今年の夏から秋にかけては、新型コロナウイルス感染の広がりから、
町内会主催の七夕祭りや盆踊り、秋祭りが中止となった。
子どもたちの通っている学校でも行事は縮小されていて、
みんなで集まって何かをする機会は極端に減った。
そんななかで、近所の子どもたちが集まって
何かできないだろうかと考えた移住者の仲間がいる。
言い出しっぺとなったのは、私たちが暮らす美流渡(みると)に
3年前からスパイスカレーのお店を開いた〈ばぐぅす屋〉の山岸槙(こずえ)さん。
槙さんが、〈マルマド舎〉というゲストハウスを営む上井雄太さんと、
今年の5月から着任した地域おこし推進員(協力隊)の瀬尾洋裕さんに声をかけ、
3人が中心となって小さな子ども祭りが9月21日に企画された。

近所の人たちの手で整備されている芝生の広場が会場になった。
会場は毛陽地区の交流センターにある、とにかく広い芝生の広場。
集まったのは、普段から小学校や保育園などで顔を合わせている子どもたち20人ほど。
ここで朝から夕方まで、心も体もめいっぱい使う企画が行われた。
まず、3人が行ったのは体を動かすゲーム。その後にビンゴ大会。
お昼はばぐぅす屋の特製カレーが振る舞われた。
そして午後からは、今年の夏に美流渡地区に移住したばかりの
画家・MAYA MAXXさんのワークショップが行われた。
MAYAさんは、これまで全国各地でワークショップをしており、
そうしたなかから、今回は子どもたちに自画像を描いてもらう試みを行った。

子どもたちに語りかけるMAYAさん。
「まず目から描いてみてください。鏡で形をじっくり観察します」
声かけに合わせて、目鼻口から順に描いていく。
顔の輪郭から描いてしまうと、その中にパーツを入れ込まなければならなくなって
窮屈になってしまうため、内側から描いていくそうだ。
このワークショップの特徴は、紙ではなく、木枠に麻布を貼ったキャンバスに描くこと。

真剣な表情で鏡をじっと見つめる子どもたち。目の形は意外と複雑など、思いがけない発見が。
「子どもの絵は、どこかの段階で捨ててしまうこともあるけれど、
キャンバスであれば、なかなか捨てられないですよね。
おうちに帰ったら、子どもの絵をぜひ壁に飾ってほしいと思います」
青空の下で服が汚れるのも気にせずに描く絵は、
普段とは違った開放感があったのではないかと思う。

できあがった作品。青空の下で絵具を乾かす。
ワークショップのあとは、2年前に万字地区に移住したアフリカ太鼓奏者の
岡林利樹さん、藍さんが率いるバンド〈みるとばぶ〉の演奏が行われた。
コロナ禍以前は、月に2回ほど太鼓のワークショップを開いていたこともあって、
演奏は子どもたちにもお馴染み。
一緒に太鼓を叩くなどノリノリで演奏に参加していた。

〈みるとばぶ〉のメンバー。
お祭りはいったんここで終了。その後、希望する子どもたちが、
地域おこし推進員の瀬尾洋裕さんがこの夏オープンさせた、
起伏の激しいトラックを専用の自転車で走る「BMXコース」を体験することとなった。
夕暮れ近くまで目一杯遊んだ子どもたち。
満足そうな、その笑顔を見ながらあらためて、
この山間の地域がなんと贅沢な場所なのだろうと感じた。
私が住む美流渡地区の人口は400人に満たないし、周辺の地区を合わせても
おそらく600人ほどではないかと思う。そんな小さなエリアに、
子どもたちと真剣に向き合うアーティストやミュージシャンがおり、
道内でも数えるほどしかないという「BMXコース」で自由に遊べ、
おいしいカレーも味わえて……。
ここ数年、徐々に移住者が増えてきており、
その誰もが、その人なりの才能を持っていて、それを惜しみなく
地域で生かしてくれていることを、お祭りを通じて強く実感できた。

瀬尾さんが手と小型の重機とでつくりあげたBMXコース〈ルコチパーク〉。