少しずつ耕すまちの未来 福島県・大熊町 〈あまの川農園〉の 軽やかな歩み

福島に対してのネガティブなイメージを払拭したい

エミリーさんが来日したのは2011年。当初は関東を拠点にし、
フランス語教師として働いていた。
そこで福島市出身の生徒と出会ったことが、エミリーさんと福島との縁を深めていく。

「それまでは福島にネガティブなイメージをもっていたんです。
どうしても原発のイメージがあって。
でも彼女がやさしい生徒さんで、すごく仲良くなって。
福島は彼女の生まれた場所だから、私がどうして福島が嫌なのかをちゃんと考えよう、
まずは行ってみようと思ったんですね」

農作業は猫と一緒に行っているそう。飼い猫が5匹農園を走り回っていた。猫はネズミ避けにも活躍している。

農作業は猫と一緒に行っているそう。飼い猫が5匹農園を走り回っていた。猫はネズミ避けにも活躍している。

そうして2018年、生徒に福島のおすすめの場所を聞き、訪れたのが「会津」。
塔のへつり、五色沼、鶴ヶ城などを巡った。

「行ってみたら、すごく良かった。本当に楽しかった。
車窓から見える赤い屋根や青い屋根の民家が並んでいる景色もすごく好きで。
それから毎年福島へ行くようになりました」

旅行から戻ってからは、「少しでも福島のことを知らせたい」と
会津地方の郷土玩具「赤べこ」のイラストを描き始めたエミリーさん。
2020年には福島全域の名産や見どころを描いた福島マップを制作し、
2021年には会津若松に移住した。

エミリーさんが描いた福島マップ。

エミリーさんが描いた福島マップ。

浜通りを初めて訪れたのは、会津在住時の2021年。
福島マップ制作の際に双葉町の「双葉ダルマ」を描いたことから、
いつか双葉町に行ってみたいと思っていたという。

「双葉町の前田の大杉を見て、
浜通りで農業がやりたいってインスピレーションが湧いたんです」 

そこからは一念発起。浜通りで農業に携わる人に話を聞こうと、知人を辿り、
いわき市のワンダーファーム代表・元木寛さんと出会った。
元木さんは大熊町出身で、浜通りでの多くの縁をつないでくれたが、
さまざまな選択肢のなかからエミリーさんは大熊町で農業を始めることを決意する。

「大熊町に初めて来たときに、感動したんです。
町交流ゾーンには暮らしに必要なものがコンパクトにまとめられていて、
町民のためによく考えたなって思いました。今でもそう思っています。
老人ホームも近くにあって、歳を重ねてからも自分で生活できる環境が整っている。
暮らしやすい印象がありました」

大川原地区にある「町交流ゾーン」には、飲食店やコンビニ、美容室やコインランドリーを有する商業施設、宿泊温浴施設などがあり、町役場が隣接している。コンビニではエミリーさんの作物(※収穫時期のみ)やイラストグッズも販売している。

大川原地区にある「町交流ゾーン」には、飲食店やコンビニ、美容室やコインランドリーを有する商業施設、宿泊温浴施設などがあり、町役場が隣接している。コンビニではエミリーさんの作物(※収穫時期のみ)やイラストグッズも販売している。

気軽な気持ちで浜通りを訪れてほしい

農業をしたいと役場へ申請し、紹介してもらったのは、
震災前、畑と田んぼとして使われていた土地。

「田んぼには水がたくさん溜まっていて、どうしよう……とも思いましたが、
ここならほかの人の邪魔にならないと思って、全部借りますって言いました。
例えば隣り合う畑で除草剤を使用する農業をやっていたらお互い迷惑になってしまう。
この土地を全部借りればその心配はないし、景色もすごくいいと思って」

ネズミ避けのために植えているというニンニクの芽が土から顔を出していた。もちろん収穫して食べることができる。

ネズミ避けのために植えているというニンニクの芽が土から顔を出していた。もちろん収穫して食べることができる。

広大な土地を耕すことに不安がないか問うと、
「強風で木が倒れてしまったり、びっくりすることはたくさんあるけど、
農業をやろうという気持ちのほうが勝っているので不安はない」とエミリーさん。

いずれは季節に応じ、あまの川農園の一部を開放したり、
ガイドツアーをすることも考えている。ただしあくまでも少しずつ、が彼女流だ。
「ゆっくりできる場所にしたい。私だけじゃなくて来てくれる人にとっても」
と考えているからだ。

「原発の問題を難しく考えがちですが、
もっと楽な気持ちで福島に来てほしいなと思います。
普通に浜通りに来て、普通に生活している人と話して、普通に楽しい時間を過ごしてほしい」

円形の畑もパーマカルチャーで用いられることが多いものらしいが、作業しやすいと思ったからつくってみたそう。難しく考えず、発想はとても軽やかだ。

円形の畑もパーマカルチャーで用いられることが多いものらしいが、作業しやすいと思ったからつくってみたそう。難しく考えず、発想はとても軽やかだ。

天気がいい日は天の川も見えるだろう広い空の下、
少しずつ、少しずつ土地を耕していくエミリーさん。
やさしく明るいまちの未来を想像できる芽吹きが大熊町に生まれていた。

エミリーさんが描いたあまの川農園のイラスト。作物が豊かに育つ未来が楽しみだ。

エミリーさんが描いたあまの川農園のイラスト。作物が豊かに育つ未来が楽しみだ。

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あまの川農園

Web:Instagram

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佐藤春菜 Haruna Sato
さとう・はるな●北海道出身。国内外の旅行ガイドブックを編集する都内出版社での勤務を経て、2017年より夫の仕事で拠点を東北に移し、フリーランスに。編集・執筆・アテンドなどを行う。暮らしを豊かにしてくれる、旅やものづくりについて勉強の日々です。

photographer profile

中島悠二 Yuji Nakajima
なかじま・ゆうじ 写真家。神奈川県出身。主に建築やロングトレイルを軸に、幅広く撮影。みちのく潮風トレイルの撮影をきっかけに東北に縁ができ、2021年に福島県楢葉町(海のそば)に移住。写真に限らず、ふくしま浜街道トレイルをはじめ、広く地域の活動に関わる。最近、サーフィンをはじめました。

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