連載
posted:2020.11.27 from:愛知県蒲郡市 genre:暮らしと移住 / アート・デザイン・建築
sponsored by BESS
〈 この連載・企画は… 〉
ライフスタイルの基本は、やはり「家」。
ログハウスなど木の家を得意とする住宅ブランド〈BESS〉とともに、
わが家に好きなものをつめこんで、
最大限に暮らしをおもしろがっている人たちをご紹介します。
writer profile
Tomohiro Okusa
大草朋宏
おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。
photographer profile
Ryosuke Kikuchi
菊池良助
きくち・りょうすけ●栃木県出身。写真ひとつぼ展入選後、雑誌『STUDIO VOICE』編集部との縁で、INFASパブリケーションズ社内カメラマンを経てフリーランス。雑誌広告を中心に、ジャンル問わず広範囲で撮影中。鎌倉には20代極貧期に友人の家に転がり込んだのが始まり。フリーランス初期には都内に住んだものの鎌倉シックに陥って出戻り。都内との往来生活も通算10年目に。鎌倉の表現者のコレクティブ「全然禅」のメンバー。
http://d.hatena.ne.jp/rufuto2007/
愛知県蒲郡市の市街地から山へ向かって車を走らせていくと、
次第に周囲はみかん畑ばかりになる。
秋冬のシーズンにもなると、どの木にもたわわに実ったみかんを見ることができる。
そうした周辺の景観に馴染みながらも、
カフェと間違えてしまいそうな存在感がある〈BESS〉の「カントリーログ」が姿を現す。
この家に住むのは榊原裕之さん、幸枝さん、丸留(まる)くんの一家だ。
「子どもの頃、ログハウスに泊まる体験学習に行きました。
キャンプファイアをして、ダンスをして、おいしい料理を食べて。
その体験がとても楽しかったんですよね。
そのときから将来は絶対、木の家がいいなと決めていました」という裕之さん。
よほど強く印象に残ったのだろう。
鉄筋コンクリートマンションで暮らしていたときも、
自分の部屋の中に木を貼って暮らしていたという。
そして子どもの頃の思い出を強く持ったまま初志貫徹、
大人になってとうとう木の家を手に入れた。
木の家を建てるなら、場所選びも重要だ。
「せっかく建てるなら、自然があふれる場所がいい」というのは、
榊原さんに限らず木の家を望む人なら当然の気持ちかもしれない。
土地探しの当初は、まちなかも探していたというが、現在の里山の立地を見て
「理想的な“梺(ふもと)ぐらし”が想像できました」と即決だったという。
決めたときには近所に住む人たちが
「こんな何にもないところ、本当に大丈夫?」と声をかけてくれたとか。
「でも住んでみたら、田舎特有の人づきあいがあって。
歩いていたら声をかけてくれるし、お野菜も分けてくれたり、とても快適です」
と幸枝さんは笑う。
榊原夫妻の気持ちを動かしたものに、三角州のようなユニークな土地の形状もある。
建物以外の三角エリアは庭になっていて、シマトネリコがシンボルツリーとなり、
まるで公園のような佇まい。
植物を密集させることなく、ほどよいスペースを保っているので、
丸留くんがいくらでも走り回れるし、
裕之さんもテントを張ってキャンプを楽しんでいるそうだ。
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こうして土地を決めて、家を建築。蒲郡の市街地に住んでいた榊原夫妻は、
実際に大工さんが家を建てている間、毎日のように現場に通ったという。
「家を建てるときに出る端材をもらえるというので、毎日通って、端材を集めました。
近隣の方がご好意で家の向かい側に倉庫を貸してくれたので、
その中で残材や端材などを使って家具をつくってみることにしたんです」
BESSオーナーの多くは、自分たちの手で家具などをつくる人が多い。
榊原さんも例に漏れず、それまでまったく手習いのなかったDIYに挑戦する。
しかも家が完成していないうちから。
「とにかく自分たちの手で何かをつくりたくなってしまったんですよね。
DIY心がうずくというか(笑)」
まずは幸枝さんが望んでいたキッチンの作業台。これが処女作で一番時間がかかった。
市販の作業台よりはやや高さがあり、下部にたっぷり収納できる。
キッチンの目隠し効果もある。
「ふたりでつくるとケンカになるんですよね」と裕之さんは笑うが、
こうした細かいことを相談しながらの共同作業は、
一から暮らしをつくっていくための大切な時間になるだろう。
ほかにもテレビ台に下駄箱、食器棚、リビングテーブルなど、
見えている家具のほとんどが自作だ。
裕之さんは「がたがたですけどね」と謙遜する。
しかし、愛らしい家具たちは、
ピカピカの新品家具よりも家の雰囲気にとてもマッチしている。
家と同じ木材なので、当然、統一感もある。
特にダイニングテーブルは、よりBESSらしさが表れた逸品。
家の壁などに使用されるメイン木材であるログ材を使っているからだ。
「このログ材は、最初は土留めにでもしようと思っていたんですよね。
でもこの家を建てていた大工さんに“せっかくのいい木材だからもったいない。
手伝うからテーブルにしたらいい”と言われて挑戦してみました」
毎日、幸枝さんが差し入れを持って通ううち、この頃には大工さんと仲良くなっていた。
こうしてプロ、しかも自分たちの家を建ててくれている大工さんに手伝ってもらい、
丸ノコなどの工具も借りながらテーブルを製作。
かなり重量感のあるしっかりとしたダイニングテーブルになっている。
大工さんも、実際に住む人とコミュニケーションをとると、
人となりがわかるし、暮らしが想像できて仕事がしやすいかもしれない。
そういう意味でも、建築中の現場に(邪魔にならない程度に)通うことは、
住む側にとってもメリットがあるように思う。
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庭や家の外観には、たくさんのサインボードが飾られている。
住み始め当初は、好きなサインボードを探して購入していたというが、
これも次第に自分たちの手でつくるようになっていった。
板に文字を書いたり、ペイントするだけ、といってしまえばそれまでかもしれない。
しかし、かつては購入していたものでも、
自分たちでつくれそうなものならばつくってみるという行動に変容していった。
こうしたちょっとした工夫が、暮らしを楽しむ術かもしれない。
それは幸枝さんの趣味になった、家中を彩る植物にも表れている。
「この家に似合うものを、と思って、ドライフラワーを中心に飾っています。
これも最初は買っているものが多かったのですが、最近ではほとんど手づくりです。
散歩中に見つけたり、自分たちで庭に植えて育てている
ポプラとかユーカリ、ススキなどをドライにして楽しんでいます」
ちなみにBESSの家は価値観が近い人を呼び寄せるようだ。
幸枝さんのお姉さんがこの家を気に入っているようで、
家に合いそうな植物を持ってきてくれるらしい。
最初は単なる装飾だったのかもしれないが、
自分で手間をかけたり、みんなで趣味を共有できると愛着は格段に増すだろう。
「マイホーム」と言えども、住人以外も入りながら、
みんなで育てる家というのもなかなか楽しそうだ。
木の家ならではの修繕や塗装など、メンテナンスも自分たちの手で行っている。
これも経験があるわけではないので、うまくいかないことも多い。
「苦ではないんですけど、実際はちょっと大変です。
ただし、やり始めると無我夢中になってしまうんですよ(笑)」と裕之さん。
なんともシンプルな行動原理にログハウスの住人らしい逞しさが垣間見える。
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こうして「家を楽しみ」ながら、「家で楽しむ」時間も増えていった。
庭で焚火やBBQ、テントも張ったりと、家時間は増えていく。
「寒くても暑くても、外に出たくなってしまうんですよね。
星もきれいだし、四季を身近に感じられることがふもと暮らしの醍醐味ですから」
ときにはウッドテラスで食事し、赤ワインを飲む。
そんなたそがれタイムが裕之さんのお気に入りだ。
幸枝さんは子育て中なので、特に家にいる時間が長い。
もともと手を動かすことが好きというだけあって、
メンテナンスやDIY、薪ストーブの着火までひと通りのことは自分でできるようになり、
心地よい家時間を享受しているようだ。
「ログハウスは暖かいし、涼しい。
窓を開け放していても気持ちがいいです」と幸枝さんはいう。
が、BESSは新築状態で100点満点の住宅ではない。
苦労することもあるが、「作業」ではなく「暮らしの一部」と捉えればいいという。
「このエリアは山側からの吹き下ろしの風が強いし、
台風や強い雨が降ると、ログハウスなので雨漏りすることもあります。
でも、5年も暮らしていると家のどのあたりで漏れるかわかってきて、
スピーディーに対応できるようになりました。
自分の家のことがちゃんとわかっているからこそです」と幸枝さんは胸を張る。
玄関から入ってすぐ横に目をやると鎮座しているのが薪ストーブ。
普段は自分たちで掃除してメンテナンスしているというが、
ちょうど5年の節目ということで、業者に依頼してしっかり掃除してもらったばかり。
だからピカピカの薪ストーブが迎えてくれた。取材日は11月初旬。
寒い夜は薪ストーブを点火したくなる頃だ。裕之さんが火を熾しながら話す。
「単純に楽しいですね。炎を見ていると癒されます。
しかも暖かさの伝わり方がホカホカとやさしいんです」
榊原邸の薪ストーブは料理用ではないそうだが、
天板の熱を利用してシチューやカレーを温めるには十分。冬になると大活躍だ。
裕之さんのお気に入りは直火での男料理。
「定番のピザやホットサンドはよくつくります。あとは焼き芋がうまいね。
ポンと入れるだけだけど、甘くてホクホクで格別」と楽しそうに笑う。
榊原夫妻は、この家に住むまで家具をDIYしたり、
自分たちの手でメンテナンスしたりするという経験はなかったが、
住むと決まった瞬間から一気に切り替わった。
子どもの頃からの憧れが、きっと心の中で醸成されていたに違いない。
「子どもがもう少し大きくなったら、一緒に薪割りしたり、塗装したり。
楽しい絵が浮かんでいます」
子どもたちの手が加わることで、家もまた変化していくだろう。
木に囲まれた丸留くんは、どのように成長していくだろうか。
きっとそのときには、家も一緒に育っているのだろう。
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