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駅のお隣さんの新しい家族、
将来の名物駅長候補(?)現る

南阿蘇ひなた文庫だより
vol.008

posted:2018.12.21  from:熊本県  genre:暮らしと移住

〈 この連載・企画は… 〉  南阿蘇鉄道にある、日本一長い駅名の駅「南阿蘇水の生まれる里 白水高原」駅。
その駅舎に、週末だけ小さな古本屋が出現します。
四季の移ろいや訪れる人たちのこと、日常の風景を〈ひなた文庫〉から。

writer profile

Emi Nakao

中尾恵美

なかお・えみ●1989年、岡山県勝田郡生まれ。広島市立大学国際学部卒業。出版社の広告営業、書店員を経て2015年から〈ひなた文庫〉店主。

ごはん処〈きしゃぽっぽ〉に現れた、新しい仲間

11月のはじめ、古本屋〈ひなた文庫〉の営業のため
いつもの南阿蘇鉄道の駅舎に到着すると、
駅の階段脇に植えてある紅葉の木に2匹のヤギがつながれていました。

どこか近くの方が散歩をさせにきたのか? 
いままで近所でヤギを見たことはなかったけれど……と不思議に思って近づいてみると、
「さっき連れてきたのよー。かわいいでしょう」
駅の隣のごはん処〈きしゃぽっぽ〉の奥さんが声をかけてきてくれました。

「渡邊さんのところで飼い始めたんですか!?」と驚いて聞いてみると、
ご主人もお店から出てきてふたりでうんうんと頷くではありませんか。

南阿蘇水の生まれる里白水高原駅の隣にある〈きしゃぽっぽ〉。

南阿蘇水の生まれる里白水高原駅の隣にある〈きしゃぽっぽ〉。

ふたりの話を聞いてみると、田んぼや畦道の草も食べてくれるし、
駅に来たお客さんが喜んでくれたらいいなと思って、
ずっと前からお客さんなどにヤギを飼いたいと話していたのだとか。
するとちょうど隣町でヤギを飼っている方が
引っ越しをしてもう飼えなくなるからと数日前に連絡があり、
その日譲ってもらったのだそうです。

「ずっとヤギは飼いたいと周りに言ってはいたんだけど、
こんなに急には来るとは思わなかったよ」とおふたりも少し困惑気味。
ヤギたちもいきなり知らない場所に連れて来られ少し不安そうです。

駅の隣のごはん処きしゃぽっぽは、
私たちが南阿蘇鉄道の「南阿蘇水の生まれる里白水高原駅」で営業を始めた
2015年5月、偶然同じ時期に営業を始めたごはん屋さんです。
駅のすぐ横に店舗と住居があり、
ご主人の渡邊重行さんと奥さんのふたりで営まれています。

私たちが開業準備を進めるなかで、隣の店舗もふたりで開業準備をされていて、
自然と仲良くなりました。

渡邊さんご夫婦。

渡邊さんご夫婦。

ご主人は東京の飲食店で和食の料理人として20年勤務されたあと、
熊本市内のホテルで料理人として20年働かれて、
地元の南阿蘇に戻ってお店を始められました。
お米は店舗のすぐ近くの田んぼでつくられた自家栽培のもの、
野菜もできる限りご自身でつくられたものを提供されています。

お昼はわざわざ遠方からもお客さんが食べに来られる定食屋さん、
夜は地元の方が集まる居酒屋さんになります。
私もひなた文庫の営業日には定食を頼んで、
特別に店内ではなく駅で店番をしながらいただくことも。

きしゃぽっぽのボリューム満点ホルモン煮込み定食。

きしゃぽっぽのボリューム満点ホルモン煮込み定食。

私たちが古本屋を営業しない平日などは駅を見守ってくれ、
駅でのイベントの際も、準備や炊き出しなど一緒になって手伝ってくださる
心強いおふたりです。

夏のイベントで流しそうめんの準備を手伝ってくれる渡邊さん。

夏のイベントで流しそうめんの準備を手伝ってくれる渡邊さん。

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『あらしのよるに』みたい?

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駅と家の間のスペースにヤギをつないでおきたいんだけど、と渡邊さんに相談され、
駅の敷地になるので南阿蘇役場にも一応相談したほうがいいかと思いますが、
今日はとりあえずここにつないでおきましょうということになりました。

即席の柵として使ったのは、8月に『本屋ミッドナイト』というイベントで
野外映画上映の際に使った木製のパレット。
たくさんあって今後の使い道をどうしようかと思っていたので
いい使い道が見つかりました。

イベントで使った木製のパレットが意外な活躍。

イベントで使った木製のパレットが意外な活躍。

ヤギたちは黒い少し大きなほうがお母さんヤギの「もみじ」、
白くてまだ見た目にも幼さを感じるのが子どもの「ゆず」です。

小さい頃に親と一緒に行った牧場でヤギを触ろうとしたら
ぐいぐい近寄ってきて怖い思いをしたことがあったので、
それ以来ヤギにはあまり近づいたことはなかったのですが、
このヤギたちは2匹で寄り添い合って座っていて、何ともおとなしそう。

お母さんヤギのもみじ。

お母さんヤギのもみじ。

恐る恐る近くの草をながーく持ってゆずの鼻先に近づけてみると、
鼻でヒクヒク臭いを嗅いだあと食べてくれました。
お母さんヤギのもみじにも同じようにやってみると、
草を引っ張る力は強くて少しおっかないものの食べてくれました。
柵の中に入れたあと、上から体を触ってみると
犬より少し硬い毛でゴツゴツとした骨が毛の下に感じられます。

こちらが子どものゆず。

こちらが子どものゆず。

前の週の営業日に、隣町からわざわざ本を寄付しに来てくださったお客さんがいて、
ちょうどその本の中に『あらしのよるに』シリーズの
絵本が入っていたのを思い出しました。

『あらしのよるに』は白いヤギのメイとオオカミのガブが、
嵐の夜に避難した同じ山小屋の暗闇の中、
お互いの正体を知らないまま意気投合したことから始まるお話です。
本をいただいたときに久しぶりに読み返していたので、
もみじとゆずたちにも親近感が湧き、こんな偶然もあるんだなぁと思ったりしました。

そして後日、役場の方に確認を取ると
「そんな狭い場所でいいの?」と、
こちらが拍子抜けするようなうれしい回答がありました。

渡邊さんがヤギを飼い始めて1か月あまり。
ヤギたちも新しい家に慣れたようで近づくと寄ってくるようになりました。
近所の方たちにも人気で、いまでは軽トラいっぱいに
ヤギたちの大好物のさつまいもの蔓を乗せて、渡邊さんのところへ届けに来る方も。
私も営業日には野菜の切れ端を持っていきます。

線路を望むのんびりとした景色の中にかわいらしい2匹が加わりました。
ゆくゆくはこの駅の駅長さんになってくれるかもしれません。

きしゃぽっぽ店内からの眺め。

きしゃぽっぽ店内からの眺め。

information

map

きしゃぽっぽ

住所:熊本県阿蘇郡南阿蘇村大字中松1219-2

TEL:0967-67-3232

営業時間:11:30~14:00、17:00~21:30

定休日:火曜

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