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移住先探しの旅から2年。
紆余曲折の“無計画”移住を振り返る|Page 4

暮らしを考える旅 わが家の移住について
vol.050

Page 4

実際に暮らしてみてわかったこと

「なぜ移住先を下田にしたの?」とよく聞かれます。
正直なところ、紆余曲折があって
たまたま下田にたどり着いたとしか言えません。
移住を決めたときには、この条件に当てはまるからという
はっきりとした理由もありませんでした。
三重でのこともあったので、ひとまず住んでみよう、
それから考えようという状況でした。

ところが連載をさかのぼって読んでみると、
夫が以前挙げていた移住先の条件がすべて満たされているのです。
つまり、目標として掲げていた条件といまの暮らしがぴったり合っている。

1 自給的生活のできる土地

いま借りている家には畑があるので、野菜を少しずつ育てています。
そして、今年初めて米づくりをしました。
これはわが家にとって大きな一歩です。

初めての米づくり

2 井戸水・沢の水が飲める、または日常的に汲みに行ける距離に湧水がある

夫の職場の近くに湧水が汲める場所があり、この水がなんともおいしい。
夫がタンクに汲んできてくれる水を、調理や飲料水として利用しています。

3 東京へのアクセスのよさ(車で6時間以内くらいを目安)

下田から東京へは電車で3時間弱、車だと3時間半です。
これくらいの距離ならば、実家に帰省するのも、
東京の仕事にも気軽に出かけられます。

4 小学校・中学校が近くにあり、徒歩圏内に駅やバス停がある

自宅から娘の小学校まで徒歩15分、駅までは徒歩25分、
近くのバス停までは徒歩2分という便利な立地です。

5 温暖な気候

東京と比べてもおよそ3~5度気温が高い温暖な気候。
雪はまず降らないですし、12月になっても蚊が飛んでいるほどです。

6 なるべくお金をかけずに生活できる物件価格・賃料

わが家は賃貸の一軒家ですが、庭もあり畑と駐車場もついています。
売買物件も賃貸物件も、東京と比べると圧倒的に安いです。

米づくりはいつか必ずやりたいと考えていました。
けれど、移住者が田んぼを借りるのはなかなか難しいと聞いていたので、
しばらく先になるだろうと覚悟していました。
けれど、ある方との出会いがきっかけで移住してすぐに実現したのです。

米づくりをサポートしてくれた南伊豆米店の方と、下田に移住してきた義母

米づくりをサポートしてくれた南伊豆米店の方と、下田に移住してきた義母。田植え後の田んぼにて。(2018年夏)

湧水に関しても、私は正直あきらめていました。
私たちが住み始めたのは住宅街なのだから、
ここはもう水道水に頼るしかないと。
けれどそれも夫が探してきてくれたのです。
家から近い距離で汲める場所、しかもすごくおいしい湧水を。

下田の湧き水

無計画なのか、ある意味計画的だったともいまでは思うのですが、
夫は仕事を決めずに移住しました。
その土地で自分に合った仕事を見つけたいという考えからです。

1年半たったいまどうなってるかといえば、
やりがいのある仕事に恵まれています。
都会では得ることのできなかった、生きる力を日々身につけているようです。
就職先がもし先に決まっていたら、
こうした経験もできなかったのだと思います。

獣害対策の電柵を設置する作業

夫の職場〈高橋養蜂〉にて。獣害対策の電柵を設置する作業。(vol.21vol.28参照)

無計画だったわが家の移住は、
遠回りをしながら下田という土地にたどり着きました。
実は下田に対して観光地というイメージが強かったので、
自分たちが思うような暮らしが果たしてできるのか? 
という疑問をしばらく抱いていました。

けれど、実際に暮らしてみたら
そのイメージとはまったく違う景色が見え始め、
自分たちが思い描いた暮らしに少しずつ近づいています。

この連載が100回目を迎えるのは2年後。
そのとき私たちにはどんな景色が見えているのだろうか。

田植え