新潟県・長岡で歴史散歩。摂田屋と出雲崎をめぐる旅。

新潟県のほぼ中央に位置する長岡地域。日本三大花火のひとつ「長岡まつり大花火大会」の舞台として知られる長岡市をはじめ、出雲崎町、小千谷市、見附市からなるこのエリアは、山・海・川が織りなす多彩な表情が魅力です。 今回は長岡エリアの中でも、歴史が色濃く残る地域「摂田屋」(せったや)と「出雲崎」を訪れました。

摂田屋の豪商が残した芸術建築〈旧機那サフラン酒本舗〉

長岡駅の隣、宮内駅が最寄りの摂田屋は、古くから醸造業が盛んな「醸造の町」。お酒に味噌、醤油など、今でも続く蔵が多くあり、町を歩くと、発酵の香りがふわりと漂います。

まず訪れたのは、この地域のシンボルになっている〈旧機那サフラン酒本舗〉。明治20年に創業し、全国で薬用酒として流行したお酒の製造所跡地です。サフランという花と蜂蜜、丁子、桂皮、甘草などの植物を調合したお酒で、その人気はあの養命酒と並ぶほどだったといいます。

看板には大きな「サフラン酒」の文字

敷地内に現存している建物や庭園は全て国登録有形文化財に登録されており、今でも市民によって保全活動が続けられています。中でも、注目すべきは全国でもトップレベルの大きさを誇る鏝絵(こてえ)。名前の通り、左官が壁を塗る「こて」で図柄を立体的に描く技法で、かつて事務所として使われていた建物の外観には、色鮮やかな動物たちが大胆に描かれています。

立体的に見えるのが特徴の鏝絵。動物たちが今にも動き出しそう。

これらの建築物は、サフラン酒で財を成した創業者の吉澤仁太郎が築いたもの。豪快な人柄だったという彼が「世間をあっと言わせたい」という遊び心で作ったというから驚きです。鏝絵以外にも鯉が泳ぐ庭園や「趣味で花火を打ち上げたところ、近くの寺に落ちて全焼してしまった」と言う逸話からも、彼の豪快で華やかな人柄が滲み出ています。

 新潟最古の酒蔵を知る〈吉乃川 酒ミュージアム 醸蔵〉

次に訪れたのは、新潟一の歴史を誇る酒蔵〈吉乃川〉。醸造の町、摂田屋の歴史はここから始まりました。創業は 天文17年(1548年)。470年以上も、この地でお酒を作り続けています。

敷地内に2019年にオープンしたのが〈酒ミュージアム 醸蔵〉。蔵の歴史や酒造りの工程を知ることができる他、試飲コーナーがあったり、グッズを購入できたりと、吉乃川を五感で体験できるスポットです。

約100年前に建てられた倉庫を改装して作った、〈酒ミュージアム 醸蔵〉。

地元の方曰く、新潟のお酒は繊細なため、手首のスナップを使って顎を上げずに飲むのがコツ。こうすることで舌の真ん中で存分に日本酒の旨みを感じることができるんだそう。これから新潟のお酒を飲むときは、試してみたい!

お地蔵さまが目印。長岡の名物醤油〈越のむらさき〉

摂田屋を歩いているとひときわ目をひくのが、大きく屋号が書かれた煉瓦の煙突。江戸時代から続く老舗醤油蔵〈越のむらさき〉です。看板商品の「特選かつおだし 越のむらさき」は、かけるだけではなく、煮物やつゆとしても使える万能調味料。地元民には定番の「ソウル調味料」です。

「第一回長岡市都市景観賞」を受賞した社屋。

目印は、ボトルのラベルに描かれた愛らしい「こしのじぞう」。店先には、江戸時代から旅人の道しるべとして座り続けてきた本物のお地蔵さまが祀られており、今も摂田屋を優しく見守っています。

出雲崎の海岸線に立ち並ぶ、妻入りの街並み

摂田屋を後にして向かったのは、日本海に面する出雲崎町。江戸幕府の直轄地「天領」で、佐渡からの金銀が陸揚げされた北前船の寄港地として栄えた町です。今では県内で2番目に人口が少ない町ですが、当時の人口密度は日本トップクラスだったといいます。

その名残ともいえるのが、「妻入り(つまいり)」と呼ばれる建築様式の家。限られた土地に多くの人が住めるようにするため、そして当時は間口の幅が税の基準になっていたことから、間口を抑え奥へと伸びるつくりが広がりました。

そうして生まれたのが、海岸線に沿って約3.6kmも続く妻入りの街並み。晴れた冬の日に路地を歩くと、前には雪の積もった山が、家々の間からは日本海が見える、出雲崎ならではの景色を堪能することができます。

かつての暮らしを知るため、〈北国街道 妻入り会館〉へ。ここは当時の建築様式を再現した施設で、外から眺めるだけではわからない内部を見学できます。玄関口から海側にあるお勝手場までが繋がっている「通し土間」は港町ならでは。

普段は、季節に合わせた展示が行われたり、街歩きの休憩処としても使われています。

出雲崎の偉人、良寛ゆかりの地を巡る。

出雲崎を語る上で欠かせないのが、僧侶・歌人の良寛(りょうかん)。この地で生まれた良寛は、裕福な家庭ながらも出家し、自然や子どもたちとの交流を好みました。また、多くの歌や漢詩を残し、今でも多くの人に親しまれています。

良寛を偲んで、生家の跡地に建てられたのが〈良寛堂〉。日本海をバックに素朴なお堂が建っており、中に展示されている自筆の詩は必見。晴れた日には良寛の母の故郷、佐渡島も見えるというこの場所で、良寛の石像が海の向こうを見つめるように鎮座しています。

日本海を一望できる絶景スポット

町歩きの最後は、高台にある〈良寛と夕日の丘公園〉へ。妻入りの街並みと、目の前に広がる日本海、そしてその先に浮かぶ佐渡島を一望できる絶景スポットです。

先ほど歩いた海岸線の街並みを上から見下ろすことで、海と山に挟まれた狭い平地に妻入りの家々が密集して並んでいる様子がよく分かります。

「にいがた景勝百選」の一位にも選ばれたこの場所は、名前の通り県内屈指の夕日の名所。タイミングがよければ、良寛と子どもたちの石像が夕日に照らされる様子も見れるんだそう。


街を歩くと見えてくる、人々の営み。歴史を知ることで、今も変わらぬ町並みの中に長岡で続いてきた暮らしを感じる旅でした。

旅の中で出会ったグルメは「コロカル編集部の食いしん坊日記」で紹介中。
併せてチェックしてみてください。

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