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知っている方も多いと思いますが、
念のためところてんについて少々説明を。
ところてんの原料となるのは天草(てんぐさ)という海藻ですが、
世界中におよそ80種類ほど生息しているそうです。
そのうち日本では最も生産量が多く良質とされているのが
テングサ科のマクサで、そのほかオニクサやヒラクサなどの
数種類が採取されています。
採取されたときは赤褐色の天草ですが、
それを水に晒して天日干しにする作業を繰り返すと、
白く脱色されていきます。それが晒し天草と呼ばれるものです。
晒し天草を水で煮出し、抽出液を冷やして固めたものがところてん。
ところてんの歴史は古く、平安京の市場では
心太(こころぶと)という名称で売られていたといいます。
当時の名残から、いまでもところてんを漢字で
「心太」と表記するのだそうです。
ちなみに、ところてんを凍結乾燥させたものが寒天となります
(現在は凍結させず圧縮するつくり方もありますが、
そもそもは寒い地域に放置しておいたところてんが凍ったのが
発祥だそう)。
天草は比較的暖かい海域に生息しています。
下田でも天草の漁が盛んに行われていて、
春から夏にかけて漁をする姿や、
天草納屋で作業をする海女さんの姿を見ることができます。
東京生まれの私にとってそうした光景はとても新鮮で、
移住してからこの4年間でいろんな写真を撮影させてもらいました。
ところがです、実は私は天草を煮たことがほとんどなかったのです。
昨年、漁師さんにいただいた天草を一度は煮てみたのですが、
あまりにも経験値がないため正解がわからず、
そのまま冷蔵庫にしまい込んでいました。
それを再び引っ張り出して煮てみることに
(通常ならば常温保存できるのですが、
わが家は湿気が多いので念のため冷蔵保存)。
海女さんや漁師さんなど地元の方につくり方をうかがってみると、
その時々の天草によって違うからなんとも言えないと。
天草は品質によって、粘り気の出方にかなり差があるのだそうです。
ドロドロになりすぎるときは水を足したり、
出にくいときは茹で時間を長くしたりお酢を少し足したり。
お酢を入れると粘り気が出やすくなるのですが、
食感が少しかたくなるので(地元の方はよくポキポキした食感
と表現します)、それを好まない方はお酢を使わない。
さらに、1度煮出した天草に新しい草を少し足せば、
二番液がとれるとのこと。なかには二番液は好きじゃないから
1度しか煮ないという方もいるし、3度煮出す方もいる。
などなど、地元の方は長年の経験から煮加減を熟知していて、
それぞれの家庭によって好みのところてんの味わいがあるようです。