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鮒ずしは漬け物!?
〈ハッピー太郎醸造所〉が教える
発酵食品のおいしさの秘密とは?

PEOPLE
vol.068

posted:2021.10.12  from:京都府京都市  genre:食・グルメ

sponsored by 資生堂

〈 この連載・企画は… 〉  ローカルにはさまざまな人がいます。地域でユニークな活動をしている人。
地元の人気者。新しい働きかたや暮らしかたを編み出した人。そんな人々に会いにいきます。

Editor profile

Yuko Ota

太田祐子

おおた・ゆうこ●編集、ライター、版元もやってます。 taboule.jp

credit

撮影:合田昌弘

土地に根ざした発酵、そして出会い

日本の発酵について調べていたら、そこかしこに楽しげな人物の足跡があった。
その名も、ハッピー太郎こと池島幸太郎さん。
滋賀県の彦根市で〈ハッピー太郎醸造所〉を営む発酵のプロフェッショナルだ。
今日は池島さんがアドバイザーを務める京都の〈梅小路醗酵所〉で
鮒ずしづくりのワークショップがあると聞き、同行させてもらった。

池島さんは京都大学在学時に日本酒と出合い、
名杜氏・農口尚彦さんを特集したテレビ番組に心動かされ、杜氏の道を志した。

「個性があってつくり手の思いが感じられる日本酒がもともと好きで。
農口さんは〈菊姫〉や〈鹿野酒造〉で杜氏を務め
(現在は自身の酒蔵、〈農口尚彦研究所〉主宰)、
銘酒を世に送り出してきた人ですが、
自分がつくりたいものの根拠があって、それが土地に根ざしている。
信念を感じて、自分もこんな人間になりたいと感動を覚えたのが、
酒造りの現場に入ったきっかけです」

文系であったのにもかかわらず、いつかは酒米からつくりたいと、
まずは農業を学ぶために島根の有機農業法人に就職。
以降、〈冨田酒造〉、〈岡村本家〉(いずれも滋賀)などの酒蔵で
蔵人として12年の修業を積み、17年に独立してハッピー太郎醸造所を立ち上げた。

アドバイザーを務める梅小路醗酵所は、
2020年に誕生したばかりのホテル〈梅小路ポテル〉に併設された施設だ。
日本酒の販売はもとより、道路に面したガラス張りの麹室を備え、
自家製の麹づくりにも取り組む、日本の発酵文化を伝える場でもある。
池島さんは、この麹室の設置やオリジナルの麹の設計、
実際の麹づくりの指導を行っているが、今日はワークショップの講師として登場。

鮒ずしづくりの体験をしようと集ったのは京都、神戸などから来た女性4人で、
黒いコンテナに入った大量の玄米とニゴロブナに興味津々の様子だ。

「鮒ずしは熟鮓(なれずし)の一種です。
太古の昔からつくられてきた発酵食品で保存食。
源流をたどると、東南アジアのラオスのほうから伝わってきたといわれています。
材料は、淡水魚と塩とお米。日本酒の発酵のように製法も管理も緻密なものではなく、
むしろみなさんがご自分の家庭でつくる漬け物に近いものだと思ってください。
琵琶湖の鮒ずしは、淡水魚のニゴロブナを塩と米飯で乳酸発酵させたもので、
とくに卵を持ったメスのニゴロブナの鮒ずしは酒の肴として珍重される高級品です」

ここで、実際に鮒ずしをつくったことがあるか参加者に尋ねると、
ここ数年、毎年漬けているというつわものが1名、
ウグイで試してみたことがある人1名、まだ食べたことがない人2名。
土地柄か、発酵食に対するレベルの高さがうかがえる。

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発酵食品のおいしさの秘密とは

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鮒ずしづくりワークショップがスタート

ハッピー太郎流玄米鮒ずしづくりが始まった。
まず、「塩きり」といってすでに塩漬けにしてあるニゴロブナを流水で洗う。
その後、やわらかめに炊いた玄米を冷まして塩を混ぜ込んだものを、
日本酒にさっとくぐらせたニゴロブナのエラから詰めていく。
身がパンパンになったら、口やエラに玄米をたっぷりのせる。

最後に、漬け樽に玄米をたっぷり敷き、
その上にニゴロブナをきれいに並べたらまた玄米をのせ、
井桁になるようニゴロブナを並べ、また蓋をするように玄米をかぶせていく。

「僕が食べたなかで一番おいしかった熟鮓は、
参加者のなかに赤ちゃんがいたとき。
きっときれいな乳酸菌を持ってたんやろうと思います。
発酵食品というのはおもしろいもんで、
誰がどこでつくるかということで味が違ってきます」

「鮒ずしで玄米を使うのは僕だけやと思います。
玄米はしっかり吸水させないといけないから手間がかかるし、
神事で神様に奉納するものだったから
白米のほうがふさわしかったんじゃないでしょうか」

「これがなんで熟鮓になるかというと、乳酸発酵なんです。
桶の中で乳酸菌が繁殖して、魚の骨とかカルシウムが溶けてやわらかく、
味も酸っぱくなります。
防腐効果もあって、魚のたんぱく質がアミノ酸に変わって旨みが出てきます」

「鮒ずしなど熟鮓は、どっちかというと薬として食べるものですよ。
僕は、二日酔いや体調が悪いとき、
頭の部分を刻んで熱湯と醤油と一味唐辛子をかけて飲むんです」

伝えたいことがたくさんある。池島さんのレクチャーが続く。

ふだんから発酵食品に関心の高い参加者がそろっていたせいか、
この日のワークショップは専門的な質問も多かった。
魚の処理はどこまで丁寧にしたほうがいいか、その味の違いは? 
ニゴロブナの仕入れはどうするのか、発酵食品のおいしさの秘密はどこにあるのか。
参加者同士の会話も盛り上がり、
自身で味噌教室を開いている和田さんがしみじみと言った。

「味噌ばっかりはもう外では買いません。
太郎さんの麹で仕込んでますけど、
やっぱり自分でつくったものが一番おいしいですから」

発酵食レシピはこちらから

profile

池島幸太郎(ハッピー太郎)

大阪生まれ、滋賀育ち。〈ハッピー太郎醸造所〉店主。京都大学を卒業後杜氏を志し、いつかは酒米をつくりたいという思いから島根県の農業法人に勤め、その後、島根県の〈日本海酒造〉、滋賀県の〈冨田酒造〉、〈岡村本家〉で蔵人として12年修業後に独立し、ハッピー太郎醸造所を立ち上げる。蔵元で培った技術で醸したオリジナルの麹を中心に、味噌、鮒ずしなどを提供し、話題に。SNSやブログで地元・滋賀県の発酵文化を発信中。2021年12月に長浜市に開業予定の発酵を中心とした文化施設〈湖(うみ)のスコーレ〉にハッピー太郎醸造所として入居し、これまでの麹・発酵事業に加えてどぶろく醸造の免許取得に挑戦する。
http://umi-no-schole.jp/
(新型コロナウイルスの影響により開業時期が変更となる場合あり)

information

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ハッピー太郎醸造所

住所:滋賀県彦根市大藪町1624

Web:ハッピー太郎醸造所

information

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梅小路発酵所

住所:京都府京都市下京区歓喜寺町15 梅小路ポテル京都内

TEL:075-744-6557

Web:梅小路発酵所

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