息子の通う岩見沢の山あいにある小さな小学校が今年度いっぱいで閉校となり、
近隣の学校への統廃合が決まった。
当たり前だと思っていたものが地域から消えること。
それは、学校という存在について、あらためて考える機会を与えてくれた。
閉校についての想いは以前の連載で書いた。
子どもたちにとって、現在より人数の多い学校に行くことは、
きっと友だちが増えて、新しい発見や楽しみにつながるはずだ。
一方、学校がなくなることは地域にとって、どんな影響があるのだろう?
にぎわいを失った校舎は、このままどうなっていくのだろうか?
閉校の話題でよく聞かれる「寂しくなるね」という声に、
わたしはモヤモヤとした想いを感じずにはいられなかった。
閉校は仕方のないことだとしても、残された校舎を、
いままで以上に人が集う場所にする方法はないのだろうか?
そんなことを考えていたとき〈北海道に自由な小学校をつくる会〉の存在を知った。
SNSで、この会の説明会が2018年5月に札幌で開催されるという告知を見つけ、
「学校ってどうやったらつくれるのだろう。校舎の活用方法のアイデアが見つかるかも」
と興味がわき、参加してみることにした。

自由な小学校をつくるための説明会。札幌にあるスミタスビルの会議室で開催された。
会場には30名ほどの参加者がつめかけていた。
どんな小学校をつくりたいのかという話をしてくれたのは、
この会の中心メンバーのひとりであり、
札幌にある養護学校の教員でもある細田孝哉さん。
会の母体は、1980年代から活動し、現在認定NPO法人となった
〈北海道自由が丘学園・ともに人間教育をすすめる会〉。
新しい教育提案とその実現を目指そうとする組織で、
これまでフリースクールの運営を続けており、
そこで培った経験を生かした自由な小学校をつくろうとしているという。

〈北海道に自由な小学校をつくる会〉の中心メンバー。左が細田孝哉さん。右はフリースクール〈月寒スクール〉を運営する北海道自由が丘学園の代表理事の吉野正敏さん。細田さんとともに学校づくりに奔走している。
モデルとなるのは、和歌山県の山あいにある〈きのくに子どもの村学園〉。
この学園には、宿題も試験も学年の壁もなく、先生とは呼ばれる大人もいないという
(大人は「○○さん」やニックネームで呼ばれている)。
1992年より私立小学校がスタートし、その後、中学校や国際高等専修学校も誕生。
現在では、福井や山梨などにも同じ方針をもとにつくられた学校がある。

〈きのくに子どもの村学園〉
基本方針となるのは、子どもが自ら決めること。
ひとりひとりの違いや興味を大事にすること。
体験や生活を通して学習すること。
特徴的な取り組みは「プロジェクト」という、小学校では週14時間とられている授業。
木工・園芸や劇団、農業、食の研究など、さまざまなプロジェクトがあり、
子どもたちは1年を通じて自分が何を学びたいのかを選択。
大人はサポート役となり、子どもたちの自主性を尊重してプロジェクトは進められる。
この学園をたびたび見学してきた細田さんは、
木工のプロジェクトについて話してくれた。
「敷地には20年ほど前に子どもたちがつくった
20メートルくらいの大きな木製すべり台があります。
設置する場所の傾斜や降りるスピード、安全な角度などを考えて
小学生が自分たちで設計したものです」

すべり台の制作の様子。異学年の子どもたちが協力して制作する。(写真提供:きのくに子どもの村学園)

完成したすべり台。20メートルほどの長さがある。(写真提供:きのくに子どもの村学園)
「かず」と「ことば」という基礎学習の時間も設けられ、
プロジェクトと連動した内容もあるそうだ。
「プロジェクトの内容からつくった“かず”のプリントに取り組むなかで、
ある子が三角形の各辺の2乗の数字とにらめっこしているうちに、
『これってひょっとして……』と
ピタゴラスの定理に気づいてしまったということもあったそうです」