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あらためて考えてみると、私は生まれてこのかた
正月を実家で迎えなかったことがありませんでした。
いつものように母や姉家族とコタツに入って
「あーだこーだ」いいながら紅白を見ることもできない。
母も高齢です。
いつになったら娘と会わせることができるのだろうか……。
この歳にもなって恥ずかしい告白ですが、
なんとも言えぬ寂しさがこみ上げてきては去って、またこみ上げてきて。
いままで当たり前に過ごしていた家族との時間。
その時間がもてないことで、ポカーンと穴があいたような
感覚に包まれるなんて、いままで気づいていませんでした。
けれど、娘は私以上にしんどいだろうということが
容易に想像できました。
いつもなら、いとことじゃれあっている賑やかな年末年始。
あんなに楽しみにしていたのにそれが叶わなかったのです。
自分がしょげている場合じゃないと気持ちを切り替え、
初めて家族3人で、初めて下田で年越しをしました。
毎年母が準備してくれていたお節、
ここ数年は姉と私で分担してつくっていました。
12月に入ってから姉とメールでやりとりをして、
どちらが何をつくるかすでに相談済みでした。
急遽その分担ができなくなり、
それぞれの家庭でひととおりつくるしかない。
黒豆や栗きんとんはいつも姉に任せていたので、ほぼ未経験です。
全部自分できるのだろうか……、と不安もありつつ、
どこからか「お母ちゃん、しっかりせんば!」という
責任感みたいなものも湧いてくる。
ということで初めてひとりでお節料理をつくり、
そのうちの数種類を宅急便で実家に送りました。
手料理を実家に送るというのは初めてのことですが、
お節をつくりながら、ある料理家さんの話が頭に浮かんだのです。
遠く離れた場所に住んでいる高齢のお母さんに、
手づくりのお惣菜を頻繁に送っていたという話。
相手を思う気持ちをそんな風にして伝えることもできるのかと、
とても印象的でした。