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“豊かな人間力が育まれる環境”で
子育てしてみませんか?
離島と親子をつなぐウェブメディア
『シマ育コミュニティ』へ

Local Action
vol.214

posted:2024.3.28   from:全国  genre:暮らしと移住 / 活性化と創生

PR 離島経済新聞社

〈 この連載・企画は… 〉  ひとつのまちの、ささやかな動きかもしれないけれど、創造性や楽しさに富んだ、
注目したい試みがあります。コロカルが見つけた、新しいローカルアクションのかたち。

writer profile

Mae Kakizaki

柿崎真英

かきざき・まえ●ライター。宮城県仙台市出身。2019年よりフリーランスライターとして、東京を拠点に活動中。月刊誌やニュースサイト編集者としてのバックグラウンドを活かして、Webメディアや雑誌などに寄稿を行う。

10年以上、離島を取材し続けてきた『ritokei』による姉妹メディア

1万4000以上の島からなる島国・日本。
そのうち、北海道・本州・四国・九州・沖縄本島のほか、
人が生活をしている「有人離島」が416島ある。

有人離島の魅力や情報を発信しようと2010年に、
編集長を務める鯨本(いさもと)あつこさんが仲間とともに立ち上げたのが
NPO法人離島経済新聞社が運営するウェブサイト『ritokei(リトケイ)』だ。

ウェブ上での情報発信のほか、年に4回、タブロイド紙『季刊ritokei』も発行しながら、
それぞれの島で受け継がれてきた固有の文化や自然、暮らしの情報などを紹介している。

タブロイド紙『季刊ritokei』。

タブロイド紙『季刊ritokei』。

そんな『ritokei』が、2023年9月30日に「子育て」をテーマに据えた
新しいメディア『シマ育コミュニティ(シマイクコミュニティ)』をオープン。
離島の子育て環境を紹介する記事や、島の人と直接交流できるオンライン勉強会により、
より良い子育て環境を探す親子と、日本の島々をつないでいる(※)。

※2023年度は子どもたちを取り巻く社会課題を解決することを目的とした
日本財団の「子どもサポートプロジェクト」の助成をもとに実施

シマ育コミュニティビジュアル

ではなぜ、『ritokei』は子育てに特化する取り組みを始めたのだろうか。
その背景には、子育てをとりまく日本社会の問題と離島ならではの問題がある。

近年、政府も子育て支援に積極的に取り組むなど、
人口減や少子高齢化対策は、喫緊の課題となっている。
それは離島にとってはより深刻なものだ。

戦後の日本が人口増加に向かう頃、
すでに人口減が始まっていた離島では、島の存続自体に直結する大問題となっている。

離島地域を10年以上見つめてきた鯨本さんは、
今回「子育て」に特化したメディアの立ち上げに込めた思いをこのように話す。

「島に住む人や関わる人が増えなければ、価値ある文化や営みは消えてしまいます。
そこで、どうすればいいかと考えたときに最も重要なのが子育てです。
リトケイでは医療や産業など、さまざまな課題にフォーカスしてきましたが、
島の未来にとって、最優先事項である子育て層の増加に貢献できるよう、
島と子育て層をつなぐメディアを立ち上げました」

シマ育コミュニティ

「人間本来の子育て」をシマで

メディア名でもある『シマ育』という言葉には、
住民同士互いに支え合う地域共生コミュニティを指す「シマ」のなかで、
多様な人と関わり、自然や文化に触れ、
そして人間力を「育む」という意味が込められている。

そのようなシマでの子育てを、鯨本さんは「人間本来の子育て」だと感じている。
かつては日本中に存在していたものだが、
現代では失われつつあることが「日本社会が抱える問題」だと鯨本さんはいう。

一方、海で隔てられる島々には「人間本来の子育てが残っている」と気づいた鯨本さん。
離島で子育てをする魅力について、大きくふたつ挙げている。
ひとつは、子育てが「親と子に閉じた1対1」にならないこと。

「2023年の冬に発行した『季刊ritokei vol.44』では、2020年発行の32号に続いて、
島の子育てを特集し、発達心理学者の根ヶ山光一(ねがやまこういち)先生に
お話をうかがいました。
根ヶ山先生は、子育てに親以外の人が積極的に関わることを意味する
『アロマザリング』を推奨している方です。

最近は、子育ては親だけが行うような風潮もありますが、
本来、子育ては子どもをとりまく地域社会の人々が多様に関わり行われるもの。
島の人々は、基本的に、
地域社会のなかで人と支えあう価値観を持っているため、
子どもを島(=社会)のまんなかに放ちやすい環境ともいえます。
もちろん、島によってもいろんな環境はありますが、
私が知る限り、島では『子育ては親だけが行うものだ』という空気に、
ふれたことがありません。

私自身、子どもを連れて離島を取材したこともありますが、
島の子どもではない我が子にも、島の方々は温かい目を向けてくださいます。
『子ども』という存在がものすごく尊ばれる世界なのです」

そして、もうひとつの魅力が
「生きる力が養われる環境がある」ことだと、鯨本さんは話す。

「こちらも『季刊ritokei vol.44』の取材で、〈家族・保育デザイン研究所〉の
代表理事を務める汐見稔幸(しおみとしゆき)先生と、
〈森のようちえん&冒険学校〉を立ち上げた中能孝則(なかよくたかのり)先生に、
島の子育て環境の何がいいのかをうかがいました。

おふたりから返ってきたのが、島には生きる力が養われる環境があるということ。
その生きる力というのは、非認知的能力とも言われています。
汐見先生いわく、チーム力やリーダーシップ力、人を励ますのが上手い、
上手に失敗する。そういった力が生きていくために必要です。

大手IT企業が、どのような能力を持った人が
いい仕事をしているのか研究したところ、
認知能力にあたる学力で得られる能力や数値化できる能力を持っている人よりも、
非認知的能力を持っている人が圧倒的に多かったという結果を発表していました。
島の場合は、その非認知的能力が養われやすい環境があるんです。

なぜかというと、単純に不便だから。
もともと、都市部のように何でも揃う環境ではなく、
大きい台風が来たら2週間ぐらい物流が止まることもあります。
『ない』という状況があるからこそ、
共助力を発揮して、周りの人と何かを貸し借りしたりと、
各々が工夫して、どうにかやっていく。
そのとき、その場にいる人たちと連携して何かをやり遂げる機会が多いため、
日常のなかで、リーダーシップ力やチーム力が養われるのです」

離島留学のパンフレット

Page 2

離島留学という選択肢

生きる力が養われる子育て環境がある離島で、子どもを育てたいという都市部の親子と、
地域の未来のために島の外からも子どもたちを迎え入れたいという島の人々に、
出会いと学びの機会を提供するのが『シマ育コミュニティ』の役割である。

そのため、サイトは親子に向けた情報だけでなく、
同じように「シマ育」という環境をつくっている、
またはよくしようと思っている島の人や先生など、
さまざまな地域の大人が見えるようなつくりになっている。

例えば、鯨本さんたちが一島一島めぐって、
各島の受け入れ態勢を取材し紹介しているコーナーや、
モニターツアー参加者の体験談、有識者など
子育てにまつわる人々のインタビューなどが掲載されている。

また、鯨本さんは『シマ育コミュニティ』を
ただ単に情報発信するだけのメディアではなく、
島の人々と子育て中の親子が、
より良い子育て環境をつくる仲間となれるよう、
オンライン勉強会やモニターツアーも開催。
『シマ育コミュニティ』のオープンから半年で、勉強会をきっかけに
離島留学先をみつける親子や、島への移住を決める人も現れた。

孤独な子育てに悩む都市部の親、また学校の仕組みや制度に
違和感を持って不登校という選択肢を取っている子どもたちなどにとって、
島との出会いは、新たな可能性を拓くきっかけとなるのではないか。

離島留学のパンフレット

『シマ育コミュニティ』では、家族総出で島に移住するかたちだけでなく、
短期間で自然や島の暮らしを体験できる子ども向けの体験プログラムや、
子どもと父か母、または子どもだけで単身移住できる
「離島留学」の制度についても詳しく紹介している。

離島留学は1年単位の更新制が多いため、お試し感覚で離島暮らしを体験できるのも魅力。

「支え合い先進地である離島には、子ども、子育て、教育環境づくりという面だけでなく、
人と人が支え合いながら自然のなかで生きていくための幅広い知恵が今も残っています」
と語る鯨本さんは、書籍、
『世界がかわるシマ思考-離島に学ぶ、生きるすべ』の発売を4月20日に控えている。

『世界がかわるシマ思考-離島に学ぶ、生きるすべ』(issue+design)1900円+税。

『世界がかわるシマ思考-離島に学ぶ、生きるすべ』(issue+design)1900円+税。

少子高齢化に伴う人口減の問題だけでなく、
自然災害や地球温暖化といった脅威にもさらされている日本で、
この先どのように生きていくか。
鯨本さんたち『ritokei』が集めてきた情報や、これまでの活動で得てきたヒントから、
心豊かに生きる「すべ」と「思考」を紹介する内容だ。
さらに、哲学者や大学教授といった有識者の先生や、
島のキーマン的な存在の人たちとの座談会も収録されている。

子育てをはじめ、人口減などさまざまな課題に直面している日本人にとって、
離島は原点に立ち返り、
人間本来の営みについて考えさせてくれる貴重な存在といえるだろう。
子育て層はもちろん、そうでない人にとっても、
離島の可能性は未来に希望の光を照らしてくれるのかもしれない。

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