青森県田舎館村の 〈スノーアーティスト集団It’sOK.〉 逆境から生まれた田んぼの二毛作アート

続く進化、拡がるスノーアート

それからは毎年、冬になるとIt's OK.によるスノーアート制作が行われ、
冬の田んぼアートも定番の観光コンテンツになった。
また、隣の弘前市でも野球場にスノーアートを制作したいとの依頼があり、
2018年に田舎館村のスノーアートとともに制作。
その後は技術指導をした弘前市体育協会が中心となり、
「冬の球場アート」として継続している。

2018年に制作された『冬の球場アート』

2018年に制作された『冬の球場アート』。

青森県内だけではなく、秋田県、北海道など、ほかの雪国からも声がかかり、
出張してスノーアート制作、技術指導もしている。

まだ日本ではめずらしいスノーアートは、マスメディアにもたびたび紹介された。
とくにテレビ番組「世界の果てまでイッテQ!」に取り上げられたときの
反響は大きく、放送中ずっと田澤さんのもとへ知人からの連絡が来ていたという。

コロナ禍によるイベント中止はあったが、そのあいだも技術研鑽は続けた。
2023年から一般公開イベントも再開し、また多くのファンを集めている。

2023年に制作したスノーアート。難しかった曲線の模様も、今では数多く入れられるようになっている。

2023年に制作したスノーアート。難しかった曲線の模様も、今では数多く入れられるようになっている。

新しいメンバーとともに

県内外からの呼び声がかかるIt's OK.は
新しいメンバーをいつでも募集しているという。
最近、ひとりの若者が入った。

「実は2016年から毎年、田舎館村中学校の受験生を応援するメッセージアートを、
校庭に描く取り組みをしてきたんです。
そのときにいっしょにスノーアートをつくった中学生が、
高校を卒業して大学生になったタイミングで入団してくれました。
これはうれしかったですね」
と田澤さんは目を細める。

田舎館中学校の校庭に生徒たちと描く受験生応援メッセージ。

田舎館中学校の校庭に生徒たちと描く受験生応援メッセージ。

2024年は津軽地域全体で雪がほとんど降らず、スノーアート制作は中止となった。
本来なら津軽在住のアーティストGOMA氏とのコラボデザインになるはずだったが、
今年に持ち越し。
GOMA氏は精緻な描き込みが特徴的なアーティストで、
田舎館駅舎の内側いっぱいにアートを描くなど村との関係も深い。

弘南鉄道の田舎館駅にはGOMA氏によるアートが描かれている。

弘南鉄道の田舎館駅にはGOMA氏によるアートが描かれている。

2025年は1月24日(金)~26日(日)の3日間、スノーアートを公開する。

逆境の雪を楽しむ

この冬、津軽地方は12月から記録的な大雪が続いた。
年末年始も交通機関が動かず、道は雪に覆われ、
住民は毎日雪かきに追われている。
近年は雪が少なく、スノーアート制作にも苦労していたが、
今年はすでに雪が十二分にある。

初年度の消失したアートからぶっつけ本番の初制作のように、
苦しいなかに置かれたときこそ、
雪国に暮らす人たちのねばり強い底力が発揮されるのかもしれない。

スノーアーティスト集団It's OK.はこれからも新しいことに挑戦し続け、
長い津軽の冬に楽しみをもたらしていくことだろう。

おそろいのジャンパーに身を包むIt’s OK.のメンバー。

おそろいのジャンパーに身を包むIt’s OK.のメンバー。

writer profile

斎藤美佳子 Mikako Saitou
さいとうみかこ●ブロガー・ライター。北海道出身、青森県弘前市在住。劇団スタッフと並行して'90年代よりインターネットで情報発信を始める。2014年「さいとうサポート」の屋号でフリーランスに。雪かきのたびに「次は雪のない地域に住みたい」とぼやいている。

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