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ところてんってどうやってつくる?
原料のつくられ方から
家庭でもできる簡単レシピまで|Page 5

暮らしを考える旅 わが家の移住について
vol.111

Page 5

天草漁から出荷されるまで

天草の天日干し

私が撮影をさせていただいているのは、下田の須崎地区での天草漁です。
漁には口開けという解禁の時期があり、
天草漁は例年5月から6月にかけて数回ほど行われます。
漁の仕方はいろいろで、磯で箱メガネを使い潜らずに採る方法
(岡磯と呼ばれる)もあれば、潜って採る方法もあり、
そのほか沖に船を出して素潜りで採るなどさまざまです。

天草を船で港まで運ぶ

この日は磯から少し離れたところで天草を採取していました。スカリという網状の袋に天草を入れ、船で港まで運びます。

重量を計測中

スカリには名札がついていて、それぞれが採った天草の重量を計測していきます。

天草を運搬中

水を含んでいる天草はかなり重い。

須崎の天草はほかの海藻の漁とは少し違う点があります。
例えばわかめやひじきの場合は個人で採取して加工するのですが、
天草は共同作業で行われるのです。

まず採取した天草を港近くの溜池に集めて、真水で塩を洗い流します。
そこで自分が採った天草の量が計測され、
その後は共同の干場で一斉に天日干しにします。
天気によって2、3時間ほど干した天草を
裏返してさらに乾かすのですが、
集合時間を決めてみんなで作業するのです。

天日干しの準備

一面に広げられた天草

広範囲に薄く広げる

なるべく早く乾くようにバサバサと振りながら広範囲に薄く広げます。途中で雨が降って濡れないよう、天気を常に気にしながらの作業です。

天日干しのあとは、天草納屋という作業小屋で
ゴミや余計な海藻を取り除きます。
さらに、草の種類によっておよそ6つくらいに
分類されます(良質な種類とそうでないものと、
値段や使い道が異なるのだそうです)。

この一連の作業を「砂ふり」というのですが、
真夏の暑いさなかにひとつずつ手先で選り分けていくのは
容易ではありません。

砂ふりが終わると、今後は機械で圧縮して
25キロの俵(ポンと呼ばれています)に成形します。
ポンになったところでようやく漁協に出荷されるのです。

出荷された天草は、年に数回行われる競りにかけられ、
全国の業者さんに買い取られていきます。
その後ところてんや寒天として加工されたり、和菓子の材料になったり。
須崎地区の天草は粘り気がよく出るため、
全国的に見てもとても良質なものなのだそうです。
都内のある有名和菓子店の羊羹に使われているという話も聞きます。

機械で俵にまとめていく

昔は大きな樽に天草を入れて海女さんたちが踏み固めてポンをつくっていたそうです。その様子がダンスをしているように見えることから、通称「樽ダンス」と呼ばれていたのですが、高齢化により人員が減ったために、機械を使うようになったそうです。

ずらりと並んだポン

これが俵型の「ポン」。ひとつ25キロあります。

作業中の海女さんたち

夏の暑い時期、納屋の中もかなり高温になります。この日の海女さんたち、海風の通る日陰に避難して作業をしていました。

子どもの頃、よく母と姉が食べていたところてん。
実はこんな道をたどってきているだなんて、
下田に住むまで考えてみたこともありませんでした。

そして苦手だったところてんを、この歳になって
せっせとつくるようになるなんて、まったく想像していなかった。
目の前で漁師さんや海女さんがとってきた天草を煮てつくった
ところてんは、ひと味もふた味も違って感じらます。

まだまだところてん初心者。
地元の方につくり方をうかがいながら、
あれこれ試してみようと思います。
わが家のところてんを導き出せるまで。

パッケージングされたさらし天草

須崎の天草に興味のある方は、〈伊豆下田須崎 温泉民宿 浜屋〉さんにご連絡を。在庫状況によりますが、地方発送可能です。