連載
posted:2026.1.8 from:全国 genre:活性化と創生
〈 この連載・企画は… 〉
ローカルを舞台に活躍する人々のリアルな情報を通して、
日本の魅力を再定義するウェビナーシリーズです。地域を活性化させるために働きたい方、ローカルでビジネスを始めたい方、
自治体や企業で地域創生に携わる方に向けて、新たなヒントを提供します。

撮影
FUJIWALABO
日本のローカルの魅力を発信する「コロカル」は、新たなウェビナー講義シリーズ「コロカルアカデミー」の第8回を開催しました。今回のテーマは「建築とまちづくり」。
ゲストには、元・隈研吾建築都市設計事務所の設計室長として数々の国内外プロジェクトを牽引し、現在は〈フジワラテッペイアーキテクツラボ〉を主宰。さらに、横浜国立大学大学院Y-GSA准教授として後進の育成にも尽力されている建築家・藤原徹平さんをお迎えしました。
藤原さんが手がけるのは、単なる建物ではありません。その周囲に広がるランドスケープや、人々の営みまでを含めた「地域の風景」そのものをデザインする仕事です。今回は、そんな藤原さんが大切にしている〈場所の哲学〉について、じっくりと語っていただきました。
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藤原 徹平(ふじわら・てっぺい)
建築家/株式会社フジワラテッペイアーキテクツラボ主宰/横浜国立大学大学院Y-GSA准教授/一般社団法人ドリフターズインターナショナル理事
横浜生まれ。横浜国立大学にて建築学、都市計画、映画批評を学ぶ。大学院修了後、隈研吾建築都市設計事務所にて国内外100以上のプロジェクトに設計室長として携わる。2012年より横浜国立大学に着任。並行してフジワラテッペイアーキテクツラボを主宰し、建築、都市開発、ランドスケープデザイン、アートプロジェクトなど、領域横断的に活動している。主なプロジェクトに、小浜ヴィレッジ、クルックフィールズなど。

講座は、普段から大学で教鞭を執る藤原さんによる、軽やかな自己紹介から始まりました。
自らを「場所の専門家」と語る藤原さん。活動の軸にあるのは、常に「根っこ」に目を向ける姿勢だといいます。
その眼差しは、自分自身にも、プロジェクトにも、そして土地や場所そのものにも向けられています。
藤原さんが語る「根っこ」と対極にあるのが、「ハコ」や「ハコモノ」という言葉。つくられた建物が土地と結びついていない状態を揶揄する表現だといいます。
そうではなく、土地と建築を結びつけ、その土地が本来持つポテンシャルを生かすこと。建築とランドスケープを弁証的(対立する概念を取り入れ、より高次の理解や解決へ導くこと)に絡み合わせながら、その場所ならではの風景を立ち上げていく。
温和な語り口の奥に、内側からにじむ強い哲学が感じられ、講座への期待が高まっていきます。

隈研吾建築都市設計事務所で13年間の経験を積んだ後、藤原さんは独立の道を選びました。
その背景にあったのは、「止まれない状況の中で、創造性を発揮するのは難しい」という実感だったそうです。
そうした思いから、「止まること」を一つのテーマに掲げて歩み始めたのが、フジワラテッペイアーキテクツラボ(FUJIWALABO)でした。
同ラボが手がけるのは、単なる建築設計にとどまりません。ランドスケープのデザインまで含め、場所全体を捉え直すアプローチを特徴としています。
建築を小さくすれば庭が大きくなり、建築を大きくすれば庭が小さくなる。
敷地という動かせない条件の中に、建築と庭の関係性を持ち込み、場所をより動的に捉え直していく。その視座は、聞く者に新鮮な刺激を与えます。
設計とは、単に建物の構成を考えることではありません。
場所特有の風や光、佇まいといった要素を丁寧に読み取り、詳細なリサーチを踏まえた上で基本構想を練り上げていく。その姿勢は、極めて物質的でありながら、同時に形而上学的でもある、不思議な営みに映ります。
さらに印象的だったのは、こうした「構想を練ること」自体を設計とは切り分け、契約として成立させている点です。このアプローチそのものが、非常に新鮮に感じられました。

企画や規模が先に決まってしまうと、そこに本当に建つべきものが見えなくなってしまう。
そう語る藤原さんは、設計に入る前段階である「基本構想フェーズ」を何よりも大切にしているといいます。
一つのプロジェクトがどのような場所に立ち上がるのか。その考え方を説明するために紹介されたのが、「5つのサイト(ファイブサイト)」という視点でした。
具体的な内容については講座本編に譲りますが、図からも分かるように、プロジェクトは単なる予算や企画だけで決まるものではありません。
さまざまな想いや状況、環境に拘束されながらも、複数のサイトが重なり合うことで、その場所ならではの何かが立ち現れてくる。そんな示唆に富んだ話が展開されました。
私たちが日々進めている大小さまざまなプロジェクトもまた、単一のロジックだけで押し切れるほど単純ではありません。多様な利害や想い、状況を踏まえながら進められているという事実を、改めて認識させられます。
ここからは、藤原さんが実際に手がけた具体的な事例をもとに、話はより実践的な内容へと進んでいきます。
まず紹介されたのは、千葉県木更津市にあるクルックフィールズ。
「農」「食」「アート」「エネルギー」が一体となったこの場所では、水の流れを変えるために土や石の形を組み替え、新たな土地のあり方をつくり直してきました。
環境を見つめ直し、整え、再生していく。そのプロセスは、設計というよりも、一から土地を編み直す営みに近いものとして語られます。
すり鉢、土塁、ホックニー。
風景を気持ちよくするために稜線をデザインし、「ナチュラルに気持ちいいこと」を大切にする。その一つひとつの言葉やフレーズから、藤原さん独自の哲学が立ち上がってきます。
続いて紹介されたのが、鹿児島県の小さな港町・小浜につくられた「小浜ヴィレッジ」。
会社やパン屋などが入るキャンパスを地域に開くにあたり、プロジェクトデザインをあえてゆっくりと進めていったといいます。
土地の宝探しをしながら、銀行や社員も含め、関係者全員が納得できる形を模索していく。
使われていない土地を、どのようなビジョンで育てていくのか。完成後も街の中心となる広場として活動を仕掛けていく。その課題意識と視点は、地域創生を考えるうえでも多くの示唆を与えてくれました。
「歩きながら考える」。
これはQ&Aの中で、藤原さんがふと口にした言葉です。ローカルな場所について考える際の、大きなヒントになる一言だと感じました。
新しい建物や事業を立ち上げるとき、当初抱いていた想いや思想は、現実の予算や納期の中で押し込められてしまうことも少なくありません。
しかし、土地や場所の「根っこ」にこだわり、何度も立ち返り続けることでしか実現できないプロジェクトづくりがある。藤原さんの話を通じて、そんな可能性を強く感じさせられました。
講座本編終了後のQ&Aでは、街を歩くときに意識していることや、契約の方法にまで踏み込んだ具体的な話題も展開されました。
まちづくりに関心のある方、建物とその周辺との関係性について考えたい方、プロジェクトに哲学的・思想的な視点を取り入れたい方に、ぜひおすすめしたい内容です。
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