
さまざまな北海道の魅力を満喫する周遊旅。
今回はまず、とかち帯広空港から車で約20分、
馬と触れ合いながら乗馬体験ができる〈ヒロユキ モチダ ホースマンシップ〉へ。
帯広のまちではばん馬が馬車を引く〈馬車BAR〉を体験。
さらに帯広市から車で北上し、北見市の〈北の大地の水族館〉までは約2時間半。
そしてかつて世界に誇る一大産業だった北見のハッカについて知ることができる
〈北見ハッカ記念館〉〈薄荷蒸溜館〉を訪れ、
そこから車で約40分、女満別空港が旅の終着地。
帯広では馬に触れるアクティビティを体験し、
北見では北海道ならではの魚たちの生態や産業遺産に出合います。
北の大地に生きる動植物、そして人々の知恵に触れる旅へ。

十勝平野の西側、南北に約150キロ連なる日高山脈に守られて、とくに冬は晴天率が高く「十勝晴れ」になる。
とかち帯広空港から向かったのは、雄大な日高山脈を望む場所にある、
〈ヒロユキ モチダ ホースマンシップ〉。
7頭の馬と、お揃いのスウェットを着たスタッフ4名が出迎えてくれた。
胸には“Think like a horse”のメッセージ。
ここは、「ナチュラルホースマンシップ」を学ぶことができる研修施設でもある。
ナチュラルホースマンシップとは、馬の習性や自然界における行動の原理を利用して、
馬と関わっていく方法。
たとえば人間の両目は並んでいて焦点が合わせやすいが、
草食動物である馬は両脇に目がついている。
「広い視野を持ったばかりに視力は弱くて、距離感も掴みにくい。
だから馬が私たちに興味を持ったときにどうするかというと、
少し離れて両目で見える位置に動こうとする。
近づいて片方の目だけを見せているのは、興味がない証拠。
実はすぐに逃げる準備をしているんです」と教えてくれるのは、代表の持田裕之さん。

持田裕之さんは、約25年前に帯広に移住した。現在は全国各地を巡りながら、調教師をはじめ馬に関わる仕事をする人たちに、ナチュラルホースマンシップの考え方を伝えている。
異なるのは目だけにあらず。
「『馬が好きなものは何ですか?』と質問すると多くの人は、
『ニンジン』や『牧草』と答えるのですが、それは捕食者の考えなんです。
馬は被食者なので、優先すべきは“安全”や“快適”なんですよ。
だから環境が整っていなければ、どんな餌であっても食べない。
馬と関わるには、人間本位ではなく、馬の気持ちになって考えて
コミュニケーションを深めるべきなのです」

インストラクターは、川島伶未さんを含む女性3名。馬たちと息を合わせて行うホースショーは、YouTubeでも配信されている。
ナチュラルホースマンシップに基づいたプログラムは、
初心者向けから1週間研修まで、ニーズに合わせて多彩に用意されている。
今回体験させてもらうのは、初心者向けの体験40分コース。
相手は、10歳のクォーターフォース種、マディソン君。
開口一番、インストラクターの川島伶未さんが教えてくれたのは、
「快適と不快。このふたつの感情を使い分けます」ということ。

マディソンに挨拶をしたあと、まずはお掃除。毛並みに合わせてブラッシングすることは、馬にとっては“快適”なのだ。
最初は馬のお掃除から。体の部位の説明を受けたあと、
胴体の毛をブラッシングしながら汚れを落とす。
作業を終えるたびに馬と向き合って、額を撫でながら反応を見る。
続いて「裏掘り」。足先を掴んで、蹄に詰まった土を落とすのだ。
ひとつの足が終わるとマディソンの表情を確認して、次の足に。
こうしてお掃除が済んだら、鞍を装着して、いざ馬場へ!

乗る前に、引き馬体験。人差し指を立てて左右に振ったら、マディソンは後ずさりする。目障りな指の動きは“不快”だ。
続いて行うのは、グランドワーク。
馬には乗らず、手綱を引きながら馬場を歩くことでコミュニケーションをとっていく。
「馬の目の前で指先を左右に動かすことは、不快。
手綱を緩めることは、快適。このふたつの動作で、後退と前進を促します」
左手で手綱を握り、後ろに馬を従えて、一定の距離を保ちながら歩いてみる。
近づきすぎたら指を振って後退させ、定位置に戻ったら手綱を緩める。
マディソン君、なんと思いどおりに動いてくれた。
動物と意志の疎通ができるなんて、なんだか感動する。

手綱と足の動きで意思を伝える。川島さんに誘導してもらいながらではあったものの、細い通路もなんとかクリア。
最後は乗馬体験。足でポンとお腹を叩いて発進、「ドォ~」と声を発すると停止。
こうした合図をいくつか教わりながら、マディソンの背中で揺られて馬場を周る。
広い空の下、十勝の風景を眺めつつ爽快な気分。
慣れてきたら、障害物を避けながら進んだり、
少しスピードを上げた速歩にチャレンジしたり。
もちろんその間も常に馬の反応を見ながら、
コミュニケーションがとれたときには首を撫でて感謝を伝える。
こうしてあっという間に40分が過ぎた。

「口をもぐもぐしたら、受け入れている証拠ですよ」と川島さん。口や耳の動きからも馬の状況が読み取れる。額をなでて、感謝の気持ちを伝えた。
大切なのは、相手の気持ちになって考えること。
「馬の反応は正直でシンプル。馬との関わり方を学んでいくと、
人間関係の問題解決につながることもあるんです」
という持田さんの言葉が印象的だった。
十勝の大地で馬と触れ合う体験には、アクティビティのおもしろさだけに留まらない、
たくさんの魅力が詰まっている。
information
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ヒロユキ モチダ ホースマンシップ
住所:北海道帯広市富士町西6線58-13
TEL:0155-63-7676
アクセス:帯広空港から車で約20分、帯広駅から車で約30分
営業時間:8:00~16:30(夏季)、8:00~16:00(冬季)
主なメニュー:体験コース(20分)3500円、40分コース7000円、4回コース(40分×4回)24000円
Web:ヒロユキ モチダ ホースマンシップ