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伊豆の海に260メートルの巨大風車!?
大規模再生可能エネルギー事業計画に
地域住民が思うこと|Page 3

暮らしを考える旅 わが家の移住について
vol.071

Page 3

驚くべき洋上風力発電事業計画

まず、南伊豆洋上風力発電計画について調べてみて驚いたことが、
その規模の大きさや岸からの近さでした。

その設置範囲は沖合1キロから、
最大高さ260メートルもの風車が
50基~100基も建設されるという計画なのです。

1キロ? 260メートル? 
といってもいまいちピンときませんでしたが、
東京都庁が243メートルと聞き、その巨大さを実感しました。

そして、1キロがどれくらいかというと……。
たとえば都庁からの距離でいうと、オペラシティのある
初台駅あたりが1キロの距離らしいのです。
こっちのほうがピンとこないという方もいるかもですが、
東京に住んでいた時分にはその辺をうろうろしていたので、
個人的にはかなりピンときました。

「初台から見ての都庁? かなりの圧迫感……。
それが50基以上も……?」
と、感じざるをえませんでした。

洋上風車の大きさを説明した写真

有志の方が洋上風車の大きさをわかりやすく説明するために作成した合成写真。こんな大きい風車見たことない……と思うのは当然で、世界的にもまだ建設されたことのないサイズの風車だそうです。

そんな風車の設置範囲の岸には多くの民家があります。
相当な圧迫感のもとで暮らすことになるのでしょう。
そして、この地域が誇る「美しい海」の景観も
大きく変わることになります。

そうはいっても、「地球温暖化を防ぐ」という大義名分のためなら、
圧迫感や景観が変わることくらい我慢しろよ……
そんな考え方もあるかもしれません。

でも、ここ下田市や南伊豆町は
いわゆる「ビーチリゾート」ともいえる観光地です。

地域が誇る美しい海や、都会では感じることのできない
「豊かな自然」を求めて多くの観光の方がいらっしゃる、
観光業が主幹産業といえる地域です。

では、ビーチリゾートのビーチの沖合1キロに
都庁よりも大きい260メートルの巨大風車が林立していたら……?

高台から見た下田の海

右側の山の頂上が160メートルほど。260メートルがいかに巨大かがわかります。陸上風車の場合、付近の住民からは健康被害を訴える事例も多くあると聞きます。岸から1キロの洋上の場合はどうなのでしょうか? 岸辺には多くの民家や施設があるので気になるところです。

さらに驚くべきことに、風力発電施設の寿命は
長くて20年だそうなのです。
20年経ち、お役御免となったときに
事業主が撤去しなければいけない決まりもない、とのこと。
つまり、使われなくなった朽ちた風車が沖合にそびえ建つ、
そんな景観になってしまう可能性があるというのです。

廃墟となったホテル

下田市内には高度経済成長時に建ち、その後廃業、そのままになっている廃墟のようなホテルがいくつもあり、かなり異様な景観となっています。沖に動いていない朽ちた風車が建っていたら……景観を損なうだけでなく、岸に破片などが流れ着くリスクも考えられます。

果たして、そんなビーチにリゾート目的で来る人はいるのだろうか?

ビーチリゾートとしての魅力を保てなければ、
この地域の主幹産業「観光業」が大きなダメージを受けてしまいます。
主幹産業が大きなダメージを受けるようなことがあったら、
この地域はどうなってしまうのだろうか? 
不安になってしまいます。

そんなことを考えると、あらためてこの地域にとって
美しい海、豊かな自然がどれだけかけがえのないモノなのか? 
をあらためて実感しました。

カラフルな魚が泳ぐ水中写真

南伊豆町のヒリゾ浜は多様な魚を間近で見ることができる人気のシュノーケリングスポットです。伊豆の海は貴重な生態系を保っていることでも知られています。その生態系は巨大な風車が設置されたらどのような影響がでるのでしょうか?(写真提供:平嶋裕二)

でも、この洋上風力発電事業はそんなかけがえのない
「美しい海」「豊かな自然」のど真ん中に計画されているのです。

ヨーロッパでの洋上風車

洋上風力発電が盛んなヨーロッパの海は遠浅。風車は岸から離れた沖合に建設されることが多いのですが、日本の海はヨーロッパと違いすぐに深くなるので、岸から1キロからという岸に近い設置範囲のようです。(参考写真)