編集アシスタントを経て、2020年に独立。現在は、雑誌やブランドのオウンドメディアを中心に執筆。夜な夜な映画やドラマを観て、小さな逃避行を楽しむのが日課。

Photographer

Kazufumi Shimoyashiki

下屋敷和文

しもやしき・かずふみ●1986年長崎県生まれ。日本大学藝術学部写真学科卒業後、写真家・若木信吾に師事。2014年に独立後、『BRUTUS』『POPEYE』等で活躍。

hairmake

Yuna Kondo

近藤由菜

stylist

Nami Takegami

竹上奈実

Costume credit

・ブラウス ¥52,800-(税込)MASTER gUi (マスターギー)
・パンツ ¥46,200-(税込)上と同じ
問い合わせ先:株式会社KSD
連絡先:https://mastergui.jp/

青森・つがる市を舞台に、東京からIターン移住した孫娘と、市内でメロン農家を営む祖父の絆を描くヒューマンコメディ『じっちゃ!』が、2025年10月17日(金)より青森県にて先行公開、2025年10月31日(金)に全国で公開される。主演・三上ゆき役の中村静香さんと、脚本と監督を手がけた千村利光さんに、見どころと撮影秘話を伺った。

青森の食や自然を通して心を解きほぐす“Iターン移住”

青森・つがる市の名産品と聞くと、先にりんごやにんにくが浮かぶ人も少なくないはず。しかし、実はメロンの生産量全国5位を誇る町としても知られている(令和元年産)。そんな特産品の宝庫である青森に惚れ込み、“第二の故郷”とも公言している千村利光さんがメガホンを取り誕生した映画『じっちゃ!』。四季折々の風景と共に人と人との絆の尊さを描いている。

物語は主人公の三上ゆきが、東京からつがる市へ引っ越し、新天地で地域おこし協力隊として働き始めるところから展開していく。いわゆる、都会育ちの人が地方に根を下ろす“Iターン移住”だ。

中村静香さん

「東京での生活を手放して地方へ移住する一歩って、とても勇気がいる決断だと思うんです。でもゆきは思い切って、祖父がいる青森県・つがる市に移り住んだ。都会での窮屈な日々から解放された彼女は、つがる市の風土に一年かけて馴染みながら、生活や仕事への向き合い方も少しずつ変化していくんです。同時に、祖父がメロンを通して人に幸せを届けている姿を間近に見て、自分も周囲になにか与えられるような人になりたいという気持ちが芽生えます。私自身もまた、京都出身なので慣れない環境でしたが、撮影のオンとオフの時間を通じて青森の地に触れることで、少しずつ気持ちがほぐれていくのを実感しました。彼女の張り詰めていた気持ちが、徐々に和らいでいくのを感じていただけるとうれしいです」(中村さん)

千村利光さん

「撮影終盤の方では、ロケ地に使っていた家が本当に中村さんの実家みたいになっていたよね。僕は市役所でゆきがプレゼンするシーンが印象的でした。周りが騒いでいる中で、一歩乗り遅れる姿が面白いんです。そういうほっこりする瞬間を、敢えて差し込んでいます。周囲に流されがちな彼女がいてくれたおかげで、最後の成長した姿に説得力が増した気がします」(千村さん)

撮影期間は約10カ月。田園風景や馬市まつり、岩木山、木造駅など、四季を通してつがる市ならではの名所が随所に盛り込まれているのも見どころの一つ。

「夏の青々とした畑の風景から、真っ白な銀世界まで。季節によって景色が全く違う地域でした。だからこそ、ゆきの心情とリンクしたような光景が撮れたのだと思います」(中村さん)

「今回、とても天候に恵まれていましたよね。雪景色を撮りたい時はちゃんと吹雪いて積もってくれて、逆に穏やかな風景を望んでいると雪が降り止んでくれた。すべてイメージ通りに撮影できました」(千村さん)

劇中には青森の名産品が度々登場し、中村さんが頬張る姿からも、その魅力が伝わってきた。

「やっぱりメロンは格別でした。みずみずしさと糖度が高くて、神楽坂のカフェ『果房 メロンとロマン』で作っていただいたサンドイッチの味も忘れられません。会議のシーンでテーブルに乗っていたリンゴジュースも美味しすぎて、みんな空き時間も飲んでいたし、お土産としても買って帰りました」(中村さん)

終始和やかなムードに包まれていた撮影現場

馬市まつりのシーンは、200人の方がエキストラで参加するなど、地域住民の方は撮影に協力的だったという。同窓会のシーンでは思わぬ出来事も!?

千村利光さん

「祖父の同窓会にゆきが合流する場面では、地元の方、5人ほどに出演をお願いしていたんです。そしたら、当日30人ぐらい来てくださって、慌てて料理を増やして大宴会の設定になりました(笑)」(千村さん)

中村静香さん

「しかも、午前中に撮っていたのに、とても盛り上がっていましたよね!監督の声が届かないほど大賑わいで、楽しかったです。本場の津軽弁も難しくて。寒い土地だからこそ、なるべく口を開けずに話せるようなイントネーションになっているみたいで、早口だとフランス語に聞こえるんですよ」(中村さん)

「僕は大体は聞き取れるけれど、早口になると難しい。同じ音でも意味がちがうこともあるんです。でも現地の方でも全部理解していないみたいで、内容が半分分かれば会話が成立するらしいです。中村さんは移住する役だから、下手くそな津軽弁を頼んでいたのですが、途中で上手くなり始めて危なかったね(笑)」(千村さん)

“じっちゃ”こと祖父の役を演じたベテラン俳優・小野武彦さんと中村さんは初共演。どのようにして祖父と孫娘の関係を作っていったのか。

映画『じっちゃ!』

「孫娘のゆきになるために、小野武彦さんとはなるべくコミュニケーションを取ろうと心がけていました。とてもチャーミングでやわらかい空気をまとった方で、役にも自然と入ることができました。実生活でもきっと“かわいらしくて温かいおじいちゃん”なのだろうと思います」(中村さん)

「いつだったか忘れたけれど、『中村くん、ご飯食べたのかい?』って、小野さんが話しかけている様子を見かけて、もう本当におじいちゃんと孫娘のような関係が築かれていて微笑ましかったです。小野さんは差し入れを自ら配り、スタッフのことを常に気にかけてくださる、温かい方でしたね」(千村さん)

名産品の宝庫である青森名物土産をピックアップ

取材前もリンゴジュースを飲んでいたという甘党の中村さんと、編集部がピックアップした青森県の名物土産をチェック。

中村さんが気になったのは〈はとや製菓〉のソフトりんご。

〈はとや製菓〉のソフトりんご

「〈はとや製菓〉のソフトりんごは、撮影で現地にいる時から見かけていたのですが、結局食べる機会がなかったんです」

生のリンゴを1cmの厚さに輪切りし、そのままフリーズドライにしたお菓子は、中村さんの口にもあった模様。

〈はとや製菓〉のソフトりんご

「最初の素朴な味からは想像できないほど、中がとっても甘い!水やリンゴジュースに浸してふやかしても食べてみたいですね。おやつの時間に軽くいただけそう。期限も長いからお土産にもちょうどいいですね」

映画は本日2025年10月31日(金)より全国公開。ぜひ映画館に足を運んでみてほしい。

information

『じっちゃ!』

2025年10月17日(金)青森で先行公開。

2025年10月31日(金)池袋シネマ・ロサほか全国順次公開

https://jiccha-movie.com/

祖父の泰助(小野武彦)が住む街という無難な理由で、地域おこし協力隊制度を利用し、東京からつがる市にIターン移住した三上ゆき(中村静香)。就職先の市役所で観光・ブランド戦略課に配属された彼女は、市の魅力を全国に発信するため、慣れない業務に苦戦しながらも、祖父との日々のやりとりに癒されながら乗り越えていく。やがて怒涛の1年が過ぎ、淡い恋心を抱いていた同僚から東京でのビジネスを持ちかけられ、心が揺れるゆき。そんなある夜、ゆきは、これまで多くを語ろうとしてこなかった泰助が40年間秘めてきた事実を聞く。そこには青森に住み続けた泰助の知られざる絆の物語があった───。

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