稲刈り直前に大型台風接近!
2年目の米づくりで感じたこと

稲刈りはどうする? 究極の選択

伊豆下田に移住して、念願の米づくりを始めた津留崎さん一家。
昨年は手で田植えをし、稲刈りから天日干しまで
すべて自分たちの手で行いました。
2年目の今年もそうするつもりだったのが、
なんと稲刈りを目前に大型台風が到来。
今年は自分たちでつくったお米を食べられるのか……?

2年目の米づくり、収穫前にして最大のピンチ

年から始めたわが家の米づくりも、今年で2年目となりました。
6月に友人たちと手植えした稲はその後すくすくと育ち、
10月初旬にみんなで収穫しようと計画していました。
ところがです、その稲刈りを目前にして
過去最大級の台風19号がやってくる事態となってしまったのです。

田植えの様子

今年6月に行った田植え。終日かかってみんなで手植えしました。

田植え後にみんなで集合写真

「終わった~」という安堵感と、やりきったという充実感に包まれます。

稲の花

稲穂の横にくっついている白いのは稲の花。稲穂がすべて出そろうとこの花が咲き始めます。午前中のおよそ2時間しか姿を見せない小さな稲の花は、とてもかわいらしく幻想的です。

9月に千葉を直撃し、多大な被害をもたらした台風15号。
下田でも民家の屋根が崩壊したり、
地域によっては停電や断水もありました。
わが家の庭でも楽しみにしていたバナナの木を含め、
かなり大きな木が折れていたり。

ひょっとしたら稲もダメになっているかもしれない……
という不安を抱えながら台風が去った翌日に田んぼへと向かいました。
すると、一部の稲が倒れたものの、ほとんどの稲は
斜めになりながらも耐えてくれていて。
ひと晩、必死に耐え忍んであろうその姿は勇ましくも美しく、
感動してしまいました。

斜めになった稲

水滴がついた稲

けれども、今回の19号はその15号をはるかに上回る勢力だということが
しだいに明らかとなってきました。
日本列島に接近する前は今年一番の勢力とされていた
台風19号でしたが、日を追うごとにさらに発達していき、
2010年代で最も強い勢力だと報道されるように。

そして、非常に強い勢力を保ったまま太平洋を北上し、
下田に上陸する可能性がかなり高いというのです。
最も接近するのは、わが家が稲刈りを予定している前日。

田んぼを見回り中

あぜ道でお昼ご飯

田んぼでちょっとしたピクニックをするのがわが家の楽しみでもあります。

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みんなで一緒に
手で稲刈りをしたい、でも……

こうした状況となり、米づくりをサポートしてもらっている
〈南伊豆米店〉の中村大軌くんにも相談しました。
大軌くんによると、稲がもし横倒しになっても、
その後、手刈りをする分には問題ないのだそう
(機械だと倒されてしまった稲を刈るのは難しいこともあるらしいです)。

ただ稲が倒れたうえに田んぼが冠水し、稲穂が水没する事態となれば
米の収穫事態が危うくなると。

その説明を受けて、夫と話し合いました。
急遽手刈りをしたとしても、台風のさなかに
稲架掛けしておくのはリクスが高すぎる。
そもそも、1反弱の田んぼをわが家だけで手刈りするのは
現実的ではないし、友人たちに急遽声をかけたとしても、
平日のど真ん中に集まれる可能性は低いだろう。

とすると、いま選択できるのはこのまま台風を越して
稲が無事だったら手刈りをする方法→水没したら収穫できない。
もしくは、台風がくる前に機械ですべて刈ってしまう
→米は確実に収穫できるけれど、手刈りも天日干しもあきらめる。

稲刈り風景

昨年の稲刈り風景。

稲架に稲をかける娘

竹を運ぶ子どもたち

稲架に使う竹をみんなで運ぶ子どもたち。

天日干しされた稲

昨年天日干しにしたわが家の稲。朝陽や夕陽を浴びながら、2週間かけてじわじわと乾燥させていきます。

夫は台風の情報を毎日確認しながら、悩みに悩んでいる様子でした。
みんなで一緒に手刈りをしたい。
稲架掛けをして太陽をいっぱいに浴びた
おいしいお米を食べたいという希望
(天日干しは米本来のおいしさを損なわない乾燥処理方法なのだという、
こんな検証結果もあります。天日干しは低温緩慢乾燥のため、
温風機械乾燥に比べて澱粉粒へのダメージが少なく、
それによって食味が優れているのだそうです)。

けれど、みんなで手植えした稲が全滅する可能性も
ゼロではない……という不安。
「うちの稲は強いから耐えてくれるのではないか!」という
楽観的な考えも時折わいてきて、いろんな思いがいったりきたり……。

あぜ道を歩く夫

朝靄の中の田んぼ

青々とした稲

1週間以上悩んだ後、ついに決断のときがやってきました。
今日を逃すともう台風の前に稲刈りができない、
というリミットを迎えたのです。

その日の朝、夫が意を決したように言いました。
「機械で刈ってもらおう、もう今回の台風は仕方ない」と。

私も同じことを考えていました。
今年は収穫できればよしとしようじゃないか、
みんなで一緒に新米を食べようじゃないかと。
ということでその日の午後、急遽稲刈りを決行することとなったのです。

台風が去った後の田んぼ

しっかりと育った稲穂

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機械を使った初めての稲刈り

機械で刈った経験がないので、
どんな作業の流れになるのかさっぱりわからない状況でした。
取り急ぎ、一緒に稲刈りをする予定だった友人たちに
「今日、機械で刈ってしまいます」という旨を伝えました。

大軌くんからの
「手前の稲だけは手で刈ってもらいたいんだ」という電話を受け、
とりあえず稲刈り用の服装と装備で田んぼへと向かいました。

稲穂

急な展開にもかかわらず、都合のついた友人たちが
手伝いにきてくれました。
田んぼの手前から機械が入れるよう、
みんなで一緒に稲を刈っていきます。
「ザクッザクッ!」という小気味のよい音と手応え、
これが何とも心地よいのです。

「このままみんなで全部手刈りしたいね~、稲架かけしたいね~」
なんて言いながらも、少しだけ手刈りを味わえたことが
とてもうれしかったのです。

稲刈り作業開始

稲刈りを手伝う娘

娘も学校を早退して手伝ってくれました。毎年、できるだけ一緒に米づくりをやっていきたい。

30分ほど作業すると、田んぼの手前2メートルくらいが
刈り上がりました。
これ、夫婦ふたりだけでやっていたらかなり時間がかかったと思う……。
友人たちの助けが本当にありがたかった~。

稲を束ねる様子

稲刈り中の夫

さて、ここからはいよいよ機械の出番。
稲を刈り、刈った稲を脱穀(籾の状態にする)する
コンバインという機械です。

大軌くんが真剣な眼差しで作業を進めていきます。
「ゴ~~~」という激しい音とともに、
ジャンジャン刈られていくわが家の稲たち。
なんとも複雑な思いがわき上がってきます。
あ~、みんなで手刈りできなかったんだ……
これで稲刈りが終わってしまうのか……という残念な思い。

と同時に、米を収穫できるという喜びも入り交じる。
そうしてじんわりしている間にも、
ものすごいスピードで刈り上がっていく田んぼ。
ちょっと目を離してしまったらもうすべてが終わってしまいそうで、
最後までじっと田んぼを見つめていました。

稲刈り機が到着

機械のおかげで作業が捗る

コンバインに入れ脱穀

手刈りした稲は、手でコンバインに入れて脱穀します。

昨年は大人11人、子ども9人で行った稲刈り。
朝9時に集合して、終わったのはちょうど
日が暮れ始めた夕方17時頃でした。
そして機械による稲刈りは、ほんの1時間足らずで終わってしまった。

稲刈り終了後の田んぼ

刈られた稲はコンバインの内部で茎と米の部分に分けられます(脱穀)。
コンバインに貯められた米は軽トラに移送され、
南伊豆米店の倉庫に運ばれて機械で乾燥。
翌日には乾いてしまうので、籾摺りをすれば
すぐに新米が食べられてしまうのです。

手作業と機械のあまりのスピード感の違いに、
夫も私も何が起きているのかわからない、というような感覚でした。
ある日突然、娘に「嫁にいきます!」と言われて
家を出て行かれるような感覚というのでしょうか。
ちょっとした喪失感……。

脱穀作業

脱穀されたお米

[ff_assignvar name="nexttext" value="台風で気づいたこと"]
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自然と対峙しながら
作物をつくるということ

実は今回の台風が接近するまで、当然今年も
みんなで手刈りして天日干しできるものだと思い込んでいました。
けれど、それが当たり前のことではないのだと初めて気づいたのです。

米づくりを含め、食べものをつくるということは
自然に大きく左右されるということ。
厳しい条件のなかで、生産者さんたちが
苦労して食べものを運んでくれているということ。
そんな当たり前のことにあらためて気づかされました。

稲穂に蜘蛛の巣が

そして、昨年経験した手刈り、天日干しの魅力も
あらためて感じています。正直、なかなかしんどい作業です。
朝から日が暮れるまでずっと中腰で刈り続け、
ひと束ずつ手で縛っていく。
刈っても刈ってもまだ残っている……
「これ、今日中に終わるのだろうか……」なんて不安もよぎります。
終盤になるとみんな疲れてきて、無言にもなる。

けれど、そうしてみんなで一丸となって苦労した時間というのは
すばらしいもんだな~とあらためて思うのです。
苦労を味わうことのおもしろさ、不便だからこそ味わえる豊かさがある。

稲を運ぶ娘

もちろん農家さんのように生業となれば機械に頼る必要があるし、
こんな悠長なことを言っていられないのも承知しています。
けれど、わが家がつくっているお米はあくまでも自家消費用です。
自分たちの食べる米を自分たちでつくってみたいという行動。
だから、あえて時間をかけたり不便を楽しんだり、
そんな風にして米づくりを続けていくのもいいのかな~と思うのです。

普段、便利すぎる暮らしをしているなかで、
もう少し不便なことを楽しんでもいいのかもしれない。
ともあれ、お米が無事に収穫できたことに感謝です。
新米の味やいかに。

稲刈り後の集合写真

田んぼの近所に住むおじちゃんが、「よくできたね~、上出来だよ!」と声をかけてくれてとてもうれしかった。今年の集合写真はコンバイン背景。

text & photograph

津留崎徹花 Tetsuka Tsurusaki
つるさき・てつか●フォトグラファー。東京生まれ。料理・人物写真を中心に活動。移住先を探した末、伊豆下田で家族3人で暮らし始める。自身のコロカルでの連載『美味しいアルバム』では執筆も担当。

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