連載
posted:2020.10.30 from:全国(北海道、秋田、岩手、福島、岡山) genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
毎月コロカル編集部からテーマを出し、
日本各地で活動している地域おこし協力隊の方から集まった写真とメッセージを紹介していきます。
その土地ならではのものだったり、自分の暮らしと変わらないものだったり……。
どんな暮らしをしてどんな景色を見ているのか、ちょっと覗いてみませんか?
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Koban, Mina Ohba, Itsumi Shigehisa , Saki Kunishige, Chihiro Ogawa, Yosuke Ohishi
こばん/大場美奈/重久愛/國重咲季/小川ちひろ/大石陽介
映画やドラマで使われたロケ地や歴史上に登場するスポットなど、
物語の舞台となった場所は日本全国にたくさんあります。
今回は日本各地の〈地域おこし協力隊〉のみなさんに
作品や歴史の1ページを彩ったさまざまな場所を教えてもらいました。
映画で描かれた風景や、あの童謡の作詞家が題材にした情景など
その場所に魅了された人たちが見た、
まちの魅力をぜひ見つけてみてください。
映画『8年越しの花嫁 奇跡の実話』で
プロポーズシーンが撮影された夜景を見渡す公園。
「あのロマンチックな場所はどこ?」と話題になったのが、
岡山県浅口市にある〈遙照山(ようしょうざん)総合公園〉の展望台です。
映画公開前から地元の方の定番デートスポットだったそうで、
広々と見渡せる夜景は瀬戸内海沿岸、
水島コンビナート、瀬戸大橋までも見渡せます。
上の写真は夜明け前のまち並みを月とともに撮影しました。
昼は、瀬戸内海の多島美も眺めることができるおすすめフォトスポットなんです。
木製の柵は、映画ロケ以降そのまま設置されています。
展望台周辺は芝生の公園になっていて、
瀬戸内海を眺めながらトレッキングができて気持ちよいですよ。
information
遙照山総合公園
住所:岡山県浅口市金光町上竹2536-25
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こばん
大阪府出身。〈カブ〉で旅するフォトライター。全国各地を愛車と旅する様子をインスタグラムに投稿するのが趣味。フォトジェニックな「星と海のまちあさくち」に一目惚れし、2017年5月、岡山県浅口市地域おこし協力隊に着任。浅口の魅力を取材し、紙面やWEB、SNSで発信中。
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私が住む広野町は童謡のまちです。
みなさんも一度は歌ったことのある『とんぼのめがね』。
実は広野町の景色がもとになりました。
この歌を作詞した額賀誠志さんは福島県出身のお医者さんで、
問診で訪れた山間の箒平地区を歌にしたとされています。
実際に行ってみると昔ながらの自然を大切にした里山風景が広がっていました。
まちから車を走らせ20分ほどで箒平地区に到着。
当時は馬を使って行き来していたそうです。
地区には田んぼが広がり、今の時期は一面が黄金の絨毯になっています。
太陽に照らさせてキラキラと輝く稲穂がとてもきれいで
つい時間を忘れてのんびりしてしまいました。
あたりいっぱいトンボが飛んでいて、
手をのばせば捕まえられそうなぐらいたくさんいました。
『とんぼのめがね』の生まれた場所は
程よく澄んだ空気とのんびりとした時間が流れるすてきな場所でした。
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大場美奈 おおば・みな
1993年生まれ。福島県いわき市出身。医療系専門学校を卒業後、委託職員として広野町入庁。そのときに広野町に恋をして、まちと共に生きることを決意。まちづくりの修業のため、一旦まちを離れて山形県南陽市地域おこし協力隊に着任。2019年4月に広野町起業型地域おこし協力隊に着任。現在は民間がつくるコミュニティースペース〈ちゃのまベース〉を立ち上げ、運営を開始。地域課題を企業というかたちで解決しながら会社設立に向けて奮闘中。
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律令国家であった時代に最北の地域拠点の舞台であり、
港の玄関口として栄えた〈秋田城〉の跡地(併設:護国神社)が
秋田市にあります。
天平5年から10世紀中頃まで存続していたといわれる〈秋田城〉では、
渤海国(現在の中国)との交流の舞台として使用されており、
大陸の人が使用したであろう古代の水洗トイレも発掘されているんです。
大人も見て楽しめる史跡になっています。
そのほか、地鎮などに使用されたと思われる
日本最古の和同開珎もハート型の沼から発掘されており、
日本最北での出土例となります。
陰陽師が御呪いなどに使用していた祈りの舞台が今も残っています。
さらに〈秋田城跡〉には護国神社も隣接しているのですが、
明治天皇や大正天皇が行幸なされ、
秋田の港景色を見て休まれた休憩台もあるんですよ。
天皇陛下が行幸された際にご休憩され、景色を眺められた舞台が今も残っています。
その他、秋田市出身で芥川賞候補にもなった
プロレタリア文学の作家である伊藤永之介の
碑文「山美しく 人貧し」も建立されています。
東北の大凶作を想い、農民を熱愛したことがうかがえる詩は、
55歳で永眠した日本農民文学会長でもあった伊藤永之介を偲んで
文学碑設立委員会が秋田市のシンボルでもある
この地に建立されたものです。
現在は石碑が立っているこの場所は地元の方の散歩コースとして親しまれています。
〈秋田城跡〉はいまだ多くの歴史の香りがたくさん残っています。
歴史に詳しいボランティアガイドさんも常駐してるので
ぜひ訪ねてみてくださいね。
information
秋田城跡
住所:秋田県秋田市寺内大畑5
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重久 愛 しげひさ・いつみ
「死ぬまでには一度は行きたい場所」で知られる鹿児島県与論島出身。2019年に縁あって秋田県秋田市にIターン。よそ者から見た秋田市の魅力や移住に至る経験を生かして、秋田市の地域おこし協力隊に着任。YOGAを生かした地域交流を図る事業や、移住者を受け入れる市民団体事業をプロデュース中。山菜採りにすっかり夢中に。自称「立てばタラの芽、座ればバッケ、歩く姿はコシアブラ」。
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にかほ市象潟町は、松尾芭蕉が奥の細道の旅で訪れた最北の地です。
ここで詠まれた句は「象潟や雨に西施がねむの花」。
蚶満寺(かんまんじ)にある松尾芭蕉の句碑。
にかほの市の花に指定されているねむの花が雨に濡れる様子が、
中国の美女・西施のような美しさであると詠っています。
蚶満寺は、芭蕉も訪れたとされる場所。
敷地内には西施の像も建てられています。
そもそも芭蕉が象潟を訪れたのは、九十九島という美景を見るためだったそうです。
九十九島とは、鳥海山から滑り落ちた岩で形成された小さな丘の集まりのこと。
昔は海に浮かぶ入江だったのですが、
200年以上前に起きた大地震で土地が隆起して今の陸地の状態になりました。
九十九島と鳥海山の景色。
松島にも匹敵すると称された美しい景色を、
芭蕉は求めて秋田までやって来たそう。
この場所を訪ねれば、その理由にきっと納得すると思います。
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國重咲季 くにしげ・さき
京都府出身。秋田県の大学に進学したことを機に、東北各地の1次産業の現場を訪ねるようになる。卒業後は企業に勤めて東京で暮らした後、にかほ市で閉校になった小学校の利活用事業「にかほのほかに」に携わるべく秋田にAターン。地域で受け継がれてきた暮らしを学び、自給力を高めることが日々の目標。夢は食べものとエネルギーの自給自足。
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前回ご紹介した『奥州zine』作者の田名部茜さんの
移住するきっかけとなった作品、漫画『リトル・フォレスト』の舞台であり、
映画の撮影地となった奥州市衣川。
山深い衣川の秋の夕暮れ。
このストーリーは、都会に一度出たものの
自分の居場所が見つけられずに地元東北にある
小さな集落「小森(=リトル・フォレスト)」に戻ってきた
主人公である20代女性の自給自足生活を四季とともに描いています。
野菜や米を育てたり、魚や合鴨をとったり、
手間ひまかけて季節ごとの自然の恵みの命をいただきながら、
自分自身とも向き合っていくという内容です。
撮影地でもあった衣川ふるさと自然塾の施設内では原作者・五十嵐大介さんの複製原画も展示されています。
映画『リトル・フォレスト』で使われたキッチンなどの大道具や資料もあちこちに。
舞台となった衣川は1889年4月1日の町村制以降、
一度も合併せず117年もの間、単独村制を継続していました。
その後合併して奥州市となりましたが、
大きなスーパーやチェーン店はなく、作品で描かれているとおり、
自然とともに共存する里山の暮らしと風景がここには今もあり続けています。
原作者の五十嵐大介さんは奥州市衣川へ約3年間移住し、
ご自身が農作業をしながら里山で生活された実体験が作品に描写されているんです。
また、衣川は過去に日本一の星空に選ばれていて
天文台があったり、キャンプ場、
温泉やスキー場のスポットもあったりと、観光資源も豊富。
岩手県が出荷量日本一(平成30年)のリンドウは冷涼気候な衣川でも多く生産されています。
イワナ釣りのシーンなどで撮影地としても使われた
衣川ふるさと自然塾では実際にイワナ釣りも体験でき、
キャンプ場にもなっているのでアウトドアも楽しむことができます。
自然豊かな『リトル・フォレスト』の世界を体感しにいらしてみませんか?
ロケ地マップも配布されているので、1日かけてぐるっと巡るのもおすすめです。
information
衣川ふるさと自然塾
住所:岩手県奥州市衣川下大森109番地3
電話:0197-52-6180
※連絡が取れない場合は0197-52-3111奥州市衣川総合支所地域支援グループまで。
営業時間:9:00~17:00
営業期間:4月~10月末まで
※五十嵐先生の複製原画や映画の資料展示をご覧になりたい方は入場料100円、事前予約制となります。
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小川ちひろ おがわ・ちひろ
東京都品川区出身。大学で移民を学び、言語や異文化に興味を抱く。オーストラリア留学、台湾ワーキングホリデーと海外生活を経験。着任前は都内ギャラリーカフェに勤務。2018年5月岩手県奥州市地域おこし協力隊着任。今年度は台湾向けに東北のリアルライフスタイルやカルチャーシーンを伝えるウェブメディア立ち上げを目指し、自身も旅するように東北でしか味わえない経験を堪能中。
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人口約3200人のまち下川町は、
2017年12月に政府から「第1回ジャパンSDGsアワード」の
最高賞であるSDGs推進本部長(内閣総理大臣)賞を受賞しました。
同アワードで特別賞にあたる
SDGsパートナーシップ賞を受賞した吉本興業と出会い、
両者は2018年7月よりSDGs推進における包括連携協定を結び、
〈プロジェクト下川町株式会社〉をスタートさせました。
プロジェクトの第1弾として、
下川町を舞台にしたエンタテインメントあふれる映画作品づくりが始動。
芸人でもあり、映画監督としても活躍する品川ヒロシさんが
監督・脚本を務め、下川町を舞台にした長編映画を製作してくれました。
監督・脚本を務めた品川ヒロシさんと谷下川町長。
気になる内容は、スキャンダルで夢に破れ、
傷つき疲れ果てたヒロインが故郷である下川町に帰り、
同級生や家族、自然に触れることで心を取り戻していく……というストーリー。
映画内では、森林のまちならではの豊かな自然をはじめ、
下川の魅力がぎゅっとつまった〈エコハウス美桑〉や
町内で一番古い建物と言われる農協の石倉倉庫が登場します。
〈エコハウス美桑〉の外観。下川生まれのFSC認証カラマツ材を使って建てられているんです。
クライマックスの石倉倉庫でのライブシーンでは、
100人以上の町民がエキストラとして出演。
撮影であることを忘れるほど盛り上がり、
カットの声が聞こえないほどでした。
28歳の主人公が織りなす青春ストーリー、
映画『リスタート』は2021年春公開予定です。
ヒロインのように慌ただしい日常から解放されたい方、
劇場はもちろんのこと、自然に囲まれて過ごせる下川町へも
ぜひ足を運んでくださいね。
責任をもってご案内いたします。
photo & text
大石陽介 おおいし・ようすけ
1988年静岡県焼津市生まれ。大学卒業後、静岡県の小学校教諭として富士山の麓で8年間勤務。うち2年間は青年海外協力隊(JICA)としてモンゴルへ。世界自然遺産である『知床』での2年間の移住生活を経て、現在はSDGs未来都市に選ばれた北海道下川町を拠点にシモカワベアーズ(起業型地域おこし協力隊)として活動中。しもかわをぐるっとつなぐおもてなし宿の開業に向け準備を進める。第1弾として『ぐるっとしもかわ』というローカルガイドを期間限定でスタート。第2弾として、森の中でのサスティナブルキャビンを建設準備中。
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