連載
posted:2019.10.21 from:香川県小豆郡土庄町 genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。
writer profile
Hikari Mimura
三村ひかり
みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の中でもコアな場所、地元の結束力が強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HOMEMAKERS」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、築120年の農村民家(自宅)を改装したカフェを週2日営業中。
http://homemakers.jp/
10月、台風19号が日本各地に大きな被害をもたらしました。
ニュースで見ていてその範囲の広さに驚いています。
私たちが暮らす西日本は、今回の台風では被害を受けませんでしたが、
昨年の夏の集中豪雨では大きな被害を受け、
いまだにいつもの暮らしを取り戻せてない方が多くいます。
本当に日本全国いたるところで、地震や台風、大雨の被害が
現在進行形で起こっています。
代々受け継いできた土地、家で暮らし続けること、
それは当たり前のようでいて、実はとても難しいことなのかもしれません。
ある日突然やってくる大きな災害で、一瞬にして
いままでの暮らしが壊れてしまうこともあります。
地方では高齢化と人口減少によってじわりじわりと家や畑が荒れていき、
いつしか集落の維持ができなくなってしまうこともあります。
私たちが暮らす集落も他人事ではありません。
何十年、何百年と暮らし続け、つくりあげてきた風景、文化が残っていることは
奇跡的なことであり、すごい財産なんだなとあらためて感じています。
先日、小豆島では各地で「太鼓まつり」が行われました。
秋の収穫を感謝する行事として、小豆島内にある6つの八幡神社で毎年開催され、
太鼓台を奉納します。
八幡さんのひとつ、池田亀山八幡宮の太鼓まつりを観覧するために
いまでも使われている石垣「池田の桟敷(さじき)」は、
江戸時代につくられたとされていて、そんな時代から太鼓まつりは続いています。
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私たちが太鼓まつりに参加するのはこれで7回目。
最初はただただすごいなぁと思っていたお祭りも、
太鼓台に乗る子どもたちの成長に驚いたり、今年は人が少ないねえと、
いままでと比較したり、やっぱり肥土山(ひとやま、私たちが暮らす地区)の太鼓の
あがり方はきれいだねとうれしくなったり、いろんな思いで見るようになりました。
移住前、名古屋で暮らしていたときは、こんなにふうに
自分たちが暮らす地区のお祭りや行事に参加することがほとんどありませんでした。
きっとそこにもすばらしい文化や行事があったんだと思うのですが、
私たちはそれに気づかず、関わらず生活してました。
ふと思い出したのですが、当時暮らしていた自治体の広報に
住民アンケートが載っていました。もう詳しくは覚えていないのですが、
「このまちは暮らしやすいですか?」という問いに対しては
多くの人が好意的な回答をしていたのですが、
「このまちに愛着はありますか?」という問いに対しては
「ない」と答えていた人がとても多かったのを覚えています。
私も自分たちが暮らしてる場所に対してあまり愛着がないひとりでした。
小豆島で暮らすようになってそれは大きく変わりました。
この太鼓まつりもそうだし、農村歌舞伎や虫送り、盆踊りなど
多くの地区の行事に関わるようになりました。
いつの間にか自分たちが暮らす肥土山が好きになっていて、
「肥土山の太鼓が一番きれいにあがってるね」と言われるとうれしくなったり。
自分たちが暮らしている土地を好きでいる、それはとてもすてきなことだと思います。
その思いがあれば、行事も、そこで共に暮らす人たちのことも、
風景も、いろんなものを大切にしたくなる。
そうやって何十年、何百年も守られ、維持されてきたのかな。
いつもの暮らしがあるというのはありがたいこと。
当たり前にあると思っているものは、一瞬でなくなってしまうこともある
実はとても脆いもの。時々はそんなことも思いつつ、日々の暮らしを大切にしようと。
さて、秋のお祭りが終わって、急に寒くなりました。
衣替えしなきゃ。冬の支度です。
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