連載
posted:2021.11.22 from:香川県小豆郡土庄町 genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。
writer profile
Hikari Mimura
三村ひかり
みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の中でもコアな場所、地元の結束力が強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HOMEMAKERS」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、築120年の農村民家(自宅)を改装したカフェを週2日営業中。
https://homemakers.jp/
私たちが暮らす小豆島の肥土山(ひとやま)という地区は、
山に囲まれた里山の集落です。
島で暮らしているのに、海が1ミリも見えない。
それはちょっと寂しいのですが、でも里山としての魅力は抜群!
集落の中には小さな畑が点在していて、家々と畑と山が織りなす風景、
それが私が毎日眺めている美しい里山の風景です。
幸いなことに、まだ肥土山集落では多くの人たちが暮らしていて、
耕作放棄地や空き家など、荒れてしまった土地や家が
あちこちにあるという状態ではありません。
暮らしている人たちが自分の家や畑をきれいに維持していて、
地区の清掃活動などみんなで協力して行う活動も定期的に行われていて、
その結果として肥土山という集落はいまも美しいです。
でも、確実に島の人口は減少していて、ここから10年、20年経つにつれて、
維持できなくなる畑や家が増えてくるのは間違いないと思います。
現に私たちが小豆島に移住してきてからこれまでの9年の間にも、
住んでいた方が亡くなって空いてしまった家や、
管理されなくなって山に戻りつつある畑が、うちのまわりで少しずつ増えてきています。
いま、私たちが使わせていただいている農地は、集落の中に14か所あります。
どれも1000平米以下の小さな畑で、そのほどんどが、もともと田んぼや畑だった土地。
もう使わないからと、元の持ち主から借り受けて私たちが農業をしています。
農業をするというのは、里山の景観を守ることにつながると思っています。
野菜や米が育てられている畑、そこで作業する人々の様子、
それこそが美しい里山なんですよね。
11月のある日、そんな私たちの畑で春から育ててきた生姜の収穫祭をしました。
いつも畑仕事を手伝ってくれている仲間に集まってもらって、
朝からいっせいに収穫作業を始めました。
毎年11月後半には初霜がおりるのですが、生姜は寒さに弱く、
霜にあたると一気に傷んでしまいます。
さつまいもも同じで、10~11月はさつまいもの収穫、生姜の収穫と、収穫作業続き。
とにかく人の力がいるので、家族や友人たちに手伝ってもらって、
日曜日も休みなく働いています(泣)。
収穫はうれしいけれど、作業としてはかなり重労働。
スコップで土を掘り上げるというのは思っている以上に大変な作業で、
それを何度も何度も繰り返してひとつずつさつまいもや生姜を収穫していきます。
もう少し大きな規模の農業の場合は、土をごっそり掘り上げる機械を使ったりしますが、
うちは手掘り……。大変です。
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そうやって働いて、お昼のまかないごはんを盛り盛り食べる。
みんないつも本当に腹ペコで「いただきます」の勢いがすごいです。
収穫祭の日はいつもより人数が多かったので、
庭にテーブルを並べてごはんを食べました。
みんなで食べるそのお昼ごはんの光景はとても幸せで、
これもまた里山の風景のひとつだなぁと思いながら写真を撮ってました。
自分たちがその場所で、どんなふうに暮らし、どんなふうに働くか。
集落というのは、そこで暮らすひとりひとりの生活の集合体なので、
それぞれの暮らし方や働き方がその場所の風景、文化となっていく。
それが魅力的なら、そんな場所で暮らしてみたいなぁと、
また新たな人たちがここで暮らすようになったり。
いまの私たちには、たくさんの人たちを雇えるほどパワーがないけれど、
本当はもっとみんなで農業できたらいいなと思っています。
農業って、ただ野菜を生産するだけじゃなくて、
その土地の風景をつくり、守ってるんだと思うんですよね。
その風景が人を惹きつけ、時には観光地となってたくさんの人が訪れる場所になったり。
いつも声をかけてくれる近所のお母さんが言ってました。
「農業は大変だけどな、仕事があるのはいいことやで。
あんたたちの笑い声が聞こえてくるんや~。にぎやかでいいなぁといつも思うわ」
そんなふうに言ってもらえたら、うれしくなります。
今年ももう少しで生姜の収穫が終わりそうです。
年末まであと1か月ちょっと。
穏やかな農閑期(1年の中で農作業の少ない期間、
うちでは1~2月頃)までもう少し。がんばります~!
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