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こうした状況となり、米づくりをサポートしてもらっている
〈南伊豆米店〉の中村大軌くんにも相談しました。
大軌くんによると、稲がもし横倒しになっても、
その後、手刈りをする分には問題ないのだそう
(機械だと倒されてしまった稲を刈るのは難しいこともあるらしいです)。
ただ稲が倒れたうえに田んぼが冠水し、稲穂が水没する事態となれば
米の収穫事態が危うくなると。
その説明を受けて、夫と話し合いました。
急遽手刈りをしたとしても、台風のさなかに
稲架掛けしておくのはリクスが高すぎる。
そもそも、1反弱の田んぼをわが家だけで手刈りするのは
現実的ではないし、友人たちに急遽声をかけたとしても、
平日のど真ん中に集まれる可能性は低いだろう。
とすると、いま選択できるのはこのまま台風を越して
稲が無事だったら手刈りをする方法→水没したら収穫できない。
もしくは、台風がくる前に機械ですべて刈ってしまう
→米は確実に収穫できるけれど、手刈りも天日干しもあきらめる。
夫は台風の情報を毎日確認しながら、悩みに悩んでいる様子でした。
みんなで一緒に手刈りをしたい。
稲架掛けをして太陽をいっぱいに浴びた
おいしいお米を食べたいという希望
(天日干しは米本来のおいしさを損なわない乾燥処理方法なのだという、
こんな検証結果もあります。天日干しは低温緩慢乾燥のため、
温風機械乾燥に比べて澱粉粒へのダメージが少なく、
それによって食味が優れているのだそうです)。
けれど、みんなで手植えした稲が全滅する可能性も
ゼロではない……という不安。
「うちの稲は強いから耐えてくれるのではないか!」という
楽観的な考えも時折わいてきて、いろんな思いがいったりきたり……。
1週間以上悩んだ後、ついに決断のときがやってきました。
今日を逃すともう台風の前に稲刈りができない、
というリミットを迎えたのです。
その日の朝、夫が意を決したように言いました。
「機械で刈ってもらおう、もう今回の台風は仕方ない」と。
私も同じことを考えていました。
今年は収穫できればよしとしようじゃないか、
みんなで一緒に新米を食べようじゃないかと。
ということでその日の午後、急遽稲刈りを決行することとなったのです。