廃校になった学校はどうなる?
少子化の進む地方の現実と
廃校利用の可能性

中学校統合で、地域はどうなる…?

移住して伊豆下田で暮らす津留崎さん。
少子化はどこの地域でも課題ですが、ここ下田でも
市内にある4つの中学校が、2022年に1校に統合されるそう。
学校に通う生徒たちだけでなく、地域の避難場所であり
防災拠点でもある学校がなくなると、地域に影響が出そうです。
廃校を利用するいいアイデアはあるのでしょうか……?

地域の避難場所だった学校が廃校に

日、地域の避難訓練がありました。
まちにサイレンが鳴り響き、自宅近くの集合場所に集合。
集まった自宅周辺の人たちと広域避難場所の中学校に歩いて行く。
着いた中学校では、市長による阪神淡路大震災の被災体験談に始まり、
消火器使用方法の説明、地震体験車での疑似体験、
備蓄食料の配布などがありました。

地域の避難訓練

静岡県は12月の第1日曜日を、1944年12月7日に起きた昭和東南海地震(最大震度6、マグニチュード7.9)の教訓を生かすための「地域防災の日」と定めています。いつ起きてもおかしくないといわれる南海トラフ地震によって多くの被害が想定される静岡県、住民たちの危機意識もかなり高いです。

集まった地域の人たちには顔見知りの人も随分と増えました。
もしもの時、こうした避難訓練を重ねているというのは、
また、地域の人たちの顔を知っているということで
どれだけ違ってくるのだろう?

東京で暮らしていたときには、こうした避難訓練がなかったことや
隣の人の顔も知らなかったことなどを思い出し、
防災に対する意識や体制も東京と地方で随分と誓うものだと実感。

昨年、大型台風が直撃した際にも、この中学校は
避難場所として多くの地域住民を受け入れていました。
結局、伊豆はそこまでの被害はなかったのですが、
こうした避難所があるということの重要性を
あらためて感じたことを覚えています。

そこで、ふと疑問に思ったことが……。
「そういえばこの中学校、もうすぐ廃校でなくなってしまうはず……。
地域の避難場所はどうなってしまうのだろう?」

広域避難場所の中学校

わが家が移住した下田市はほかの多くの地方と同じく
少子高齢化が進む自治体です。
人口としては、1975年の31700人をピークに減少し続け、
現在は21000人ほど。減少が収まったかというとそんなこともなく、
現在進行形で進んでいます。

下田の海

コロナ禍にあって東京から地方へ人口が移り始めるという、
人口減少に悩まされている地方自治体にとっては良い兆候もあります。
とはいっても人口減少のペースを食い止められるのか? というと
厳しいようです。

現在、市内の中学校4校中3校が1学年1クラス、
残る1校も1学年2~3クラスとのこと。
そんな状況から、これまで4校あった中学校が
2022年春に1校に統合されることが決まったのです。

通学や地域の避難場所をどうするか? 
といった大きな問題もあるのでしょうが、
現実的には統合せざるをえなかったということなのでしょう。

教室内

文科省は中学1校に12~18クラスという標準規模を設けているそうです。あくまで基準ということですが、現状の1学年1~2クラスだと部活も限られてしまい、子どもたちの可能性を伸ばすという意味でも厳しいものがあるのかもしれません。

統合されると学区が市内全域になるということで、
広範囲から生徒が通学することになります。
いまのところ、統合後は、学校から2キロ以内は徒歩、
2キロ以上は徒歩か自転車かバス(基本は路線バス、
路線バスのない地域では通学バス)で通学という方針とのこと。

当初は4キロ以内が徒歩か自転車、4キロ以上がバス
という方針となっていて、かなり長い距離を
自転車で通学させることに危険性を感じていました。
そこが改良されたことは一保護者としては安堵しています。

バス通学となると、定期代の補助など、
市の財政の負担の面などで厳しい面もあるのかもしれませんが、
子どもの安全面を最優先にした体制となることを願うばかりです。

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廃校をどう活用する?

では、それまで各中学校が担っていた
避難場所としての役目はどうなるのか? 
という懸案事項にも関わってくるのが廃校の利用方法です。

いまのところは特に具体的には決まっていないとのこと。
全国的にも廃校は多く実施され、少子化が進んでいくいまの状況では
致し方ないことなのかもしれません
(全国では毎年500校ほどが廃校になっているそうです)。

廃校となった小中学校が、さまざまに利用されて
地域の新たな魅力となっている例もあります。
利用方法としては宿泊施設、飲食店、福祉施設、文化施設……などなど
本当にさまざま。

文部科学省としてもこの動きを後押ししており、
以下のページに現在活用用途を募集している廃校施設の一覧や
さまざまな利用事例が記載されています。

未来につなごう「みんなの廃校プロジェクト」(文部科学省)

またコロカルにも、廃校がカフェ・宿泊施設となるまでの
経緯を紹介した記事もあります(別の方が書いた記事ですが、
偶然にも移住前の妻が写真を撮っています)。

コロカル記事のメイン画像

徳島県三好市での事例を紹介した記事「眠っていた学校を起こそう! 教えて、How to休廃校再活用」。

学校という大きなハードの運営ということで、
ある程度の規模の法人が担うイメージを持っていましたが、
この実例では個人が廃校を活用しているのも興味深く感じます。

また全国の廃校利用の実例を紹介した本もあります。

こうして地域の新たな魅力となる事例がある一方で、
残念ながらうまく活用されずに、
ほとんど廃墟になってしまっているケースもあるそうです。
また、当初は注目を集めていても、時が経つにつれて
運営が厳しくなっていくような事例もあると聞きます。

数年前まで使われていた保育所

こちらは数年前まで使われていた保育所。海まで数分、近くにはホテルが立ち並ぶ地区なので活用方法はありそうな気がしますが、現在は特に何にも使われていないようです。

ただ、下田の場合は絶好のロケーションの中学校もあります。
その利用方法次第では地域の新たな魅力となる可能性を感じます。

教室のベランダから見える下田湾

廃校が決まっている中学校からの景色。下田湾を一望。花火がきれいに見えるそうです。

ただ、住民として心配なのは、利用方法によっては
避難場所として使えなくなるのではないかということです。
災害が多発するいま、地域の避難場所が減ってしまうというのは
不安が残ります。

下田の海

海の近くの暮らしでは、海からは多くの恩恵を受けますが、津波被害などのリスクもあります。子どもには、その豊かさとリスクをしっかりと伝えていきたいです。

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具体的な事業アイデアも

少し話がそれますが、11月に首都圏の企業人や起業家を下田に招いた
「地域の課題をビジネスの力で解決する」というテーマの合宿が
市内ワーケーション施設〈LivingAnywhere Commons〉にて
行われました。

合宿中は参加者が、まち歩きなどの地域フィールドワークを行いながら、
自治体・住民・地元企業へのヒアリングを行い、
課題解決事業をプランニング。
そして、最終日に自治体や地元企業を前に
事業アイデアをプレゼンテーションし、
地元との合意があれば実施に向かって協働する、という企画です。

その参加者のひとり、東京の準大手ゼネコンの社員の方から
「移住者として感じる下田の魅力や問題点などを
ヒアリングさせてほしい」と連絡を受け、
まちのためになることはできる範囲でやっていきたいと思っているので
お会いして話をしました。

そのときに地域の課題として伝えたのが、
この中学校廃校後の利用方法が決まっていないこと。
ゼネコンとしてこの地域でできる課題解決を考えていた彼にとっては
ちょうどいいテーマだったようです。

偶然にも彼の所属するゼネコンは、廃校となった小学校を
自社の研修施設としてリノベーションした実績もありました。
さらには、ロケーションの良さから、廃校の利用方法に
さまざまな可能性を感じたようで、最終日のプレゼンテーションでは
廃校利用のアイデアを発表していました。

プレゼンの様子

プレゼンテーションの場には地域のテレビ局も。この合宿は2回目の開催で、1回目の開催ではこのイベントをきっかけに地元に法人ができるなど、アイデアをプレゼンするだけでなく実施につながっています。

事業アイデアとしては、廃校となった中学校を、
「防災」と「仕事」と「教育」の機能を持つ場として、
彼の所属するゼネコンがリノベーションして運営していく、
というものでした。
「防災」の拠点としての機能は維持する、という点に
地域住民としても安心感を得ました。

とはいっても、あくまで事業アイデア。
いまのところ、そのアイデアが具体的に進んいるというわけでもなく、
可能性のひとつとしてあるということです。
ほかにもいくつかの廃校利用のアイデアなり動きがあると。
実際にどのような方向に動き出すのかは、
いまのところはわからないそうです。

地域の新しい魅力となるような廃校利用となるのか否かは、
これからの動きにかかってくるのでしょう。
地域住民としても、どのような事業主が
どのようなプログラムで運営をしていくことになるのか? 
注視していきたいです。

海沿いを娘と散歩中

地域の課題を考えると立ちはだかる人口減少問題。なぜ減るのか? その大きな要因が子どもたちが進学を機に下田を離れて帰ってこないからのようです。では、子どもたちが帰ってきたくなるような魅力的なまちにしよう、という活動に誘われて参加しています。地方にいても情報やモノは都会にいるのと変わらずに手に入るこの時代、子どもはいままでの「都市ー地方」の感覚とは変わってきそうです。

text & photograph

津留崎鎮生 Shizuo Tsurusaki
つるさき・しずお●1974年東京生まれ東京育ち。大学で建築を学ぶ。その後、建築家の弟子、自営業でのカフェバー経営、リノベーション業界で数社と職を転々としながらも、地方に住む人々の暮らしに触れるにつれ「移住しなければ!」と思うように。移住先探しの旅を経て2017年4月に伊豆下田に移住。この地で見つけたいくつかの仕事をしつつ、家や庭をいじりながら暮らしてます。Facebook Instagram

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