連載
〈 この連載・企画は… 〉
パリの大学院で学ぶルイスさんが日本へ帰ってきました。
ゲストを迎えて出かけるのは、1泊2日の小さな旅。
地元の人との出会い、友人との語らいを通して、各地に息づく暮らしや風景に触れていきます。

writer profile
Sho Kasahara
夏休みに日本へやってきたパリの大学院生ルイスさん。今回は、InstagramやTikTokで活躍するジェセさんを旅の相棒に、1泊2日で長崎の離島、壱岐島へ!
Day1
10:00 博多港
11:30 壱岐芦辺港着
12:00 小島神社
14:00 鬼凧工房平尾(鬼凧色付け体験)
15:00 龍蛇神社
16:00 平山旅館
9月の残暑のなか、羽田空港で待ち合わせをしていたのは、パリの大学院に通いながらSNSで現地の暮らしを発信するルイスさんと、TikTokやInstagramで活躍するジェセさん。博多空港に向かうとのことですが、単なる福岡旅行ではないようで……。
福岡・博多空港に到着したルイスさんとジェセさん。空港から地下鉄で約10分の場所にある博多港へ向かいます。
今回の旅先は、長崎県の離島・壱岐島。九州本土と対馬の中間に位置し、古くから神話が伝わる島として知られています。島内には神社や遺跡・古墳をはじめ、元寇にまつわる史跡、城跡や砲台跡など、多くの歴史的スポットが点在。時代ごとに重要な拠点として発展してきた島です。
博多港から高速船でわずか1時間。辿り着いたのは、壱岐島の玄関口「芦辺港」。港を抜けると、漁船が行き交うのどかな港町が2人を歓迎してくれました。

左から、ジェセさん、ルイスさん。雨予報を覆して、晴天の中「壱岐芦辺港」に到着。
古来より多くの神社が残る壱岐島。その数は小さな祠も合わせて約1000ともいわれています。
そんな島の中で最初に訪れたのは、壱岐の神秘を象徴する「小島神社」。満潮時にはまるで海に浮かぶように見え、干潮になると参道が姿を現す不思議な神社です。その姿から「壱岐のモン・サン・ミシェル」とも呼ばれています。
潮の満ち引きが鍵を握るため、訪れる前には干潮時間のチェックをお忘れなく。

タイミングに恵まれて、海の上に現れる一本道を歩いて参拝。
information
小島神社
住所:長崎県壱岐市芦辺町諸吉二亦触1969
TEL:0920-45-1263
壱岐の伝統工芸品「鬼凧(おんだこ)」の絵付け体験ができると聞きつけ、「鬼凧工房 平尾」へ。
「鬼凧」は、子どもの健やかな成長や無病息災を願う“魔よけの縁起物”として、島の家庭の玄関や屋外に掲げられる、壱岐を象徴する凧です。
工房では、長年技を受け継いできた職人の指導のもと、鬼凧の絵付けを体験。配色に決まりはなく、思い思いの色で自由に仕上げることができます。
ルイスさんは大胆な緑を使って力強い表情を、ジェセさんはお手本に忠実に。2人は黙々と筆を動かしていました。
完成した鬼凧は、世界にひとつだけの特別な作品。「パリに帰ったら家に飾ります」とルイスさん。壱岐の伝統と人の温もりが息づく、旅の忘れられないおみやげになりました。

赤・黄・緑・橙の食紅を使って鬼の顔を描く。

色を塗る前の「鬼凧」。
information
鬼凧工房 平尾
次に向かったのは、龍神が祀られる「龍蛇神社」。海を見下ろす絶景に立つ神社で、出雲神社より「龍蛇神」を迎えて祀られたと伝わる、壱岐のパワースポットです。
神社の眼下に広がる龍蛇浜には、まるで龍の鱗のような薄い石が幾重にも重なり、神秘的。近くの壱岐神社では、龍蛇神社の御朱印もいただくことができ、旅の記念に訪れる人も多いのだとか。

壱岐の海を一望しながら参拝ができる。
information
龍蛇神社
住所:長崎県壱岐市芦辺町瀬戸浦
今回のお宿は、湯本エリアの老舗「平山旅館」。到着すると、女将の平山真希子さんが「ぜひ見せたい場所があります」と案内してくれたのは、畑と平飼い養鶏場。ここでは、ウニの殻、腐葉土、温泉の鉄分、海藻などを堆肥にして完全無農薬で野菜を育てています。

平山旅館の畑で野菜を育てる大久保律子さん、通称「りっちゃん」に大きなオクラをもらう2人。
「平山旅館の特徴は、なんといっても壱岐の食材をふんだんに楽しめる『島産島消』スタイルの会席料理です。畑や養鶏場で収穫した野菜や卵、壱岐の旬の魚や地元産食材をお出ししています」と真希子さん。
お品書きを見ると、それはそれは長いこと。次々と運ばれてくる料理を見てあまりの量の多さに「食べきれるかな…?」と心配する2人。でも安心を。平山旅館では、食べ残しはすべて養鶏場の鶏に食べさせることで、残り物ゼロを実現。食べる人も鶏も、島の自然の恵みを無駄なく味わえる、サステナブルな会席なのです。
平山旅館で楽しめるのは、島の食材を生かした料理だけではありません。実は、1700年以上の歴史を誇る、湯本温泉の発祥地に建つ温泉宿でもあるんです。「日本書紀」に登場する神功皇后が三韓出兵の折にこの湯を発見し、我が子・応神天皇に産湯として使わせたという伝説も。歴史と神話が息づく特別な温泉です。
また選りすぐりの温泉宿だけが会員になれる「日本秘湯を守る会」にも登録されており、その質の高さは折り紙つき。大浴場には露天風呂があり、温泉の蒸気を使った蒸し風呂や水風呂も完備。さらに宿泊者は、2つの貸切露天風呂を無料で利用することができ、贅沢なひとときを満喫できます。
information
奥壱岐の千年湯 平山旅館
住所:長崎県壱岐市勝本町立石西触77番地
TEL:0920-43-0016
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