連載
〈 この連載・企画は… 〉
海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。
writer profile
Hikari Mimura
三村ひかり
みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の中でもコアな場所、地元の結束力が強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HOMEMAKERS」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、築120年の農村民家(自宅)を改装したカフェを週2日営業中。
https://homemakers.jp/
今年も残すところ半月となりました。
一年中さまざまな野菜を育てている私たちは、
春夏秋冬、種をまき、苗を育て、草を抜き、土に草をすき込み、
野菜の手入れをし、収穫し、出荷する。
今年もこの作業を繰り返してきました。
農家というのは、本当に繰り返しの連続だなとよく思います。
例えば、種をまくという作業に関して、
「ひと粒の種をまく」が一番小さな単位だとすると、
300粒の種をまく。
時期をずらして1年に5回まく。
だとすると、300粒×5回で1500回繰り返すことになる。
収穫も同じで、例えばさつまいもの収穫だと、
さつまいものつるを切ってどかす、土を掘る、さつまいもを土の中から出す、
ひとつひとつ収穫コンテナに収納する、コンテナを倉庫に収納する、
これをひたすら繰り返して、ようやく収穫が完了する。
ひとつひとつの作業も繰り返しだし、もう少し大きな視点で見ても繰り返し。
春に生姜を植えて、夏に手入れして、秋に収穫する。
これを毎年繰り返す。私たちはまだ9年目だけど、
何代も続く農家というのはそれを何十年も繰り返してきている。
それって農家だけじゃなくて、自動車会社だって
ずっと繰り返し自動車を生産しているわけだし、
飲食店なら仕込みをしてそうじをしてお客さんを迎えるを日々繰り返してる。
その繰り返しのなかで、少しずつノウハウがたまっていき、改善していく。
その会社・店らしさができてくる。
信頼が生まれて、ファンができる。存続していく。
どんなに華やかそうな仕事でも、そのベースには
地味に何度も何度も繰り返しやってる何かがあるんじゃないかなと思います。
うちは毎週火曜日と金曜日に野菜を収穫して発送しているのですが、
出荷の日は朝から夕方までいつもの120%増くらいの勢いでバタバタと動いていて、
「ふぅ、今日も無事に出荷作業終わった〜」とほっとしたのもつかの間、
またすぐに次の出荷の日がやってきます。
それを1年間ほぼ休むことなく繰り返すことで、
新鮮な野菜を届けてくれる農家としてようやく知ってもらえて、
信頼してもらえて、野菜を継続して注文してもらえるんだと思っています。
繰り返し繰り返しというと、飽きちゃいそうですが、
繰り返すことで確実に成長していて、それを感じるときちょっとうれしくなるんですよね。
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先日、5年前の野菜の栽培、出荷記録を振り返る機会があったのですが、
この5年でできることがだいぶ増えたなぁと思いました。
いまの自分たちならもっとリアルな野菜の栽培計画を立てられるし、
タイミングを逃さずちゃんと野菜を育てられる。
HOMEMAKERSの〈シトラスジンジャーシロップ〉も今年で9年目になります。
自分たちで栽培し、収穫保管してある生姜を使って1年に何度か製造していて、
定番品としてカフェやレストランなどの飲食店でも常時使っていただいています。
もちろんHOMEMAKERSカフェでもシロップを使っていて、
ジンジャーエールやジンジャーミルクティなどは人気のドリンクメニューです。
3年前からは掘りあげたばかりのフレッシュな新生姜でつくる
ジンジャーシロップをつくっています。
ワインで言うと「ボジョレヌーボー」みたいなものですね。
「ショウドシマヌーボー」みたいな。わかりにくいな(笑)。
要は、その年に収穫した生姜でつくった最初のジンジャーシロップ。
掘りあげたばかりの生姜は爽やかでフルーツみたいな香りで、
その香りとやさしい辛さが特徴。
毎年友人にイラストを描いてもらって数量限定のスペシャルラベルにしています。
私たちにとっても無事に生姜を収穫できたお祝いのラベルです。
ふと、あと何回生姜を栽培してジンジャーシロップをつくれるのかと考えてみると、
30回くらいかなと。40年目のジンジャーシロップ! とか楽しみだなぁ。
HOMEMAKERSの今年のジンジャーシロップもどうぞよろしくお願いいたします。
ホットジンジャーで温かい冬時間を。
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