連載
posted:2020.1.24 from:山口県周南市 genre:暮らしと移住 / 食・グルメ
PR 山口県
〈 この連載・企画は… 〉
山口県で思い出すものといえば、錦帯橋、松下村塾、ふぐ、秋吉台など。自然や文化遺産、
おいしい食まで、さまざまな魅力が揃っています。そんな山口県には、移住して、新しい働き方を実践している人たちがいます。
「UJIターン」し、仕事と働き方に新しい価値を見いだしている人たちは、みんなワイワイと楽しそう。
仕事がかたちづくる、山口県での生き方と暮らしをうかがいます。
writer profile
Saki Ikuta
生田早紀
いくた・さき●インディペンデントな広告会社『ココホレジャパン』の新米アシスタント。生まれも育ちもド田舎の27歳。やばい芋ねえちゃんとして青春時代を過ごす。その野暮さは現在も健在! さりげなく韻を踏むことが生業です。
photographer profile
Yousuke Yamamoto
山本陽介
やまもと・ようすけ●山本写真機店店主。まちの写真屋としての撮影業務に加え、プロアマ問わず全国からフィルムスキャニングの依頼を受けるラボマンとして活躍中。
http://yamamotocamera.jp/
周南市の徳山駅付近では近年「好きなこと」をベースにお店を開業する
若者が増えているという。
寂しげだった商店街に賑わいを生み出しているお店のひとつが
ジェラート店〈ジェラテリア クラキチ〉だ。
周南市出身の藤井蔵吉さんが営む〈ジェラテリア クラキチ〉では、
常時10種類ほどのジェラートやソルベを手づくりしている。
なかでも、藤井さんの実家である〈藤井牧場〉産の牛乳が生かされた
「朝搾りミルク」が絶品だ。
すっきりさとコクが共存する〈ジェラテリア クラキチ〉のジェラートには、
固定客が多い。毎日足を運ぶ人もいるという。
今回は、Uターンしてから〈ジェラテリア クラキチ〉を開業した藤井さんに
話をうかがった。
地元から近い広島の高校を卒業後、北海道の畜産大学に進学した藤井さん。
「純粋に生物や化学、特に実験が好きだったので、大学でも勉強したいなと思って。
北海道を選んだのも、当時〈ムツゴロウ王国〉に憧れていたからでした」
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大学を卒業してからは地元の周南へUターンし、家業を3年間手伝った。
その後、2014年に〈道の駅ソレーネ周南〉内にソフトクリーム屋〈titi〉を家族でオープン。
さらに3年後の2017年、好きなことでお店をやってみたいと、
藤井さんは徳山駅前に〈ジェラテリア クラキチ〉を開いた。
「単純に、僕はジェラートをつくるのが好きなんですよね。
本当に実験みたいでおもしろくて。
ミルクや液体の分量を変えるだけで全然違うものができるし、
販売するときには室温や色合いがお客さんのジェラート選びに影響を与えるのかなとか、
いろんなことを考えながら夜通しジェラートをつくっています(笑)」と藤井さん。
さらにジェラートならば、地域の素材を取り入れやすいというメリットもある。
「パッションフルーツって大体は沖縄辺りでつくられているんですけど、
周南でもつくっている人がいて。な〜んで周南で育てようと思ったんだろう、
と考えながらジェラートをつくるのがまたおもしろいし、
そういう人たちの素材を使っていきたいです」
創業当時、周南市からの創業支援金200万円と自身の貯金、
そして銀行からの借入でお金を賄い、
実務面を進めるにあたっては数多くの人から手を差し伸べてもらったという。
「道の駅の〈titi〉を家族で始めたときからだんだん思うようになったんですけど、
僕は計画を立てるのが下手くそで、『商売の才能がないな』って感じていました(笑)。
だから、新しい店は周りの人に手伝ってもらうのが一番いいと考えました」
巷の会合などにコツコツと参加し、
気の合う人やその道のプロの人と仲良くなっては教えを乞うた。
経営の計画書づくりや店舗の内装なども手伝ってもらったという。
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お店の場所を徳山駅前にしたのも、同じ理由だった。
「これから店を複数展開していくなら、最初の店は厳しい環境にして、
金銭的にも精神的にもキツいことを経験しておけば
後々役に立つだろうなと考えていました。
といっても僕は自信がなかったので、
苦しいなかでもいろんな人に助けてもらえる環境がいいなと。
そういった意味では、駅前なのに人通りが少なくて観光客もいない、
けれど地元の有力者の目には触れやすい徳山駅前がぴったりでした」
「何か勝負できるスキルや才能があれば山奥でもよかったのかもしれないけど、
僕にはないので」と藤井さんは謙遜するが、
オープンから2年、現在〈ジェラテリア クラキチ〉の経営は上々だ。
藤井さんの例から、仮に手持ちのカードで勝負できるものがないように見えたとしても、
その使い方によってはいかようにでもなるということがわかる。
カードを使う場所や外から組み合わせるものを、
どれだけ自分仕様に選りすぐることができるかということだ。
Uターンとは、生まれ育ったまちへ戻ること。
すなわち、健在であれば親元のそばで暮らすことだ。
距離感もぐっと近くなる。助かるときもあれば、気を遣うのが親子関係だろう。
藤井さんの場合は、〈ジェラテリア クラキチ〉の構想を開業の1年前に話したところ、
父から大反対にあったという。
けれども藤井さんは秘密裏に準備を進め、なんとオープンの3日前まで黙っていた。
「1年前からこまめに進捗を教えていたら、
心配する父をずっと不安な気持ちにさせるだろうなと思って。
ギリギリで言ったほうが、
父のためにもなるのかなと……だいたいなんでも事後報告ですね、今でも」
藤井さんは自分だけでなく父のこともよく理解している。
親とのつき合い方を心得ているので、親子間の仲はかなりいい。
「放任で自由にさせてもらっています。
周りからのさまざまな言葉もある程度両親が受け止めてくれていて、
僕のやってることを理解してくれているんだろうなと。本当にありがたいです」
藤井さん曰く、最近山口では「好き」という気持ちをベースに、
新たなチャレンジを行う人が増えてきているそう。
たとえば、「バナナジュース」の専門店を始めた人や
「ベビーカステラを売りたい!」という20代の女性。
ほかにも、靴づくりや木工、ゲストハウスにパンからつくるサンドイッチ屋など、
枚挙にいとまがない。
「うちにはよく、いい意味で変な人が集まってきますね(笑)。
そういう人たちの『やりたいからやる』というストレートなところが好きなんです。
スリリングさを感じるときもありますけど、すごくパワーをもらえます。
自分にできることがあるなら、
そういうおもしろい人たちを応援したいなと思っています」
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これまでは、「好きだからこの仕事をやっている」という
価値観の人に出会える確率が高かったのは、きっと東京などの都市だったはずだ。
同じ価値観の人が近くにいることはこの上なく心強いに違いない。
地方出身者が都市で暮らし続けるモチベーションのひとつには、
そうした部分もあるのではないか。
しかし最近では、藤井さんが言うように、ローカルでも同様の土壌ができ始めている。
シンプルに「好きだから」「やってみたい」という理由で始めた人の生み出すものは、
おもしろいし楽しい。
個性的なお店がたくさんあることは、そのまちの財産にもなる。
加えて、藤井さんは〈ジェラテリア クラキチ〉のスタッフにも、
おもしろい人、社会的マイノリティーの人などに来てほしいという。
店の中だけでなく、外に広がりを持たせたお店にしたいそうだ。
「たとえば、お子さんにハンディキャップがあって
時間の融通がきかずに雇用してもらえないお母さんとかに働いてほしいんです。
本当に、2時間だけでもいいですし。
周南は工業都市で多くの人がコンビナートで働いています。
そのなかで、働き先のひとつとして選択肢を広げられたらなあと。
それにバックパッカーの人が短期でも働いてくれたら、
常連のおばあちゃんに旅の話をしてくれたりと、きっと楽しいですよね」
移住に興味があっても、考えすぎて動けなくなってしまうケースは多い。
「同じ土地でずっと暮らしていけるだろうか」
「移住先でゲストハウスやカフェを始めてみたいけれど失敗したらどうしよう」。
頭の中が不安でいっぱいになると最初に抱いた無垢な気持ちを見失ってしまう。
「山口では、定住にとらわれすぎずに何年かだけ住んでみるという人も多いですよ。
お店や事業がうまくいかなくても、また何か新しく始めたらいい。
もっと自由に、自分にできそうなことで好きなことをやればいいんじゃないですかね」
自分にフィットするスタイルで、ひたすらやっていけばいい。
藤井さんの言葉が、入りすぎた肩の力をスッと抜きとってくれた気がした。
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Gelateria Kurakichi
ジェラテリア クラキチ
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