〈 この連載・企画は… 〉
海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。
writer profile
Hikari Mimura
三村ひかり
みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の中でもコアな場所、地元の結束力が強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HOMEMAKERS」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、築120年の農村民家(自宅)を改装したカフェを週2日営業中。
https://homemakers.jp/
夏の始まり頃に、スーパーの野菜売り場に並ぶ「新生姜」。
この新生姜ってどんな野菜か知ってますか?
そもそもふつうの生姜とどう違うんでしょ。
まず、生姜はどうやって育つのか。
露地(ビニールハウスなどの施設を使わず、屋外の畑で栽培する方法)で
生姜を栽培する場合、霜が降りなくなった4月頃に種生姜を植えます
(地域によって多少ずれます。北海道では6月頃に植えるそうです)。
種生姜というのは、前年に収穫して保管しておいた生姜。
普通に食べることもできる生姜です。
地上に最初の茎が出てくるのは6月頃。
土の中では親生姜が分けつして新しい生姜が増えていき、
新しい生姜からそれぞれ茎が伸びていきます。
1本目の茎が1次茎、続いて2次茎、3次茎……と、
ひとつの親生姜から何本かの茎が出てきます。
8月頃にはそれぞれの茎が1メートルくらいまで伸び、葉を茂らせます。
土の中では新しい生姜が育ち、大きく育った新しい生姜が
ときどき土の外に出てきてしまうので、土をかぶせてあげます。
土の中で生姜はじっくりじっくり育っていきます。
9〜10月、ようやく生姜の収穫を始めます。
この時期のまだ若い生姜は、肌が白くてほんとにきれいなんです。
繊維も少なくてみずみずしい。
カットするとフレッシュな香り。青りんごみたいな香りがします。
そして生姜の塊と緑の茎との間のピンク色がなんともかわいらしい。
そう! これが「新生姜」。この夏の終わり頃に収穫した、
掘ったばかりのピチピチの生姜が新生姜と呼ばれます。
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ちなみにスーパーで初夏に並ぶ新生姜は、
ビニールハウスなど温度調整された環境で栽培されたもの。
露地栽培より早いタイミングで種生姜を植えるので、
収穫も早く、初夏には新生姜として出荷されます。
自然の気候の中で育つ新生姜の旬の時期は、実は秋なんですよね。
新生姜はとてもみずみずしくて繊維が少ないので、
薬味や料理に使うというより、生姜自体を食べることを楽しめます。
新生姜のかき揚げ、新生姜と豚肉の炒めもの、新生姜ご飯などなど、
新生姜をたっぷり使ってみてください。
甘酢漬けや紅生姜にして冷蔵庫で保管しておくのもいいですね。
さて話は畑に戻って、10月以降も生姜は大きく育っていきます。
ただし11月中旬頃の霜が降りるまで。
生姜は寒さに弱いので、霜が降りてしまうと一気に傷んでしまいます。
その時期まで大きく育てて収穫します。
その頃には生姜の肌は白色から少し茶色に。
あのかわいらしかったピンク色も薄くなっていきます。
収穫した生姜を土つきの状態で最適な条件で保管することで、
表皮の色がより濃くなり、繊維が増え、辛味成分が増します。
一定期間保管後に出荷されたものが、スーパーなどで販売されている
一般的な「生姜」です。
新生姜と区別するために「ひね生姜」とか「囲い生姜」とか呼んだりします。
「ひね」は古いという意味なのですが、なんで「囲い」というのかは、
ちょっと調べてみたのですが、わかりませんでした。諸説あるみたいです。
生姜の収穫は秋ですが、こうして保管しておくことで
一年中生姜を食べることができます。
そしてこの生姜が、また翌年の種生姜になるというわけです。
そうそう、実は種として植えられた生姜も併せて収穫するのですが、
乾燥していて繊維が多く、辛みが強くなってます。
これが「親生姜」と呼ばれます。
この親生姜を何かに使えないかなぁといろいろ考えてます。
食べることもできるのですが、乾燥させて入浴剤にしたりとか、
何か活用できたらいいなぁと思っています。
まとめてみると
9月頃に収穫した掘りたてのみずみずしい生姜。
やさしい辛味で繊維も少ないので、薬味としてというより、
生姜自体を食べることを楽しめます。生姜の甘酢漬けや紅生姜にも。
11月頃に収穫し貯蔵しておいたもの。次の年の生姜ができるまで通年出荷されます。
スーパーなどで一般的に販売されている生姜。
4月頃に植える、種となる生姜。前年秋に収穫し保管しておいたもの。
種生姜として栽培に使われたあと、収穫したもの。繊維質が多く辛味が強い。
知っているようで知らない野菜のこと、まだまだたくさんあります。
自分が思っていたのと旬の時期が違っていたり、
ひと言で「生姜」といっても種類もいろいろあるし、
時期によって状態も大きく違います。
知らないままでも困ることはないかもしれません。
でも知ってると、もっと料理の幅が広がって、もっとおいしく食べられるかも!
そんな楽しみのために、まだまだ野菜や食材のことを知りたいなと思います。
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