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もしもお金が野菜なら!?
〈ギブミーベジタブル〉で考える
お金とのちょうどいい関係

糸島での自給自足の日々を綴った
―田舎暮らし参考書―
vol.014

posted:2018.10.23  from:福岡県糸島市  genre:暮らしと移住

〈 この連載・企画は… 〉  田舎へ移住を考えている人、すでに移住した人。
そんな方の、暮らしの参考やアイデアになるはずです。農業、狩猟、人とのつながり、四季のこと。
福岡県糸島で自給自足生活を営む〈いとしまシェアハウス〉の暮らしをお届けします。

writer profile

CHIHARU HATAKEYAMA

畠山千春

はたけやま・ちはる●新米猟師兼ライター。3.11をきっかけに「自分の暮らしを自分でつくる」活動をスタート。2011年より鳥を絞めて食べるワークショップを開催。2013年狩猟免許取得、狩猟・皮なめしを行う。現在は福岡県にて食べもの、エネルギー、仕事を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉を運営。2014年『わたし、解体はじめました―狩猟女子の暮らしづくり』(木楽舎)。第9回ロハスデザイン大賞2014ヒト部門大賞受賞。
ブログ:ちはるの森

こんにちは。「食べもの・お金・エネルギー」を自分たちでつくる
〈いとしまシェアハウス〉のちはるです。

先日、いとしまシェアハウスは5周年を迎えました!
我が家では毎年、周年記念イベントとして
“野菜が入場料”になる、食と音楽のイベント〈ギブミーベジタブル〉を企画しています。

ギブミーベジタブル参加者の皆さんと。

これは、入場料・アーティストの出演料が“野菜”で支払われる、
自給自足型・即興料理と音楽のイベント。

イベント参加者が、入場料として野菜を中心とした食材を持参し、
その野菜を使って料理人が即興料理をふるまいます。
(持ってくるものは野菜だけでなく、調味料や酒、お米でもOK!)
そしてイベント後は、残った野菜を出演料として関係者で分け合うのです。

ここでは野菜がお金の代わり。
“野菜”というコミュニケーションツールを通じて
「お金の役割とモノの価値」について考え、
交換することの楽しさを感じてもらおう、という取り組みなのです。

(調味料、調理器具などの実費は、
有料ドリンクのキャッシュオン&ドネーションでまかなっています)

ギブミーベジタブルの様子

率直に言って、お金を介さないやりとりはとても楽しい!

イベントに集まった食べものは
自分の畑で初めて収穫できた野菜だったり、
こだわり素材の自家製調味料だったり、
小さな女の子が頑張ってつくった手づくりおやつだったり、
あたたかく、やさしいストーリーがあるものばかり。

集まった野菜には、この野菜がどこから来たか、誰がつくったのかなどのメモ書きが添えられています。

集まった野菜には、この野菜がどこから来たか、誰がつくったのかなどのメモ書きが添えられています。

気持ちのこもった食材たちが料理人たちの手で
ご馳走に変化していき、それをみんなでおいしいねと食べる。
これ以上の幸せってある? と思うくらい、ハッピーな場なのです。

「買う」「売る」じゃないからこそ広がる多様性やおもしろさ、
損得なしにこの場を楽しい場所にしたいという気持ちのいい循環が
そこにはありました。

持参された野菜でつくられた料理の数々。

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お金は「ゴール」ではなく「手段」のひとつ

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お金について、考えてみる

とはいえ、ギブミーベジタブルを通じて感じたことは
意外にも「お金って、便利だな」ということでした。

イベントを企画するスタッフは全員ボランティア。
仕事のようにお給料で区切れないからこそ
「楽しい」という気持ちがベースにないとうまく回りません。

スタッフと乾杯!

スタッフと乾杯!

また、謝礼の野菜は腐敗する前に食べきる必要があるので、
お金と違い、人によって価値の感じ方に“揺れ”があります。

例えば、都会の人にとってはフキは珍しい山菜ですが、
食べるために下処理をしなければいけないし、
庭にたくさん生えているので、我が家ではあまり価値が高くありません。

こう考えると、お金は腐敗することを心配せず手元に置いておけるし、
みんなが同じように価値を感じられる、
いつでも自分の必要なものと交換できるツールとしてとても便利! 
ということに気がつきました。

まだ物々交換が主流であった大昔に、
なんでお金が生まれたのかな? という背景が、少しだけわかったような気がします。

アーティストや料理人への報酬は、お米、お酒、塩などの保存がきくものが喜ばれました。

アーティストや料理人への報酬は、お米、お酒、塩などの保存がきくものが喜ばれました。

ギブミーベジタブルでもそうですが、物々交換のなかには、
実際の金額で比較してみると価値のバランスが合わないものもあります。

けれど、大事なのはそのものの「価格」だけでなく、
お互いの関係性や応援したい、という気持ち。
その人がどんな考えを持っていて、どんなことをしているのか。
その関係性もぐるっとまとめて、初めて交換ができるのです。

そう考えると、物々交換の場合、初対面の人とのするのはちょっと難しい。

ギブミーベジタブルの参加者1。

そこで登場するのが「お金」です。

お金のすごいところは、あらかじめ価値が決まっているため、
物々交換で必要なコミュニケーションをすべてすっ飛ばして、
いきなりモノと交換できるところなのです。
スピードがはやく、なにより効率的。
世の中にこれだけ浸透している理由もよくわかります。

ただ、その便利さゆえにお金に溺れてしまう人や、
お金を得ることがゴールになってしまっている人たちが増えているような気もします。

ギブミーベジタブルの参加2。

お金は、暮らしていくためには欠かせない大切なもの。
だけど、あくまでも「手段」のひとつであり、「ゴール」ではありません。
お金の役割をもう一度見つめ直し、お金とのちょうどいい関係づくりを
日々の暮らしのなかでも、楽しくやっていきたいなあと思っています。

今回のギブミーベジタブルでも、そんなことをたくさん考えました。

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今日のごはん

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今日のシェアハウスごはん

イベント中にみんなでつくったイノシシ肉の餃子。
誰かと一緒に餃子を包むと、餃子の包み方に個性があってとっても楽しい。
もちろん、味もおいしい!

手づくりイノシシ肉の餃子

イノシシ餃子をつくる様子。

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