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まるでナスカの地上絵!?
新旧の“ハイブリッド式”で挑む
お米100%自給法

糸島での自給自足の日々を綴った
―田舎暮らし参考書―
vol.015

posted:2018.11.6   from:福岡県糸島市  genre:暮らしと移住

〈 この連載・企画は… 〉  田舎へ移住を考えている人、すでに移住した人。
そんな方の、暮らしの参考やアイデアになるはずです。農業、狩猟、人とのつながり、四季のこと。
福岡県糸島で自給自足生活を営む〈いとしまシェアハウス〉の暮らしをお届けします。

writer profile

CHIHARU HATAKEYAMA

畠山千春

はたけやま・ちはる●新米猟師兼ライター。3.11をきっかけに「自分の暮らしを自分でつくる」活動をスタート。2011年より鳥を絞めて食べるワークショップを開催。2013年狩猟免許取得、狩猟・皮なめしを行う。現在は福岡県にて食べもの、エネルギー、仕事を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉を運営。2014年『わたし、解体はじめました―狩猟女子の暮らしづくり』(木楽舎)。第9回ロハスデザイン大賞2014ヒト部門大賞受賞。
ブログ:ちはるの森

こんにちは。「食べもの・お金・エネルギー」を自分たちでつくる
〈いとしまシェアハウス〉のちはるです。

我が家はお米の自給率100%。
10月は稲穂が黄金色に染まる、稲刈りの季節です!

といっても、稲刈りの季節は地域や米の品種によってさまざま。
最近では田植えをゴールデンウィークに行い、
夏に稲刈りするところも多いのだとか。
ゴールデンウィークや夏休みなら人も集まりそうですし、
マンパワーのことを考えると、ちょうどいいシーズンですね。

たわわに実る稲穂。

たわわに実る稲穂。

昔々、海や川のない地域では
梅雨時期の雨水を貯めて、その水で田植えをしていたそう。
我が家ではそれにならい、梅雨時期の6月から田植えをし、
10月に稲刈りをしています。

まだ田んぼが小さかった頃は、すべてを手植え、手刈りしていました。
さらには、収穫したお米を稲藁からはずすために足踏み脱穀機を使ったり、
風を起こして穀物を選別する“唐箕(とうみ)”を使ったり、
昔ながらの方法をできるだけ使うよう心がけていました。

稲刈りの風景1

しかし最近は高齢化が進み、耕作放棄地が増えたことで、
その空いた田んぼを貸していただけることに。
田んぼの面積は初期の頃の数倍に拡大しました。

その広さで、昔ながらの方法を続けていくのは
身体的にも精神的にも無理がある、と気がつきました。

すべてを手作業で、かつ楽しみながらできればベストです。
しかし、そのためにはたくさんの人手が必要ですし、
住人たちは田んぼ以外のことがほとんどできなくなってしまいます。
何よりも、田んぼ作業がしんどくなってしまう。

そこで、この暮らしを楽しく、長く続けていくために、
「味に大きく関わらない部分は、ありがたく文明の利器を使う」という
スタイルに転換しました。

竹を組んだ“はざ”でお米を干す。

竹を組んだ“はざ”でお米を干す。

例えば、

・根のつき方に大きな影響のある田植えは、すべて手作業で行う

・稲刈りは味に影響がないので、部分部分で機械を導入する

・脱穀・選別も、機械を使う(これ、手作業は本当に大変。ありがたい……!)

・お米がおいしくなるので、天日干しは行う

などなど。

稲刈りは、手刈りと機械刈りのハイブリッド型。
バインダーという機械を使うのですが、この機械のすばらしい点は、
刈った稲が束になって結ばれて出てくるというところ。

バインダーで稲を刈る。

バインダーで稲を刈る。

稲刈り体験者ならきっとわかってくれると思うのですが、
稲刈りで大変なことは、稲を刈ることではなく、
刈った稲を束ねてまとめるところです。

刈るのは、あっという間。
でも、束にして縛るのはその何倍も時間がかかります。
それを自動でできてしまうのだから、文明の利器ってすばらしい。

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稲刈り後にもひと仕事!

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稲刈り後の、ちょっとおもしろい工夫

稲刈りの風景2

ですが、田んぼ作業も、機械を取り入れているからといって簡単なわけではありません。

我が家では刈りとった稲を天日干しにするため、稲を干すための竹が大量に必要です。
その竹を手に入れるために、みんなで山に入り、
300本近い竹を山から運び出しました。

はざ用の竹を伐り出す

伐り出した竹は約300本!

その竹を組み立ててつくった“はざ”に、収穫した稲をかけていきます。

うちの集落は風が強く、はざの立て方にも工夫が必要です。
我が家の田んぼは集落の一番端にあるため、
いろんな方向から突風が吹き、初年度は何度もはざが倒れてしまいました。

稲刈りの風景3

そこで編み出したのが、
「三角形・四角形にして倒れにくくする方法」です。

この形なら、上手に風を逃してくれるし、
安定しているので、どこから風が吹いでも倒れにくい。
いとしまシェアハウスオリジナルの稲の干し方です。

この不思議なはざの形は、上から見ると
古代遺跡のようで気に入っています。

ドローン撮影した我が家の田んぼ。まるでナスカの地上絵のよう!?

ドローン撮影した我が家の田んぼ。まるでナスカの地上絵のよう!?

photo by コガネマルカズアキ

photo by コガネマルカズアキ

稲が十分乾燥するまでには、約1週間ほどかかります。
その間に雨が降れば、プラスで2日。
風が吹いてはざが倒れれば、もっとかかります。

お米をきちんと乾燥させておかないと、梅雨を越せずにカビてしまい、
1年分のお米を備蓄することができません。
雨や風、イノシシの侵入などで倒れることなく、
このまま無事乾燥してくれるといいのですが……。

と思っていたら、さっそく稲が倒れているとのメッセージが届いたので、
今からちょっと田んぼへ行ってきます。

無事の収穫、皆さんも祈っていてください~~!!
次回までには、新米のお知らせできたらいいなあ。

稲刈りの風景4

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今日のごはん

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今日のシェアハウスごはん

稲刈り合宿では、手づくりの藁納豆を出しました。
午前中に収穫した枝豆を使った枝豆ご飯や、旬の野菜を使ったサラダを
田んぼの隣でいただきます。

手づくりの藁納豆

旬の野菜を使ったサラダ

稲刈り合宿の合間にいただきます!

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