全国で、思わずその場で缶を開けたくなるほど魅力的な
「焼酎ハイボールのお供」を見つけるこの連載。
今回は、酒ライターの岩瀬大二さんがアテンドする、
東京・門前仲町編です。
下町生まれの焼酎ハイボールと合うのは、やはり下町グルメか
深川不動堂と富岡八幡宮。
下町を代表するふたつの寺社から広がる賑わい。
祭りがあって、店が集まって、
昔から賑わいがあった門前町は、次第に新たな活気が集まり、
通称「もんなか」となって、さらなる賑わいを見せている。

深川不動堂、富岡八幡宮。ふたつの名所があれば門前町が発展するのは必然。皇居大手門から東京駅、日本橋を通り江東区を横断する永代(えいたい)通りとも交わり、昔から開けた場所。人も商売も集まってくる。
永代通り沿い、門前の参道、一歩入った路地には、
昔ながらの和菓子屋、食事処から、その道の通人も足繁く訪れる酒場の名店に、
きらりと光るイタリアンやスパニッシュの店が揃う。
でも“ひしめく”感じや喧騒という感じでもない。
どこか、落ち着きがあって、ふだんのくらしもあって。
元気がほしければ元気を、癒しを求めれば癒しを与えてくれる、
なんとも不思議な場所でもある。

門前町ならではの風景、昭和の面影を残しながら、建物をよく見れば目新しいカフェや店も多く、その混在が今のもんなかの魅力をつくっているようだ。
今日の焼酎ハイボールのアテ探しは、ここ、もんなかでの差し入れ探し。
友人のミュージシャンが東西線沿線のスタジオで、
収録を終えてひと息ついたところで乾杯、という予定。
まだちょっと時間がありそう、ということで、
ぶらりと深川不動堂にご挨拶をして、酒場へ。
向かうのは〈だるま〉。
創業50年を超える下町酒場で、酒場ツウには横長の“変形コの字カウンター”
としてもおなじみの名店だ。

年季の入った、いかにも下町の酒場という雰囲気だが、流れるBGMは先代が好きだったジャズ。入口のCD棚を見ればビリー・ジョエルやイーグルスにボビー・コールドウェルなんていうあの頃の洋楽も並んでいた。

先代から引き継ぐ定番、アレンジ、姉妹の新しい味。さらりと書いたメニューからも歩みを感じられる。
うれしいのは宝焼酎のチューハイが楽しめること。
店を切り盛りするのは、理(あや)さん、真(まさ)さんの姉妹。
おふたりとも高校時代からお店を手伝い、
先代であるお父様がなくなった2009年から店を継いだ。
その歩みはアテからも感じられる。
「お酒が飲める煮込みを目指しました」と理さんが笑う、
名物の牛モツにこみはその象徴のひとつ。
色は濃い目だが味は甘やかでスッキリ。
先代の信頼関係のおかげで仕入れられたモツは肉感もたっぷりで、
そこに煮込みでは珍しい玉ねぎを入れたり、
スープの味わいを変えていったのは姉妹の試行錯誤。
豊富なアテ、一品料理の数々は、
「先代から変わらないもの、少し変えていったもの、
私たちが考えたものとありますね」(理さん)。

同じような出汁、スープでもいいような料理だが、まったく味わいが違う、煮込みと肉豆腐。手間をかけ、趣向を変える。ボリュームもたっぷり。
お客さんも先代からの常連に加え、週末は、若い人たちでもにぎわうという。
この日も、まだ日が沈まない開店早々に、ツワモノだけど親切な常連さんのなかに、
初登場と思しき若いおひとり男子が混じり、いい距離感で活気が増していく。
そこに、注文すれば返ってくる、
「は~い、チューハイいっぱーつ」という、
先代が自然に発し、今や名物となっているかけごえが軽やかに響く。
下町のコール&レスポンス。

いるだけで、呑むだけで、まちの歩みや人の移り変わりを感じることができる。
やっぱり、そんな酒場が好きだ。

闇市から始まったといわれる辰巳新道。焼鳥、もつ焼き、オーセンティックなバーにナチュールワインと、50メートルほどの路地に30件をこえる新旧の酒場が集う魅惑の迷宮。











































































































































