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これから始まる新しい生活に期待を膨らませていた私と夫。
けれど娘にとってこの移住は想像以上に負担が大きいものでした。
生まれ育った東京の家を離れること、
同じ屋根の下で育ってきたいとこたちと離れること、
しかも移住先が山奥というあまりにも急な環境の変化に馴染めませんでした。
娘はストレートにそれを表現しましたが、私たちも内心では
こんな山奥でやっていけるのかという不安な気持ちがありました。
いま考えてみると、そうした私たちの不安を
娘が汲み取ったのかもしれません。
そうしてあっという間に東京に出戻りました。
正直あのときが一番戸惑いました。
三重でお世話になった方々に申し訳ないという気持ち、
移住しようと息巻いていたのにこの先どうすればいいのか。
頭がぐるぐるして先のことも考えられない。
そして体力的にも精神的にも参ってしまった。
けれど、あの経験があってよかったといまは思えます。
自分たちができる範囲、自分たちに向いている暮らし方を
知ることができたのです。
東京に戻った後、このまま移住を断念するかどうか
毎日夫婦で話し合いました。そうして出した結論は、
東京に週末戻れるくらいの距離でもう一度試してみよう。
娘が慣れるまで、毎週末東京に連れて帰るという方法でした。
そうして再び移住先を探し、下田で暮らし始めたのが昨年の4月です。
娘の様子次第では移住そのものを断念して東京で暮らそう、
そう決めていました。
けれど新しい友だちに恵まれたこと、
大好きな海でたくさん遊べること、
おばあちゃんが下田に移住してきてくれたこと。
いろんなことが重なり合って、
娘は次第に新しい暮らしに馴染んでいきました。
娘は小学校に入学し、近所の友だちと毎日のように遊んでいます。
そして「早く夏にならないかな~、海で毎日遊べるから!」と
下田のこの環境をとても気に入っているようです。