脱穀から新米を食べるまで。
初めての米づくりで感じたこと、
これからも続けていきたい米づくり。

初めてつくったお米を口にするまで

伊豆下田に移住して、初めてのお米づくりに挑戦した津留崎家。
稲刈り、天日干しを経て、ついに最後の作業、
脱穀と籾摺りをしてお米になります。
自分たちの食べるお米を自分たちでつくりたい、
そんな思いからスタートした米づくりは、
思いがけない経験や感情をもたらしてくれたようです。

だんだん“お米”になっていく!

月から始まったわが家の米づくりですが、
ようやく「コクり」ました。
コクるというのは、地元の方に教えていただいた言葉で
脱穀(だっこく)するの意味。

前回、夫が稲刈りの様子を書かせていただきました。
天日干しにした稲は、その後、脱穀と籾摺り(もみすり)を経て
いよいよお米となります。
そうしてわが家の食卓にのぼるまでを、今回お伝えします。

稲刈り当日には来られなかった夫のお母さんと翌日一緒に落ち穂拾いを

稲刈り当日には来られなかった夫のお母さん。翌日一緒に落ち穂拾いをしました。なんだかとっても楽しげです。

稲刈りのあと、2週間ほど稲架(はさ)にかけられ天日干しにした稲。
強風にあおられて何度か倒れたものの、その都度立て直しながら
無事に脱穀の日を迎えることができました。
田植えと稲刈りには来られなかった
夫のお母さん(今年下田に移住してきました)も、今回ようやく初参加。
そして、田植えからずっと一緒に作業をしている友人家族も来てくれました。

田植えからずっと一緒に作業をしている友人家族も来てくれました

田んぼへ到着すると、〈南伊豆米店〉の中村大軌さん
(私たちの米づくりをサポートしてくれています)が
すでに重機とともにスタンバイしていました。

初めて目にするコンバイン(脱穀機と稲刈り機が合わさった機械)、
何がどう動いてどうなるのか、皆目見当がつきません。
大軌さんにレクチャーを受け、いよいよ脱穀スタートです。

バケツリレーの要領でコンバインに稲を入れていく

バケツリレーの要領で進行していきます。稲架から稲を外して隣の人に渡し、渡された人はコンバインに入れていくという流れ。

コンバインでの脱穀の様子

脱穀というのは、刈り取った稲から籾(もみ)を外すことです。
籾というのは、籾殻に包まれている稲の実(いわゆるお米)のこと。
脱穀機に稲を入れると、穂先の籾は藁(わら)から削ぎ落とされ
機械の下部にたまり、藁は後部から排出されるという仕組みです。

田植えや稲刈りはすべて自分たちの手でやってきました。
けれど、この脱穀を手作業でやろうとすると、
時間と人手が想像以上にかかるということで、今回は機械の力を借りました。

脱穀中

遠くでみんなの作業を見守っていたお母さん

遠くでみんなの作業を見守っていたお母さん。

機械を使うことによって、田植えや稲刈りのときとは
まったく違うスピード感。
あれよあれよという間に干されていた稲が形を変えていきます。
いよいよお米が食べられるんだ! といううれしさもありつつ、
稲架かけのあの美しい風景がなくなってしまうのか……という
寂しさもこみ上げます。

稲架(はさ)にかけられ天日干しにした稲

[ff_assignvar name="nexttext" value="ついに最後の作業へ…!"]
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お米をつくったんだ、という実感

あと残り半分かな、というそのとき。
田んぼのかたわらで見ていたお母さんが、
いつの間にか電柵を乗り越えて手伝い始めている。
さっきまで土手で遊んでいた娘とその友だちも、一生懸命に稲を運んでいる。
それぞれが自分の役割に没頭していき、
ひとつの目標に向かって一体となっていました。

その光景が何だかすごく温かくて美しくて、
とてつもなく感動してしまったのです。

手伝い始めたお母さん

一生懸命に稲を運ぶお母さん

「田んぼってさ、お年寄りでも子どもでもできる仕事があるんだよね。みんなが楽しめるんだよ」と大軌さん。

子どもたちも脱穀のお手伝い

コンバインに稲を投入

娘の顔のまわりは籾殻だらけ

夫とそのお母さん。コンバインの前で作業中

お母さんは米どころ新潟県の生まれですが、田んぼ作業をするのはこれが初めてなのだそう。「こんな歳でこんなことすると思わなかった。下田に来てよかったな~」とのこと。

ついに最後の稲を機械へと投入! という瞬間、
友人がすっと娘を抱きかかえてその大役を娘に授けてくれました。
こういうのがまたじ~んときちゃうんだよね……。
ということで、5月の田植えから始まった作業は
これですべて終了となります。

最後の稲を機械へと投入

脱穀にかかった時間は2時間程度。
やりきった! という気持ちをみんなで味わっていると、
突如「ザーッ!」という音が。
コンバインに溜まった籾がパイプを通ってトラックに積まれていく音です。

パイプから米粒が落ちていくのを見た瞬間、
みんなから「ヒャー!」という声が上がります。
初めて見る光景への驚きと、そして「米だ~!」という歓喜の声です。

稲から外されてひと粒になったその姿を見たとき、
実感として胸に落ちました。「私たちお米をつくったんだ」と。

コンバインに溜まった籾がパイプを通ってトラックに積まれていく

籾が滝のよう

パイプから落ちてきた大量の籾

お米をガサッと手にしてみる

[ff_assignvar name="nexttext" value="初めてのお米がいよいよ食卓に!"]
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お米でこんな感情がわくなんて

脱穀を終えた翌日。
籾の乾燥具合もちょうどよいということで、
大軌さんの作業場で籾摺りと精米をしてもらいました。
籾摺りというのは籾殻を外す工程のこと。
籾殻を外したものがいわゆる玄米で、それを精米すると白米となります。

お母さんも一緒に籾摺り見学

お母さんも一緒に見学。すべてが初めての体験、みんな前のめりです。

籾殻を脱ぎ捨てた玄米

籾殻を脱ぎ捨てた玄米。お米って種子なんですよね、ってことをあらためて感じます。美しいな~。

籾を脱ぎ去った玄米はつやつやときらめいて見え、
どこか女性的な艶やかさすら感じさせます。

「ほら触ってみて、すっごくいいお米だよ、ね!」

と大軌さんも若干興奮気味。
私も触ってみると少しひんやりとした滑らかな柔肌。

「だいちゃん、いいね、なんか、すごくいいね」

なんてやり取りをしながら、一部のお米を籾摺りして玄米へ
(すぐに食べない分は、籾殻のまま保存します)。
そして、玄米の一部を精米して白米にしてもらいました。

これでわが家にようやく連れて帰れるんだ。
これは、出産後に娘を自宅に連れて帰ったときのような晴れやかな気持ち。
お米相手にこんな感情がわくなんて、
米づくりを経験するまで知りませんでした。

籾摺り作業を覗き込む娘とお母さん

お米まだかな~と覗き込むふたり。

娘は率先してお手伝い

娘は率先してお手伝いしてくれます。自分が食べるお米、という意識もあるのかな。

無事袋詰めされたお米

その晩、下田に遊びにきていた姉家族と、
とれたて削りたての新米をいただきました。
こんなに丁寧にお米を研いだのも、
こんなにお米の匂いをくんくん嗅いだのも初めて。
そうして炊きあがったご飯、口に入れると甘い香りが広がります。

おいしいかどうかってことよりも、
「よくここまで無事に育ったくれたね」という気持ちが先にわいてくる。
そして、おいしい。

炊き上がった我が家のお米

愛おしそうにお米を頬張る夫

自分たちの食べる米を自分たちでつくってみたい、
そう考えて始めた米づくりでした。
実際にやってみたら、思ってもいなかった感情がわいてきたり、
想像もしていなかったような人とのつながりを経験しました。

「来年もやるの?」とよく聞かれますが、もちろんやります。
もう1年、もう2年、いつまで続けていけるかわかりません。
けれど、こうして家族や仲間と一緒に
できるだけこの米づくりを続けていけたらいいな。

娘が描いた「新米の集い」の案内

週末、田んぼを手伝ってくれた仲間たちと収穫を祝いました。
来年の米づくりもまた、楽しみです。

大人と子ども総勢21人が「新米の集い」に集合

大人と子ども総勢21人。みんなの手でつくったお米をみんなで一緒に味わう。格別な時間でした。

出席者が持ち寄ってくれたおかず

「ごはんのおとも」というお題で、それぞれが持ち寄ってくれたおかず。海産物や生卵、肉そぼろなどなど。わが家は田んぼのわらで藁苞納豆(わらづとなっとう)をつくってみました(写真左の藁)。

炊きたてのご飯の上に生わさびと鰹節をたっぷりと

伊豆名産の生わさびと鰹節を持参してくれた友人も。これを炊きたてのご飯にたっぷりとのせ、醤油をちょろり。これが何ともおいしかった!

脱穀を終えた田んぼで家族4人で記念撮影

脱穀を終えた田んぼで記念撮影。稲架掛けされていた稲は姿を消しました。来年もまたがんばろうね。

text & photograph

津留崎徹花 Tetsuka Tsurusaki
つるさき・てつか●フォトグラファー。東京生まれ。料理・人物写真を中心に活動。移住先を探した末、伊豆下田で家族3人で暮らし始める。自身のコロカルでの連載『美味しいアルバム』では執筆も担当。

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