日南市〈JR日南駅〉
「待つ駅」から「行く駅」へ、
新しいまちの居場所が誕生
PAAK DESIGN vol.5
宮崎県日南市で建築デザイン、宿泊や物販など、幅広い手法で地域に関わる、
〈PAAK DESIGN株式会社〉鬼束準三さんの連載です。
今回は、日南市の中心地にある〈JR日南駅〉のリノベーションがテーマです。
多様な世代が集う新たなまちの居場所となった日南駅が
どのようにしてできあがったのか、振り返っていきます。
日南駅の存在
日南駅は、日南市の中心市街地にある駅です。
隣には城下町として栄えた飫肥(おび)駅と、
マグロ漁で栄えた油津(あぶらつ)駅があり、
市の名前がついている駅にしては少し影の薄い駅でした。
また、近年のJR利用者数は年々減り、
10年前と比べて約半分という状況でもありました。
日南駅は、日南市役所や県の出張所、高校などの最寄りの駅で
一定の利用者があるので、当面は廃線になることはないまでも、
このまま利用が減っていけば将来どうなるかはわかりません。
2015年以降は、日南市がJRから駅業務を受託して運営する簡易委託駅となり、
建物所有権もつい最近JRから日南市へ譲渡されたばかり。
市の施設としてあらためて駅舎の活用を検討しなければならない状況になりました。
建物自体は築60年ほどで、いままで外壁の塗装や看板のつけ加えがあった程度。
今回が初めての大規模なリニューアルとなります。

正面玄関のビフォー。サッシと看板が古く、くたびれた印象のファサード。

切符売り場と待合スペースのビフォー。駅舎全体の約半分以上は活用されておらず、この壁の向こう側には使用されていないスペースが存在した。
学生を交えたワークショップの開催
駅舎のリニューアルにあたって始めたのは、駅の利用者や近隣の学生、
子育て世帯を対象とした駅の空間づくりのためのワークショップでした。
このプロジェクトは、日南市が事業主体として行い、
企画プロデュース、ワークショップデザインやデザイン監修について、
〈無印良品〉でおなじみの〈良品計画〉さん、
全国でさまざまな集客施設・商業施設を手がける〈乃村工藝社〉さんのサポートがあり、
日南市と協働で〈PAAK DESIGN〉も地元企業として設計に携わることになりました。
ワークショップは3回ほど行い、
「どんな駅なら利用してみたいか」
「駅に何を求めるか」など、学生とその親世代、
近くで働くビジネスマンにも参加してもらい、
それぞれの立場から意見を発表してもらいました。
小中高生からは「子どもだけでも気軽に行ける場所になってほしい」、
ビジネスマンからは「列車を待つ間に読書がしたい、
仕事が快適にできるようwi-fiのある場所が欲しい」、
そして親世代からは「子どもを送迎する際にちょっと立ち寄れる
ミニスーパーのような場所があると便利!」など、いろいろな意見が出てきました。
また、既存の駅舎はただ待つだけの場所になっており、
「JRを利用する以外で行きたいと思ったことはない」
「暗くて寒くてきれいじゃないから、長時間は待ちたくない」
「市の名前がついた駅なのに自慢できない」など、
あまりいいイメージを持っていないこともわかりました。

ワークショップの様子。既存の駅舎の使用していないスペースを借りて行った。

駅の近くにある子育て支援施設〈ことこと〉でのワークショップの様子。想定利用者であるママ層の意見に耳を傾ける。
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