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“自宅で結婚式”という選択!
〈いとしまシェアハウス〉の
古民家ウェディング

糸島での自給自足の日々を綴った
―田舎暮らし参考書―
vol.011

posted:2018.9.11   from:福岡県糸島市  genre:暮らしと移住

〈 この連載・企画は… 〉  田舎へ移住を考えている人、すでに移住した人。
そんな方の、暮らしの参考やアイデアになるはずです。農業、狩猟、人とのつながり、四季のこと。
福岡県糸島で自給自足生活を営む〈いとしまシェアハウス〉の暮らしをお届けします。

writer profile

CHIHARU HATAKEYAMA

畠山千春

はたけやま・ちはる●新米猟師兼ライター。3.11をきっかけに「自分の暮らしを自分でつくる」活動をスタート。2011年より鳥を絞めて食べるワークショップを開催。2013年狩猟免許取得、狩猟・皮なめしを行う。現在は福岡県にて食べもの、エネルギー、仕事を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉を運営。2014年『わたし、解体はじめました―狩猟女子の暮らしづくり』(木楽舎)。第9回ロハスデザイン大賞2014ヒト部門大賞受賞。
ブログ:ちはるの森

こんにちは。「食べもの・お金・エネルギー」をつくる
〈いとしまシェアハウス〉のちはるです。

今日は、結婚式のお話。
私は2013年に福岡県糸島市に一緒に移住し、
このシェアハウスを立ち上げたパートナーと2015年に結婚しています。

「暮らしをつくる」がテーマの我が家ですから、結婚式も手づくりで行いたい! 
そんな気持ちもあり、仲間たちと一緒に
この集落で数十年ぶりとなる自宅結婚式を企画することとなったのです。

祭壇の新郎新婦

私たちが結婚を決めた理由のひとつに、
集落の皆さんに晴れ姿を見せたいという気持ちがありました。
私たち夫婦は集落に引っ越してきた頃からおつき合いをしており、
当時から「お前たちが結婚するときは、俺がとり仕切ってやるかなら」なんて
声をかけてもらっていました。

ですが移住して2年が過ぎ、平均年齢65歳のご近所さんたちも
少しずつ歳を重ね、できないことも増えてきたように見えました。
お酒に強かった人がお酒を控え始めたり、
ずっと続けていた田んぼや畑を手放したり、
最近見かけないな、と思っていたら入院されたと聞いたり。

私たちのことをあたたかく受け入れてくれた彼らが元気なうちに、
きちんと晴れ姿を見せたい。喜んでもらいたい。恩返しがしたい。
そんな気持ちが、結婚を後押しさせました。

稲刈りの風景

入籍日はギリギリまで稲刈りをしていたので、ふたりとも作業着のまま市役所へ駆け込みました。

入籍日はギリギリまで稲刈りをしていたので、ふたりとも作業着のまま市役所へ駆け込みました。

婚姻届の保証人の欄には家の大家さんと、
集落で一番お世話になっている方にお願いし、
本籍も今の住所に変更しました。

さて。結婚したからには、晴れ姿を集落の人たちに見てもらいたい。
けれど、シャイなご近所さんたちは
友人たちを呼ぶ大きなパーティーには参加しづらいだろうなあ。
それならば、友人向けのパーティーとは別に、
集落の人たちに向けての結婚式を企画しよう、と決めたのです。

祭壇を家に運ぶ神主さん。

祭壇を家に運ぶ神主さん。

それに、私たちが今の暮らしを始めることができたのは、この家と出合えたおかげ。
この家との巡り合わせがなければ、いとしまシェアハウスも生まれなかったでしょう。
昔ながらの“家での結婚式”をすることで、
この家にも恩返しができないかな、と思ったのです。

自宅結婚式をするのであれば、
できるだけこの集落のしきたりに倣って行いたい。

ご近所さんに昔はどんな結婚式をしていたのか聞きに回りましたが、
この集落の自宅で結婚式が行われたのは遥か昔の話だそうで、
60歳以上の方でも「近所の結婚式場で挙げたのよ」なんて答えが返ってきました。
「自宅で結婚式、あったような気はするけど、もう詳しく覚えてないねえ」
80歳くらいの人でようやくこれくらいの情報、といった感じ。

昔の結婚式の写真

昔はみんなそうだった、といわれていた自宅結婚式でも、
一度途切れてしまった文化は、あっという間に
記憶から失われていってしまうものなのだなと実感します。

それでも、当時の結婚式の写真を見せてもらい、
初々しく幸せそうな若き日の姿にキャッキャしたり、
馴れ初めを聞いてドキドキしたり、
普段は見ることができないその人の歴史が感じられて、とてもいい時間でした。

前日に会場の準備をする新郎。

前日に会場の準備をする新郎。

ですが、なかなかいい答えに巡り会えなかったので、
地域の神社の神主さんに相談したところ、
昔は家のなかに祭壇をつくってお供え物をし、式をしたんだよと教えていただきました。

やっとのことで得た手がかりを頼りに、
神主さんにいわれた通り、お供え物や衣装の準備をし、
会場の椅子の搬入のスケジュールなどを組み、
ついに結婚式の日どりを決めることができました。

当日はシェアメイトやご近所さんにごはんをつくってもらうお願いをし、
シェアメイトの女の子にカメラマンを頼み、
友人にヘアメイクをお願いし、
シェアメイトみんなで家を掃除して祭壇の設置も自分たちで行う……
本当に本当の、手づくりの結婚式です。

髪飾り用のコデマリ

髪飾りの花を、ご近所さんのお庭からいただきました。

髪飾りの花を、ご近所さんのお庭からいただきました。

式では、集落でお世話になっている方みなさんが顔を見せてくださり、
両親も、関東から駆けつけてくれました。

いつものリビングが神聖な結婚式場に。なんだか不思議な気分でした。

いつものリビングが神聖な結婚式場に。なんだか不思議な気分でした。

みんなが用意してくれたおもてなし料理の数々

色鮮やかなお料理も、新鮮なお刺身を飾る葉っぱも、
テーブルを華やかにするお花も、
数種類ある手づくりのお塩を入れるかわいい貝殻も、
全部シェアメイトたちがつくってくれたものです。

数日前から一緒にメニューを考えたり、仕込みをしたり。
ほんっとうに大変だったと思います。

仕出し屋さんじゃなくて、
地域の新鮮な食材を使っておいしい料理を食べてもらいたい、
そんな私たちの気持ちに全力で応えてくれました。

もう、愛でしかないです。
本当に本当にありがとう!

新郎の衣装は、ご近所さんからお借りした紋付袴。

新郎の衣装は、ご近所さんからお借りした紋付袴。

アーティストのシェアメイトが歌を披露してくれました。

アーティストのシェアメイトが歌を披露してくれました。

私の好きなものだから、って
エビをたくさん入れてお煮しめをつくってくれたご近所さん、
よかったらお返しに配りなさい、と手づくりのお塩をくださった大家さん、
気合を入れてオリジナルラベルの日本酒をつくってきたお父さん(笑)、
たくさんの人たちに支えられてでき上がった結婚式だったと思います。

私たちの両親、お世話になっている大家さんやご近所さん、
そして一緒に暮らすシェアメイトとも、より絆が深まる機会になりました。
血はつながっていなくとも、大好きな人たちが集まり、つながって、
ここからまたコミュニティが広がっていくことが、何よりもうれしかったです。

さあ、次は私が誰かの結婚式をお手伝いする番。
近々結婚するメンバー、誰かいないかなあ。
結婚式するときは、声かけてね! 
あのときの恩返し、させてください。

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今日のごはん

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今日のシェアハウスごはん

「あれ、今日野菜が足りない!」というときの最終手段、野草の天ぷら。
庭に生えている野草をカラッと揚げるだけで食卓が豪華になります。

野草の天ぷら

野草の天ぷら

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