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移住先で良好な関係を築くには?
〈いとしまシェアハウス〉式
地域コミュニティのつくり方

糸島での自給自足の日々を綴った
―田舎暮らし参考書―
vol.012

posted:2018.9.25   from:福岡県糸島市  genre:暮らしと移住

〈 この連載・企画は… 〉  田舎へ移住を考えている人、すでに移住した人。
そんな方の、暮らしの参考やアイデアになるはずです。農業、狩猟、人とのつながり、四季のこと。
福岡県糸島で自給自足生活を営む〈いとしまシェアハウス〉の暮らしをお届けします。

writer profile

CHIHARU HATAKEYAMA

畠山千春

はたけやま・ちはる●新米猟師兼ライター。3.11をきっかけに「自分の暮らしを自分でつくる」活動をスタート。2011年より鳥を絞めて食べるワークショップを開催。2013年狩猟免許取得、狩猟・皮なめしを行う。現在は福岡県にて食べもの、エネルギー、仕事を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉を運営。2014年『わたし、解体はじめました―狩猟女子の暮らしづくり』(木楽舎)。第9回ロハスデザイン大賞2014ヒト部門大賞受賞。
ブログ:ちはるの森

こんにちは。「食べもの・お金・エネルギー」をつくる
〈いとしまシェアハウス〉のちはるです。

最近、田舎に移住したいという人からよく聞かれるのが、
「この場所でシェアハウスを始めるとき、集落の人たちはどんな反応だった?」
ということ。

築80年の我が家がある集落は全部で18世帯。
苗字は4つしかないため、みんな下の名前で呼びあうような小さなコミュニティです。
そんななか、得体の知れない若者たちが
数人で集落の家に住むとなれば、戸惑うに違いありません。

集落の盆踊り。

集落の盆踊り。

引っ越し当時、20代だった私と夫が
この場所でシェアハウスを立ち上げられたのは、
ご近所さんとのコミュニケーションの積み重ねがあったからでした。

この家でシェアハウスをすると決めたとき、大家さんは
「この地域に住むなら、集落の一員になる気持ちでいないといけないよ」と
アドバイスしてくださり、引っ越す前に
地域行事で挨拶する機会をつくってくれました。

短期住人と合宿メンバーで納豆づくり。

短期住人と合宿メンバーで納豆づくり。

挨拶のときは、平均年齢65歳のこの集落で
結婚していない若い男女が複数人で同じ家に住む、となったら
怪しい団体なんじゃないかと疑われるのでは、という不安もありました。

けれど、集落の人の反応は予想外のものでした。

ちょうどその時期、シェアハウスをテーマにしたドラマや、
『テラスハウス』というバラエティー番組が流行っていたこともあり、
ご近所さんたちはすでにシェアハウスという概念を知っていたのです。
あらためて、テレビの影響力を思い知りました。

「ああ! あの同じ家で恋愛するやつやろう。賑やかになるね」

これには笑ってしまいましたが、
実際に我が家で出会ったカップルが結婚して、
シェアハウスベイビーまで誕生しているわけですから、
あながち間違いではないとは思っています。

お盆は元シェアメイトたちもみんな帰ってきます。

お盆は元シェアメイトたちもみんな帰ってきます。

引っ越してきてからは
すぐにシェアメイト全員で集落の18軒ある家をすべて回って挨拶し、
集落の行事はいつでも参加できるよう心がけてきました。
とくに集落の行事は、信頼関係を構築するための大事なコミュニケーションの場です。
行事にどうしても私が出席できないとき、
シェアメイトの誰かが出席してくれるのでとても助かりました!

その積み重ねもあり、今ではとてもいい信頼関係を築けていると思っています。

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糸島の「関係人口」を増やす理由とは?

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外部の人とのつながりをつくる

短期住人さんと、畑のお手入れ。

短期住人さんと、畑のお手入れ。

この暮らしを続けていくためには、
地域以外の人とのコミュニケーションも大切です。

今、私たちの集落に空き家はありません。
けれど若者の流出は止まらず、平均年齢も上がり、
集落の人数は減っていくばかり。
このままでは田んぼも地域のお祭りも
続けていくことが難しくなってしまいます。

そこで最近は、移住とまではいかなくとも、
この場所に通ってくれる人、好きになってくれる人を増やそうと、
暮らしを体験できるイベントを企画したり、
棚田のオーナー制度をスタートさせ
まちから棚田に通ってもらう人を増やしたり、
外部の人たちが気軽に参加できるさまざまな取り組みを行っています。

青々とした糸島の棚田にて。

棚田オーナーのメンバーが地域のお祭りに来てくれました。

棚田オーナーのメンバーが地域のお祭りに来てくれました。

移住者でもなく、観光でもなく、この地域に多様に関わる人たち、
いわゆる「関係人口」を増やすのが狙いです。

移住やUターンはいつかやってみたいけれど、
いきなりその世界へとびこむにはハードルが高い。
そういった人たちの地域への入り口になりつつ、
ゆくゆくは、ここで空き家が出始めたときに
ここに移住を考える人が出てきてくれたらいいな、
そんな気持ちでコミュニティづくりをしています。

短期住人をきっかけに、我が家の住人になるケースも。

短期住人をきっかけに、我が家の住人になるケースも。

それからもうひとつ、最近取り組み始めたのが「短期住人」という制度です。

今まではシェアハウスに数か月~年単位で住んでくれる人を
メインに受け入れをしていたのですが、
長期の人ばかりだと家が“安定”するかわりに
“新しいこと”が始まりにくい、という側面もありました。

過去に短期で住んでいた人たちといい関係性が続いていたこともあり、
この場所を進化させていくためには
長期住人に限定せず、シェアハウスとの関わり方にも
多様性があったほうがいいのでは、と思うようになったのです。

1週間ステイしてくれたふたりと。川に罠をかけて、カニをとる!

1週間ステイしてくれたふたりと。川に罠をかけて、カニをとる!

とったカニはおいしくいただきます。

長期でここに住み、共に暮らしをつくる人、
数日~1週間の短い期間で滞在する人、
月に2回のオープンハウスイベントに参加する人、
数時間滞在のショートツアーで暮らしを体験する人……

長期は難しくとも、短期間であれば我が家にステイしたい
という需要が多かったこともあり、この取り組みをスタートさせてから
たくさんの人が我が家にやってきてくれました。

短期住人さんたちのおかげで毎日が夏休み! だったこの夏。やり残したことは何もない。

短期住人さんたちのおかげで毎日が夏休み! だったこの夏。やり残したことは何もない。

一時期はこの家をどうやったら持続させていけるだろう? と悩んだり、
人との別れが寂しくて辛い時期もありましたが、
人の入れ替わりがあることでシェアハウスに新しい風が入ったり、
人との出会いに刺激を受けて、新しい取り組みがスタートしたり、
驚くくらいのいい効果が本当にたっくさん! ありました。

おかげさまで部屋は満室(以上の人が住むことになりそう……な予感)、
長年の課題であった納屋の改修プロジェクトもスタートすることになりました。
いい風が吹いてきたぞー!

いろんな人を受け入れるのはハードではあるのですが(正直、もうへとへと! 笑)
それ以上に得られたものが山ほどあって、
この流れに乗ってまだまだ走り続けていきたい! という気持ちです。

夕暮れどきの糸島の海にて。

まだまだ実験の日々ではあるけれど、
こうやって気持ちよく循環し、続いていく場でありたいなあ。
もうすぐやってくる新シェアメイトたちとの暮らしが、今から楽しみです。

【10月14日はギブミーベジタブル!】

いとしまシェアハウス祝5周年!ギブミーベジタブル。

いとしまシェアハウス祝5周年! 今年もやります!

野菜が“入場料”の食と音楽のイベント“ギブミーベジタブル”。
入場料も、アーティストの謝礼もまさかの野菜!
お客さんが入場料として持ってきた野菜を
その場で料理人が即興料理し、無料で提供します。

ギブミーベジタブルでは、野菜がお金の代わり。
野菜を通じて、お金じゃない価値の交換を楽しもう!
みんな遊びに来てね。

詳細はこちら

以前のギブミーベジタブルの様子。

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今日のごはん

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今日のシェアハウスごはん

夏の風物詩、お庭ごはんの風景。

白熱灯の灯りのもと、乾杯!

夏の風物詩、お庭ごはん。
庭で食べるというだけで、おいしさが3割増しくらいに感じます。
もう寒くてできないのが残念。また来年!

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