連載
posted:2019.12.11 from:山口県光市 genre:暮らしと移住 / 活性化と創生
PR 山口県
〈 この連載・企画は… 〉
山口県で思い出すものといえば、錦帯橋、松下村塾、ふぐ、秋吉台など。自然や文化遺産、
おいしい食まで、さまざまな魅力が揃っています。そんな山口県には、移住して、新しい働き方を実践している人たちがいます。
「UJIターン」し、仕事と働き方に新しい価値を見いだしている人たちは、みんなワイワイと楽しそう。
仕事がかたちづくる、山口県での生き方と暮らしをうかがいます。
writer profile
Saki Ikuta
生田早紀
いくた・さき●インディペンデントな広告会社『ココホレジャパン』の新米アシスタント。生まれも育ちもド田舎の27歳。やばい芋ねえちゃんとして青春時代を過ごす。その野暮さは現在も健在! さりげなく韻を踏むことが生業です。
photographer profile
Yousuke Yamamoto
山本陽介
やまもと・ようすけ●山本写真機店店主。まちの写真屋としての撮影業務に加え、プロアマ問わず全国からフィルムスキャニングの依頼を受けるラボマンとして活躍中。
http://yamamotocamera.jp/
サッカー選手、公務員、YouTuber……。
いまどきの小学生が将来なりたい職業といえばこんな答えが思い浮かぶ。
だが、山口県の光市には「地域コーディネーターになりたい」と
キラキラとした表情で話す小学生がいるという。
小学校高学年の子どもたちが
「まちの良さをもっと広めたい。そのためにはどうすればいいか」と考えている。
日本全国、地元に愛と誇りを持つ人は少なくないが、
光市では段違いの郷土愛が育まれているようだ。
こうした状況を支えているキーパーソンのひとりとして、
佐々木淳志さんの名前が挙がった。
佐々木さんは、会社員として企画・広告の仕事に携わるかたわら、
光市PTA連合会会長、島田中学校PTA会長、島田中学校〈おやじの会〉会長、
自治会の会長、〈光市おせっかいプロジェクト〉代表など、
いくつもの地域活動に力を入れている。
それぞれの地域活動が相互に作用し合う、
佐々木さんならではの在り方、そして働き方を聞いた。
岡山県倉敷市出身の佐々木さんは、
奥様による度重なるお国自慢がきっかけで、2006年に家族で光市へ移り住んだ。
「妻のお国自慢もそうですけど、
きっかけは光市に遊びに行ったときの印象が大きいかもしれません。
花見や忘年会などお酒の席によく呼んでもらったんですけど、
地域のおじいさんたちや議員さんが
『まちのためにはもっとこうしたほうがいんじゃないか』と熱く語っていました。
僕の地元では誰かが地域のことを話しているのを耳にしたことがなかったので
『なんだ、このまちは……!』と驚きました」
また地域の子どもたちを我が孫のようにかわいがってくれる
おじいちゃんやおばあちゃんの姿を見て、子育てに対しても好印象だったそう。
長女15歳、次女13歳、三女5歳、の三姉妹を育てる佐々木さんが、
PTA活動に関わるようになったのは、長女が小学校3年生のときだった。
「PTAをやるまで知らなかったんですけど、
山口県はコミュニティ・スクールもすごいんです」
コミュニティ・スクールとは保護者や地域の人々が学校運営に参画することで、
地域とともに子どもを育てていく取り組みのこと。
地域住民が生徒と合同で早朝にマラソンを行ったり、地域行事を一緒に開催するなど、
お互いが密に関わり合っている。
小中学校におけるコミュニティ・スクールの導入率は、
全国平均が23.7%であるのに対して、山口県は100%の導入率を誇る。
特に光市と萩市はモデル地区として全国でも先行してスタートしており、
地域が一体となって熱心に取り組んできた背景がある。
「たとえば浅江小学校では5年生の宿泊学習を2泊3日でやるんですけど、
地元のおじいちゃんたちが10人くらい来て、
泊まり込みで3日間ずっとサポートしてくれるんです。信じられないですよね」
加えて、市内のすべての小学校では登下校時も
「見守り隊」と呼ばれるおじいちゃんたちが常時5、6人そばにいてくれるそうだ。
「僕の住んでいる町内の見守り隊方は13年くらい毎日、
朝も夕方も低学年の子どもたちと一緒にいてくれて。
そのおじいちゃんは先日亡くなってしまったのですが、お葬式には卒業生、現役の児童、
さらに保護者までものすごい人数の人が参列していました」
「子どもたちにいろんな体験をさせてやりたい」「地域のことを教えたい」と願う、
心あたたかな光市のおじいちゃんおばあちゃんとコミュニティ・スクールの仕組みは
抜群に相性がよかったようだ。
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「コミュニティ・スクールがこんなに手厚く運営されている一方で、
当の子どもたちは自分たちがどれだけ恵まれた環境にあるのか気づいていないんです。
そばにいてくれることが当たり前になりすぎていて。
だから僕は〈JACKとこどもの木〉を企画しました」
〈JACKとこどもの木〉は、光市内の小学校が持ち回りで制作するテレビ番組のこと。
小学生自らが台本制作、撮影、音響、照明、ディレクターを務め
「まちの先生」である地域を支える大人たちにインタビューするのだ。
「番組づくりで大事にしているのは
『どうして地域の大人たちは僕たちのためにここまでやってくれるのだろう』と
考えてみること。
子どもたちから出た意見で印象的だったのは
『まちの伝統や人を思いやることの大切さを伝えたいからやってくれている』というもの。
じゃあ、僕たちには何ができるのかと考えると
『次の世代に自分たちがしてもらった以上のことをやりたい』という言葉が
たくさん出てきました」
テレビ番組制作を通して、子どもたちは自分たちの置かれている状況を把握し、
あらためて感謝の気持ちを持つことができた。
また、そうした姿を見ておじいちゃんや地域の大人たちはさらに熱を持って
子どもたちを支えてくれるようになったという。
世代間で、それぞれの想いがうまく循環しはじめている。
しかしながら、佐々木さんは「課題もある」と語る。
「いま、コミュニティ・スクールをサポートしてくれているのは
70代から80代の方々が中心。そのひとつ下の50〜60代の方々は、
上の方がまだまだ現役なのに加えて
我が子がコミュニティ・スクールの恩恵を受けていない世代です。
また、地域との関わりが深い30〜40代はPTAや仕事で忙しい。
つまり、これから10年後に『地域側の人』として
子どもたちを見てくれる世代が少なくなってしまう恐れがあります」
日本一手厚い、光市のコミュニティ・スクール。
佐々木さんは、先人たちの思いを絶やさぬよう、
PTAや子どもたちと、父親たちがガチンコで遊ぶ〈おやじの会〉を通して
何かできないかと日々模索し続けている。
「僕は、光市内でレジェンドと呼ばれている“男が惚れるぶっとんだ男”の方と
PTAを通して仲良くなりました。
彼らは『大人が本気で遊んで子どもを楽しませる』という
〈おやじの会〉を結成していました。僕が大好きな“ばか騒ぎ系”の人たちです(笑)」
この姿勢に共感した佐々木さんは、
2015年に娘さんの小学校で自分たちの〈おやじの会〉を立ち上げた。
「僕は、遊びも突き詰めればビジネスになると思っています。
だから〈おやじの会〉では大人たちが真剣に遊びを仕掛けます。
そうすると子どもたちはなんとか勝ちたいと本気になって
『その勝ち方があったか!』って、ハッとするアイデアを見つけ出してくるんです」
ルールに沿って遊ぶことも大事だが、新しい勝ち方を思いつこうと頭を捻ねった経験は
大人になったときにもきっと役立つだろう。
本気の遊びが、結果的に生きる力の基礎づくりになっている。
〈おやじの会〉に参加する父親たちもまた濃い。
大工さんや鉄工業の職人さんなど、さまざまな職業の人がいるという。
各方面のプロが集まるので、
基地づくりをすれば遊びなのにとんでもないクオリティになるし、
そうめん流しではディテールにこだわった鹿威しが登場した。
小さい頃からカッコいい大人に囲まれている光市の子どもたちが、心底うらやましい。
〈おやじの会〉で遊ぶ現在30〜40代の父親たちが、
近い将来、次世代のコミュニティ・スクールを担っていくことになるのだろう。
もちろん、〈おやじの会〉で目一杯遊ぶ子どもたちだってそうだ。
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地域の教育に深く関わる佐々木さんだが、
〈光市おせっかいプロジェクト〉として「まち」自体にも踏みこんだ活動を行っている。
このプロジェクトでは、
主に光市のシティプロモーションを光市の熱血職員たちと企画・運営。
当初は佐々木さんを含む移住者3名でスタートしたが、
現在では約10名にまでメンバーが増えた。
プロジェクトの中核をなす〈まちぐるみWedding〉は、
新郎新婦たちの門出を光市民総出であたたかくお祝いしようというもの。
「光市民のやさしさを体現できるイベントができないかなと考えていたら、
結婚式が思い浮かんで。
お祝いに参加するだけで、市民も幸せな気持ちになれるのもいいなと思いました」
初回の2017年には光市役所庁舎で120人、
2018年は室積海岸で150人超の動員を記録した。
そして3度目となる2019年、
虹ヶ浜海岸で行われた〈まちぐるみWedding〉の参加者は、なんと約600人!
運営や制作に協力した市民も合わせると、1500人規模での開催だったというから驚きだ。
準備段階で、光市の岩田駅から光駅まで電車移動する新郎新婦に
線路沿いで手を振ってお祝いしたいとアイデアを出すと、
地元のおじいちゃんがふたつ返事で人集めに協力してくれた。
わずか数秒のために、当日は80人を超える光市民が集まったそうだ。
さらに、地元小学生が1枚1枚幸せな新郎新婦のために想いを込めてつくった
ガーランドがJR光駅を飾り、
JRも巻き込んでこちらでつくったオリジナル切符に消印を押してもらったという。
まちぐるみでの祝福を受け結婚したふたりは
「心から歓迎されている」と肌で感じたに違いない。
佐々木さんが蒔いた種は、光市の子どもたちだけでなく
大人たちのなかにもふるさとへの想いを芽生えさせている。
いいニュースや楽しいことで溢れる光市の魅力は、
まちの外側にもどんどん浸透していくだろう。
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「このまちは、本当にすごいんですよ……」と繰り返す佐々木さんだが、
話を聞けば聞くほど「いや、佐々木さんもすごい」と思わずにはいられなかった。
同時進行でいくつもの事案を抱える、そのモチベーションはどこからやってくるのか。
「頼まれたら断れなくて、最初に飛び込んでから
ずっと雪だるま式に止まらなくなっている状態です(笑)。
もともとよそ者ではあるので、グイグイ行っちゃえって。
自分が楽しんでいれば、きっと周りの人にも伝わるものだと思います。
楽しいことって人を動かしてくれますし、
『うわっ、そうきたか』みたいな言葉をもらえると快感ですね」
佐々木さんは、会社員としての顔に加え、プライベートでいくつもの顔をもっている。
公私の境目はいい意味で曖昧だ。
〈おやじの会〉などで得た経験が、勤め先の仕事で役に立つこともあるという。
「地方で働くときは、何をするにも『人』という部分が大きいです。
あなたに頼みたいと言っていただけることが多い気がします」
自分の名前で仕事をしたい。
そんな人は、ローカルで佐々木さんのような暮らしをしてみるのもありかもしれない。
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光市おせっかいプロジェクト
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