連載
posted:2024.6.28 from:埼玉県さいたま市 genre:食・グルメ
PR 宝酒造
〈 この連載・企画は… 〉
酒ライター岩瀬大二さんが、全国のまちで思わずその場で缶を空けたくなるほど魅力的な「焼酎ハイボールのお供」を見つけます。
“お供”とはご当地グルメに限らず、風光明媚な景色や地域の方々との対話なども立派な酒のアテ!
焼酎ハイボールを通してそのまちの多面的な魅力を発信していきます。

writer profile
Daiji Iwase
岩瀬大二
いわせ・だいじ●国内外1,000人以上のインタビューを通して行きついたのは、「すべての人生がロードムーヴィーでロックアルバム」。現在、「お酒の向こう側の物語」「酒のある場での心地よいドラマ作り」「世の中をプロレス視点でおもしろくすること」にさらに深く傾倒中。シャンパーニュ専門WEBマガジン『シュワリスタ・ラウンジ』編集長。シャンパーニュ騎士団認定オフィシエ。「アカデミー・デュ・ヴァン」講師。日本ワイン専門WEBマガジン『vinetree MAGAZINE』企画・執筆。
credit
撮影:黒川ひろみ
焼酎ハイボールのアテ探し旅。
今回はさいたま市北区の〈大宮総合食品地方卸売市場〉通称〈大宮市場〉へ。
こちらはプロだけではなく、一般の来場者も購入可能。
場内ならではの空気感のなかで、
目利きのガイドで市場の魚を買えるというのは贅沢だ。
そして、買い物を楽しんでいると発見が。
いわゆる海なし県といわれる埼玉の市場だけど、
情熱とエンタメ溢れる“だからこそ”の魅力があったのだ。

魚市場と青果市場からなる〈大宮市場〉は、埼玉県内の市場では最大の規模と取扱高を誇る。水産と青果の二本柱のほか、関連する精肉、包装、日用品から、飲食料品なども豊富で、一日いても飽きなさそう。
まずは市場の華ともいうべきマグロ。
この市場の歴史とともに歩んできた〈丸長〉へ。
見事な手さばきとともに、マグロの豆知識を流ちょうに、
落語の名人芸のような調子で話すのは2代目の長川順一さん。

市場の入口側にあり入りやすい雰囲気の〈丸長〉だが、一歩足を踏み入れればピリッとしたプロの仕事場という緊張感も。ただ、この空気感に触れられるのも市場場内に踏み込む喜び。

マグロのプロにしてしゃべりのプロ? 仕事場をステージにしてしまうかのような長川さん。第3土曜日の一般向けイベントでは解体ショーも行う。実は市場の副理事長。来場者に喜んでもらえる施策にも取り組んでいる(右は著者)。
「今切っているのはインドマグロ。南アフリカのケープタウンから来たやつね。
インドマグロの生息範囲は南アフリカからオーストラリアのインド洋。
本マグロは北半球、ニューヨークからアイルランドがいい漁場だ。
長崎、沖縄、和歌山、地中海のトルコやマルタあたりは養殖があって、
あまり知られてないけど11~2月あたりに出る、
チリのバチマグロは抜群の風味と脂の質よ。
これ食べた人が必ず言うのは、『こんなの食べたことない!』
気に入ったんで自分たちで直接買い付けたんだ」

宝の山ともいうべきマグロの冷凍貯蔵庫。自家用車何台か分のストック。「中はマイナス40度。扉を閉めて10分、15分作業をします。だから、あなた方と違って肌がコーティングされちゃって寒さなんか感じないんだよ(笑)」(長川さん)


マグロを捌く道具も目の前で見られる。薪を割るナタの改良版をはじめ、魚というより木工所、林業を思わせるような錯覚に陥る。
さらに部位それぞれの味わいの違いや、冬と夏の性質の違いから適した食し方など、
マグロ愛、魚愛が止まらない。
マグロと焼酎ハイボールの相性は抜群!
と以前も書いたけれど、プロの情熱的な話を聞きながらだと、
どんなマグロのどんな部位を合わせようかと気分もアガる。

「酒と合わせるの? いやぁ、いいねえ。私も飲むの好きなんで(笑)」
と長川さんの笑顔もなんだかうれしい。
ということで、おすすめいただいたなかから
ケープタウン沖の脂多め、赤身多めの2種をセレクト。

すると「うちだけじゃなくていろいろ回るんでしょ。ほかのところも案内するよ」
とうれしい提案。
市場内の業者は商売がたきとまではいわないけれど、
ライバル関係にあるのではと勝手に思っていたのだが、
「今はそういう時代じゃないからね」と長川さん。
1986年(昭和61年)の市場マップを奥から取り出してくれて、
「この頃に比べたら、今は仲卸業者も半分ぐらいに減ったかな。
だから、守っていくためには助け合って。
それにそのほうがお客さんもうれしいでしょ。
いい生屋(上質な鮮魚を扱う卸)を紹介するよ」
確かに、目利きたちが手を取り合って、市場内で、ワンストップで提供してくれる。
プロの特権かとおもいきや、一般来場者でも歓迎とのこと。
アテ探しの楽しさがますます膨らむ。
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では、鮮魚も物色しよう。魚・貝問屋の〈カネム水産〉へ。
所狭しと並ぶ新鮮な魚が詰まったケースをよく見れば、
北海道から九州まで全国津々浦々の産地名が記されている。


北海道の貝類から天草の鯛まで各地の旬の名産品が並ぶ。入口からは最も遠い場所にあるが、開放的で一般の方も入りやすい。子どもたちも目を輝かせて魚介を見つめるという。
「大宮は交通の便もいいですからね。
特に海なし県というハンデはないですよ」
と代表取締役の平木重和さん。
平木さんは魚介豊富な長崎県の出身。
長崎は島や入江も多く海岸線の長さでは北海道と双璧。
そこから海なし県の市場へ。
「いやいや、正直凄いなと思ったのは、
海がなくても全国各地からモノって集まってくるんですよね。
しかも人口の多さやニーズの高さがあるのでいいモノが」
さいたま、大宮といえば人気のスポット〈鉄道博物館〉がある。
「そこには、昔、八戸から鉄道でサバが運ばれた展示があります。
大昔は魚を食べる習慣はなかったかもしれませんが、
物流・交通が発達して、ニーズに応えられるようになったのでしょう」
北信越、東北の玄関口、ハブでもあるこの地は、
ハンデではなく、むしろ、好立地なのかもしれない。
プロ御用達のカネム水産だが、平木さんは一般のお客さんが来ることを、
魚食文化がつながっていく好機だととらえているようだ。
「特に第3土曜日はイベントがあるので、家族連れでにぎわっています。
子どもさんがYouTubeの影響か、自分で魚料理をやりたいと
お小遣いを握りしめて来るのを見るとうれしいです」
スーパーでパック詰めされたものではなく、魚の匂いを感じながら、
全国から集まるいい魚を見て、聞いて、選ぶ。
都会の海なし県だからこそ得られる喜び。

代表の平木さんは、長崎から大学時代に上京し、先代である叔父が営むこちらでバイト。「就職どうするかなというときに、この仕事がおもしろいなと思い、憧れもあって、やってみますと」。そして遺志を引き継ぎ30年。お客様同士のLINEグループをつくって情報発信・共有を図るなど新しい試みにも積極的だ。
では、ご本人も酒好きという平木さんに、
今日の焼酎ハイボールのアテを選んでいただこう。
「シーズンが始まった山形の岩ガキはいかがでしょう。
それからちょっと蒸した千葉のハマグリもよさそうですね」
焼酎ハイボールの味わいを思い浮かべるだけで、至福。

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市場ならではのグルメを味わうのも目的のひとつ。
デカ盛りや人情店としてメディアを賑わせる〈市場食堂 花いち〉へ。
チーフの川島吉勝さんもユニークな店主として有名人。

店構えからサービス精神とエンタメ気質があふれ出す。第3土曜日のイベントデーは店を何重にもとりまくような行列ができる。

日本一ジャンボ海老フライ 3520円(税込)。
まるで情報番組のようなノリの良さで紹介してくれたのが、
“日本一のデカさ”を誇るというジャンボ海老フライ。
海老の重量は290グラム。
海外で見るロブスターかというサイズ感。
プロレスや格闘技でいえばスーパーヘビー級だ。

ジャンボ海老フライに使うのは、シータイガーという天然のブラックタイガー。「ここまで育つのには7年ぐらいかかります」(川島さん)。

川島さんも長川さんと同じく、腕としゃべりの二刀流。テキパキと手を動かしながら、軽快なおしゃべりでお店のエピソードや料理行程の説明をしてくれた。

ずっしりと重い海老を、じっくり揚げていく。外はサクサク、中はしっとりの海老フライが完成だ。

特製のタルタルは、マヨネーズ、卵、ケッパー、しぼった玉ねぎに、最後に追いゆで卵。「フライを食べたときにこの追いゆで卵がごろごろっとして食べ応えアップ。これがたまらないですよ」と笑顔の川島さん。新鮮つくり立てが大事なので夏場のテイクアウトでは提供されない。
サービス精神にあふれたこのジャンボ海老フライのほかにも、
毎月第3土曜日のイベントデーでは、じゃんけんに勝ったら、
通常4本の海老フライ(通常サイズ)が8本になるという大盤振る舞い。
なぜ、そんなことを?
「私はここの2代目で、働き始めて32年。
その頃のお客さんは市場の人だけ。
でも時代が流れて一般の方にどう来ていただこうかってことになって。
豊洲や東京の大田市場のような集客があるわけじゃないし。
それで、イクラをドカって盛ったりもしました。
1万8000円分をタダで(笑)。
もうね、どうやったら目立てるか。まあ、もう目立っていたんだけど(笑)」
これでもかというエンタメ性は、来てもらうため、喜んでもらうため。
「海老フライのじゃんけんも、
うちのYouTube見てもらえればわかるんですけど、実はパーしか出してないの(笑)」
連戦連敗も想定内。その成果もあって、今は長蛇の列。
「千葉、静岡はざら。京都や兵庫から車で7時間かけてきたとか。
いやぁ、そんなことされたらがんばらないと」
海の幸に恵まれた県の人たちが、海なし県に海の幸を求めてやってくる。

帰り道、近くの公園で焼酎ハイボールとともに、
ジャンボ海老フライに挑む。
持ってみると実に重い。ズシりという表現がぴったりだ。

「長くするだけなら海老の胴体を伸ばせばもっとできるんです。
でもやっぱりこの太さがないと!身の歯ごたえもすごいですし、
頭のところの味噌もたっぷりでうまいですよ!」
その言葉通り、海老フライでは経験のない食べ応え。
じっくりと揚げながらも身はしっとり柔らかく、
衣はさくっと軽快という見事なハーモニー。
焼酎ハイボールの爽快感がその衣と油をさらに軽快にし、
焼酎の旨みが海老とじっくり絡み合う。

特製のタルタルにちょっと中濃ソースを加えて食べれば、
風味が濃厚に。よく冷えた焼酎ハイボールと無限ループだ。
夢中で食べて飲んで、それでもまだ海老フライは食べきれない。
思わず笑顔で「手ごわいなあ、でも楽しいなあ」と独り言。

川島さんのノリと笑顔と
「わざわざ来てくれるんだから、せっかくだから楽しんでほしい」
という言葉を思い出す。
そういえば丸長の長川さんもこんなことを。
「海なし県の市場のハンデ?
うーん、だからこそ情熱、熱意を持っている人が集まっている場所なんじゃないかな。
ほかの海のないところの魚市場でもそういうリーダーがいてね。
私たちはお客さんにエンタテインしたいし、応えたい」
海なし県だからこその探究心、好奇心、そして出合った喜び。
それを提供する市場の人々。
市場にしかないものや体験があって、それを楽しんでもらいたい。
それは今回出会った長川さん、平木さん、川島さん、共通の思い。
ありがたく頭の味噌を吸い尽くし午後の晩餐終了。
クーラーに入れたマグロと鮮魚を持ち上げ立ち上がれば、
帰宅後の至福の時間を想像して、また笑顔が浮かんでしまう。

ガツンとくる辛口ドライチューハイ!
昭和20年代後半の東京・下町の大衆酒場で生まれた
元祖“焼酎ハイボール”の味わいを追求。
ベースアルコールに伝統の宝焼酎を使用することで実現した、飲みごたえと
キレのある辛口な味わいに加え、プリン体ゼロ※1、甘味料ゼロ※2、糖質ゼロ※3
といった機能面もうれしいひと缶です。
※1 100ml当たりプリン体0.5㎎未満をプリン体ゼロと表示。
※2 食品添加物としての甘味料は使用していません。
※3 食品表示基準に基づき、100ml当たり糖質0.5g未満を糖質ゼロと表示。
information
埼玉県魚市場
住所:埼玉県さいたま市北区吉野町2-226-1
営業時間:8:30〜16:30
定休日:日曜
information
市場食堂 花いち
information
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