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下田で暮らし始めて3年半、
最近ちょっとうれしくなるような変化を感じています。
それは、以前よりも魚介類をスムーズにさばけるようになったこと。
「なんだ、そんなことか」と思われてしまうかもしれませんが、
私にとってはかなり大きな出来事です。
というのも、移住して間もない頃に、サザエを刺身で食べたいのに、
ぎゅっと閉まった口がどうにも開かず。
台所で格闘したのち、仕方なく庭にサザエを持ち出し
金槌で殻ごと割ってどうにか中身をほじくり出した……
なんてことがありました。
それが先日、ものの3分でスルリと刺身にできたのですから、
かなりの変化です。
そんなちょっとした自分の成長が、とてもうれしく感じられました。
「いつか魚をさばけるようになりたい」
という思いを若い頃から抱いていました。
日本料理の教室に通ったり、尾頭つきの魚を買ってきて
自宅でおろしたり。
慣れない手つきながらも鯵を刺身にできる程度にはなりましたが、
ときどき魚を1尾おろすくらいではなかなか上達しなかったのです。
下田に移住してまず変わったのが、魚をさばく機会が格段に増えたこと。
取材で知り合った地元の漁師さんたちと仲良くなり、
ありがたいことにいろんな魚介類をいただくようになりました。
それも当日「食べますか?」と連絡があり、
バケツいっぱいの魚をいただいたり。
さらには伊勢海老やアワビ、サザエをいただくこともあります。
そんなうれしすぎる状況に心が踊るのですが、
移住した当初はどう調理していいかわからず
台所で立ち尽くしたことも多々ありました。
不慣れために時間ばかりかかってしまい、包丁さばきが悪いため、
せっかくの魚がボロボロになっていく……。
伊勢海老だってアワビだって、自分で調理したことがありませんでした。
それこそ下田に来て初めて伊勢海老をいただき、
嬉々として茹でたのですが、
お湯の中でバシャンバシャン暴れ台所が水浸しに……。
泣きながら雑巾がけをしたのでした。