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伊豆の海に260メートルの巨大風車!?
大規模再生可能エネルギー事業計画に
地域住民が思うこと|Page 4

暮らしを考える旅 わが家の移住について
vol.071

Page 4

事業計画のある地域の視点で考える

では、この風車でつくる電気はどこにいくのか? 調べてみました。
下田、南伊豆沖でつくられた電気は海底ケーブルで運ばれて、
最終的には東京電力に売電する計画のようです。
そして、事業を計画している企業は東京の外資系企業。

つまり、この地域で消費するために、この地域に利益をもたらすために、
つくられる電気ではないということ。

それを知って、かなり複雑な気持ちになりました。
持続可能な社会のために再生可能エネルギーや
自然エネルギーへの転換はちろん大切なことでしょう。
でも、地方の自然を犠牲にして、地方の産業がダメージを受けて、
一企業や投資家が利益をあげる。
そんな構図は果たして持続可能なのだろうか? と。

そして、さらに調べていくとまだまだ驚きの事実が……。

地元自治体(市・町)や住民には
洋上の風力発電事業を許可する権限がない、ということです。
地元自治体や住民にできることはあくまで「意見する」ことだけ。

地域の自然はこうした大規模な発電施設が建設されると
大きく変わってしまう。
さらには、美しい海があって
主幹産業の観光業が成り立っているようなこの地域の場合は、
自然の変化といったことだけでなく、
暮らしの基盤を失うことになりかねないのです。
でも、地元自治体や住民は「意見する」ことしかできないのです。

静岡県知事が出席したイベントの様子

静岡県知事が下田で出席するイベントがあったので出席しました。知事は「自然に対する冒涜だ」と計画に対して懸念の姿勢を表明。住民の気持ちを代弁してくれたようで心強く感じました。

そして、11月に入り最終的な許認可権限のある
経済産業省大臣の現時点でのこの計画に対する意見が公表されました。
いままさに、この事業が当初の事業計画のまま
遂行されるのかどうかというやり取りがなされている真っ只中なのです。

東京で暮らしていた時の自分であれば、
なぜ地元自治体は反対しているのか? 
地球温暖化のことを考えたら、早急に化石燃料から
再生可能エネルギーへの転換をすべき時なのではないのか? 
と感じていたかもしれません。

でも、いまは移住して、大規模な再生可能エネルギー・自然エネルギーの
洋上風力発電事業が計画されている海のある地域に暮らしています。

すると、別の視点を持つようになったのです。

自然を大規模に変えすぎて起こっているともいえる
地球温暖化の解決策として、
また、自然を大規模に変えようとしている、と。

では、どうすればよいのか? 
最近、そんなことをずっと考えています。

夕日が海に沈む

要するに、この計画のように、発電施設が大規模になっていくのは
経済的な効率を求めた結果。
でも、環境への配慮や災害時の対応を優先するならば、
小規模分散型の発電がいいはず……。
たとえばそんな小規模分散型の仕組みをこの伊豆で構築できないのか?

そもそも、気候に左右される再生可能エネルギーだけでは
安定性に欠けるため、原発や化石燃料での発電からの脱却は
難しいという事実もあるといいます。

では、まず目指すべきは大規模再生可能エネルギーへの転換ではなく、
無駄なエネルギーの使用を控えること、
大量生産大量消費という社会のあり方を変えることではないのか?

いやいや、それを言うならばまずは自分が実践しなければ……。
日々、悶々としております。

こうして、こんな計画が身近に持ち上がったことが、
自らの生活を顧みて、地域やエネルギー、
社会について考えるきっかけになりました。
きっかけがないと深く考えることができない自分が悲しくなりますが……。

とにかく、この計画の成り行きを見守りながら
考え続けてみようと思います。
自然とエネルギーのこと。
都市と地方のこと。

宵の下田の海と空

写真提供:矢野このみ