出版の既成概念にとらわれない本づくりを
岩見沢市の山あいの集落、美流渡(みると)地区で始めた
〈森の出版社ミチクル〉という活動。
昨年に立ち上げてから、いろいろな方に興味を持ってもらっていたが、
新刊がまったく出ないまま1年が過ぎ去っていた。
計画では昨年の夏に刊行する予定だった本が進まず、もどかしい日々を送っていた。
制作中だったのは、道南のせたな地区でオーガニックな農法で
作物や家畜を育てる5人の農家グループ〈やまの会〉に取材したものだ。
本づくりの経緯は以前の連載で書いたが、なぜ筆が進まなかったのかを
あらためて振り返ってみると、ずっと編集を続けてきたために身につけてしまった
“出版に対する既成概念”がジャマをしていたのだと気がついた。

やまの会のメンバーである村上健吾さんの牧場では、穀物飼料を与えず草だけで牛を育て、チーズをつくっている。牧場からは海が見渡せる。
この本のテーマとしたのは「死」。そしてその先に見える「生」だ。
やまの会のメンバーで家畜を育てている、
大口義盛さん、村上健吾さん、福永拡史さんは、
愛情を持って育てた動物たちを、やがては屠畜(とちく)に出すという
自らの仕事を通して「死」と向き合い続けてきた。
また、大豆やお米を主に育てる富樫一仁さん、
多彩な品種の作物を育てるソガイハルミツさんも、
自然の営みに日々寄り添うことで、「死」に対する独自の観念を持っていた。
やまの会のメンバーが考える死についてとことん深めたい。
そう思いながらインタビューの音声を文字に起こし、執筆にトライしていたのだが、
どこからともなく「死なんて重たいテーマに読者は興味を持ってくれるのだろうか?」
「エンターテイメントの要素も必要ではないか?」という考えが
ふつふつとわいてくるのだった。
こんなふうに、ひと目でわかりやすいキャッチーさと、
帯の言葉になりやすい打ち出しの強さが大切という、
商業出版で染みついた思考にとらわれてしまうこともあった。

インタビューの音源は手書きで起こした。手書きのほうが、大切な部分は文字を大きくしたりアンダーラインをつけたりなどがサッとできるので、自由度が高い。(撮影:佐々木育弥)
しかし一方で、いままでつくってきた本のセオリーに沿ってしまっては、
自分で刊行する意味はあるのだろうか? という考えも浮かび、
両方が頭の中で渦を巻いて、まったく着地点が見出せなかった。
普段であれば、仮にさまざまな迷いがあっても“締め切り”に合わせるのだが、
自分で出すとなれば、安易に落としどころを見つけず時間をかけてもいいわけで、
そのためアイデアが浮かぶまでじっと待ったり、
とにかく手を動かしたりというのを断続的に続けていった。























































































