連載
posted:2020.9.30 from:全国(岩手、福島、長野、岡山) genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
毎月コロカル編集部からテーマを出し、
日本各地で活動している地域おこし協力隊の方から集まった写真とメッセージを紹介していきます。
その土地ならではのものだったり、自分の暮らしと変わらないものだったり……。
どんな暮らしをしてどんな景色を見ているのか、ちょっと覗いてみませんか?
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Sachi Honda, Koban, Mina Ohba, Yuko Sugita, Chihiro Ogawa
本多紗智/こばん/大場美奈/杉田夕子/小川ちひろ
WEBで手軽に情報が手に入る時代ですが、
時間をかけて編集された紙媒体は私たちにとってまだまだ馴染み深いもの。
最近では、ZINEと呼ばれる個人の趣味でつくる雑誌も人気となっています。
そこで今回は役場が発行する広報誌をはじめ、
店舗や有志が集まってつくるフリーペーパーなど、
まちの今を伝えるさまざまな冊子を
日本各地の〈地域おこし協力隊〉のみなさんに教えてもらいました。
写真集から観光ガイド、ZINEまで、
趣向を凝らしたタウン誌をぜひご覧あれ!
わたしの住む天龍村は秘境と呼ばれるだけのアクセスの悪さを誇り、
気軽に来れる場所とも言いにくい場所。
新型コロナウイルスの影響で、
地方と首都圏・大都市間の往来が難しくなっている昨今。
村に来てほしいと思う反面、SNSなどで大々的に観光情報をPRしたり、
イベントで外部から人を呼ぶことも、積極的にとは言い難いのが実情です。
そんな状況の中でも、「天龍村に行きたいけど行けない、
もっと日常の様子が知りたい」という方々に、
春夏秋冬に各1冊ずつ、写真を通して村の近況を伝える
写真季刊広報誌『天龍百景』の発行を始めています。
村のごく一部分を切り取るのではなく、あらゆる場所からの風景や、
日々変化する景色を見てほしいという気持ちでこのタイトルがつきました。
こちらは現在、天龍村ふるさと納税寄付者の方々にお送りしています。
春夏秋冬のうつろい、村人たちの暮らし、
大自然の厳しさと美しさ、古来から続く伝統行事など、
ここに暮らしているからこそダイレクトに見ることができる一瞬一瞬を、
簡素な文章とぎっしり詰まった写真の数々でお届けしてます。
見た人の心に何かが残るような冊子になってくれたらいいなと思います。
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本多紗智 ほんだ・さち
信州最南端、県内で一番早く桜の咲く村「天龍村」で地域おこし協力隊をしています。ないものづくしといわれる「ド」田舎ではありますが、ちょっと視点を変えてみれば、ここにはまだ「かろうじて残っているもの」がたくさんあります。秘境と呼ばれるこの村から、鮮やかな四季のうつろい、なにげない暮らしの風景をお届けできたらと思っています。
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私が地域おこし協力隊の任期中に制作した
浅口市の観光パンフレット『天文のまち!あさくち天空トリップ』を紹介。
天文台がある竹林寺山(ちくりんじさん)や、
瀬戸内海を見渡す遙照山(ようしょうざん)の楽しみ方を掲載しています。
遙子(ようこ)と星子という架空の女子ふたり組が、2泊3日で旅するストーリー。
アクティブ女子・遙子とカメラ女子・星子には、市職員さんが扮してくれました。
私はパンフレットのイラスト以外、企画や文章、写真を担当。
撮影は本当の女子旅のようで楽しかったです。
地元の登山家の方に教えていただいたトレッキングルートなど、
見どころを詳しくまとめました。
浅口市内の観光施設で配布しているので
お近くにいらした際はぜひチェックしてみてください。
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こばん
大阪府出身。〈カブ〉で旅するフォトライター。全国各地を愛車と旅する様子をインスタグラムに投稿するのが趣味。フォトジェニックな「星と海のまちあさくち」に一目惚れし、2017年5月、岡山県浅口市地域おこし協力隊に着任。浅口の魅力を取材し、紙面やWEB、SNSで発信中。
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広野町のタウン誌と聞いてすぐに思い浮かぶのが、
役場が毎月発行している広報誌『ひろの』。
まちの情報がぎゅっと詰まった一冊です。
内容はまちの行政についてや、今月の行事など。
そのほかにも、私の協力隊通信の欄、町民の方の短歌や俳句の掲載、
Jヴィレッジで行われる健康講座など、毎回内容盛りだくさんの広報誌です。
そのなかでもみんなが注目して読んでいるのが
まちの子どもたちの様子を掲載しているページ、「ひろのっこ」です。
震災後、広野町では全町避難を経験し、子どもの数がゼロに。
9年経った今、ようやく震災前の半分の数まで子どもたちが戻ってきました。
その様子を伝えるのがこのページです。
私も毎回、この「ひろのっこ」ページでほっこりしています。
子どもは広野町の宝。
広報誌を通して、あたたかく見守っていきたいです。
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大場美奈 おおば・みな
1993年生まれ。福島県いわき市出身。医療系専門学校を卒業後、委託職員として広野町入庁。そのときに広野町に恋をして、まちと共に生きることを決意。まちづくりの修業のため、一旦まちを離れて山形県南陽市地域おこし協力隊に着任。2019年4月に広野町起業型地域おこし協力隊に着任。現在は民間がつくるコミュニティースペース〈ちゃのまベース〉を立ち上げ、運営を開始。地域課題を企業というかたちで解決しながら会社設立に向けて奮闘中。
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今回ご紹介するのはフリーペーパー『畑°々 Patapata』。
佐久市の印刷会社〈キクハラインク〉に有志で集まったメンバーが運営する
東信州の農を楽しむ暮らしマガジンです。
発行は、春・夏・秋(冬は農閑期に入るため休止)の年3回。
約8000部を東信州地区の直売所、飲食店、公共施設、
長野と東京を行き来する高速バスの席ポケット、
東京ではアンテナショップ〈銀座NAGANO〉、飲食店などで無料配布されています。
ユニークなタイトルですが『畑°々 Patapata』は
畑に半濁点をつけて“ぱたぱた”と読ませる造語からきています。
「畑に降り注ぐ太陽のような農業の未来に明るい光を」
タイトルに込められた想いは、
表紙をめくった最初のページに書かれたメッセージから知ることができます。
このフリーペーパーを立ち上げたのは、
10年ほど東京で料理関係の職を経て帰郷し、
家業の〈キクハラインク〉を継がれた編集長の菊原貴光さん。
「農業に従事したことはないけれど、
この地域の基幹産業でもある農業を盛り上げたい、食に関することを発信したい」
という想いから構想に3年かけて、2017年に『畑°々 Patapata』を創刊。
デザイナー、カメラマン、イベンター、編集者などが集まっているのですが
編集部メンバーは東信州の佐久市や御代田町、
小諸市、上田市と、住んでいる地域はさまざま。
みんなが揃う編集会議は、
次号の制作に入る前とある程度誌面ができあがったタイミングの計2回で、
あとはSNSなどでやりとり。
創刊以来のメンバーの信頼関係が、あうんの呼吸でつくりあげているそうです。
内容は農家さんが日々どんな作業を行っているのか密着した記事や、
気になる事柄を掘り下げて紹介する特集、
農業や食に関係する面白い取り組みをしている団体や企業の紹介。
飲み比べ・食べ比べシリーズや、
編集部で企画した収穫祭イベントやワークショップの紹介など、
毎号じっくり丁寧に制作しています。
次号は秋発行予定。
ぜひ見かけたら手にとってみてくださいね。
農を楽しむ暮らしマガジン『畑°々 Patapata』
https://patapata2017.com/
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杉田夕子 すぎた・ゆうこ
東京在住中に信州への移住を考えるなか、縁あってほどよく田舎の長野県東御市へ。2019年7月に地域おこし協力隊に着任。市内の気になる人やモノを取材して発信中。信州の山遊びや雪遊びを楽しみたいです。
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『奥州zine』 の作者は当時私の同期として
奥州市地域おこし協力隊に着任した田名部茜さん。
地方の暮らしや農業に興味があり、
大好きな漫画『リトル・フォレスト』という作品の舞台である
この奥州で暮らせるということも
彼女にとって移住するきっかけのひとつだったそうです。
そして読書や絵を描くことが趣味の田名部さんは、
奥州での移住生活のなかで出会った人や、
目にした風景を自身の言葉とイラストで綴った『奥州zine』を完成させました。
「ハル」という雪解け文字が山に浮かんで来ると
田植えの始まりの合図という話や、
お化けのような稲の干し方「ほんにょ」についての話など、
田名部さんの言葉はどこか力強く、水彩画のイラストは温もりを感じます。
この土地で暮らすまで知ることのなかった
奥州の「飾らない」日常こそが、私たちにとって魅力であり、
この一冊にぎゅっと詰まっています。
探究心の強い田名部さんは
「自分の知らない世界や、文化についてまだまだ吸収する時間をつくりたい」と考え、
現在は地域おこし協力隊を卒業して大好きな本の仕事について勉強中。
この土地を離れた今でもここで過ごした時間は
田名部さんにとってかけがえのない糧となり、
これからも奥州とのつながりを持ち続けたいと語ってくれました。
『奥州zine』が気になった方は、
Instagram「半白生活」またはメールよりお問い合わせしてみてくださいね。
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小川ちひろ おがわ・ちひろ
東京都品川区出身。大学で移民を学び、言語や異文化に興味を抱く。オーストラリア留学、台湾ワーキングホリデーと海外生活を経験。着任前は都内ギャラリーカフェに勤務。2018年5月岩手県奥州市地域おこし協力隊着任。今年度は台湾向けに東北のリアルライフスタイルやカルチャーシーンを伝えるウェブメディア立ち上げを目指し、自身も旅するように東北でしか味わえない経験を堪能中。
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