鮒ずしは漬け物!?
〈ハッピー太郎醸造所〉が教える
発酵食品のおいしさの秘密とは?

土地に根ざした発酵、そして出会い

日本の発酵について調べていたら、そこかしこに楽しげな人物の足跡があった。
その名も、ハッピー太郎こと池島幸太郎さん。
滋賀県の彦根市で〈ハッピー太郎醸造所〉を営む発酵のプロフェッショナルだ。
今日は池島さんがアドバイザーを務める京都の〈梅小路醗酵所〉で
鮒ずしづくりのワークショップがあると聞き、同行させてもらった。

池島さんは京都大学在学時に日本酒と出合い、
名杜氏・農口尚彦さんを特集したテレビ番組に心動かされ、杜氏の道を志した。

「個性があってつくり手の思いが感じられる日本酒がもともと好きで。
農口さんは〈菊姫〉や〈鹿野酒造〉で杜氏を務め
(現在は自身の酒蔵、〈農口尚彦研究所〉主宰)、
銘酒を世に送り出してきた人ですが、
自分がつくりたいものの根拠があって、それが土地に根ざしている。
信念を感じて、自分もこんな人間になりたいと感動を覚えたのが、
酒造りの現場に入ったきっかけです」

文系であったのにもかかわらず、いつかは酒米からつくりたいと、
まずは農業を学ぶために島根の有機農業法人に就職。
以降、〈冨田酒造〉、〈岡村本家〉(いずれも滋賀)などの酒蔵で
蔵人として12年の修業を積み、17年に独立してハッピー太郎醸造所を立ち上げた。

アドバイザーを務める梅小路醗酵所は、
2020年に誕生したばかりのホテル〈梅小路ポテル〉に併設された施設だ。
日本酒の販売はもとより、道路に面したガラス張りの麹室を備え、
自家製の麹づくりにも取り組む、日本の発酵文化を伝える場でもある。
池島さんは、この麹室の設置やオリジナルの麹の設計、
実際の麹づくりの指導を行っているが、今日はワークショップの講師として登場。

鮒ずしづくりの体験をしようと集ったのは京都、神戸などから来た女性4人で、
黒いコンテナに入った大量の玄米とニゴロブナに興味津々の様子だ。

「鮒ずしは熟鮓(なれずし)の一種です。
太古の昔からつくられてきた発酵食品で保存食。
源流をたどると、東南アジアのラオスのほうから伝わってきたといわれています。
材料は、淡水魚と塩とお米。日本酒の発酵のように製法も管理も緻密なものではなく、
むしろみなさんがご自分の家庭でつくる漬け物に近いものだと思ってください。
琵琶湖の鮒ずしは、淡水魚のニゴロブナを塩と米飯で乳酸発酵させたもので、
とくに卵を持ったメスのニゴロブナの鮒ずしは酒の肴として珍重される高級品です」

ここで、実際に鮒ずしをつくったことがあるか参加者に尋ねると、
ここ数年、毎年漬けているというつわものが1名、
ウグイで試してみたことがある人1名、まだ食べたことがない人2名。
土地柄か、発酵食に対するレベルの高さがうかがえる。

グラフィックデザイナー・原研哉
「グローバル/ローカル」の時代。
価値はローカルに眠っています。

さまざまな分野の第一線で活躍するクリエイターの視点から、
ローカルならではの価値や可能性を捉える「ローカルシフト」。
その第1回は、日本を代表するグラフィックデザイナーであり、
自主的なプロジェクトやエキシビションも
数多く手がける原研哉さんに話を聞いた。

個人の視点で見出す風景

無印良品、ヤマト運輸、蔦屋書店、JAPAN HOUSE……。
原研哉さんは現代の日本を象徴するような数多くの企業やプロジェクトに、
グラフィックデザイナーとして関わってきた。
1959年に亀倉雄策らが創業した日本デザインセンターの社長を
2014年から務めていて、英訳された著書もあり、海外でもよく知られる存在だ。

この4月1日から使用が開始された〈ヤマトホールディングス〉の新しいクロネコマークやロゴも、原さん率いる日本デザインセンターが手がけた。

この4月1日から使用が開始された〈ヤマトホールディングス〉の新しいクロネコマークやロゴも、原さん率いる日本デザインセンターが手がけた。

そんな原さんが、〈低空飛行〉という新しいプロジェクトを
発表したのは2019年のことだった。
これはクライアントをもたない自主的なプロジェクトで、
原さんが日本各地を訪れ、自身で撮影し、原稿を書き、
月1回のペースでインターネットに公開していく。
現在までに巡った場所は北海道から九州の五島列島までの30か所以上に及ぶ。

日本には、こんなにすばらしいところがこれほどたくさんあったのか!
〈低空飛行〉を見ると、それぞれの美しさや豊かさに圧倒されてしまう。
ホテル、旅館、ミュージアム、庭園、ものづくりの現場など、
原さんの目にかなった場所が、彼ならではの研ぎ澄まされた
感性と考察を通して紹介されているのだ。

〈小田原文化財団 江之浦測候所〉で撮影する原さん。〈低空飛行〉の撮影や原稿執筆は、基本的に原さんがひとりで行っている。

〈小田原文化財団 江之浦測候所〉で撮影する原さん。〈低空飛行〉の撮影や原稿執筆は、基本的に原さんがひとりで行っている。

「〈低空飛行〉で取り上げるのは、長持ちしそうな場所ですね。
土地の魅力を見定めて、その魅力を生かすことを生業にする人がいることが大切です。
一方で新しさには執着しません。
僕は建築好きですが、建築的才能に頼って新しく奇抜なものをつくると、
建築が自然に対して屹立してしまいます。
ただしはっきりした選考基準はなく、基本は直感です」

物語が生まれた
「わたしのまちのあの舞台」

今月のテーマ 「わたしのまちのあの舞台」

映画やドラマで使われたロケ地や歴史上に登場するスポットなど、
物語の舞台となった場所は日本全国にたくさんあります。

今回は日本各地の〈地域おこし協力隊〉のみなさんに
作品や歴史の1ページを彩ったさまざまな場所を教えてもらいました。

映画で描かれた風景や、あの童謡の作詞家が題材にした情景など
その場所に魅了された人たちが見た、
まちの魅力をぜひ見つけてみてください。

【岡山県浅口市】
ロマンチックな夜景スポット〈遙照山総合公園〉の展望台

遙照山総合公園

映画『8年越しの花嫁 奇跡の実話』で
プロポーズシーンが撮影された夜景を見渡す公園。
「あのロマンチックな場所はどこ?」と話題になったのが、
岡山県浅口市にある〈遙照山(ようしょうざん)総合公園〉の展望台です。

遙照山総合公園の展望台からの眺め

映画公開前から地元の方の定番デートスポットだったそうで、
広々と見渡せる夜景は瀬戸内海沿岸、
水島コンビナート、瀬戸大橋までも見渡せます。

遙照山総合公園の展望台から見た夜明け前のまち並み

上の写真は夜明け前のまち並みを月とともに撮影しました。
昼は、瀬戸内海の多島美も眺めることができるおすすめフォトスポットなんです。
木製の柵は、映画ロケ以降そのまま設置されています。
展望台周辺は芝生の公園になっていて、
瀬戸内海を眺めながらトレッキングができて気持ちよいですよ。

information

map

遙照山総合公園

住所:岡山県浅口市金光町上竹2536-25

photo & text

こばん

大阪府出身。〈カブ〉で旅するフォトライター。全国各地を愛車と旅する様子をインスタグラムに投稿するのが趣味。フォトジェニックな「星と海のまちあさくち」に一目惚れし、2017年5月、岡山県浅口市地域おこし協力隊に着任。浅口の魅力を取材し、紙面やWEB、SNSで発信中。