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小豆島の本屋〈TUG BOOKS〉
本と出合える場所を島につくる

小豆島日記
vol.279

posted:2021.10.11   from:香川県小豆郡土庄町  genre:暮らしと移住

〈 この連載・企画は… 〉  海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。

writer profile

Hikari Mimura

三村ひかり

みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の中でもコアな場所、地元の結束力が強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HOMEMAKERS」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、築120年の農村民家(自宅)を改装したカフェを週2日営業中。
https://homemakers.jp/

本を味わえる場所がなければ、つくればいい!

小豆島で暮らしていて思うことのひとつに、
「島におもしろい本屋さんがあるといいなぁ」というのがあります。

もともと私は本が好きで、名古屋で暮らしていたときは、
ちょっと空き時間があれば本屋に立ち寄っていました。
大学の建築学科時代には、卒業設計で図書館を設計して、
論文も図書館について書いたくらいです(笑)。

といっても、無類の読書好きというわけでは全然なくて、
ふらっと本屋さんに寄って、何かおもしろい本ないかなぁ、
新しい雑誌出たかなぁといろいろ見るのが楽しくて、
おもしろそうな本があれば買ってカフェで読んだり、電車の中で読んだり。
本というもの、本がある空間、本を読む時間、そういうのが好きなんだと思います。

わが家の本棚。大学生の頃くらいから約20年分の本や雑誌、漫画が並んでます。

わが家の本棚。大学生の頃くらいから約20年分の本や雑誌、漫画が並んでます。

まちにはふらっと立ち寄れる本屋さんがたくさんあります。
あらゆる本が揃っている大きな本屋さんから専門書店、
独自セレクトの小さな本屋さんまで、本に出合う機会がたくさんありました。

ですが、島で暮らすようになってからは、
ぐっと本や雑誌を読む時間が減ってしまいました。
移住したばかりの頃は、そもそも現実の世界に
いままで触れたことのないような生活や文化があって、
本を読むよりも現実から得られる情報がいっぱいで、
それで満たされていたような気がします。

それと、島での暮らしは車での移動がメインなので、
電車での移動時間とか何かの待ち時間みたいな隙間時間がほとんどなく、
ちょっと本を読もうという時間がなくなってしまいました。

島には立派な公立図書館があります。いろは(娘)が小さい頃はよく一緒に図書館に行って本を読んだり借りたりしてました。

島には立派な公立図書館があります。いろは(娘)が小さい頃はよく一緒に図書館に行って本を読んだり借りたりしてました。

そして、島には本屋が少ない! 
昔からあるまちの小さな本屋さんや、大手書店チェーンが数軒ありますが、
いずれも並んでいるのは話題の新刊本や雑誌、漫画などがメイン。
本とのはっとするような出合いはほとんどないかなぁ。
それでも本屋さんがあるだけでもありがたいのですが。

そんな小豆島に2019年に引っ越してきたのが、田山直樹くん。
なんと〈TUG BOOKS(タグブックス)〉という本屋を
2022年春頃に小豆島でオープン予定で、いままさに準備を進めています。

〈HOMEMAKERS〉でのブックイベント。〈TUG BOOKS〉の田山直樹くん(写真右)と。

〈HOMEMAKERS〉でのブックイベント。〈TUG BOOKS〉の田山直樹くん(写真右)と。

「書物の海の水先案内」のような存在の本屋を目指して。

「書物の海の水先案内」のような存在の本屋を目指して。

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小豆島に移住した彼の不満は…?

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田山くんは、小さい頃から家族の転勤で引っ越しが多い暮らしをしていて、
そろそろ自分の住みたい場所を探して、自分の意思でその場所へ移り、
根を張って長く暮らしていきたいという思いから、小豆島への移住を決めたそうです。

小豆島に来てからは、地域おこし協力隊として活動しつつ、
島暮らしを楽しみつつも、小さな不満が……。

本を味わえる場所が島内にほとんどない!

そう、田山くんは本好きなんです。
小豆島に移住する前は、本が好きで大手書店で働いていたほど。
そんな彼にとっては小豆島の本をめぐる環境が物足りなかったのですね。
私も共感します!

そして、考えだした答えが、

本と出合える場所、本を味わえる場所がなければ、つくればいいじゃないか!

というわけ。いいなぁ、その勢い。
でもそういうのがすごく大切だと思います。
自分の好きな環境を自分でつくる!
そうするとまわりにも喜んでくれる人たちがきっといる。

島内の飲食店やビーチなどでブックイベントを開催。

島内の飲食店やビーチなどでブックイベントを開催。

サンセットを目の前に、海辺で読書なんて最高。そういう時間をつくってくれます。

サンセットを目の前に、海辺で読書なんて最高。そういう時間をつくってくれます。

いまは、本屋開店にむけて物件などの準備を進めつつ、
島内の飲食店やビーチなどいろんな場所で本の販売や読書イベントを開いています。
先日は私たちの〈HOMEMAKERSカフェ〉で本の販売イベントをしてくれました。
本のイベントにどれくらいお客さん来てくれるのかなぁと不安でしたが、
私たちが思っている以上にいろんな人が来てくれて、少し驚きました。

先日HOMEMAKERSで開催したブックイベント。本を介して田山くんと島の人たちが会話する様子がとてもよかった。

先日HOMEMAKERSで開催したブックイベント。本を介して田山くんと島の人たちが会話する様子がとてもよかった。

今回のブックイベントは、私たちも田山くんも好きな『スター・ウォーズ』をテーマにその関連する本などをセレクト。

今回のブックイベントは、私たちも田山くんも好きな『スター・ウォーズ』をテーマにその関連する本などをセレクト。

近所の方が来てくれて、田山くんと話して本を何冊か買って、
持参した買いものかごに本を入れて、
その後カフェでお茶しながら買った本を読んでる姿をみてたら、
あー、こういう風景を島の中でつくりだせるんだなぁと、なんだかうれしくなりました。

島で本屋を開く。
きっと経営的には考えないといけないことも多いだろうし、
本をただ並べて売るだけではきっと成り立たない。
どんな本をセレクトするのか、本とのどんな出合いの仕組みをつくるのか、
島の人にどうやって本のことを伝えて届けるのか。

大変だけど、本屋にしてもカフェにしても農家にしても、
島で新しい場所をつくっていく人たちは、悩みつつ、試行錯誤しつつ、
自分たちらしいやり方で、いままで島になかった過ごし方や暮らしを生み出してくれる。
そういうひとつひとつが新しい島のカルチャーにつながっていくのかなと。

欲しかった本と偶然出合えたり、こんな本あるんだ! おもしろそうっていう、想像してなかった出合いも。本と出合える場があるっていいなぁ。

欲しかった本と偶然出合えたり、こんな本あるんだ! おもしろそうっていう、想像してなかった出合いも。本と出合える場があるっていいなぁ。

田山くんのブックイベントで出合った本が、HOMEMAKERSの本棚に加わりました。

田山くんのブックイベントで出合った本が、HOMEMAKERSの本棚に加わりました。

小豆島の本屋〈TUG BOOKS〉がオープンしたら、またご紹介します。
島で暮らすひとりとして、島に本と出合える場所ができるのを楽しみにしています。

information

TUG BOOKS 

Web:Instagram note

information

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HOMEMAKERS 

住所:香川県小豆郡土庄町肥土山甲466-1

営業時間:土曜のみ 11:00~17:00(L.O. 16:00)

https://homemakers.jp/

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