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posted:2025.2.20 from:長野県北佐久郡立科町 genre:活性化と創生
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writer profile
Mana Saito
齊藤真菜
さいとう・まな●神奈川県横浜市出身・在住。「Arcade Books & Films」として、西区・藤棚商店街のシェアカフェ「藤棚デパートメント」内で本の販売や映画上映会を企画。地域メディアの指針を考えるためのワークショップカード「ローカルメディアコンパス」開発メンバー。
観光地として有名な長野県の蓼科高原から
車で1時間ほどの小さな町・立科町。
地域の人が主に暮らす北側のエリアには歴史的なまち並みや畑が広がり、
高い建物は見当たりません。
そんな立科町に、ゲストハウスとシェアキッチン、
書店、物販などを兼ねた複合交流拠点〈アツマルセンター立科〉と
泊まれるカフェ〈bake&soup yum-yum〉がオープンしました。
長野県北佐久郡にある立科町は、人口6700人ほどのとても小さなまち。
鉄道の駅はありませんが、
小諸市や上田市といった人気の観光地のある地域に囲まれています。
〈アツマルセンター立科〉の永田賢一郎さんは、
もともと地域おこし協力隊として2020年に神奈川県横浜市から
立科町に移住してきました。
横浜と行き来し自身の建築設計や拠点運営の仕事を続けながら
「移住定住、空き家活用促進」担当として立科町にも勤務する異例の採用形態で、
任期が終わっても継続的にまちに関わりたいと、町内で〈合同会社T.A.R.P〉を設立。
その柱となるプロジェクトが〈アツマルセンター立科〉です。
〈アツマルセンター立科〉外観。右手前の瓦屋根の建物は空き家相談所「町かどオフィス」。
建物は町役場からほど近い、中山道沿いの元は薬局だった場所。
元々の所有者である大島薬局の大島さんからは、
「まちの真ん中でずっと空いてしまっているので、いい人がいたらぜひ使ってほしい。
ただ、まちの中心にある建物なので、地域の人たちも安心出来るよう、
ちゃんとした人に使ってほしいという思いもある」
と相談があったといいます。
永田さんもなんとか活用につなげたいと考え、
空き家を探している人に案内もしましたが、
規模が大きい、リフォーム後でちょっと新しすぎる、家賃が合わない、
といった理由でなかなか活用につながらなかったそう。
「建物一棟で賃貸、売却を考えるのではなく、
細かく分けて貸せたらもっと活用の幅も、借りたいという人の数も増えそうなのに」
という思いがありました。
そこで手を上げたのが、町内の建設会社〈三矢工業株式会社〉。
「地域貢献につながる新しい事業を立ち上げて、
若い人たちにも来てもらえるようにしたい」
と、この物件を買い上げてくれたのです。
三矢工業の金澤清人社長。
そうして、三矢工業とT.A.R.Pが一緒に
〈アツマルセンター立科〉を運営していくことに。
所有者と地域の企業、空き家活用を通した
まちの活性化を担う永田さんの三者の思いが重なったことで、
新たな地域の憩いの場が生まれました。
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〈アツマルセンター立科〉の機能は4つに分かれます。
まずは気軽に飲食店にチャレンジすることができる
シェアキッチン「アツマルKITCHEN」。
将来独立開業を目指すカフェや近所の方によるスナックが、
週2日、月1日といったペースで営業しています。
それ以外の日は〈アツマルセンター立科〉スタッフによるカフェを営業。
ふたつ目は、本や古道具、雑貨などを扱う物販コーナーと、
さまざまな催しに使えるイベントスペース〈アツマルHIROBA〉。
空き家活用の取り組みと連動し、
町内から出た古道具や解体で出てきた資材も扱う予定です。
中央奥が永田賢一郎さん。
そして3つ目はイベント出店や展示などができる「アツマル POPUP」。
薬局のバックヤードだった場所の棚やカウンターを活かし、
新しい出会いの場として
期間限定のポップアップショップや展覧会を開きます。
そして最後が和室と洋室に計2組が泊まれる2階の「アツマル INN」。
立科町は南側にリゾートエリアがありますが、
北側には旅館がほとんどありませんでした。
「観光目的での利用はもちろんなのですが、
地元の人たちが『親戚や友人を呼ぶ時に使いたい』と言ってくれたことから、
地域のゲストルームとしての宿泊施設という形に可能性を感じています」
と永田さん。
移住希望の人や、アツマルセンターでの催しに携わってくれる人などにも
中長期で滞在してもらいたいとのことです。
「アツマル INN」の室内。バルコニーからは中山道の様子が見え、まちの雰囲気が感じられます。
〈アツマルセンター立科〉から車で5分ほどの場所に、
泊まれるカフェとしてオープンしたのが〈bake&soup yum-yum〉。
永田さんのパートナーでT.A.R.Pメンバーの愛さんが
近隣の畑で採れたリンゴなどの食材を使った
こだわりの焼き菓子やサンドイッチ、スープなどを提供しています。
〈bake&soup yum-yum〉外観。テイクアウトもできる。
こちらのプロジェクトは、大家さんが立科町の空き家バンクへの登録を
相談してくれたことから「賃貸活用の面白い事例を作りたい」とスタート。
永田夫妻自ら物件を借り、町の人たちの協力を得ながら進めた改修や
活用の様子を発信しています。
まずは賃貸で住んでみたい移住希望者と
売却したい所有者の条件がなかなかマッチしないなか、
「借り主さんに自由に改修して好きに使って貰えれば、
きっと建物も喜んでくれる」
と考えてくれる大家さんだったそう。
広々とした1階のカフェフロア。壁を隔てた奥にも席がある。
2階は一組限定の貸し切り宿(4月スタート予定)で、
浅間山と畑が一望できるとても静かなロケーションです。
さらに、離れは工房やギャラリーとして活用を予定しています。
ふたつの新しいスポットがオープンし、
地元の人たちからは
「近所で集まれる場所ができて嬉しい」
「立科じゃないみたい」
と反響をもらっているそう。
若い人や立科町外からも人が来るということに、驚く声もありました。
思わぬニーズや可能性が可視化され、
これからどんなことをやりたい人が集まるか楽しみです。
永田さんおすすめの立科町の楽しみ方は、
まずは北側の里山エリアののどかな景色と
中山道の歴史的なまち並みを生活者目線で体感し、
2日目に南側の高原エリアを満喫するというルート。
今度の旅は、ぜひ行き先に立科町を加えてみませんか?
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アツマルセンター立科
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bake&soup yum-yum
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