連載
posted:2018.11.20 from:福岡県糸島市 genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
田舎へ移住を考えている人、すでに移住した人。
そんな方の、暮らしの参考やアイデアになるはずです。農業、狩猟、人とのつながり、四季のこと。
福岡県糸島で自給自足生活を営む〈いとしまシェアハウス〉の暮らしをお届けします。
writer profile
CHIHARU HATAKEYAMA
畠山千春
はたけやま・ちはる●新米猟師兼ライター。3.11をきっかけに「自分の暮らしを自分でつくる」活動をスタート。2011年より鳥を絞めて食べるワークショップを開催。2013年狩猟免許取得、狩猟・皮なめしを行う。現在は福岡県にて食べもの、エネルギー、仕事を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉を運営。2014年『わたし、解体はじめました―狩猟女子の暮らしづくり』(木楽舎)。第9回ロハスデザイン大賞2014ヒト部門大賞受賞。
ブログ:ちはるの森
こんにちは! 「食べもの・お金・エネルギー」を自分たちでつくる
〈いとしまシェアハウス〉のちはるです。
田舎暮らしを始めて5年、
畑や田んぼ、地域の人との信頼関係の構築はできてきたものの、
まだ手がつけられていなかったところがあります。
それが、家の改修です。
改修は専門的な知識や道具が必要であり、
さらに改修費用も捻出しなければいけないため、
なかなか思うように進めることができずにいました。
田舎では格安で物件を手に入れることが可能ですが、
家が傷んでいて結局大規模な改修が必要になるケースが多くあります。
とはいえ、廃材を使用してイチから自分たちで進めようとすると、
果てしない時間がかかり、いつまでたってもゴールが見えない……
そんな状態の同志たち、多いんじゃないでしょうか。
我が家もコツコツとDIYでリノベーションしてきましたが、
どうしてもスピードが遅いのが課題でした。
どうやったら改修スキルを持った人たちが仲間になってくれるかな?
そんなことを考えていて思いついたのが、
「大工インレジデンス」というプロジェクトです。
改修技術を持った人は、我が家の滞在費&食費が無料!
いとしまシェアハウスの田舎暮らしを体験しながら、
新しいコミュニティの場を一緒につくっていこう、というプロジェクトです。
プロが持つ改修技術と、いとしまシェアハウスの暮らし体験の、
物々交換のようなイメージでしょうか。
空き部屋に限りがあることもあり
最初は1名だけ募集する予定だったのですが、
応募してきた3名と面接をしたら全員魅力的な人ばかり。
古民家の改修を効率よく進めるには複数で取り組んだほうがスムーズだろうし、
今回は思いきって3名の大工さんに住んでもらうことになったのです。
実はその時点で空き部屋はなかったのですが、
ないならつくろう! という大工ならではの発想で乗り切ることに(笑)。
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大工インレジデンス第1期メンバーは、
・リフォーム大工を5年経験したふみよくん(中央で口を尖らせている人)
・機械から電気まで扱える、コミュニケーション能力抜群のしんぺーくん(左から2番目)
・モバイルハウスを自作して全国を旅するあべゆかちゃん(右から3番目)
の3人。
彼らの力を借りて納屋を改修し、カフェスペースや宿泊エリアをつくり、
外から来た人が我が家の暮らしを楽しんでもらえるような場を目指します。
まずは物置になっていた納屋の中のモノを片づけ、
納屋の2階部分の床を剥ぎとります。
2階を吹き抜けにしてから、光が入ってだいぶ明るくなりました。
高圧洗浄機で洗浄すると、土埃で白っぽくなった木も
みるみるうちにピカピカになり、美しい木目が見えるようになりました。
立派な梁を見上げると、真っ暗で汚かった以前の納屋からは想像できないくらい別空間に。
11月は一般参加者を募ったDIY合宿も企画し、大工インレジデンスメンバー指導のもと、
シンクの作業台、バーカウンターもつくりました。
解体していくなかで、予想以上に壁や屋根が傷んでいたり腐っていたり、
改修する箇所があちこち見つかってきたので、
今の課題は、この改修の予算をどう組むのか、というところです。
(これを機にクラウドファンディングにも挑戦する予定!)
それから、大工インレジデンスでは、お金ではない価値の交換で物事を進めていくので、
丁寧なコミュニケーションを意識しなければいけません。
参加している大工さんの作業が「仕事」のようになってしまってはよくないし、
かといって、作業日が少なすぎるとお金を払って我が家に住んでくれている
シェアメイトに対して不誠実になってしまいます。
このバランスをとり合いながら、
みんなにとって気持ちのいい環境と関係性を構築していくのが大切になってきます。
……ということを、あれこれ考えていました。スタートする前までは。
しかし、蓋を開けてみれば
大工インレジデンスメンバーのよく働くこと!!
改修のみならず、保健所へ相談に行ってくれたり、
地域の人と交渉して廃材をGETしてきてくれたり、
人手の足りない日は一緒に田んぼ作業を手伝ってくれたりと、とにかく大活躍!
今までは、自分たちで手を動かさないと
1ミリたりとも進まないような状況だったのに、
田んぼから帰ってくるとウッドデッキが完成している……
驚異のスピードとプロの技術に感動する日々。
大工インレジデンスは、
・改修が進む
・シェアメイトもリノベーションの技術が身につく
・仲間が増える
と、予想以上にいい取り組みに育ってくれました。
これはひとえに、集まってくれたメンバーに恵まれたということもあるかと思います。
みんなとの暮らしが楽しすぎて、幸せすぎて、
この暮らしがいつか終わってしまうことが寂しくて。
「改修、ゆっくりでいいからね!」と伝えているのに
みんな働き者なので、どんどん改修が進んでいってしまいます。
うれしいやら、寂しいやら、複雑な気分。
このペースで進めていけば、納屋の改修も年内には何かしらのかたちになっているはず。
納屋の改修がひと段落したら、
大工インレジデンスのノウハウもどこかで共有していけたらと思っています。
改修で困っている田舎暮らしの人たちが、きっといるはず。
大工インレジデンスが、もっと広まっていきますように!
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ある日の朝活、“太極拳”。
そのあとは、釣りが大好きなシェアメイトが
早朝に釣ってきた魚でお刺身の朝ごはん。
贅沢な1日の始まりでした。
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